行動派七曜録   作:小鈴ともえ

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姉貴分的第五十二話

   パチュリーside

 

 

 レミィが天子を打ち負かしてから数日経ち、最近は徐々に天気も安定するようになり神社の方の修復も終わった。というか神社の修復は結構早くに終わっていた。流石は萃香といったところだろうか。

 

天子も私の忠告を聞いてか今は大人しくしているようで、紫もこれ以上何かをするつもりは無いようだ。レミィもようやく外出できるようになったという事で早速今日一人で白玉楼に出かけて行った。

 

私は特に何をするでもないし今日はアリスも魔理沙も来ていない。今日図書館が賑やかになることはなさそうだからゆっくり本が読めるだろう。

 

 

「パチュリー様、どうやらパチュリー様にお客様がいらっしゃっているようです。今は門前で美鈴と話をしているようです」

 

「そう、ありがとう咲夜。それでは少し出かけてくるからこあにも言っておいて頂戴。昼も私の分は用意しなくていいわよ」  「かしこまりました」

 

わざわざ私を訪ねてくる人物で咲夜の知らない人となると多分稔里だろう。今日は一体何の用事があって降りてきたのだろうか。というか紫の天人に対する警戒をくぐってここまで来られるとは…幽々子のおかげなのだろうか。

 

咲夜は確か門で美鈴と話をしていると言っていたな……うん、やはり稔里だったか。

 

 

「あ、ぱっちゃん!先日ぶりだね。突然訪ねてきてごめんね」

 

「いえ、良いのよ。それで、今日は一体どんな用事で来たのかしら」

 

 

「どうやら二柱に会う約束を果たすために降りてきたようです。来てからもうすぐ一年ですけどまだ会っていなかったという事で」

 

「なるほど、そういう事。私に案内してもらいに来たのね?」「うん。良いかな?」

 

「勿論構わないわよ。じゃあ私は出かけてくるわ。美鈴も暑さにやられないように気を付けておきなさいよ」

 

 

「大丈夫ですよ。妖怪は丈夫ですし、いざとなれば妖精たちの中にも冷気を出せる子がいますから。咲夜さんには私から伝えておきましょうか?」

 

「大丈夫よ。こうなることを見越してもう既に言ってあるわ」

 

 

「流石ですね。それではお気を付けて行って来てください」「えぇ、行くわよ稔里」

 

―――――――――――――――――――――――――

 

「神社は人間の里の近くではないの?」

 

「えぇ、むしろ人間からの信仰は集めにくくなっているわ。神社の場所も普通の人間にとっては少々危険な場所にあるけれどあなたなら問題ないでしょう」

 

 

「そうなの?まあいいか。そういえば神社には私の子孫にあたる子がいるんだよね。その子の前では私はその子とは無関係な人物として扱ってね。かなり面倒なことになるかもしれないから」

 

「分かっているわよ。神社があるのはこの山の上。妖怪の山と呼ばれているくらいだし人間に対してはかなり排他的ね。山に入るとすぐに哨戒の天狗が飛んでくるわ」

 

まあ哨戒天狗くらいなら訳なく無力化できるけれど。鴉天狗以上になると少々面倒になる。

 

 

「そんな場所に神社があるのなら人間の参拝客は見込めないね。もう少しどうにかならなかったの?」

 

「えぇ。転移する先の座標をしっかり指定できれば何とかなったでしょうが。さ、そろそろ天狗たちがやってくるわよ。私が戦いましょうか?」

 

 

「私も一緒にやるよ。前の吸血鬼との戦闘で私が如何に鈍っていたか確認できたし、もう一度勘を取り戻さないといけないからね」

 

「一応言っておくけれど命の駆け引きをするわけではないからね。相手を無力化するのを目的に戦って頂戴よ」

 

稔里は昔の妖怪退治を知っているため放っておくと辺り一面死屍累々になってしまうかもしれない。そうなれば流石に天魔クラスも黙ってはいないだろうし、幻想郷のパワーバランスを崩しかねない。

