クソゲス☆ド外道ファンタジー    作:ペニーボイス

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21 オードブル

 

 

 

 

 

 

 

 

 オスター河畔の戦いより1ヶ月後

 辺境伯領

 辺境伯居城

 

 

 

 

 

 

 

 

 実に大きな収穫であった。

 我がノルデンラント家において、穀倉地帯の獲得がどれだけ重要であったことか。

 我が軍は強者揃いではあったものの、その強者達を動かす燃料も提供できない貧弱国家であったのだ。

 それが今はどうだ!

 我が家領の領民達の食卓には黒いパンではない白いパンが並び、1日の食事に困ることなく、統制された価格によって誰もが腹を満たせるのである。

 これぞ私が夢見た領地経営!

 私が心の底から望んでいたものだ!

 

 

 

 そんな事を考えながら、私は温かいベッドから中々外に出られずにいる。

 何故ならベッドの中に素晴らしい許嫁が控えているからだ。

 

 

「………んっ♡…ハニー、もう少しこっちへおいで。我のおっぱいで温まると良い。」

 

「言われなくてもそうするよ、ダーリン」

 

「ふふっ…本当に仕方のない子だな。…来週の挙式は問題なさそうだ。」

 

「驚くことなかれ、教皇様が取り仕切って下さることになった。」

 

「ほぉ…それは楽しみだな、マイハニー。」

 

「…ダーリンには悪いことしたかも。…そちらの信仰に反するかもしれないから。」

 

「魔王国にある信仰といえば、歴代魔王に向けられる忠誠心以外は何もない。だから、我の信仰は気にするな、ハニー。正直、そこまで気にかけてくれた事は嬉しいが。」

 

「それなら良かった。…あぁ〜↑ダニエラダニエラダニエラおっぱいさぁぁあん!これで正々堂々ダニエラさんのおっぱいにしがみついていられるよおおおおおお〜↑」

 

「あんっ♡こら、ハニー?そんなに強く抱きつくなっ♡…慌てなくても、もうすぐれっきとした夫婦になれるだろう♡」

 

「朝からイチャついてるとこ悪いんだけどさ、僕ぁもう帰って良いかい?」

 

 

 あまりにもすっばらしいばかりの朝を迎えていたばかりに、アンドレアスの事を蔑ろにしてしまった。

 いやあ申し訳ないアンドレアス。

 あと数十分はかかると思うから、後でまた改めて来てくれると…ダメ?

 はぁぁぁ。

 はいはい、わかりましたよ。

 

 

「このままダニエラさんとイチャついてると、朝食会議に遅れる事になる。カリウス将軍になんて伝えるんだ?…辺境伯は今嫁といちゃついてて出席できませんなんて言えるとでも?」

 

「分かった、分かった、わぁぁかった!今行くから。」

 

「ほら、私のハニー♪出かける前にキッス♡

 

「わあああい!キッチュだぁ!」

 

ゲルハルトォ!!

 

 

 

 

 

 

 

 …………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 キッチュはしてもらったが、結局はダニエラさんも朝食会に参加することになっている。

 彼女は頭脳明晰な女史でもあり、私の良き補佐ともなってくれるからだ。

 

 我々が方伯領を併合した効果は市井のみならず、我々自身の食卓にすら現れていた。

 以前1週間の内の6日間を占めていたボソボソとした食感のライ麦パンは姿を消し、卓上にはバターをふんだんに使用したに違いないクロワッサンが並んでいる。

 ソーセージが()()()()()いるように見えるのは幻覚ではなく、サラダの具材の種類が増えているのも勘違いではなかろう。

 使用人たちには新しい悩みができたらしい。

 手に入る食糧が増えた事で、日々のメニューを考え直さなくてはならないそうだ。

 何という贅沢で幸せな悩みであろうか。

 

 

 我々は主に祈りを捧げ、しかるのちに食事を始める。

 柔らかなクロワッサンを切開してジャムをぶち込んでいると、まずカリウス将軍が、本日の朝食会最初の発言を行った。

 

