行動派七曜録   作:小鈴ともえ

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宝探し的第五十六話

   パチュリーside

 

 

 フランドールの事も落ち着いたので私としてはとてもほっとしている。あの日以来フランドールの外出にレミィが制限を掛けなくなったのはフランドールにとっても良かったことだろう。

 

今はもう随分とましになってきているが冬の間はかなり寒かったのでフランドールはよく地底の方にも遊びに行っていたようだ。レミィは逆に白玉楼に足繫く通っていたが寒くはなかったのだろうか。

 

修行で作った和菓子は幽々子のおやつになっているらしい。そもそも多く作らないうえに幽々子がおやつとして食べているのならこちらに回ってこないのも当然の事だと言える。だから私たちはレミィが如何に上達したのかを知る術は今のところない。前回食べたのがもう一年ほど前の事なので劇的に味が変わっていてもおかしくないだろう。

 

フランドールは今日も相変わらず遊びに出ているが、今日は珍しくこいしの方から館に来たので湖の辺りで遊んでいるようだ。レミィは今日は当主としての仕事をしているので館にいる。つまり今この館にいるのはフランドール以外の住人とアリスというわけだ。レミィが冥界に行くのは二、三日に一度なので大体いつも通りなのだけれど。

 

こういうゆっくり本が読める静かな時には大概邪魔が入るものだ…「邪魔するぜ!」……。

 

 

「あのですね、魔理沙さん。いつも言っているでしょう?ここは図書館なんですからもう少し静かに入ってきてくださいよ。パチュリー様に頼んで出禁にしますよ?」

 

 

「お、おう。次から気を付けるぜ。あいつならやりかねんからな」

 

個人を指定してはじく結界など私には張れない。いくら結界術を習ったからと言ってもそこまで高度な結界は流石に専門外だ。つまり魔理沙を出禁にすることは現状できない。まあ静かになるのなら誤解させたままでも良いだろう。

 

 

「それより今日は本を借りに来たんじゃないんだよ。アリスとパチュリーの奴に用事があって来たんだ」

 

 

「あら、珍しいわね。貴方が私たちを頼るなんて。パチュリー、明日は吹雪かもしれないから紅魔館に泊めてくれない?」

 

「確かに外に出るのは危ないかもしれないものね。でもレミィが許可するかどうか…」

 

 

「お前ら人の話を真面目に聞こうとしろよ。ちなみに明日は晴れだ。天子がそう言っていた気がするぜ。で、本題に入っていいか?」

 

天子が地上に降りてきていたのか。紫がまだ冬眠しているから気づかれずに済んだのか、それとも単に見逃されただけなのか。

 

「えぇ、勿論よ。ねえ、アリス」「そうね。早く言って頂戴」

 

 

「もとはと言えばお前らが……はぁ、もういいぜ。何言っても仕方ないだろうしな。今日来た理由はこれだ」

 

 

「何これ?UFO?どこか奇妙な術がかけてありそうだけど」「どこで拾ったのかしら?」

 

飛倉の欠片みたいだ。UFOに見えないのは恐らく私は正体を知っているから。ここは話を合わせて知らないふりをしておいた方が無難だろう。

 

 

「家の近くに落ちていたんだよ。お前らなら何かわかるかと思って持って来たってわけさ」

 

「なるほど。これを調べる前に一度外に出てみましょうか。フィールドワークも時には大切よ」

 

きっと今まで気づかなかったものが見えているはずだから。

 

 

「うーん、まあ確かにこれを詳しく調べるよりはあちこち調べまわった方が手掛かりはつかめるかもしれんな。同じような物をいくつか見かけたし。そうと決まれば外に出るか」

 

もう既にいくつか見つけていたのか。そうならそうと早く言ってくれれば良かったのに。

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

「うーん、さっきまでと特に変わったことはなさそうだな。手あたり次第に当たってみるか?」

 

「いえ、大きな変化があるわ。空を見てみなさい」

 

 

「おっ?空を飛ぶ船……あれはまさか宝船か?!こうしちゃいられん。さっさと追いかけるぜ!」

 