 

 

「大丈夫だって。ぱっちゃんは心配症なんだから。前のあの子たちみたいに戦えばいいんでしょ?余裕よ余裕」

 

ここまで言うなら信じておくか。数は圧倒的にあちらが多いから油断しているとやられることもあるかもしれない。文が来てくれればかなり楽に終わるのだけれど今日は恐らく来ないだろう。異変の、というか神社崩壊の記事を書いているだろうし。

 

「あ、ほら来たわよ。節度は守って対応してね」

 

 

「こら、貴様ら!ここがどこだかわかっているのか?妖怪の山に許可も無く入ることは許されない。悪いが排除させてもらうぞ」

 

 

「あら、こんなにもか弱い女子が二人きりで山に入っただけなのに排除するなんてひどいわ~」

 

稔里……あなたの演技もひどい物なのだけれど…。

 

 

「うるさいぞ。そしてやっぱりここがどこだかわかって立ち入っているんじゃないか。これは許されることではない。貴様ら程度、鴉天狗の奴らに頼るまでもない」

 

鴉天狗は白狼天狗をどんな風に扱っているのだろうか。仲が悪そうなのは大体想像できるが部下に”奴ら”呼ばわりされる上司って一体。

 

「全くいつ来ても面倒な事ね。いい加減学んだらどうなのかしらね」

  火符『アグニレイディアンス』

 

作ったは良いが使ったことのないスペカがいくつかあるから実験台にさせてもらおう。作ったのはもうかなり前の事になるのだが使わないのは勿体ないというものだ。

 

 

「ぐえっ」「うわぁぁ」「…………」

 

スペカ一枚で粗方対処できてしまった。稔里の方も加減をして攻撃をしたようで誰一人殺すことなく無力化させることに成功していた。

 

「大体片付いたわね。援軍が来る前にさっさと上の方に行くわよ。そうすれば追っ手はいなくなるわ」  「分かったわ」

 

鴉天狗以上は過去の事から基本私に攻撃してこないので上の方に行けば逆に安全に飛行できるようになる。私が天狗をむやみに襲わないと分かっているから放置しているのだろうが、それでも不思議なものだ。

 

           ・

           ・

           ・

 

「やっとあったわね、守矢神社。久しぶりに見るから忘れていたのかもしれないけど何か神社の雰囲気変わった?」

 

「わからないわ。そもそも過去の神社をよく覚えていないもの。でも時代の変化と伴に変わっていても不思議ではないかもしれないわね」

 

 

「確かにそうか~。さて、そろそろ降りようか。お二柱ともいらっしゃるかな」

 

今の時間なら早苗ちゃんもいると思う。恐らく里に下りていくのはもう少し後の時間帯だろう。

 

 

「ごめんくださーい。誰かいらっしゃいますか~?」

 

 

「はいはい、なんでしょうか。おや、初めて見る顔ですね、初めまして。…それとパチュリーさんでしたか。お久しぶりです。本日は一体どのような御用でいらっしゃったのですか?」

 

「特にこの神社に用事があったというわけではないの。諏訪子と神奈子は今いるかしら?」

 

 

「諏訪子様も神奈子様も今日ならばいらっしゃいますよ。最近はお二柱ともどこかに出かけていたりするのですがパチュリーさんは運が良いですね」

 

諏訪子と神奈子がこの時期にどこかに出かけている、となれば地底しかないだろう。地底は重要な場所になるだろう。私にとってではなくあの子たちにとってだが。

 

「らしいわよ、稔里。あの子が二柱に会いたがっていたから会わせても良いかしら」

 

 

「はい、構いませんが……一体どうして?」

 

「彼女にも彼女なりの理由があるのよ。それより私たちは少し外で話でもしておきましょうか。彼女たちの話の邪魔にならないように」

 

 

「気づかいありがとう、ぱっちゃん。それではお邪魔しますね」「どうぞごゆっくり」

 

