相変わらず本編には全く関係の無い番外編。時系列は永夜抄直後くらいですが、そこに挿入すると探しにくいので最終話前に挿入しておきます
リクエストをしてくださった方、ありがとうございました
リクエスト自体は非常にありがたいのですが終われない原因にもなるので、これ以上リクエストを受け付けないように活動報告は消しておきます
妹紅side
生きていて良かった。そう感じることがここ最近で特に多くなったように感じる。
「ありがとうございます。おかげで無事に帰れました」
「里まではもう少しある。くれぐれも気をつけなよ。それと竹林は危険な場所だ。むやみに立ち入って良いところじゃない。私が見つけられなかったら死あるのみだからね」
こんな白い髪の私でも受け入れてくれる桃源郷があることに感謝の念を抱かざるを得ない。同じ人間から化け物と呼ばれ、物の怪と呼ばれ、いつの間にか一人を好んで山奥に迷い込んだ。
そこがこの場所、幻想郷だったというわけだ。
お父様を死から遠ざけることもできず、自分可愛さに岩笠を見殺しにしてしまったこともあった。私の人生は常に死と共にあったのに、なのにどうして私自身は一番死から遠いのだろうか。そう考えてふさぎ込んでしまったこともあった。
そんな時に手を差し伸べてくれたのが輝夜であり、ここ数十年の慧音なのだ。
迷い込んだ山奥のさらに奥地に存在した竹林でてゐに出会えたのは本当に幸運だった。あの時彼女に会っていなくてもこの狭い竹林に住んでいればいつかは輝夜たちに会えただろう。
でもタイミングがもう少し遅ければ、私はもう立ち直れない程精神を病んでしまっていたかもしれない。だからこそ幸運だったのだ。
「また人を里まで送ってくれたのですね。いつも助かっていますよ」
「ん? ああ慧音か。良いんだよ。私にできるのはこのくらいだしね。それよりも人里の人間には安易に竹林に入らないように言ってほしいところだけど」
慧音のように人間を護りたいと思う妖怪がいるからこの私でも人里で受け入れてもらえているのだろう。ま、妖怪じみた人間が幻想郷に多いのも理由の一つかもしれんがね。
「それが何度言っても聞いてくれないのです。筍の旬なんてとうに過ぎているのに……」
「ははっ、まあそうだろうね。私が言うのもなんだがもう少し命を大事にしてほしいもんだ」
筍自体はこの竹林を支配する不可思議な魔力の影響で年がら年中生えているけど。それが急激に成長したりするから迷って危険なのだ。あとは妖精の悪戯。幸いなのは妖怪も迷うおかげで凶悪な奴は少ないという点か。
どうせ迷えば死ぬから気休めにしかならないけど。私の仕事が増えるから出来ることならあまり来ないでほしいものだ。
「それよりもさ、慧音は今夜暇だろう? 輝夜に誘われてるんだけど永遠亭に行かない? 人数は多い方が良いんだよ」
「永遠亭ですか。私で良ければ行きましょう。何をするのかは知りませんが」
「慧音ならそう言ってくれると思ったよ。じゃあ行こうか」
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「ふう、食べた食べた。今日も美味しかったわ。それで、妹紅が持って来た物って何?」
「夕食後の開口一番がそれかい? 月の姫が聞いて呆れるよ。ま、今日持って来たのはこれさ」
樺菜曰くトランプ。外の世界でもかなり昔から普及している玩具らしい。それでも俗世との繋がりを絶っていた私たちにとっては新鮮なものだ。
「なにそれ。かるたか何か?」 「似たようなものだけどあれはトランプでしょうね」
何故永琳がそれを知っているのかがよくわからない。外来本を読んだりしたのだろうか。それか樺菜に直接聞いたか。永琳は知識の出どころが読めないので本当に不気味だ。味方であればこれ以上ないほどに心強いけど。
「その通り、トランプさ。この前樺菜からもらったんだよ。これなら大勢で楽しめるだろうってね。だから慧音も呼んだんだ」
「へぇ。じゃあ早速やりましょう。片付けお願いね、イナバ」
そう言って食器を片付けさせる輝夜。
相変わらず兎遣いの荒い姫様だことで。てゐが上手く逃げる分、いつも苦労させられている鈴仙ちゃんが可哀そうだ。そうは言っても助けてはやれないけどね。私なんかが手伝っても足手まといになるだけだろうから。
「鈴仙ちゃんが落ち着くまでは適当に遊んでおくか。大本命は大富豪って遊びだけどそれは人数が多い方が良いだろう。待っていればそのうちてゐも帰ってくるだろうしね」
「あら、大富豪なんて私にぴったりの名前じゃない。名付けた人も分かってるわね」
「馬鹿言え。今の輝夜はいいとこ平民だろうさ……おっとっと。室内で暴れるのはやめてくれよ。じゃじゃ馬姫さんよ」
慧音side