 

「あっ、ちょっと待ちなさいよ!一人で行くと危ないわよ」

 

「仕方ないわね。あなたは魔理沙と一緒に行ってあげて頂戴。私は霊夢に伝えてくるわ」

 

 

「分かったわ。よろしくね、パチュリー」「アリスこそ頼んだわよ」

 

最悪の状況になってもアリスの交渉術があれば何とか大丈夫だろう。霊夢の方はもう既に聖輦船の存在に気付いているかもしれない。ちなみに船に宝なんて無い。

 

 

 

   アリスside

 

 

「やっと追いついたわ、まったく。急に行くなんてやめてほしいわ」

 

 

「なんだ、やっとこさ追いついてきたのか。もう変なネズミと唐傘お化けは退治してきたぜ。それに別に来てくれなんて頼んだつもりもない」

 

 

「貴方一人だと危険な目に遭うかもしれないでしょう?貴方からすれば余計なお世話なのかもしれないけど」

 

 

「……別についてくるのは構わんがどうせアリスの出番なんて無いぜ」

 

 

「それならそれでいいのよ。何事もなく終わるのが一番なんだから」

 

私としても仕事は無いに越したことは無い。魔理沙は何か勘違いしているようだが手柄が欲しくて来ているわけではないのだ。宝にも特に興味はない。魔法の実験に使えそうな物なら別だが船にそんな物は置いていないだろう。というかそもそも宝があるのかすら怪しい。

 

それにしてもまさか紅魔館に本を読みに行った結果空飛ぶ船を追いかけることになるなんて思いもしていなかった。

 

 

「それにしてもおかしな形の雲だな。まるで妖怪の仕業のようだぜ」

 

 

「違うわよ、魔理沙。雲の形をおかしくしているのが妖怪なのでは無くて、このおかしな形の雲が妖怪なのよ」

 

 

「ご名答、その通りよ。貴方たちが何者なのかは知らないけれどこの船に近づくと言うのなら追い払わせてもらうわよ。雲山」

 

雲山、と目の前の少女が言った途端に雲の妖怪が少女を守るように動いた。となるとあの妖怪は少女の護衛のようなものか。そしてこの雲の妖怪は前にパチュリーに見せてもらった本にも載っていた。

 

 

「まさか見越し入道?誰かの護衛を引き受けるような妖怪ではなかったような気がするのだけど」

 

 

「へぇ、貴方なかなか面白いわね。この雲山は私が退治したの。もう入道は廃業しているわ」

 

妖怪にも廃業という概念があること自体が驚きだ。つまりこの入道はもう人間を襲う事はしなくなったという事なのだろう。

 

 

「……え?雲山何て言った?……ふんふん、なるほど……まさかこの黒いのが?……そうなのね」

 

 

「なんだ?急に独り言か?そういうのはよそでやってもらいたいんだが」

 

 

「あー、貴方たちへの対応を改めることにしたわ。もし私たちに勝てたら船に乗せてあげましょう。しかし私たちが勝てば貴方たちの持っているその飛宝を大人しく渡してもらうわよ」

 

 

「なーんか怪しいが要は勝てばいいんだな。それなら私一人で十分だからアリスはそこで黙って見てな」

 

あちゃあ、魔理沙が簡単に乗せられてしまった。相手にとっては勝っても負けても目的が達成できてしまう条件だ。勝てば問題ないが仮に負ければ追い返されるという、こちらにのみ不利な条件だ。魔理沙なら恐らく勝てるから大丈夫だとは思うが万が一もあり得る。

 

 

「いやー、楽勝楽勝。そんなんで私に挑もうなんざ百年早いぜ。腕を磨いて出直して来な」

 

 

「素晴らしい。貴方ほどの実力があれば姐さんを復活させることもできそうね。私は雲居一輪。貴方たちは?」

 

 

「私は普通の魔法使いの霧雨魔理沙だ」「アリス・マーガトロイドよ」

 

 

「二人ともよろしく。これから短い船旅になると思うけどまあゆっくりしていなさいな」

 

