クソゲス☆ド外道ファンタジー    作:ペニーボイス

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つい思いつきで書きました。
そこまでグロかったり胸糞ったりしたくはないです。
↑何言ってんだこいつ


プロローグ

 

 第九代『勇者』が『魔王』を討伐してから、幾ばくか経つ。

 各地に平穏が訪れ、通商は回復し、治安と秩序も、その息を吹き返しつつあった。

 春先の心地よいそよ風と暖かい日光が、この国をより良い方向に導くに、相応しい幸運と恵をもたらさんとしているようにさえ思える。

 

 

 "全ての元凶"、魔王が死んだ今、この国には問題がないわけではないが…しかし魔王の存命中よりかは幾ばくかマシな状況だ。

 民は安心して道を歩け、狩人が魔物を恐れずに仕事でき、商人も積荷の心配をする必要がない。

 だが、そんな安寧期でも悲劇は訪れる。

 

 

 それは、一つの時代の区切りと言っても良かった。

 第九代"勇者"は老衰により、この世を去ったのだ。

 誰もが悲しみ、誰もが涙を流し、誰もが地に平伏した。

 

 魔王に引導を渡し、今ある平穏を生み出した立役者が、ついにその生涯を終えたのである。

 

 殆どの者は悲しんだ。

 だが、一部の者は悲しまなかった。

 殊、『国王』陛下には、勇者の死以上に慎重になるべき重大な事項が控えていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王国

 王都中心部

 大通りにて

 

 

 

 

 

 鍛冶屋はパン屋と仲が良い。

 何せどちらも旧知の仲だし、常に商売相手に困る事のない仕事をしている。

 それに、この王都でも1番の腕を持つ鍛冶屋と1番の規模を誇るパン屋が隣り合わせに店を持った事は、両方の顧客を相乗効果によって増加させるのに一役買っていた。

 破損した農具の修理に来た農民が、帰りがけに比較的安価なパンを買って帰れるのである。

 

 平穏な時代を迎えた今、鍛冶屋もパン屋も増え続ける顧客に嬉しいような、しかし少しだけ恨めしいような感情を抱いている。

 確かに顧客が増える事は彼ら商売人にとって嬉しいことだが、あまりに顧客が多過ぎると休む暇もない。

 だから彼らはいつも示し合わせた時間に一服するのを楽しみと励みにしていた。

 昔ながらの仲間と共に、懐かしい記憶を振り返りながら談笑するのはいい気分転換になる。

 

 

 しかしながら、今日この日は、いつもの歓談というわけでもなかった。

 今の喜しくも恨めしい状況を作り出してくれた当の本人が、棺の中に眠って、多くの人々に担がれながら彼らの店の前を通るのだから。

 

 

「全く、すごい人だな。」

 

「ああ。生涯をかけて魔王を討伐したんだ。すごい人だ。」

 

 

 鍛冶屋がパン屋に声をかけたが、長年の付き合いにも関わらず、どうやら真意は伝え損ねたらしい。

 鍛冶屋はもう少し丁寧に話すべきだった。

 "すごい数の人だな"、と。

 真意は違えたが、鍛冶屋はここからまた話題を修正する煩わしさよりかはパン屋の感想に自身の考えを合わせる方を選ぶ。

 その方が簡単で、手間もなく、角も立たない。

 

 

「……ぁあ、立派に人には違いないだろう。」

 

「この国も惜しい人を亡くしたもんだ。ほら、王宮のバルコニーにいる国王陛下を見てみろ…あんな渋い顔をして……」

 

「陛下にとっても、きっと心労が重いんだろう。勇者様は陛下にとってかけがえのない友人らしい…」

 

 

 鍛冶屋とパン屋は、勇者の棺を取り囲みながら進む喪服姿の人々を見送りながら、休憩をやめて再び仕事へと戻っていった。

 何せ今日は大通りにいつもより多くの人がいる。

 どれだけ哀しくとも、人間空腹感には勝てないし、勇者の葬儀の為に遥々遠方から王都へやってきた人間にとっては一流の製品を手に入れる数少ない機会でもある。

 だから鍛冶屋とパン屋は少しでも在庫を確保しておく必要があったし、既に手を動かしていた。

 

 

 

 

 

 王宮のバルコニーから見下ろす人々の列は、国王にとってはそれほど面白味のあるものではなく、寧ろ気分を害される物だった。

 何せ自身に向けられるべき敬意は勇者の亡骸に向けられ、自分はメインディッシュの付け合わせのような扱いを受けている。

 大きな棺を取り囲んで涙する国民への感想を、国王は左右にいる臣下にだけ聞こえるように、小さく呟いた。

 

