行動派七曜録   作:小鈴ともえ

9 / 71
永久的第九話

妹紅side

 

 

 樺菜によるとお父様が生きていられるのはせいぜいあと1月らしい。

2年前のあの日に輝夜から指摘を受けてお父様に聞いてみたら、どうやら彼女の言う通りだったらしい。都の名医にかかっても1年もつかというほどの病だったけど、樺菜は大陸由来の不思議な術でここまで延命してくれた。お父様も彼女には感謝しているみたいだ。

 

 

あれから私は輝夜の屋敷に毎日のように遊びに行き彼女らと遊んで日が暮れてきたころに自分の屋敷に帰ってお父様にその日の出来事を語る、という生活をしている。

心なしか最近は死期が近づいているというのに、以前より明るくなられた気がする。

 

 今日は樺菜に新しい髪留めを買ってもらった。朝から夕方まで買い手がつかなかったのが不思議なくらいに素敵な髪留めだ。本当はお父様にも何か贈り物をしたいんだけど、お父様は特別に欲しいものがないということだし、輝夜も樺菜も「特別に物は送る必要はない」という。お父様がそれでいいのなら別にいいんだけど。

 

 

 

 

 あれから半月近くたって、最近お父様の調子が急に悪くなったと聞きつけて藤原の一族が大勢屋敷に来るようになった。私もお父様の傍にいたいけど、そうなってしまえば必然的に外に出かけなければならなくなる。

だから最近は前よりも長い時間輝夜の屋敷にいるようになった。屋敷のお爺様もお婆様も私にはよくしてくれるし、一番一緒に遊んでくれる美鈴は本当にいい人だと思う。変わった名前なのは大陸出身だからだそうで、実は樺菜にも美鈴よりもっと変わっていて言いにくい実名があるらしい。いつか聞いてみたいものだけど樺菜たちはもうすぐ都を出て行ってしまうらしい。

 

 屋敷に帰るとなんだかいつもと違った雰囲気が漂っていた。周りで話している人たちの声がよく聞こえる

 

 

「嘘だ……。そんなことが…………」お父様が死んでしまったなんて、信じたくない。

 

いや、それより娘である私のところに全く知らせが来なかったことにかなりの衝撃を受ける。私はお父様に別れを告げる資格すらなかったのか。それほどまでに私の存在は無い物として扱われていたのか。

 

失望した、この親族たちに。絶望した、こんな容姿に生まれてしまった自分に。私もこの都から去ろう。彼女らが出て行ってしまう前に。

 

 

 

 

   パチュリーside

 

 

 いよいよ明日、月の民が輝夜を迎えに来る。幾多の戦闘を陰陽師として経験してきたが、これ程までに緊張するのは初めてだね。人間も帝に大勢集められてこの屋敷を警護しているが、輝夜に言わせてみれば全くの無意味のよう。私もそう思う。さて、ここで気にかかるのが妹紅の事なのよね。不比等が亡くなったという報せがあった翌日から今日までばったり来なくなってしまった。都中を探してみたけど手掛かりすら見つからない。

 彼女のことは非常に心配だけど、私たちもそこまで悠長なことは言っていられない。ここで息絶える可能性もかなりあるほどの強敵になるはずだから。

 

 

 

「いよいよね、パチュリー。私楽しみだわ」

 

「貴方は死なないからいいけど私たちはへたすれば死ぬのよ?そんなに暢気なこと言っていられないわ」

 

 

「貴方の実力ならまず死ぬことはないわ。防御に徹すれば、だけどね」

 

「はぁ、おっと来たわね。えらく派手な乗り物で来たのね。それで永琳はどこなのかしら?」

 

 

「1番前にいる変わった服を着た女性よ。さて永琳から帝への贈り物を受け取ったらいよいよ開戦かしらね。

 見たところ戦闘要員は30もいないわよ。永琳1人では少しきついくらいかしらね」

      ・

      ・

      ・

 

 

「姫様、これを本当に帝への贈り物としていいのでしょうか。誰か他の者が服用してしまうかもしれませんよ」

 

「いいのよ。私たちの仲間が増えるだけじゃない」       「姫様…」

 

うわ、めっちゃジト目だ。

 

 

「じ、冗談よ永琳。そんな顔しないで。じゃあ私はこれに手紙を添えてここに置いておくから、ここを壊さないように始めましょうか」

 

 

