前回はひどいミスをしてしまっていました。申し訳ないです
パチュリーside
夏も真っ盛り、という時期のはずなのに館には全くと言っていいほど日光がさしていない。皆おかしいとは思っているみたいだがなかなか行動に移す気はないようだ。
「ねぇ、パチェ。最近出かけられないから暇で暇で困ってるんだけど」
「それは大変ね。でもあなたたちもうすうす気づいてはいるでしょう?これが異変だという事に」
「そんなことはわかっているわよ。でも突然雨が降ってきたりするから迂闊に出かけられないの。おかげで最近冥界にも行けていないのよ。まったく、首謀者は何を考えているのかしら」
しかし思っていたよりも面倒な異変だ。天気がどのタイミングで変化するのかや、どのようにして天気の優先順位が決まるのかがいまいちつかめていない。確か無意識がなんたらだった気がするが。とりあえずこの館は主に濃霧に包まれていることからレミィが優先されているのだろう。
「ただ単純に天気が変わっているわけではないわ。この天気は個人の気質の表れ。例えばレミィの場合は濃霧ね。この間魔法の森に行った時の事を考えるとアリスはどうやら雹、魔理沙は…………霧雨かしら」
もともと知ってはいたが彼女たちに直接会って確認してみたかったからわざわざ出かけたのだ。
「パチェが何処かに出かけていたなんて知らなかったんだけど」
「だって言ってないもの。それに私は晴れていても問題ないし雨は結界で防げるしね」
「ちょっと何それ。そんな物があるなんて聞いてないわ。異変の主犯をとっちめたいから私の周りにも張って頂戴よ」
「あぁ、他人の周りに結界を張るのは私では不可能だからそういうのは結界術の専門家に頼まないといけないわよ。私の知る限りでは霊夢か紫かしらね」
「神社に行きましょう」「紫の方が楽に呼べるわよ?」「神社に行きましょう」
「はぁ、分かったわ。あなたは本当に紫に苦手意識を持っているのね。わざわざこの天候の中神社に向かうほどの」
「別に嫌いなわけじゃないのよ?ただ何となく合わない気がするのよ。さて、向かうわよ」
「咲夜は連れて行かなくていいの?あの子なら喜んでついてきそうなものだけど」
「良いのよ。今回の主犯は私が直々に懲らしめてやりたいもの。日傘も用意したから早く館から出るわよ。早く行動するに越したことは無いわ」
とりあえずまずは神社。その後は天界に行くことになりそうだ。日焼け止めは塗ったようだから日傘の主な用途は神社までの雨避けだろう。日傘には撥水加工をしていないというのに。
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「うわっ‼なにこれ…。どうして神社がこんなことに…?」
「地震ね。それもこの神社の敷地内だけの局地的な大地震だわ。これは幻想郷にとっての危機ね。霊夢ももう動き始めてしまっているみたいだわ」
霊夢は幻想郷の危機だと思って動いてはいないだろうが。
「仕方ないわね…紫、来て頂戴」
……
「貴方たちの事情は把握しているわ。神社のこの有様……本当にどうしてくれようかしら。それで要件はレミリアに結界を張ることだったわね。……はい、これで流水も多少は大丈夫なはずよ。効果は一日ほど、まあ主犯を退治するまでは大丈夫でしょう。本当は私が出向きたいところなのだけれど」
「もうこれで用事は終わったわね。さてレミィ、ここからはあなたの単独行動ね。早く懲らしめたいのなら先ずは冥界に向かいなさい。そこで何かしらの情報が得られるはずよ。私は少しこの神社の事をしなければならないからよろしく頼むわ」
「冥界…?えぇ、分かったわ。必ずこの私が懲らしめてきてあげる。私を怒らせたことを後悔させてやるわ。じゃあね」
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「本当は幻想郷のために退治してきてもらいたいところだけれど」
「パチュリーが残ってくれて助かるわ。今幻想郷のあちこちで起こっていることは勿論把握しているわよね。今回最も厄介なのは幽霊が冥界の管轄外で勝手に斬られていること。妖夢でないなら犯人は天人に違いない。月の連中よりよっぽど気に喰わないわね」
幽霊はすなわち気質。それが斬られると当然幽霊の数は減ってゆく。その後斬った気質を集めて地震を引き起こすとまた幽霊の数が増える、というわけだ。天子がそこまで考えて行動しているのかは知らないがわかってはいるのだろう。
だからこそ余計に厄介だ。彼女の行動理由は恐らく暇だから。暇つぶしですることを間違えてしまった彼女の今後は私にはまだわからない。
「敢えて聞くけれど何がそこまで気に喰わないのかしら。月と天界の考え方に違いなんてほとんどなさそうなのだけれど」
「確かに考え方には大した違いはない。しかし今回この神社を壊したことに大した目的など無いでしょう。そのあたりが月よりも嫌な所なのよ」