折角の再開を邪魔するのは流石に悪い。稔里にも二柱にも。

 

 

   諏訪子side

 

 

 最近神奈子が面白い考えを出してきた。地底にあるらしい地獄の跡地を利用してエネルギー革命を起こそうと言うのだ。宿主に丁度良い媒体を探して八咫烏を宿らせることで、外の世界ではできないような技術が実現できる。

 

丁度良い媒体と言っても条件はかなり厳しい。神をその身に宿すのは普通の人間や妖怪では不可能だし、相当な高温にも耐えられる者でなければならない。そこで比較的頭が弱そうで、かつ高温にも耐えられる地獄鴉が良いだろうという結論に至っていた。

 

つい先日丁度探していた条件に合う鴉が見つかった。今は八咫烏の制御のための道具を早苗に隠れて作っているところだ。秋も近づいてきているが秋が深まるまでには完成させたいところだ。

 

今日は地底に行く用事もないから神奈子共々神社でゆっくりしている。今はまだ早苗が里に下りていないから何もできないのだ。

 

 

「ごめんくださーい。誰かいらっしゃいますか~?」

 

 

「おや、お客さんかな?早苗、行ってあげな」「はい、分かりました」

 

 

「それにしても何処かで聞いたことのある声だったような?」

 

 

「神奈子の気のせいじゃない?幻想郷での知り合いなんてぱっちゃんと美鈴以外いなかったようなもんだし」

 

 

「そうかしらねぇ。でも確かに何処かで……「お久しぶりですね、神奈子様、諏訪子様。長い時間がかかりましたが今ようやく約束を果たせました。あの時の約束を覚えておられるかはわかりませんが長らくお待たせしましたね」……あら、稔里じゃないの。随分と久しいわね」

 

まさか神奈子の言っていたことが当たっていたなんて。

 

 

「久しぶりだね、稔里。約束は勿論覚えていたよ。あの時の約束のおかげで私は今ここにいるようなものだからね。それにしてもよくここが分かったね」

 

 

「いえ、ここまではぱっちゃんに案内してもらったんですよ。お願いしたら快く引き受けてくれました」

 

 

「なるほど、ぱっちゃんも来ているのね。呼んできましょうか?」

 

ぱっちゃんはたまに来てくれるが頻繁に来る、というわけでは無いので前回会ったのももう数か月も前になる。

 

 

「私を東風谷だとばらさないのであれば大丈夫ですけど……」

 

 

「なんだ、そんなことかい。別にばれても大丈夫だと思うよ。何せあの子も現人神だからねぇ」

 

 

「やはりそうだったのですね。神の血を濃く引き継いだようで。過去にもあまり見ない事例ではないですか?」

 

稔里自身にも神の血が流れていることには気づいていたのか。やはりこの子は優秀だ。天人になれたというのも納得できる。

 

 

「確かにそうね。で?どうするの?うちの巫女とぱっちゃんを呼んできても良いの?」「えぇ」

 

 

「じゃ、ちょっと呼んでくるわ。おーい、早苗もぱっちゃんも入ってきていいわよ」

 

呼んでくると言ったのに実際は縁側に出て声をかけただけか。それならわざわざ立ち上がらなくても良かったのではないだろうか。

 

「早かったわね。積もる話も無かったの?」「早苗がいても大丈夫だと判断しただけさ」

 

 

「えっ?私?どど、どういう事ですか?」「まあまあ、別に悪い話ではないわよ」

 

 

「ぱっちゃんの言う通り悪い話じゃあないよ。ただ突然来て私たちに会いたがったこの子の素性を知りたくはないかい?」

 

 

「え…いやまあ不思議には思いますけどいきなり他人の素性と言われても…」

 

「あなたたち二人が育てたとは思えない程良い子ね。稔里もそう思うでしょう?」

 

 

「そっ、それはどうかなぁ。私には判断できないな~「無理しなくても良いのよ」うっ」

 