 

あやつら大逆罪に処すべきだ

 

「国王陛下、どうか落ち着いてください。」

 

「勇者なき今、国民が頼れる存在は陛下のみとなりました。陛下の安寧は約束されたも同然です。」

 

 

 国王は左右に控える臣下の内、向かって右側の『近衛隊長』に顔を向けた。

 

 

「元々あやつなぞ必要ではなかったのだ!一個近衛連隊でもあれば、余の手であの魔王を葬れたのだ!」

 

「ええ、間違いありません、陛下。」

 

 

 近衛隊長は国王の意見を肯定したが、国王から向かって左側に控える『王国軍将官』は、より現実的な意見…というより事実を国王に突き付ける。

 

 

「ですが陛下。陛下と近衛連隊が王都を動くわけにもいかなかった事もまた事実です。我が王国を取り巻く情勢を鑑みれば…」

 

「言わずとも分かっておる!…全く、忌々しい連中め……『帝国』と『共和国』、我が王国の東西にこの不躾な隣国がなければ今すぐにでも『魔王国』に攻め入れるというのにっ」

 

「陛下、その場合であっても陛下と近衛連隊は王都にいるべきです。お忘れではないでしょう、我が国の制度では、地方の諸侯に隙を見せればいつ反旗を翻されるか分かりません。……ですが、陛下。それもようやく終わりです。」

 

「………ふふっ、その通り…勇者が死んで、"約束"を守る必要もなくなった。近衛隊長、前々から支持していた事項は進んでおるのか?」

 

「はっ、陛下。『剣士』と『僧侶』の居場所は特定済です。ですが、『女魔術師』だけはまだ特定できておりません。」

 

「あの女狐め、隠れるのだけは上手い…引き続き捜索させよ。…将軍!」

 

「はっ!」

 

「『辺境伯領』に伝令を出せ。勇者は死んだ。もう"奴"を生かしておく理由もあるまい。息の根を止め、魔王の血脈を止めるのだ!」

 

 

 将軍は姿勢を正すと直ぐに回れ右をきて配下の下へ向かう。

 さあ、歴史が動き出す。

 これまで勇者とそのパーティにおぶられていた過去はようやく終わるのだ。

 将軍は歴史の新たなる1ページを記す為、数いる伝令の中でも殊更に優秀な伝令に一枚の文書を手渡した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 王国・辺境伯領

 辺境伯居城内地下牢

 

 

 

 

 

 

 "辺境伯領"

 

 この国の北端は…"辺境伯"という爵位が指し示すように…魔王国領との境界線と接している。

 だから幾度も戦火に晒され、荒廃していたが、辺境伯居城だけはしっかりとした建築物として仕上がっていた。

 現辺境伯は老いの為に痴呆の気があるが、それでもかつて今は亡き勇者と共に魔王の軍勢と戦っていたのだ。

 

 美しき記憶は過去の物となり、辺境伯とその軍隊もまた、人々の記憶から忘れ去られていった。

 辺境伯領は魔王の脅威に震えようが震えまいが、また元の生活に戻ったのである。

 魔王との戦いで辺境伯領の民がいくら犠牲を払ったかなど、もう誰も気にしてはいなかった。

 せいぜい、労いの言葉をかけ、もてはやし、そして飽きた玩具のように捨て置くのだ。

 

 人間の本質は、勇者が魔王を殺した後も変わらなかった。

 

 

 話は脱線したが、辺境伯居城の地下には立派な地下牢があった。

 かつてはその地下牢に人が溢れた時代もあったらしいが、しかし、今ではそこに捕らえられている人物は1人しかいなかった。

 そして捕らえられる人物は、大仰に思えるほどの厳重な警備下に監視されている。

 この人物のために、遥々王都から近衛兵一個小隊が送られていた。

 

 無論のこと、近衛兵の中ではこの監視任務ほど避けたい勤務はないと思われている。

 動きのない任務だし、美味いものが食えるわけでも、遊びに行くところがあるわけでもない。

 辺境伯居城のお膝元だというのに、この辺りには一切の賭博場も娼館もなく、ただシケた酒場が一つあるだけなのだ。

 それでいて特別な手当も出ないとなれば、いくら屈強な近衛兵でも疲弊する。

 この日の夜、直接警備に当たっていた近衛兵2人も、存分に気を緩めていた。

 

 

