因みに大して屈辱的ではないので悪しからず
パチュリーside
冬になって外はかなり冷えるようになってきた。そうなるとそろそろ異変の時期になるだろう。夏に守矢神社に行った時には既に二柱とも準備をしていたようだし起こるのは確実だ。
地霊殿は一応サポートとしての参加があったはずだがどうなるだろうか。萃夢想みたいに解決者として参加しなかった異変もあるにはあるが。
―――――――――――数日後――――――――――――――
「パチュリー、ちょっと良いかしら?」
「あなたが来るなんて珍しいこともあったものね、紫。時間なら大丈夫よ」
というか仕事のない妖怪は大体いつでも時間が空いているようなものだ。忙しいという時はほとんどない。
「ありがとう。それとそこにいるアリスもちょっと良いかしら」「えぇ、大丈夫だけど」
「今さっきちょっと困ったことが起きたのよ。緊急だから手短に説明させてもらうけれど、地底から怨霊が大量に湧き出てきてしまったの。地底と地上では妖怪同士の移動は基本的にご法度なの。
だから今回の異変の解決自体はいつもの二人に任せることにしたわ。地底は危険すぎるから本当は霊夢一人で行ってもらいたかったのだけれど。そういう事だから貴方たちには魔理沙のサポートをしてもらいたいのよ」
「ちょっと待って。妖怪は地底に行けないんじゃなかったの?どういう事?」
「あぁ、言い方が悪かったわね。サポートは遠隔で行ってもらうわ。そのための道具は河童に頼んだらすぐに作ってくれたわ。彼女はそれでもう疲れたからサポート役にはなってくれないみたい。これがその道具よ。もう一つは魔理沙が持っているからテストがてら試してもらえるかしら」
「分かったわ。えぇ~テストテスト。魔理沙?聞こえているかしら?」
『ん?アリスか?ばっちり聞こえているぜ。それにしても凄いもんだな。こんなに離れていても話ができるなんて。にとりも侮れんなぁ』
「しっかり聞こえているようで良かったわ。これからあなたのサポートはこの道具を通して行うからよろしく」
それにしてもどうやってあちらの映像を映し出しているのだろうか。まあこれが無ければサポートなんてできないが。
『なんだパチュリーも一緒なのか?それなら心強いな「私じゃ不満みたいな言い方ね」い、いや、他意はないぜ。気のせいだ気のせい』
「言い訳に必死ね。まあそんな話をしている暇があるならさっさと地底に続く穴まで行きなさい。着いたらまた知らせて頂戴。ではね」
こんなことに時間をかけている場合ではないだろう。魔理沙が生きて帰ってこられるようにするのが私たちの仕事。きっちりやらせてもらおう。
「それで、紫は霊夢のサポートをするのかしら?」
「えぇ、まあ萃香もしてくれるみたいだから私はすることが無いかもしれないけれど」
萃香にとっては顔見知りばかりだろうから確かに楽になるだろう。
「文とかは誘わなかったのかしら。彼女も鬼はよく知っているでしょう?」
「誘ったのだけれど萃香がいると知って辞退されたわ。言わなければ面白くなったかもしれないわね」
相変わらず人の悪いことで。でもまあ文が辞退するのも仕方ないし当然と言えば当然か。
「では私はもう行くわね。サポートよろしく頼むわよ」
神出鬼没。いきなり来たと思えばもうどこに行ったか分からない。
『あー、聞こえるか?とりあえず大穴まで来たぜ。降りて行って大丈夫な物なのか?』
「えぇ。途中出てくる妖怪たちには気をつけなさいよ。彼らは地上では忌み嫌われた者たちばかり。人間にとってはかなり危険よ」
『分かった。気を付けることにするよ。それにしても深い穴だな。底が全然見えてこないぜ』
「当然よ。浅かったらすぐに地上に出てくるかもしれないでしょう?」『ふーん、そんなもんか』
こうは言っているが、正直思っていたよりも深くて驚いている。降りているというよりは落ちているに近い速度のはずなのに。
魔理沙side
それにしても深い穴だ。一向に底が見えてこない。
『上!気を付けて!』
「おっと危ねぇな。こいつは何だ?いきなり上から降ってきたが」
『それは……釣瓶落としね。狂暴だから見た目で油断していると首刈られるわよ』
「げっ、それはごめんだな。さっさと倒しちまうか」
妖怪は見た目によらないというのはよくわかっていることではあるが、この妖怪もやはり見た目から連想される性格は全く異なるらしい。
―――――――――――――――――――――――――
「なんだ、弾幕ごっこの腕は低いようだな。首を刈られずに済んだぜ」
『これからもこんな妖怪ばかり、いえ、これよりさらに厄介な妖怪ばかりになるわ。心してかかりなさい』
「はいはいっと。気を引き締めて行かんとな」