室内で暴れるのは悪いと指摘され、輝夜は妹紅を連れて庭に出て行ってしまった。「放っておいても良いんですか?」なんて鈴仙は聞いてくるが、別にあれを止める理由はない。
「良いのよ。大方夕食後の腹ごなしといったところでしょう。貴方が気にするほどの事でもないわ。どうせある程度運動すれば戻ってくるでしょうね」
永琳もそのあたりの事はきちんと理解しているのだろう。鈴仙はまだまだあの二人との付き合いが短いが、私と永琳はそれに比べればそこそこ長く、特に永琳はもう三百年近くもあの二人と付き合ってきたらしい。
私は流石にそこまでではないが、特に妹紅との付き合いの深さだけで言えば相当なものだと自負している。
その上で分かっているのだ。妹紅も輝夜も、双方が互いに依存しあっている関係であることを。
妹紅と輝夜が知り合ったのは樺菜様と同時期、つまり千三百年ほど前までさかのぼる。既に不死であった輝夜とまだ寿命があった妹紅。そんな昔からの知り合いならば互いに好き合っているとまでは言わなくても嫌っているはずはない。
現に妹紅は輝夜に誘われることで最近の宴会に顔を出したし(本人はとても満足していた)、今夜も夕食に誘われれば嬉々として来ている。
確かに今回のようにちょっとしたことでの喧嘩は少なくないが、それは互いに全力を出せる相手が少ないからこそだろう。ストレスは溜め込めば命にかかわる。
死んでも死なない蓬莱人であれば死んだ後もストレスが残る。適度に発散させるためには運動も必要、というわけだ。鈴仙の場合はその激しさに圧倒されて裏事情まで考察する余裕が無いのだろう。妹紅については『偶に夕食を食べにくる姫様の喧嘩相手』程度の認識だろうか。
あながち間違ってはいない。訂正する箇所があるとすれば輝夜自身もまた妹紅の喧嘩相手を務めているというところだろうか。一方向ではなく双方向の関係。永遠を苦にしないためにどちらにとっても互いが大事な関係。
今回のように妹紅が安い挑発をして輝夜がそれに乗る。逆もまた然り。
「
「はんっ、妹紅だってお父様の権力に縋っていただけじゃないのよ。私は自分の容姿だけで帝さえ惑わせたのよ? 私は実質皇后なんだから頭を下げなさい? ほーらほら」
今だって派手に戦っているように見えるが、実際には弾幕を使った可愛い勝負だ。能力さえ使わないただのお遊び。言葉遣いからだってそれが読み取れる。
「ふふふ。隙だらけよ。も・こ・たん」 「げぇ……くっそ。今日は調子が悪いようだな」
「あらあら負け犬の遠吠えってやつ? まあ良いわ。そろそろイナバも居間に戻ってくる頃でしょうから戻りましょうか。脇腹が痛いけれど」
「ちぇ。ま、いい腹ごなしにはなったか。脇腹痛いけど」
そりゃ食事後すぐに激しい運動をすれば脇腹が痛くなっても文句は言えまい。蓬莱人と言っても体のつくりは普通の人間と変わらないらしいし。
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当然その後てゐや鈴仙を加え六人で行った大富豪はかなり盛り上がった。
「やったわ。永琳を下して大富豪よ」
「そうら、都落ちだ。悪いな輝夜、この都五人用なんだ」「永琳が勝っただけじゃない」
「ほれ、革命だ」「あら、下人が何かしているわ」
「あーらあら、また大富豪ね」「もう今のうちに荷物まとめておきなよ」
仲いいね君ら。私たちが会話に入る隙も無いくらいに二人でしゃべり続けている。だがやはり一番強いのは永琳か。
強いカードでひたすら攻める妹紅は多分勝つ気が無い。鈴仙はルールを飲み込みきれていない。輝夜は妹紅を陥れるのに必死。私も頭は柔らかくない。となれば勝負はてゐと永琳の頭脳戦と予想したが……結果を見れば輝夜と永琳で取り合っている。
「ふっふっふ。今日は力でも頭でも私の圧勝ね。ほらイナバ、大富豪になった回数を読み上げてみなさい」
「はい。えーっと、まず私が0、てゐが1、慧音さんが1、妹紅が1、姫様が5……」
「やっぱり私の圧勝ね。うさぎ跳びでもして帰ると良いわ。ちなみに永琳は?」
「…………23です」
思ったよりも多かった。それにしてもそんなにしていたのか。道理で月も西に傾いているわけだ。もう相当遅い時間に違いない。
そろそろ帰ろうかと言いだそうとしたところで永琳が悪い顔になっているのを見てしまった。これはこれは……もう大体言いたいことが予想できてしまうな。
「あら、私の圧勝ね。さて、輝夜も庭を一周うさぎ跳びしてもらいましょうか」
てるもこの絡みが少ないと指摘されて『確かに』と思ったので書きました
それだけを書くが故に超絶短め
初投稿から一年。もう書きたいことも書き終えたのでこれで永久更新停止です
ズルズルと長くなりましたがお付き合いありがとうございました