「月に帰る気はないのですね?「ええ」わかりました」

 

 

「パチュリー、やっちゃって。広域無力化魔法」

 

そう、私がこの時のために身につけた新魔法、広域無力化魔法は仕組みは簡単。ただ滅茶苦茶明るい光を範囲を絞って出すだけだ。

 

「もし残ったら永琳さん、あなたが処理してくれると助かるわ。では目をつぶっていてね」

 

 

 

眩しっ!あ、でもこれで大体は無力化で来たね。あとは目を抑えているところでやっちゃえばいいというわけ。今日もここの屋敷に美鈴を連れてきているし、永琳もいるから楽勝ね。

 なんだかとてもあっけなく終わってしまった。

 

「あっけなかったわね」

 

 

「えぇ、最初の不意打ちでほぼ決まってしまうなんて。月は軍の訓練を見直した方がよさそうね。さて、人間たちも目が眩んでいる隙に私たちは早く撤退しましょうか」

 

 

 

 

「さて、貴方達はいったいどちら様なのかしら?姫様が大層信頼を置かれているようですが」

 

 

「私は紅美鈴、妖怪退治を生業にしているしがない妖怪です」

 

「私はパチュリー・ノーレッジ、種族は魔法使い。都では陰陽師兼姫の護衛をしていたわ。それで、あなたたちはこれからどうするつもりなの?」

 

 

「うーん、取り合えず山奥でひっそり暮らしておこうと思うわ。互いに永い時を持つ者。きっとまたどこかで会えるでしょう、ではまたね」

 

「えぇ、きっとまた会いましょう」幻想郷でね。

 

 

 

 

 

   妹紅side

 

 

この間はとても驚いた。真夜中だというのに急に昼間さえしのぐほどの途轍もない光が辺りを照らしたから。何があったのかはわからないけど、樺菜や美鈴、輝夜は大丈夫だったのだろうか。

まあ彼女らなら心配する必要もない気がするけど。

 

 おっと、誰か来たようだね。こんな登るだけで修行になりそうな山にこんなに大人数で来るなんて何か訳ありっぽいからついて行ってみよう。

 

何かを燃やそうとしたみたいだけどさっきまでいなかった人に断られているね。「……おや?君はこんなところで何をしているんだい?」うわっ驚いたなぁ。

 

 

「大勢の人が山を登って行ったからついてきただけよ。あなたは?それに手に持っているのは何なの?」

 

 

「私は岩笠という。今持っているこれなのだが、これはかの有名なかぐや姫が月に帰るときに置いて行った薬でな、飲むと不老不死になれるらしいのだが帝はかぐや姫のいない世界に永遠にいる気はないとのことで処分することになったのだ」

 

輝夜が月に帰った?本当かしら。

 

 

「その薬、代わりに私が処分しておいてあげるよ。つい先ほど断られたところなんでしょう?

私ならいい場所を知っているからそこに捨てておいてあげる…っ岩笠っ!」妖怪だ。

 

 

「なっ……ぐっ…君だけでも…逃げなさいっ!」

 

今こそ薬を飲んで妖怪に殺されないようにして戦わないと、岩笠が喰われてしまう。

 

 

「待って、今助けるから。んぐっ。あ"あ"あ"あ"ぁぁぁああ!げほっげほっ、おぇ」まさかこんなに不味いとは。

 

って、いは…か…さ?なんと愚かだったんだろうか!私が苦しんでいなければ助けられたかもしれないのにっ。くそったれが!

 

 はぁ、でもこれで私は死ななくなってしまった。死を恐れたばかりに。

 

『貴方は生き物が存在しない世界を考えたことがあるかしら?

永遠に生きる者にはそういう世界になって尚生き続けなければならない未来が確約されているの』

 

 あぁ私もこの身になってまだ短いから実感できていないけどいつか分かるのでしょうね。

髪色もこうも変わってしまって私はもう人間たちの中では生きていけない。ならばまずは独りで生きていけるように強くなることから始めよう。

 

もう2度と私の目の前で人が殺されることなんてなくなるように。

 

 




妹紅はとても良い子なんですね

あっさり終わらせてしまいましたが、それがなくても永琳と美鈴でどうにかなっていました

この世界では妹紅が輝夜と険悪な仲ではないので、分かっていた方も多いと思われる前回の伏線を回収しつつ薬を飲んでもらいました

では次回も読んでいただければ幸いです
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。