行動派七曜録   作:小鈴ともえ

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ほのぼのしているのを書くのは楽だし楽しいので良い息抜きになります


夏祭りと言えばかき氷と花火

   レミリアside

 

 

 今日は博麗神社で夏祭りが開催される日だ。祭り自体は昼からやっているし、妖怪や人間たちは昼から行っている者が多いが私たちは夜からの参加である。理由は勿論私とフランにある。無理をすれば昼から行けないことも無いのだが、そこまでする必要はないとの意見で一致している。

 

博麗神社の境内では妖怪が人間を襲う事は禁止されているので人間も安心して祭りに参加できる。規則を破って人間を襲った妖怪はすぐさま霊夢に消されるだろうから襲おうとする妖怪も滅多にいない。

 

ごくまれに考える脳の無い馬鹿な妖怪が暴れだすことはあるらしいがそういう時には里から警備に来ている慧音や、慧音と仲のいいパチェ、妹紅などによってすぐ対処されるらしい。今日もパチェだけは先に神社に行って警備をしている。私たちが行く頃には他の者に交代できるらしい。

 

今年は神社が倒壊したせいで祭りは流れるかと思っていたが無事に開催できたようで良かった。異変を知らなかった人里の人間たちからすれば開催して当たり前の事なんだろうけど。

 

 

「お姉様、もうすぐ出発するの?」

 

フランも外に出ることを嫌がらなくなってくれて本当に嬉しい。今日はきっとフランの友人たちも来ているだろう。

 

 

「まだ早いんじゃないかしら。でもそうね、咲夜が買い物から帰ってきたら行きましょうか」

 

咲夜が買い物に行くことは滅多にないが、買い物に行くときは能力を使わないように言っている。幻想郷は綺麗な土地だ。景色を見ずに買い物だけさっさと済ませるなんて勿体ない。それにあまり能力に頼りきりになるのも良くない。完全で瀟洒な従者を目指すのであれば心には常にゆとりを持ち、能力に頼らずとも手早く仕事をこなすようにならなければならない。

 

彼女は確かに優秀だがまだまだ完璧には届かない。彼女の人生はまだまだ長い。もしかすれば私やパチェよりも。その長い人生を活かして色々なことが完璧にできるような従者になってもらいたい。

 

今はまだ料理の手際は並より早いくらい。戦闘面でもスペルカードルールならば霊夢と渡り合えるくらい。頭はそこそこ切れるくらいだ。それでも悪くはないのだが、いつか料理の腕で私を追い抜き、戦闘で美鈴を退け、頭脳でパチェの上を行く。そんな子になってくれたら私としては大満足である。完璧を求めすぎるのは主人として良くない事だが、彼女ならできそうだから大丈夫だろう。

 

 

「お嬢様、ただ今帰りました」

 

そんな従者もたった今帰って来たらしい。フランにも伝えてこれから夏祭りに繰り出そうか。

 

 

「ご苦労様。さて、出かける準備をしてフランと小悪魔を呼びに行ってくれないかしら?私は門の前で待っているから」「仰せのままに」

 

パチェはもう警備担当が終わっているだろうか。それともまだ早かっただろうか。

 

 

   パチュリーside

 

 

 本日の警備ももう終了する時刻だ。今日は神社内で暴れる妖怪はいなかった。と言っても夏祭りに限らず神社での行事で暴れる妖怪は滅多にいない。だから警備と言っても大体はただ歩きまわっているだけだ。ついでに日ごろの感謝の意も込めて賽銭を入れておいた。

 

 

夏祭り以外でも行事をする際の警備には毎回駆り出されているがどうして私なのだろうか。確かに里の人間を守るならばよく里に行っている者を雇うのはわからないでもない。だが私である必要があるのかどうかわからない。

 

私だけでなくアリスや魔理沙だって里には頻繁に通っているはずだ。鈴仙は正体を隠して里に行っているから仕方ないとしても私が良くて魔理沙がダメな理由は何なのだろうか。魔理沙も早くから神社に来ているわけだし役目は十分に果たしてくれそうなものなのだが。慧音は何故毎回私を採用しているのだろうか。

 

 

「あぁ、それは慧音が樺菜を一番信用しているからだと思うよ。私から見ても樺菜は一番頼りになると思うわ」

 

「そうかしら。あなたたちは知らないかもしれないけれど、私より強い妖怪なんて今までたくさん見てきたわよ。そんな妖怪の方が頼りになるのではないの?人間の味方をする私より強い妖怪と言えば美鈴もいるわけだし」

 

美鈴の方がよほど頼りになると思う。身体も丈夫で戦闘も強く、何より優しい。私とは違って門番をしているから昼間からは来れないが。

 

 

「わかってないのね、樺菜は。昔慧音が寺子屋を作るときにも樺菜は手伝ったんでしょ?それに時々里に様子を見に来てくれるのは樺菜くらいなのよ。だから私も慧音も一番貴方を信用しているの。わかった?」 「えぇ、分かったわ」

 

でも真正面からそんなことを言われると少し恥ずかしい。私らしくもないが少し照れてしまう。

 

