輝夜side
不思議な娘だった
今までいくらかの地上の民と話してきたけれど、あの娘は何か違った。
初めから私のことを疑ってかかってくる者などいなかった。皆目的は私の容姿のみで、私の事など知ろうともしない者ばかりだったのに。
確かに3か月で人間は成長し得ないし、地上から月に行った時に存在した神も最高神ばかりではあるが現存する。『聞いたことがある』程度なのなら恐らくは、伝えられているうちの末端の方に彼女はいるのでしょう。
ああ面白い。億を超えるほど永く生きてきたけど、やはり地上は素晴らしいところだと思う。
確かに穢れは多い。その結晶である妖怪も。でもそんなものが気にならないほどに月とは違った非日常が日常茶飯事になっている。なんだか矛盾しているようだけど。
月の連中の考えることなんてまるわかりだ。私だけを地上送りにして薬を作った本人である永琳は月の頭脳だからとか言ってお咎めなしだなんて虫が良すぎる。月に帰ったら私は閉じ込められて、死なないのをいいことに散々な実験に付き合わされるのでしょう。帰りたくはないが、月の科学力を前に地上側にできることはない。残念だけど。
さて今日も今日とて貴族の何の面白みもない話を延々と聞き続けなければならない。早く夜になってくれないかしら。
「へぇ、だから貴方は仙術が使えるのね」
「えぇ、これがあるおかげで他の陰陽師たちと差別化できているのよ。それにそもそも私たちは人間じゃないから妖怪相手に不利になりにくいっていうのもあるのだけれど」
「まあそうよね。
ところで貴方、月からの迎えの連中と戦ってみたくはないかしら。私は月に帰りたくない。でも地上の人間たちでは到底彼らに太刀打ちできないのよ。もちろん私も抵抗はするでしょうけど、貴方のような人外の存在も逃げるのには必要になってくるの」
簡単に受けてくれるとは思わない。月人が太古の昔から地上に大都市を作るほどの技術をもっていることを多少なりとも知っている彼女なら尚更…
「いいわよ。「へっ?」だからわたしは別に構わないわよ。圧倒的な武力を誇る月側は恐らくそんなに地上を警戒してこないわ。
それにあなたは姫である身、故に月の使者にはあなたの世話役が必ずついてくるでしょう。だとすればその人をうまくこちら側に引き込めればかなり有利になれるわ。
話を聞く限りあなたの世話役は蓬莱の薬を完成させてしまうほどの頭脳を持つのでしょう?」
「そうね。彼女なら必ず私の味方になってくれるわ。
この提案を貴方が受けてくれたのなら話は早いわ。貴方、私の護衛になってくれないかしら。報酬は勿論出すわ。どう?」
パチュリーside
輝夜の護衛になるかどうかと聞かれたら答えなど決まっていようもの。
「勿論、受けさせてもらうわ。でも屋敷の方にはあなたから話を通しておいてね」
「えぇ、明日の午の刻辺りにお連れさんといらっしゃいな。その時までには話を通しておくわ」
うーん…美鈴は紫に境界いじってもらうまではお留守番なのよね。
「もう1人は純粋な妖怪だからそもそも都に入れないのよ、残念だけど。
だからしばらくは私1人かしらね」
「そうなの…残念ね。まあこの話はこれくらいにして今日は私の味方になってくれる世話役の話でもしましょうか」
おっ永琳さんですねわかります。
「彼女の名前は八意☓☓っていうんだけど……」 「え…何て?」
冗談ではなく地上人には発音するどころか聞き取れもしないらしい。真似すれば言えるようになるかもしれないと思っていたがまさかこれほどまでとは。
最早『難しい』ですら生ぬるい。この世界に来てから新発見ばかりね。
「やっぱり地上人には聞き取れないのね。まあ彼女を呼ぶときには『永琳』と呼べばいいわ。実際私もそう呼んでいるし」
揶揄われただけだったか。彼女の方が1枚上手ね。まあ生きてきた年月は桁違いだし仕方ないね。
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「それで、永琳の『あらゆる薬を作る程度の能力』と私の『永遠と須臾を操る程度の能力』で蓬莱の薬を完成させたってわけよ。永琳は作り方と材料さえあればどんな薬も作ることができるのよ。
それに戦闘向けの能力を持っていないにも関わらず月でもかなりの実力者なのよ」
永琳さんチートすぎやしないかね。ついでだから私の能力も教えておいてしまいましょう。
「凄いのね…ちょっと引くくらいに。そうそう、私の能力は一応『火+水+木+金+土+日+月を操る程度の能力』よ」
「変わった能力名ね。どういった意味合いなのかしら?」
「五行思想はご存じでしょう?それに加えて能動と攻撃の"日"、受動と防御の"月"を様々に操ることができるのよ、一応。
まあ大本は精霊魔法や属性魔法を使う程度の能力なのだけれど」
さらに他属性でも同時に扱えるのはかなり強いと思う。でもこの世界はチートキャラが多すぎるからねぇ。
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「今日は楽しめたわ。ではまた明日来るわ」
本当に楽しかったわ。
天の声side
どうやらパチュリーは輝夜と親しくなるという目的を達成し、さらに護衛にもなれたようだ。
輝夜の迎えが月からやってくるまで残りおよそ3年。昼間に山のように来ていた貴公子たちも残りは5人になってしまった。
そこで輝夜は残った5人にそれぞれ難題を課すようだ。
それぞれが探し出して持ってきたものを輝夜自身が確認し本物ならば結婚するという。果たして本物を持ってきて結婚できる男はこの中にいるのだろうか。
そんな輝夜とは対照的に彼女を我が子のように育てた翁と媼は心配もしていた。″もしかするとかぐやが手癖の悪い貴族にさらわれてしまうかもしれない″と。
しかしそんな心配も杞憂だったようで、輝夜が護衛を雇うと話した時には内心大喜びだった。それも護衛に着くのは巷でも人気のある便r…陰陽師の大都庶樺菜だということだ。
そんなことがあってからもう3年近く、今は5月になったばかりである。今日もパチュリーは輝夜の屋敷に向かう。
パチュリーside
もうすぐ月の迎えが来る頃なのだろう。物語中では確か8月の満月の日。あと3月ほどしかない。
あれからかなりいろいろなことがあった。そう、あれは確か輝夜の護衛が決まった2月後の事だったわね。
「あっ、ねぇ樺菜…」
「あぁっ、もう。今昔のことを思い出していたのに」
たかが3年前のことだけど。
「欲しいものがあったら帰りにでも買えばいいんじゃないの?」
「むー、売り切れていたら樺菜のせいだからね」
「はいはい。もういい歳になるんでしょうに」
輝夜とかぐやを分けて書いているのはわざとです。表向きには「なよ竹のかぐや姫」、本来の名前を知っている者には「蓬莱山輝夜」として認識されているからです
ということでちょっと短かったですが次回はパチュリーの回想からになります
三人称は書きやすいですが多用はあまりしたくないです。登場人物の内面が現れないので
実はこれ朝一に書き終わってたりしますし朝に投稿した分(今書いている時点ではまだされていないですが)も昨日には書き終わってたりしますが、できるだけペースを崩さないように予約投稿ばかりしています。1日2話投稿も学校始まったらできないと思いますが
では次回も読んでいただければ幸いです