「なんだい?誰と話しているんだい?それとも独り言の気があるのかな」
「失礼な奴だな。独り言の気なんてないぜ。私が誰と話していようがお前には関係ないだろう?」
「確かにそうだ。で、お前さんは人間のようだけど地底に何の用だい?」
「何、ちょっとばかり妖怪退治をな『嘘は駄目よ』ったくアリスは真面目だな。それでこいつは何なんだ?」
「ん?今どこから声がしたんだい?姿なんて見えなかったけど」
「これだよこれ。それでこいつは?」
『彼女は土蜘蛛ね。病気に関しては彼女の右に出る者はいないわ。人間は病弱なんだから気をつけなさいよ』
「少なくともお前たちよりはマシだと思うけどなぁ。まあいいか。さっさと倒して先を急ぐぜ」
「ほう、やれるものならやってみな」
―――――――――――――――――――――――――
「口だけじゃないか。物足りないぜ。次は何処に向かえばいいんだ?」
「いてて……。お前さん強いんだね。それなら恐らく進んでも大丈夫だろう。ここをまっすぐ行くと橋がある。その橋を越えれば旧地獄さ。とりあえずそこまで行ってみな」
「助かるぜ。じゃあな!」「まったく心配の一つもないのかい」
妖怪に心配なんてするだけ無駄だろう。どうせこいつも元気なんだし放っておいても問題ない。それにしても霊夢が先に来ていると思うのだがそれらしい痕跡が全くないのはどういう事なのだろうか。
『さあ次は橋に向かってみましょうか。何か手掛かりがあるかもしれないわ』
「言われなくてもわかってるよ。それにしてもこれじゃあ私が独り言ちているようにしか見えないぜ。どうにかならないのか?」
『にとりが急いで作ってくれた物だし映像を見ながら会話できているだけでも十分でしょう?』
「それはお前たちだけじゃないか。私の方はそっちの映像が見れるわけではないんだぜ。まあ言ってても仕方ないか。
お?ここがあいつの言ってた橋か?誰か倒れているようだが」
『……橋姫ね。嫉妬を操る厄介な妖怪なのだけれどどうやら霊夢が先に倒していったみたいね』
ここでようやく霊夢の通った痕跡が見つかったわけか。となると先の二人は霊夢と戦わなかった、と考えるのが妥当か。とりあえず気絶している奴に弾幕を撃ちこむほど憎いわけでは無いので放置して進むことにする。無駄な時間は使いたくないし。
『橋を渡ったら旧地獄と言っていたわね。少し気になるわね』
「おいおい、今は異変解決に来ているんだぜ……。気になるのはいいが邪魔はしないでくれよ」
『わかっているわよ。正直サポートはパチュリーで十分間に合っているから暇に近いのよね』
「なんて奴だ。私がこんなに一生懸命頑張っているというのに」
『はいはい、そんなことを言っている間に次が来たようよ』
「人間がここまで来られるなんてね。さっきの巫女くらいかと思っていたよ。戦う前に名前でも聞いておこうか」
「普通の魔法使い、霧雨魔理沙だ。なんだ、お前は霊夢にあったのか?さっきの橋姫のように伸びてはいないみたいだが」
「当たり前じゃないか。あれも所詮は遊び。この私があれしきでくたばるわけないだろう?この山の四天王、星熊勇儀がね」
「山の四天王…そうか、お前は鬼か。萃香とは見た目が全然違うからわからなかったぜ。なら頑丈なのも納得がいく」
「なんだ?萃香と知り合いなのかい。さっきの巫女と言いあんたもなかなか強そうじゃないか。人間はあの頃で見限ったつもりだったがいやはや面白いことだね。さて、心の準備はできたかい?」
「おう、いつでもどこからでもかかってきな」
「早速行かせてもらうよ!」鬼符『怪力乱神』
「ふふんっ、この程度なら問題ないぜ!これならパチュリーの弾幕の方が百倍難しいくらいだな」
「そのやる気、気に入ったよ!…ん?パチュリーと言ったか?パチュリーってもしかしてパチュリー・ノーレッジの事かい?」
「あ?そうだけどなんでお前が知ってるんだ?もしかして霊夢にでも聞いたのか?」
「いや、パチュリーは旧い友人なのさ。私たちが今ここに住んでいるのも彼女のおかげだと言ってもいい。地上に戻ったらお礼でも言っておいてくれよ。五体満足で帰れたら、だけどね」
「不吉なことを言うなよ。それはともかくパチュリーなら今話せるぜ。河童の発明したこの道具を使えばな。この私に勝てたら話をさせてやる、と言ったらどうする?」
「それは俄然やる気が出てきたねぇ。本気で相手をしてやろう。お前さんはこの盃の中の酒を零すか私の弾幕を全て避け切れれば勝ちだ。どうだい?」
「良いぜ、勝つのは私だしな!さ、仕切り直してもう一戦だぜ」
パチュリーside
勇儀と私に接点があることが割れてしまった。まあ特に困るような事でもないから構わないのだけれど。