 

「ここは宝船じゃないのか?宝物は何処にあるんだ?」

 

 

「賊みたいなことを言うのね。宝なんて無いわよ、少なくともこの船には。この船は姐さんの弟君が残した法力で飛んでいるだけ」

 

 

「なんだ、期待して損したぜ。で、この船は何処に向かっているんだ?」

 

 

「この船の目的地は法界です」「法界ぃ?なんだそれ。というか誰だお前」

 

 

「申し遅れました。私は村紗、この聖輦船の船長です。一輪が乗船を許可したという事はそれなりの力を持っているようですね。

 

そして法界は無限の広さを持つ魔界のほんの一角です。貴方の持つその飛宝があればそこの封印を解くことができるのです」

 

魔界、そして封印された者のいる法界。直接会ったことは無いが魔界にいた時に魔界神から話だけなら聞いたことがある。大昔の僧侶にして大魔法使い、聖白蓮だろう。

 

 

「魔界……。魔法使いとしては是非行ってみたかった処だ。お前もそうだろ?アリス」

 

 

「え?えぇそうね。魔法使いたるもの魔界には興味があるもの」

 

そういえば紫と紅魔館の住人以外には私が魔界出身だという事を言っていなかった。だから魔理沙のこの質問もある意味では当然の事だ。不意の質問だったから危うかったけど。

 

 

「だよな。そういう事だから早速連れて行ってもらおうか」

 

 

「とは言ってももう直に着きますよ。ちなみにこの船は片道運航です。法界から帰ってこられるかは聖の気分次第ですよ」

 

 

「ちょ、今更それを言うか?!もう引き返せないじゃないか。まあなるようになるか。最悪その聖とかいう奴を倒して無理矢理帰らせればいいだけだしな」

 

それは恐らく厳しいだろう。魔法使いとしてはかなり高位の者だと聞いている。パチュリーに教えてもらった私でも勝てるかどうかわからない。

 

人間の魔法使いとしては魔理沙も強い力を持っているがそれはあくまで人間としてだ。彼女の実力は高位の魔法使いにはまだ遠く及ばないだろう。数十年後にはどうなっているかわからないけど。パチュリーも人間の成長速度は馬鹿にならないと言っていたし。

 

実際に私も最初の方の伸びはパチュリーから見ても凄かったらしい。数年前から徐々に伸び悩んできたと思っていたがそれは私が魔法使いとしての身体に馴染みかけているかららしい。確かにあの頃の感覚はもう思い出せそうもない。

 

 

「そう言えばなんか魔法が使いやすくなってきたような…「ここはもう魔界だからね」…ってお前は!あの時のネズミじゃないか。やっぱりお前もこの船に関係があったんだな」

 

 

「いや~、まさか君のような人間が飛宝を持っているなんて思わなかったよ。あの時の私のダウジングの結果も間違ってはいなかったというわけか。妖怪に恐れをなす訳でもないようだしなかなか興味深い人間だ」

 

 

「こら、ナズーリン。あまり長々と話している暇はないのですよ。…コホン、貴方たちを待っていましたよ。貴方たちの持つ飛宝とこの宝塔を使えばここの封印は解かれるのです。さあ、早速こちらへ渡してください」

 

確かにこのUFOのおもちゃには強い力が宿っているようだが見た目があまりにも変だ。何か認識阻害に近い術がかけられているのだろうか。

 

 

「封印を解くのは協力するつもりだが、ただ渡すのも癪だしわざわざここまで来たんだから土産の一つでも欲しいところだ。どうだ、私がお前に勝ったらこの飛宝とやらを一つくれないか?」

 

 

「うむ…………一つだけならいいでしょう。ただし私が勝てば全て渡して頂きますよ。「おう」それでは始めましょう。幻想郷で普及している戦い方は心得ていますので安心してください。では行きますよ」  「いつでも来な!」

  宝塔『レイディアントトレジャーガン』

 

―――――――――――――――――――――――――

 

