20xx年
某国離島
「こちらアルファ4-1!敵の航空攻撃は圧倒的です!増援はまだですか!?」
『増援…ザッ…持ち堪えろ』
「航空支援が無ければ無理です!空軍連中は一体どこに行ったんですか!?」
『制空権……ザッ……ロスト』
「ふざけるな!今すぐに後退させろ!敵の戦闘爆撃機にやられる前に!!」
『……ザッ………固守…ザッ…』
「くそったれが!くたばりやがれ!!」
「敵機直上!!」
「!?」
…………………………………
嫌な夢を見た。
おかげで、全身が汗でグッショリ。
まだ朝だっていうのに、気分とテンションは排水溝の下のアイツみたいになっている。
ハァイ、ジョー●ィ〜。
私はどうにか上体を起き上がらせ、ベッドの上で額の汗を拭い、ベッドの脇にあるキャビネットの、そのまた上にある水差しをとって水を直飲みする。
次いでタオルで顔を拭き、今度は全身に力を入れて、睡魔とオフトゥン特有の温かみからどうにか離脱した。
グッショリ濡れた寝巻き姿のまま、愛用の万年筆を取り、そして着替えの下着も持参して風呂場へと向かう。
「「「おはようございます、ご主人様。」」」
「おはよう」
メイド服を着た3人組が、風呂場の脱衣室の前で私を待ち受ける。
普通ならウホッ♪ってなりそうなモンだし、実際私も最初の頃はウホッ♪ってなったが、今はもう見飽きてしまってそんな感想は抱けない。
メイド服3人は別に私をウホッ♪っとさせるためにそこにいるわけではなく、私の執務着とタオルを持って来てくれただけなのだ。
私は服とタオルを受け取って、1人風呂場へと向かう。
そして、あいも変わらず熱いお湯に体を慣らし、身体中の汗を洗い流す。
この習慣を身につけたのは、いつだったろうか?
少なくとも転生前ではない。
あぁ、失礼。
私はゲルハルト・フォン・ノルデンラント。
ある王国の、辺境伯を務めている。
…おとといから。
と、言うのもこの3日間で状況が目まぐるしく変わってしまったのだ。
半年前まで、私はある紛争地帯にいた。
ある軍隊に属し、ある島にいて、ある敵軍と戦っていたのだ。
ところがクソッタレファッキンな空軍がしくじったが為に、我々陸上部隊は敵の猛爆撃に晒された。
直上に敵の戦闘爆撃機が迫っていたところまでは覚えている。
思わず目を瞑り、どうせ両腕の破片が宙高く舞い上がるだけだと言うのに、私は両手を戦闘爆撃機の方へと突き出した。
そして気づくと、私はこの世界にいた。
この…剣と魔法が健在な世界に。
居眠りしていたところを起こされて、アリストテレスかお前はってくらいに髭を生やしたオッサンに、君主たるものどうだとか、こうだとか、そうだとか、ドヤされていた。
勿論、状況の把握には時間がかかったが、どうやら私は辺境伯の嫡男に転生し、そして辺境伯自身はもう先が長くない事を知ったのだ。
最高じゃん!
とは、思わなかった。
え、だって辺境伯だよ?
領民とかいんだよ?
経営しなきゃいけないんだよ?
外交しなきゃいけないんだよ?
政治しなきゃいけないんだよ?
嫌じゃん。
そりゃあさ、さっきのメイドさんとかにウホッ♪するだけの毎日だったらハピネスなんだけどさ、そんな訳ないじゃん。
絶対面倒臭いじゃん、色々と。
案の定、面倒臭いことからは逃れられそうになかった。
だが幸運も全くなかったわけではない。
転生を果たしてから3ヶ月経ったある日のこと。
補佐役として1人の男が連れてこられた時、私の幸運も捨てたモンじゃないと直感できたのだ。
第一印象は、ヒムラー。
バナナ●ンの日●とかじゃなく、ハインリヒ・ヒムラー。
眼鏡をかけて、ひょろっとしてて、血相がめちゃくちゃ悪い親衛隊指導者の。
だが、その男の能力はHHHh…ラインハルト・ハイドリヒに迫るものがあるだろうと、なぜか直感できたのだ。
ひょっとして貴方、第三帝国から転生しちゃったりしてます?
そうだなぁ……例えば、チェコでレジスタンスの待ち伏せ攻撃受けて気がついたら異世界転生果たしてたりとか。
しない?
はぁ。
すいません、なんか興奮しちゃって。
いやねえ、貴方もそのオドオドした感じからして転生しちゃった系じゃないかと思った次第で…えっ!?転生者!?貴方も!?