 

「全くぱっちゃんも稔里もひどいねぇ。早苗が良い子に育ったのは私の育て方が良かったんだって早く認めなよ。現に稔里も良い子じゃないか」

 

「まあ確かに」「……え?稔里さんも諏訪子様達に育てられたかのような言い方ですが」

 

 

「だって事実だもん。ね、稔里」「…はい。確かに私はお二柱に育てられました」

 

 

「でも稔里さんなんて見たことないような気がするのですが…」

 

 

「それは当たり前よ。早苗が生まれるよりはるか昔のことだもの。まだぱっちゃんが神社に来てもいなかった頃ね。懐かしいわ」

 

 

「えぇ~~?!じゃ、じゃあ稔里さんって今いくつなんですか?!」

 

「こらこら、女性に年齢の話はいけないわよ。二人とも改めて自己紹介から始めてはどうかしら?」

 

 

「確かにそうね。えーと、私の名前は東風谷稔里。種族は天人よ。ちなみに歳は大体千歳くらいでしょうか」

 

 

「わ、私は東風谷早苗です。一応人間です。それにしても天人ですか。なら先の異変も関わっていたのですか?」

 

 

「まあ関わっていたかいなかったか、と聞かれると一応関わっていたのでしょうか。ぱっちゃんとその友人の吸血鬼が来るまでは知らなかったことですが……」

 

―――――――――――――――――――――――――

 

早苗と稔里はすっかり仲良くなったみたいだ。稔里の話は早苗にとってはかなり新鮮で面白い物だったらしい。

 

特にここに来てまだ浅い早苗は地上以外の事についてはあまり想像できないらしい。冥界など存在を知っていてもなかなか行けない場所もある。そういう場所の事も面白く、かつ詳しく話してくれるから早苗が稔里に懐くのも納得できる話だ。

 

もう数時間も話して昼も過ぎているのにさっぱり終わる気配がない。いつも里に下りている時間もとっくに過ぎているのに。ぱっちゃんに目配せすると私の言わんとしていることを理解してくれたみたいだ。

 

「二人ともそろそろ終わりにしたら?早苗も里に下りなくて大丈夫なのかしら?」

 

うん、完璧だ。伊達に長い時間一緒に過ごしたわけではないようだ。

 

 

「え?もうそんなに時間が経っていたんですか。すみません、稔里姉さん」

 

それにしても姉さんって。確かに一人っ子の早苗にとっては姉のような存在なんだろうし、確かに血は繋がってるんだけど。髪の色は全然違うから違和感があるがそれ以外はほとんどないと言える。何故だろうか。

 

 

「いえ、私も話し過ぎました。用事があったでしょうに申し訳ないですね。それでは私はそろそろ帰ります。諏訪子様や神奈子様にも会えましたしとても満足です」

 

 

「では私は里に行ってきます。お昼は……あぁ、パチュリーさんありがとうございました」

 

「気にしなくていいわよ。これくらいなら訳ないわ。さて、私も稔里と一緒に出ることにするわ。稔里も早苗もお昼はまだだったでしょう?里で食べないかしら?私が出してあげるから」

 

 

「おっ、いいね。地上の食べものって最近全然食べていなかったし。早苗ちゃんは?」

 

 

「良いのですか?なら私もありがたくごちそうになります!」

 

まったく。ぱっちゃんに頭が上がらなくなってしまう。私たち二人に昼ごはんを作ってくれた上に早苗たちには自腹で御馳走してくれるらしい。

 

今日はあまり作業ができないと思うが、稔里に再会できたので十分に良い日だったと言える。きっと神奈子も同じように思っているだろう。何せ数百年ぶりの再会だったのだから。




稔里は相手がパチュリーかそうでないかで話し方が変わるので非常に書き辛いです。そうし
た自分が悪いのですが

因みに稔里の髪色は黒です。流石に千年前の日本で他の色は目立ちすぎますから


では次回も読んでいただければ幸いです
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