魔法使いとしてあの不思議なおもちゃを調べてみたいというのは確かにある。しかし戦ってまで欲しい物か、と聞かれるとそうでもないような気がする。今回に限っては自分の直感を信じてもいいだろう。

 

 

「流石は飛倉の破片を集めてきただけあります。約束通り一つは差し上げましょう。……一つだけですよ」

 

 

「わかってるって。それでこの封印を解いたらどうなるんだ?」

 

 

「さあ、それはわかりません。この後の事は全て聖次第でしょう」「少々早まったかなぁ」

 

折角出てきたのに魔界に取り残されるなんてまっぴらごめんだ。絶対に出してくれるようにしないといけない。封印されるような魔法使いの性格がどうなのかはわからないが。

 

 

「では早速始めましょう。ついに聖への恩を返す時が来たのです!」

 

              ・

              ・

              ・

 

「なんだ?何もないじゃないか。声も響かないし気持ち悪いぜまったく。魔法の力はどこからともなく湧いてくるが……」

 

 

「ああ、法の世界に光が満ちる。貴方たちがこの世界を開放してくれたの?」「お前は一体何者だ?」

 

 

「私の名は白蓮。遠い昔の僧侶であり魔法使いでもあります」

 

聞いていた通りか。まあ当然と言えば当然だろう。

 

 

「なんと同業者か。道理でこんな変な場所に封印されていたわけだ。一体どんな悪いことをしたって言うんだ?」

 

 

「という事は貴女も魔法を使うのですね。今はそんなにも大っぴらに魔法を使って良い時代になったのですね。そしてここに封印された理由ですか……一番の理由は虐げられていた妖怪たちを匿っていることを知られてしまったことでしょう」

 

 

「なんだ、つまりお前は妖怪の味方だと言うんだな。それなら私がお前を退治するに足る理由になるな」

 

 

「私は妖怪の味方ですが人間の味方でもあるのです。そもそも私が目指す物は人間と妖怪が平等に暮らせる社会。素敵だと思いませんか?」

 

 

「人間と妖怪が平等だと?妖怪は人間より強いんだから人間の方こそもっと優遇されるべきだ。その時点ですでに平等なんかじゃない。お前のその理想論の内容はあくまで理想に過ぎないんだよ」

 

 

「つまり虐げられた妖怪を匿う私の行動は全面的に間違っていると言いたいのですね?」

 

 

「その通りだ。妖怪なんてのは退治するに限る。昔から人間はそうして自分たちを守っていたんだからな」

 

 

「期待も無駄になったという事ですね。私が寺にいた頃と人間は変わっていないな。誠に勝手で、全豹一斑であるッ!いざ、南無三――!」

 

確かに人間は古くから自衛のために妖怪を退治してきた。しかしそれは集団としての人間が妖怪より強いことの証明に他ならない。いくら力の強い妖怪が相手でも人間は知恵を絞って戦ってきた。妖怪が人間を相手にすることはまさに諸刃の剣なのである。

 

それを踏まえず妖怪の優位性のみを語る魔理沙は、確かに聖にとっては勝手で非常に見識の狭い人間として映ったのだろう。

 

紅魔館などを見ると人間と妖怪の平等が見えるはずだ。魔理沙はあまり長居しないからわかっていないだけだろうが、紅魔館での咲夜の立ち位置は美鈴などの他の妖怪たちと比べても低くない。レミリアとフランが他より少し高いくらいであとの住人の立場は横一線だ。

 

身近な所に聖の言う人妖平等の場があるというのに聖の姿勢を非難する魔理沙には恐らく異変解決者としての意地とプライドもあるのだろう。




聖vs魔理沙は長くなるのでカット。次に書きたい話もありますし

この小説内での紅魔館の実際の立場は
レミリア>フランドール>>美鈴=咲夜>>>>>パチュリー=小悪魔
という感じになります。アリスはパチュリーや小悪魔も美鈴たちと同列だと思っていますが、ただの居候とその使い魔ですので本来の立場はかなり低い(というか無い)です


では次回も読んでいただければ幸いです
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