やはりそうか。それにしても紫は本当に天人が嫌いなようだ。天子も悪意があってやったわけではないだろうに。だからと言って私も同情するわけではない。博麗神社は大結界の要だ。そこが破壊されたとなると流石に黙ってはいられない。
それに悪意がない分余計に厄介なのだ。悪意がないとはすなわち自分が悪いことをした、という自覚がないからだ。紫が『この大地から往ね』というのも仕方のないことだと言える。何せ幻想郷を作り結界を張ったのは他でもない紫なのだから。
「今回の異変に伴うこの局地的な大地震、あなたなら原因もわかっているのではないの?」
「この地震は要石によって引き起こされたもの。そして要石を扱えるのは天界に住む比那名居の一族のみよ」
「なるほど。紫はもう神社の再建に着手しておいた方が良いのではないかしら。比那名居と言えば神社も持っていたはず。下手すると乗っ取られるわよ」
「勿論わかっているわ。神社の下に要石を埋め込まれたらそれこそ厄介だわ」
そうなれば幻想郷の存続が全て天子の手の上になってしまう。彼女が要石を抜けば簡単に神社は壊れ、それを起点とした大結界も破れかねない。
それにしても紫は未来でも見えているのではないだろうか。私のように事前知識があるわけでもないのに即座に答えにたどり着く彼女の頭の中が知りたいものだ。
「そうね。紫、悪いけれど私も天界に向かうわ。天人の全てがこのような考えを持っているわけではない。この異変を起こすのが天人なら止めるのもまた天人であっても構わないはずよ」
「……あてがあるのね。ならば此度は主に貴女とレミリアに任せることとしましょう。私は萃香に声をかけて神社を再建しておくわ」
まずは天界に行ってレミィを探すところから始めればいいだろうか。レミィは少しばかり寄り道をするはずだが、経過時間を考えれば直接天界に行く私よりレミィの方が少しだけ早くついているはずだ。
稔里side
今日は比那名居家のお嬢様である比那名居天子の様子が何かおかしい。何処かそわそわしているようだ。何かを待っているのだろうか。
天界とは欲を捨てた者たちの集まる場所である。だが比那名居天子は至り方が少々特殊だったせいか天人としてはかなり異端である。それに総領の娘なので逆らおうにも逆らい辛い。私が来た時には既にいたから知らないが、彼女がわがままになってしまったのにはこういう背景もあるのだろう。
兎にも角にも毎日の仕事として与えられていることは果たさなくてはならない。天界への侵入者などほとんどいないというのに全く面倒なことだ。しかし今日はどうやら違うらしい。
「ここが天界なのか?」「えぇ、そうですが」
「そうかそうか、ならさっさと出すもん出しなさい。どうしても出さないというならば力づくででも出させるけどね」
この妖怪は一体何を言っているのだろうか。「出す物?心当たりがないのですが…」
「しらばっくれるというのね。ならば強引にでもやらせてもらうよ」 紅符『不夜城レッド』
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「さて出す気になったかしら?」
この妖怪は強い。戦い方はまるで昔見た美鈴のようだ。美鈴ほどのリーチはないが速さがある。
「だから聞いてくださいってば。私には何が何だかさっぱりわからないのですが」
「ほう、この期に及んでまだしらばっくれる気か。なかなか度胸のある天人なようだ。面白い、そちらがその気だというのなら…「そこまでにしておきなさい」誰よ…ってパチェ?!どうして来たの?私はこの天人から真実を聞き出す必要があるんだけど」
口調がガラッと変わった。きっとこちらが本来の彼女なのだろう。
「この子は今回の異変には関係ないわ。稔里も災難だったわね、うちの当主の誤解だけれど」
「うちの…ってことは貴女が紅魔館の主の吸血鬼なのですか?」
「えぇ、そうだけど。何?二人は知り合いだったの?」
「そうよ。私が昔日本にいた頃からのね。名前は東風谷稔里。もう一度言うけれど今回の異変の犯人ではないわ」
「そ、そうだったのね。ごめんなさいね、急にケンカ腰になってしまって。貴方さえよければまたお詫びをするわ。しかし東風谷…?あの神社と何か関係が…?」
「守矢神社の事でしたら関係は大ありですが。それに詫びなんて…まだ会ったばかりなのにそんなのは申し訳ないですよ。私ももう少し何か言う事があったかもしれませんし」
この吸血鬼が守矢神社の事を知っているとなるともう神社は幻想郷に来たのだろう。また約束を果たしに行かなければならない。
「まあまあ、ここは素直に詫びを受けなさい。埒が明かないわ。
話は変わるけれど稔里は近頃地上で起こっていることを何か知っているかしら?」
「いや、知らないわ。近頃は地上にも行っていないし。何かあったの?」
「今地上、いや、冥界でも生きとし生けるものの気質が勝手に斬られるという事が起こっているわ。冥界の庭師が犯人ではない以上犯人は天界の者しかいないの。理由はわかるわよね、緋想の剣を扱えるのは天人だけだからよ」
