二十五話~二十六話前辺りの話になります
レミリアside
実戦は大した成果もなく終わってしまったが美鈴との特訓は着実に成果が出ている。どうやら私の作ったグングニルと美鈴の知っている三国時代の槍は形状から何から全く同じではないらしい。
だがそこで『では他の武器にしましょうか』と言わないのが美鈴の良いところだ。彼女はわざわざパチェの図書館に行って睡眠時間を削ってまで私の槍や、フランの剣についての扱い方を調べてくれたらしい。
図書館に行っても今はパチェも小悪魔もいないから目的の本を探すだけでも相当しんどいはずだ。そこまでしてくれる美鈴には何かお礼をした方が良いのではないだろうか。今美鈴がしている館の仕事は料理、洗濯、掃除をはじめ家事全てだ。美鈴も疲れているらしい。美鈴の仕事量を少しでも減らすためにまずは妖精メイドを雇ってみようかな。メイドは多くいても困らないだろうから。
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これは完全に失敗した。妖精故に忘れっぽく悪戯が好きなせいで美鈴の仕事に妖精メイドが遊んだあとの片づけ、という仕事が増えてしまった。これにはフランも呆れ顔である。この状況をどう打破すべきだろうか。
「お姉様、これは流石に美鈴が可哀そうじゃない?お姉様も何かしてあげたら?」
私にできそうな事、か。館が広いから掃除は無理。日光に当たれないから洗濯も無理。となるとやはり料理か。パチェや美鈴の作っているのを見てもそこまで大変そうでもなかったし私でもできそうだ。
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「今日からは私がご飯を作ってあげるわ。それで良いかしら?美鈴も」
突然の宣告に驚いているようだがまあ良いだろう。私が美鈴のためを思って料理をすることにした、なんて口が裂けても言えない。
「お気遣いは有難いですが料理は難しいですよ?失敗すれば食べられたものではなくなりますし」
「安心なさい美鈴。本を見ながらやれば失敗なんてするはずが無いわ。それに私はパチェがいない間も和食を食べたいだけよ」
昔パチェに見せられたが図書館には料理本も何冊か入っていたはずだ。それを見ながらやれば間違いないだろう。
「私はちょっと怖いんだけど……。まあ頑張ってね、お姉様」
二人から許可も得られたし早速料理本を探してみようかな。
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膨大な量の本の中から目当ての本を探すのは難しいかと思っていたが、隅の方に固めて置いてある棚があったおかげで早くに見つけられた。今夜作るのは……パンにしようかな。ここに書いてある材料はあったはずだし。
それにしても本はいくつかあるが読めない本が多い。パチェが書いたと思われる和食の本もあるが、当然私には読めない文字で書かれている。寝る間も惜しんで勉強、と言うのをしてみてもいいかもしれない。幸い私たち妖怪は少ない睡眠時間でも大丈夫だ。
とりあえず今日はパンを作る。美鈴の朝食としても悪くないだろう。昼は作れないとして、夕方は早起きしなければならない。明日はフランが鍛錬をする番のはずなので勉強に時間を使える。とりあえず今後の生活は夕方早くに起きて夕食作り、二日に一回は美鈴と鍛錬。無い日は図書館で言語の勉強。そして夜食は私とフランの二人分。それが終わったらまた勉強して寝るのはすっかり日が昇ってからになりそうだ。
私の身体が音を上げない程度までなら酷使しても構わないだろう。そうでもしなければ料理を作れない。先ず勉強するのは勿論日本語。パチェの書いた(であろう)本の料理が作れれば二、三日に一回同じでも最悪大丈夫だ。
パンの作り方もきちんと見ておかなければならない。昔パチェも作っていたしきっと大丈夫大丈夫。
『こねる』って何?訳が分からないが適当に作れば何とかなるのではないだろうか。そもそもパチェたちが料理本を見て料理しているのは見たことが無いし。己の勘に従って作ればそれなりの物ができるはず。
美鈴side
何とお嬢様が料理をしてくれることになったらしい。どうやらパチュリーがいなくても和食を食べたかったらしい。確かに私は和食を作れないのでパチュリーがいなければ基本的には食べられないのだが、それなら私が和食を作れるようになればいいだけの事ではないだろうか。
それにお嬢様は私やパチュリーが料理をしてるのを見ていることはあっても実際に作ったことは無かったはずだ。妹様と同じく私も少し怖い。でも主人を信用するのも従者の務め。きっとお嬢様なら大丈夫だろう。そうに違いない。
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お嬢様の初めての料理は何なんだろうか。皿に蓋がしてあるので中は見えないが香りは……何とも言えない。少なくとも私が食べたことがある料理ではないと思う。いざ蓋を開けて…………
「お姉様、これは何?真っ黒なんだけど食べれるの?」
「ふっふん、これはパンよ。きちんと本を見て作ったから間違いはないはずだわ」