 

「あれ?もしかして樺菜照れてるの?クールだと思っていたけどかわいい一面もあるものなのね」

 

「さ、さぁ早く警備を交代してもらうわよ。少し早いけれど恐らくもう少ししたらレミィたちが来るでしょうから」

 

まだ日は沈み切っていないが今日は少し早めに来そうな予感がする。何故そう思うのかは全然わからないが。

 

 

「まだかなり明るいけどあの吸血鬼は大丈夫なの?それとも樺菜の勘?」

 

「私の勘よ。根拠はないけどそんな気がするわ」「あっ、いたわよ、お姉様。パチュリー!」

 

 

「おぉ、まさか本当に樺菜の勘が当たるなんてね。やっぱり長いこと一緒に過ごしていればわかるものなのかな」

 

そんなものなのかもしれない。それとも長く生きてきたせいかもしれない。とりあえずここから先の警備は妹紅に任せて私はあの子たちと一緒に祭りを回ろう。今日は年に一回の夏祭り。多少のわがままは聞いてやれる日だ。

 

「それではあとは頼んだわね、妹紅。私は今から祭りを楽しんで来るわ」

 

 

「まあ任せてよ。と言ってもほとんどすることは無いから結局祭りを楽しんじゃうかもしれないけどね」

 

規則を破る妖怪が出れば仕事ができるだけだ。だから私は無賃金で働いている。何もせずにただ歩き回っているだけでお金を貰おうなどとは思わないし、そこまで困っているわけでもない。

 

 

「今終わったみたいね、パチェ。さあ行きましょうか。と言ってもこんな大人数が同時に行動していると人間を怖がらせてしまうかもしれないわね。ここは一つ二人ずつのグループに分けましょうか。私、フラン、パチェで三通りの組を作るから咲夜たち三人でも組み分けして頂戴。そうね、わかりやすく1、2、3で分けましょうか」

 

普段ならレミィと咲夜、私とこあ、フランと美鈴というセットになるところをあえてシャッフルするらしい。まあ咲夜、美鈴、こあのうち誰と一緒になっても祭りは楽しめるだろう。

 

 

はい、じゃあ決めるわよ。パチェとフランはどれが良いの?」「私は余りものでいいわ。あなたたち二人で決めなさい

じゃあ私が1にする」「なら私は3にするからパチェは2になるわね

 

「こっちは決まったわよ。そっちはどうかしら?」「こちらも決まりました」

 

あちらはどうやら1がこあ。2が咲夜で3が美鈴になったらしい。思いのほか綺麗にシャッフルされているみたいだ。私のペアは咲夜。二人で何かするのはここに来る前の勉強以来だろうか。

 

 

   咲夜side

 

 

 お嬢様の提案で二人ずつ三つのグループに分かれて祭りを回ることになった。確かにこの人数が一斉に歩くと威圧感が凄いだろうから私も大賛成である。いつも通り私はお嬢様について行くのかと思っていたがどうやらシャッフルにするらしい。

 

その結果として私はパチュリー様と回ることになった。今の私がいるのもこの方のおかげであり、とてもではないが頭が上がらない。

 

「では私たちも行きましょうか、咲夜。先ずは何を見たいかしら?」

 

私はお嬢様の従者でパチュリー様はお嬢様の親友という立場の違いがあるのにどうしてこの方は私に優しく接してくれるのだろうか。彼女は自身の立場を居候としているから私の方が館内での立場は高いらしい。でもいつまでたっても私の中での彼女の立場は私より上なのだ。

 

「あなたがやりたい事、食べたい物何でも遠慮なく言ってみなさい。たまには自分のしたいことをするのも重要よ」

 

いつもはお嬢様について行くので私がしたい事など考えたことが無かった。

 

 

「そうですね……では焼きそばを食べてみたいです」「そこにあるわね」

 

恐らくお嬢様の作った物の方が何倍も美味しいのだろうが前の絶品焼きそばを食べ損ねてから何となく食べたかったのだ。ただ私からお嬢様に食べたいものを言うなどおこがましいにもほどがあるので食べられなかったのだ。

 

「どうかしら?美味しい?」

 

 

「お嬢様の料理の方がやはり美味しいですね。でもたまにはこういう味も悪くないかもしれません」

 

「レミィの料理と比べるのは流石に可哀そうね。それに味だけならあなたでもこれ以上の物を出せるでしょう?でも今はこの味を楽しみなさいな。これが祭りの屋台の味というものよ。まあ屋台でもあの八目鰻みたいにかなり美味しいものはあるけれど」

 

八目鰻、か。確か祭りに来るとお嬢様は必ず食べていたはずだ。パチュリー様も絶賛しているしそんなに美味しいものなのだろうか。

 

 

「八目鰻とはそんなに美味しい物なのですか?お嬢様は毎回必ず寄っているようですが」

 

「八目鰻が、ではなく彼女の料理の腕が良いのよ。それにあの夜雀の子はレミィの料理の友人でもあるし。食べてみたいかしら?」

 