「なるほど、だから私が疑われたのね。でも現在緋想の剣を所有しているのは総領の娘、比那名居天子よ。彼女が犯人なのではないの?」
というか天界で厄介ごとが起こると大概あの娘のせいなのだ。だからきっと今回もそうなのだろう。
それにしても彼女が今日そわそわしていた理由はこれか。地上から人間や妖怪が戦いを挑みに来る、彼女にとっては最高の暇つぶし程度にしか考えていないのだろう。だが実際挑みに来たのは初めから殺意が最高潮の吸血鬼(かなり強い)とぱっちゃん(滅茶苦茶強い)だったわけだ。比那名居天子はどうなってしまうのだろうか。
「そういえば知っての通り天人の身体はとても硬いわよ。生半可な攻撃は全く通用しないわ」
「えぇ。だからとりあえずレミィの怒りが収まるまではレミィに任せてあとはあなたが天子を止めてくれればいいわ。
因みにあなたがやらないというのなら私が代わりにするわ。彼女が攻撃し、宣戦布告した相手は美鈴以外では私の最も旧い友人が途轍もない苦労をして作った楽園。そこが破壊されかねないのだから私も生半可な気持ちでここに立っているわけではないわ」
ぱっちゃんにやらせると最悪天界がなくなりかねない。流石にそこまではしないだろうが天界に大ダメージを与えられるのは間違いない。こうなったら私がやるしかない。
「私が引き受けるわ。ぱっちゃんに任せたら怖いもの。でもぱっちゃんの気持ちもわからなくもないからやるなら全力でやらせてもらうけどね」
「話はまとまったわね?じゃあその総領の娘という奴のところへ行きましょう。私を外出できないようにした罪は重いわ」
あれ?意外と器が小さいのか?
「ねぇ、ぱっちゃん。比那名居天子をあの子一人に任せて大丈夫なの?彼女もかなりの実力者よ」
「大丈夫よ。あなたも気づいたでしょう?レミィを鍛えたのは美鈴。近接戦ならばレミィは圧倒的に私を上回るわ。あなたの出番すら訪れないかもしれないわね」
ぱっちゃんは近接戦を苦手としているらしいが昔一緒に巫女をしていた時の事を考えるとどうもそうは思えない。小回りの利く彼女の応用魔法は相当に厄介なものだった記憶がある。
それを遥かに上回るというのならあの吸血鬼の実力は相当なのだろう。どんなものか拝見させていただこう。
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…強い。先ほど私と戦った時よりかなり強い。比那名居天子が手も足も出ていない……いや、分かっている。比那名居天子は未だに手加減をしている。彼女が本気になれば戦況は変化するかもしれない
「だから言ったでしょう?稔里の出番はないかもしれないって。でももう少し続きそうね。天子が本気を出すならば、だけれど」
「ふん、本気でもない奴を圧倒してもつまらないだけだ。くだらない遊びはもう終わりにしないか?天人よ。私は貴様の暇つぶしに付き合っていられるほどお人好しでもないんだ」
「言ってくれるじゃない。たかがこれしきの力で私を倒そうとするとは笑止千万。私の本気をとくと味わうがいい。後悔しても遅いわよ!」気符『無念無想の境地』
なるほど、比那名居天子も負けてはいない。彼女の実力も見誤っていたか。
「ははっ、なかなか面白くなってきたじゃないの。お遊びはここまで、という事ね。じゃあこちらも遠慮なくいくわよ。避けることはかなわないこの攻撃、お前なら耐えられるだろう?」
神槍『スピア・ザ・グングニル』
両者とも激しい攻撃が続いている。果たしてその結末は……
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「なかなか良い暇つぶしにはなったわよ、吸血鬼」
「よく言う。少なくとも私に負けた奴が言うセリフではないな。さて、私が勝ったのだから集めた気質は早く戻してくれるんだろうな?」
「はぁ~。えぇ、分かったわよ。ついでに神社を直すのも手伝いましょうか?」
「ほんと?!それはすごく助かるわね。是非お願いを…」「って霊夢?いつからそこにいたのよ」
「あんたらが戦ってるところからよ。まったく、私の仕事を横取りしておいて…」
「まあその話は後にしましょう。神社の再建は手伝ってもらわなくて結構よ。もう既に頼んでいるから」
「なーんだ。つまらないわ~。何か刺激的なことが起きれば良いのに」
「そのことだけれど今後しばらくは自身の周囲を警戒して大人しくしておくことを勧めるわ。さもなければ刺激的では済まないことが起きるでしょうから」
脅しだろうか。それとも先ほどぱっちゃんが言っていた旧い友人に何か関係があるのだろうか。会ってみたいが聞く限りでは怖そうな人だ。
異変も無事に終わったみたいだし久しぶりに地上に降りるのも悪くない。ついでに諏訪子様たちにも会いに行けそうだし。
儚月抄が長くなったので緋想天はかなり短くしました。そのせいで無理矢理感が凄いですが
天子には刺激的では済まないことが起きないように過ごしてもらいたいです
では次回も読んでいただければ幸いです