恐らく間違いだらけである。そもそも見た目から焼く時間を間違えたのは確実だ。
「あの、お嬢様。少しお聞きしても?このパンはどの本に書いてあったものでしょうか」
もしかしたら私が知らないだけでこのような料理は正式に存在するのかもしれない。このままお嬢様の失敗だと決めつけるのはまだ早い。
「それはこの本よ。でもおかしいのよね。きちんと手順通りに作ったはずなのに焦げてるし……………………味も最悪ね。どうしたらいいのかしら」
「まずは料理で使う言葉を覚えましょう。こねる、とか寝かせる、などは普段生きているだけではあまり使わない表現でしょうし」
まずは基本から始めなければ到底上達はしない。それは武術に関しても同じことが言える。今日からは槍術と料理のどちらも指導していけば良いだろう。パチュリーがいつ帰ってくるかわからない状況の中で人では多いに越したことは無い。それがたとえ我が主人であろうとも。
「今日からは私が料理もお教えしましょう。そうと決まればまずは朝食ですね」
まずは一日の活力から。妹様は朝食後すぐにお休みになるだろうがお嬢様はそうもいかない。幼いお嬢様には少々辛いかもしれないが頑張ってもらうしかないだろう。
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「良いですか?お嬢様。先ずよく本に書いてある寝かせる、と言うのは簡単に言うと適温で放置することです。こうすることで何故か生地が美味しくなったりするのです。…………」
いつもならもう寝ている時間だろうにお嬢様は全く眠そうな態度を見せない。むしろやる気に満ち溢れているようだ。これは私の方も気合を入れて指導しなければお嬢様に釣り合わない。だがあまり長く続けすぎると夜の鍛錬に支障が出てしまうかもしれないからそこだけは注意しなければならない。
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早いものでパチュリーが紅魔館からいなくなって四年が経過した。生き物は長く生きるほど時間の感覚がおかしくなるというが私にとっても四年と言うのはそこまで長く感じない。お嬢様たちが生まれてもう百年以上経っているというのも驚きである。
そんな私にとっては一瞬の事であった四年でもお嬢様たちにとってはそうではなかったらしい。吸収の速い二人は教えたことを本当にすぐに応用できる。そのおかげか私も前より楽しく鍛錬ができている。力を試しに来るお嬢様たちを見ていると癒されるものだ。
特にお嬢様は戦闘の鍛錬に加えてたまに来る襲撃者たちでの実戦、料理の勉強まで毎日している。とことんまで自分の限界を追求しようとするその姿勢は妖怪として心から尊敬できる。そのおかげか初めはあんなにひどかった味も最近はとても美味しくなっている。たまに私が教えてもいない事を実践してくるのには驚くが、お嬢様も料理の楽しさに気づいたという事なのかもしれない。
最近は和食だけでなくフレンチやイタリアンなど種類も豊富になってきている。本は外国語で書かれているはずだが書いてあることを予想して料理をしているのだろうか。素晴らしい事である。
レミリアside
料理を始めてから五年。完璧とは言い難いが本に書いてある料理はどれもフランが満足できるくらいの腕前になった。言語も同時に学んでいたおかげでどの本も読むのに多少苦労する程度だった。毎日かなり忙しいが今の生活は気に入っている。料理の腕はもっと磨きたいのでパチェは帰って来たがこれからも私が作り続けることに変わりはない。
趣味として続ける料理でいつかパチェや美鈴の料理を超えるのが目標だ。そのためには毎日欠かさず作るのが最適だし、感想を貰うのも重要だ。だから改善点を的確に述べてくれるフランの存在は重要である。美鈴のアメとフランのムチで私の料理は進化し続けるはずだ。
「そういえばレミィは自分の能力の名前は考えたの?」
考えてはいるけどなんか締まりがないように感じる。運命を見る能力、運命を操る能力…その他にもいくつか候補はあるが何処か語呂も悪い。
「パチェの能力の名前は何だっけ。何か参考になるかもしれないわ」
「私?私は魔法を使う程度の能力か火+水+木+金+土+日+月を操る程度の能力のどちらかね」
なるほど…程度の能力か。
「それだわ!私の能力は運命を操る程度の能力にしましょう」
響きも悪くないし何よりかっこいい。運命を操る吸血鬼、レミリア・スカーレット…なんていう自己紹介をすれば相手が怯むこと間違いなしね。我ながら完璧だ。
「気に入った名前ができて良かったわね。先ずはその能力の制御をしっかりできるようにならなければならないのだけれど」
まあそれは今からゆっくり時間をかけてやっていけば良いだろう。幸い私たち妖怪は相当な時間を持っている。急ぐ必要は今のところない。料理も鍛錬も言語学習も能力制御も時間をかけてやれば必ず上達するはずだ。
「でも日日是好日。毎日を楽しく生きていればそのうち結果はついてくるのでしょうね」
つまり今の生活をずっと続ければ良いだけだ。これ程簡単で難しいことも無いだろう。
レミリアのほど良い中二病感が好き。私には上手く書けないので悔しいですが
では次回もいつになるかわからないですが読んでいただければ幸いです