時として、偶然は一致する。
何の運命の悪戯か、一つの辺境伯領に、2人の転生者が揃ったのだ。
彼は自らを、アンドレアスと名乗った。
転生前はどうやら化学教師をしていたらしいが、転生前の名前は覚えていないらしい。
私も転生前の名前なぞ覚えちゃいない。
例え何の関係がなかったとしても、2人の人間が全くの別世界に放り出されたとしたら、なんらかの協力関係が出来上がるハズだ。
少なくとも、私とアンドレアスは、そんな状況にいた。
そんな訳で、2人で協力して、今それぞれに与えられた使命を果たさんと頑張って来た訳であるが….
一昨日、ついに辺境伯がお亡くなりになられたわけだ。
風呂から出た後、私はそそくさと着替えを済ませて食堂へと向かう。
地方貴族とはいえ貴族は貴族で、中々の内装とオシャンティーな食器が、私の数少ない癒しの一つでもある。
ただ、私にはまだ配偶者はおらず、食卓のメンツといえば、むさ苦しいことこの上ない。
まず、我が盟友アンドレアス。
彼の肩書は『辺境伯主席補佐官』というものである。
というものではあるが、実際その道で機能できるかと言えば疑わしい。
ぶっちゃけ彼がその地位にいるのは、転生後の血脈によるもので、彼の能力によるものではない。
それを言っちゃあ私も私だが、とにかく、盟友アンドレアスは重要な相談役として機能していた。
領土における実際の執務は、これから述べる朝食会出席者によって支えられている。
まず、辺境伯軍司令官の『オットー・フォン・カリウス』将軍。
まるでビスマルクのような髭を生やし、ビスマルクみたいなピッケルハウベを被り、ビスマルクみたいに卵が大好きな大男。
実質ビスマルクですね、はい。
名前は戦車エースなのにね。
彼の率いる辺境伯軍は、長年魔王の軍勢との戦いに晒されていたために経験豊富な将校が揃っている。
次に、辺境伯領行政長官『ウンベルト・シュペアー』。
大変頭のキレる男で、辺境伯領が抱えるある問題をどうにかしながらやりくりして来た人物である。
ちなみにゲルマニアとか設計してたりはしない。
ニュルンベルクの裁判にも出ていない。
最後に、外務大臣『フリードリヒ・シュタイヤー』。
朝食会メンバーの中では最長老の人物だが、恐らく、最もIQは高い。
ちなみにそのIQは高齢を加味して加算されていない。
ノヴ⚫︎シックスとかも関係ない。
外交手腕はどうやら先代の辺境伯を唸らせるモノさえあったらしい。
ちなみに先述のアリストテレスは彼の事である。
朝食会が始まってしばらく経った時、シュペアーが唐突に口を開いた。
「辺境伯様、先代の時代から薄々お気づきとは思いますが…我が国の財政収支は大変なことになっております。」
「………」
「よくご存知だとは思いますが、我が辺境伯領は魔王軍との戦いの為に、国家のリソースを軍事に当てざるを得ませんでした。」
「…リソースの転換は試みなかったのか?」
「率直に申し上げて、我が領内には農耕に適する土地が多くありません。転換にも限度があり、食糧は常に隣国から輸入している状態です。そして、その食糧輸入が財政を圧迫しております。」
「隣国………『方伯領』か…」
「じゃ・か・ら!!ワシが軍を率いて方伯領に攻め込むとあれだけ先代に進言して」
「落ち着けぃ、オットー。」
ビスマ…違ぇ、カリウス将軍がテーブルをひっくり返さんとする勢いで立ち上がり、方伯領への軍事侵攻を提案したが、ベテラン外交官のシュタイヤーに即座に否定された。
「前々から言っとるじゃろう、オットー。我々が侵攻したとして、王国側が黙って見ておるとは思えん。」
「それに兵站はどうするんです?いくら経験豊富な将校がいたとして、食糧供給なしでは持ちません。…魔王軍相手の時は、国王の命令で方伯領から食糧が届きました。今現在、我が領内の食糧事情では前線に補給なぞできませんよ。」
シュタイヤーにシュペアーが加勢し、カリウス将軍は黙り込んでしまった。
将軍の言いたい事は分からんでもないが、行政長官と外務大臣はそれよりも現実味を帯びている。
そう、まだ早い。
方伯領への軍事侵攻を行うには、何らの下準備もなっていない。
私としては先代の葬儀が終わった今、その為の準備を進めんと思っていたところだった。
だからこそ、朝食会でずぅっとぼうっとしていたアンドレアスと共に先月、この城の地下にいたある人物を逃したのだ。
無理くり進めた感満載で順応早過ぎで新人物を雑に連発し過ぎな気がしますがその内登場人物とか地理とかまとめるので許してください何でもしますから何でもするとは言ってない