いくら友人だからと言っても味が悪ければお嬢様も行かないだろう。つまり味は保障されている事になる。

 

 

「そうですね、行ってみたいです。彼女が料理を始めたきっかけなども聞けるかもしれませんし」

 

「あ、それは無理よ。レミィでも聞き出せないらしいし彼女の店は人気だからゆっくりもできないわ。残念だけれど」

 

それは残念だ。少し興味があったのに。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「美味しいでしょう?ミスティアの料理はどれも一級品。レミィの料理友達になれるのも納得ね」

 

本当に美味しい。私よりも料理の腕は上かもしれない。私もまだまだだと実感させられる。

 

「ふふ、良い食べっぷりね。あ、ちょっと待ってくれるかしら。寄りたい店があったわ」

 

そう言ってパチュリー様が寄った店はかき氷屋。商売をしているのは湖の妖精で妹様の友人であるチルノ。売っている味はたった一つ『みずあじ』のみだ。

 

 

「おぉ!お前が最初の客だぞ。それにしてもどうして皆買ってくれないのかな~」

 

「それは光栄ね。そんなあなたにいい物をあげるわ。はい、これをかければもっと売れると思うわよ。頑張りなさいよ」

 

 

「お前は良い奴だな!えーと確かパチュリーだっけ?フランがよく話してるぞ」

 

「あらあら、それは嬉しいわね。これからも仲良くしてあげて頂戴ね」「当たり前だろ!」

 

元気なのは良いことだが少し頭は足りていないようだ。売れていなかったのは十中八九『みずあじ』しか売っていないせいである。パチュリー様はあえてそれを購入し、さらにシロップをあげたようだ。勿論紅魔館産である。これを店頭に置いておくことで紅魔館ブランドの宣伝にもなる。パチュリー様もなかなか考えているようだ。

 

「咲夜、行くわよ。もうそろそろ花火が上がる時刻だわ。レミィたちとも合流しましょう」

 

 

「どこにいらっしゃるかわかるのですか?」

 

この人ごみの中だ。適当に歩いていても見つかりはしないだろう。

 

「一応探知魔法があるわ。まあこの人数程度なら絞り込めるでしょう。一回に付き一組になってしまうけれど」

 

相変わらず魔法に関しては右に出る者はいないのではないかと思うほどだ。この人ごみでも正確に探知できるらしい。これはこの方の情報処理能力も合わさっての芸当なのかもしれない。

 

 

 

   レミリアside

 

 

 もうすぐ花火が上がるらしいという事でパチェが迎えに来た。探知魔法でここまで来たらしい。フランと小悪魔も今から探すつもりだったらしいが美鈴の方が気によって速く探知ができるので今は美鈴について行っているところだ。いくら知っている気を探すだけだと言ってもこの人数である。ごちゃごちゃになったりはしないのだろうか。

 

               ・

               ・

               ・

 

「あ、お姉様!どうしたの?皆揃って」

 

 

「今から花火があるらしいわ。一緒に見ましょう」

 

神社の屋根の上で見れば人も少ないし良いだろう。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

『今から花火を打ち上げて行きますが今回はある方の協力を得て特別な仕掛けが施してあります。是非最後までお楽しみください』

 

いよいよか。一発目は紅い花火のようだ。そこから一気に同じような色が数発打ち上げられる。初めの一発は開いて紅い館に変わり、後の数発で霧のように館周りに拡がる。つまり私たちの起こした紅霧異変の再現である。

 

その後は白い花火から一気に桜色が拡がる春雪異変、時計が子の刻で停止する(人間たちには月の異常が感じ取れなかったからだと思われる)永夜異変、花が一斉に咲き乱れる六十年周期の花の異変、山に神社が突然現れる山の異変と続いた。

 

流石に一部の妖怪たちしか知らない宴会続きの異変や神社が倒壊した異変は取り扱っていないようだ。しかしどれもなかなかクオリティが高い。特に時計が止まる演出などを花火で再現するのは流石に人間にはできないだろう。

 

 

「ねぇ、パチェ。あの花火の制作を手伝ったのは貴方なんでしょう?」

 

「……さぁね。何のことかわからないわ」

 

パチェは人間が作ったものだとしてこの花火を見てもらいたいらしい。それならば私もこれ以上追及する気はない。素晴らしい花火を演出してくれたのが誰なのか、知らなかったことにしておこう。

 

この親友は本当に手柄を立てたがらない。妖怪として異端であることは間違いないが私としてはそこが彼女の魅力だと思っているし、そんな彼女が私は好きなのだ。




今回はパチュ咲回。パチュ咲と言えばこの小説を書くにあたって結構な影響を受けた逆行物が有名ですかね。ここのパチュ咲は百合なんて無いですが

パチュリーがかき氷を買ったのはただのチルノの応援です。咲夜が考えていたような事は一切ありません

今回は五十二・五話くらいの時間です。今回は前回の続き物のようでしたが次回は少し時間が戻ると思います


では次回もいつになるか保障できませんが読んでいただければ幸いです
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