「貴方、地底にも知り合いがいたの?初耳なんだけど」
「言っていなかったもの。でも私と萃香は仲が良いでしょう?そこからも推測できたのではないの?」
「そんなこと気にしないでしょ、普通。それに萃香は他の皆とも結構仲がよさそうに見えるし」
「確かにそういわれればそうね。まあ勇儀も萃香も彼女たちが地底に行く前からの私の友人なのよ。鬼は怖いイメージがあるけれど話してみるといい人たちばかりよ」
彼らは嘘を嫌うから自分を偽って会話をすることが無い。話していて気分が良いのだ。
「そんな話をしているうちに決着が着きそうかしらね。勝つのはどちらかしらね」
『さあさあ、いよいよこれで最後だ。存分に楽しみな!』”四天王奥義『三歩必殺』”
『くっ、これは!…………痛てっ』
あちゃあ負けたか。残念だが力試しは勇儀の勝ち。異変解決は霊夢に任せることになってしまった。
『はっはっはっ!私の勝ちだね。約束通りパチュリーと話をさせてもらおうか』
『ちぇ、勝てると思っていたんだがなぁ。だが約束は約束だ。話しかければ応じてくれるはずだぜ。あ~あ、今回の異変はここで終わりかぁ。霊夢に追いつくのはまだまだ先だぜ』
『私に三歩必殺まで使わせたんだ。自信持ちなよ。さて、話しかけてみようかね』
「別にそちらから話しかけなくてもこちらからでも話しかけられるわよ」
『お?パチュリーかい?私たちの話は全部聞いていたってことか。しかしまた話ができるとは思ってなかったよ。萃香から私たち鬼の事情は聞いているだろう?
萃香はあんたの忠告が助かったと言っていたし私もそう思う。人間に愛想を尽かせるのは時間の問題だったがまさかあんなに早いとは思っていなかったがね」
「まあなんにせよ元気そうで何よりだわ。それよりもあなたが私の名前を憶えていることに驚いているわね、正直」
一度一緒に酒を飲んだだけの相手を覚えているとは驚きだ。私の方はインチキのようなものだし。
『鬼を馬鹿にするとは流石パチュリーだ。今度地底に来た時には存分に相手してやろう』
「別に馬鹿にしたつもりは無いわ。ただ随分昔に一度しか会っていないはずなのに覚えているなんて驚きだ、というだけよ。それに相手するのはせめて美鈴にして頂戴。私があなたと戦うと死んでしまうわ」
冗談抜きで。普通の鬼ならともかく四天王クラスは相手にしたくない。私の場合は軽い拳一発でKO間違いなしだ。
『なんだそんなことだったのかい。そりゃあ覚えているさ。あの時代、鬼に打ち勝つ人間どころか妖怪すらほとんどいないようなものだったんだ。あんたたちの衝撃は当時の私たちにとって相当だったからね。
さて、長々話していてもこの人間の嬢ちゃんが可哀そうだ。地底は人間には住みやすい場所ではないからね。そろそろ帰した方が良いだろうね』
「えぇ、そうして頂戴。途中で面倒な鬼に絡まれないように縦穴付近まで送ってくれないかしら」
『私もこの人間が気に入ったからね。それくらいはしてやろう。ほら嬢ちゃん、来な』
『ちぇ、負けた上に護衛までされるなんて屈辱だぜ』
まあ仕方ない。昔はそれほどでもなかったが、恐らく今の鬼たちは絡み方が面倒になっているだろう。それに多分勇儀のようにスペルカードルールでは戦ってくれそうもない。絡まれると面倒なうえに危険だ。
その危険も勇儀がいればほぼなくなると言っていい。勇儀の方も快諾してくれたので大助かりだ。
「ほんと、貴方ってどこにでも知り合いがいるのね。魔界に冥界に地底、それに話では天界や月にもいるらしいじゃない」
まだ外の世界にいる妖怪もいるけれど。でも確かにそういわれてみると様々な場所に知り合いがいるものだ。千年以上もかけた旅は無駄ではなかったという事だ。
「あなたよりはるかに長く生きているもの。そのくらいいても不思議ではないでしょう?」
「そういうものかしら。魔法使いってそんなに歩き回らないと思うのだけど…………」
まあ言われてみれば確かにそうなのだが。魔法使いにとっては旅自体あまりすることではない。私の両親がおかしかったのかもしれない。もうこの世にはいない両親であるが感謝はしている。
「まあそれは良いじゃない。とりあえず大穴まで魔理沙を迎えに行ってあげましょうか」
間欠泉が湧いたという事で早速温泉ができているかもしれない。妖怪の建築の速さはこういうところで生かされるべきだろう。
たまには負けることもあります。魔理沙には申し訳ないですが
霊夢視点は書きません。地霊殿は他に書きたい部分があるので
来週また更新できないかもしれません。不定期ではないけど定期でもないというとても微妙な小説になってしまいました
では次回も読んでいただければ幸いです