「………なあ、聞いたか?勇者が遂にくたばったらしい。」

 

「ほぅ、あの勇者が…。結局、あの人もただの人だってこったな。」

 

「そういうこったろう。…それに、噂じゃこの任務もそろそろ終わるらしい。」

 

「"終わる"?」

 

 

 2人の内の1人が、片手を使って首を切る動作をする。

 もう1人はにやけ面を披露しながらうなづいて、その動作が何を意味するのか理解した。

 "これでようやくこの勤務も終わる"。

 

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 至極真っ当な論理だが、それが指し示すのは監視下にある人物の死である。

 地下牢に入れられた人物はそれを聞いても尚微動だにせず、ずっと俯いたままでいた。

 そんな人物の様子を見て、2人の近衛兵はせせら笑う。

 

 

「しかし勿体ないな!あの身体なら一発ヤッてみたかったんだが!」

 

「おいおい、王のお達しを忘れるなよ?"魔の血脈を残すべからず"」

 

「ぎゃはははは!!ちげえねえ!!」

 

「諸君、失礼する」

 

 

 下品な会話を楽しんでいた近衛兵2人だが、流石に辺境伯の嫡男が入室したとなれば口を噤がざるを得ない。

 自らの兵を4名引き連れた辺境伯嫡男は、近衛兵2人に向かって正対する。

 間違いなく、先ほどの下劣な会話は聞かれていただろうが、幸いなことに、この男はそんな事に触れもしなかった。

 正直、近衛兵はこの男の事を尊敬するどころか軽蔑さえしていた。

 低身長で、顔も良くなく、おまけに聞くところによると肝っ玉も小さいという。

 もし、この男が先ほどの発言に難癖つけようものなら、近衛兵の右腕が"うなって"いたかもしれない。

 

 

「やあ、諸君。お勤めのところ申し訳ない。実は国王陛下より喜ばしい勅命が下った。…"魔王の娘を処刑せよ"」

 

「「おおっ!」」

 

「よって君達には死んでもらう」

 

「「は?」」

 

 

 あっという間の出来事だった。

 辺境伯の息子の護衛は、2人の近衛兵を長槍で打ち抜き、あろうことか国王陛下の兵士を始末したのだ。

 その間に嫡男は、もがき苦しむ近衛兵など目もくれずに牢の鍵を開ける。

 そして近衛兵を串刺しにする兵とは別の兵2人を率いて、囚われし者の拘束を解く。

 

 

「……頼むぜ、頼むぜ、お嬢ちゃん…どうか大人しくしててくれ…」

 

「………」

 

 

 人間の年齢にして、20代も半ばであろうか。

 豊満な身体と妖艶な雰囲気の間に、何か恐ろしいオーラを纏う彼女は、拘束を解かれても尚、微動だにしない。

 

 

「なあ、頼むよお嬢ちゃん。俺はバー●ー・マシューズでも何でもない。アンタ相手に礼儀を正したり教えを乞うことはできても、あの看護婦みたく下顎を舌ごと食いちぎられたりされたくはな」

 

 ガタンッ!

 

「うわっほおおおお!?」

 

 

 囚われし者…魔王の娘が急に立ち上がり、驚いた嫡男が素っ頓狂な叫び声を上げる。

 

 

「………シャ…ス」

 

「え?あ?はい?はい?何でしょうお嬢様?」

 

「…感謝する」

 

「あ、あ、はい、どうも。」

 

 

 コミュ障丸出しの嫡男だったが、これでようやく魔王の娘とコンタクトが取れた。

 あれだけ情けない側面はあるものの、実はこの嫡男にはある目的がある。

 その為にも、魔王の娘とのコンタクトは重要な課題だったのだ。

 

 

ゲルハルト、いつまで掛かってる?外の近衛兵は粗方殺して荷馬車に…Oh,JESUS…」

 

 

 地下牢にもう1人の男がやってきた。

 ひょろっとした長身で、血相が悪過ぎてミイラか何かのように見える男が。

 その男も、リ●グ…何かがきっと来そうな雰囲気を醸し出す魔王の娘の姿に微動だにできなくなる。

 

 

「ア、アンドレアス、少し待て。慎重にやろう、慎重に。」

 

「あ、ああ、うん、そうしたほうがいいだろうゲルハルト」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 信じられないかもしれないが、この世界で"史上最悪の犯罪"と呼ばれた出来事はここから始まった。

 つまり、落ちぶれた魔王の娘、辺境伯の嫡男、そしてよく分からないモヤシ男から始まったのである。

 

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