 

「…正直、少し疑っておったがの。辺境伯殿がこれほどの事を本当にやってのけるとは思っておらんかった。」

 

「大逆罪に処そうか、将軍?」

 

「ほっほお!やれるもんならやってみぃ!」

 

「こ、この老害……まあいい。将軍をはじめとして、皆本当によくやってくれた。…だが、これは第一段階に過ぎない。我々は最初の目標を確保したが、これで終わりというわけではないんだ。」

 

 

 シュペアー長官が疑惑を含んだ表情でこちらを見る。

 

 

「と、仰いますと?…まだ拡張戦争を続けるおつもりですか?」

 

「いや、それは少し違う、シュペアー。我々がどれほど平和を望んでも、戦争は向こうからやってくる…皆も薄々感じていると思うがね。」

 

「確かに、この前の王国代表の発言を聞く限りは、友好的な態度ではなかったのう。」

 

 

 シュタイヤーが口を挟み、一同はその発言に頷く。

 王国は我々に方伯を討てと命じたにも関わらず、労いもほどほどにその成果を横取りしようという意図を隠そうともしていなかった。

 教皇様の加勢が無ければ、我々は今クロワッサンなど食べてはいられなかっただろう。

 

 

「シュタイヤーの言う通り、王国は我々を威圧した。教皇様にはご支援をいただいたが、それによって国王は我々を"敵"だと認識したに違いない。」

 

「あの不信心者めっ!」

 

「将軍、その怒りは戦まで取っておいてくれ。…ともかく、国王は教皇様の権力を奪いたがっているし、我々の領土も取り上げたい。だから連中は遅かれ早かれ我々を攻撃する。…衝突は目に見えているのに、わざわざ座して待つ必要はないわけだ。」

 

「では、辺境伯様。次はどのような手を打つのですか?」

 

「いい質問だシュペアー。国王との衝突が明白であっても、まだ本格的な戦争をする潮時じゃあない。国王の領域は、この国家の中で最も統制の取れた軍隊によって守られ、最も豊かな土地と産業がそれを支えている。方伯軍と戦うのとは訳が違う。」

 

「なら、辺境伯殿。ワシらはどうするべきじゃ?」

 

「準備を進める。…国王との全面衝突に備えた準備を。具体的には………『自由都市ハンザブルグ』、ここを我が領の傘下に収める。」

 

ブフォオッ!

 

 

 カリウス将軍が吹き出して、クロワッサンの断片とコーヒーの飛沫を卓上にぶちまけた。

 きっしゃないなぁ。

 吹き出すなら顔を卓上から背けなさいよ、まったく。

 

 

「…な、何を言い出すかと思えば!気でも狂ったか!?」

 

「私は正気だ。ハンザブルグを攻め落とせば輸入資源の調達を我々で独占する事だってできる。それにあの街は共和国への窓口だし、狡猾な国王が連中に助けを求める事のないように塞いでおきたい。」

 

「簡単に言うがなぁ!ハンザブルグの城壁は、もう100年の間破られておらぬのだぞ!それにお抱えの傭兵団は精鋭中の精鋭!それこそ方伯軍とは訳が違うわい!」

 

 

 正直なところ将軍が怒鳴り散らすのも無理はないかな、と少しばかり思った。

 ハンザブルグの防衛設備と傭兵団についての資料は既に手元にあったし、その武勇伝は辺境伯領内の子供達にすら伝わっている。

 

 

 自由都市ハンザブルグ、その始まりは今と変わらない。

 あの街はその成り立ちからして交易都市だ。

 王国は遥か昔から、その領土内で産出しない資源の確保を、この交易都市を通じて行っている。

 

 商人たちは最初は国王に対して忠実に振る舞っていたが、希少資源の取引で莫大な富を築くと、やがては自由に商売をしたいと思うようになっていく。

 歴代国王は事ある度にこの都市に干渉してきたし、それは大抵の場合商人達にとってありがたくないものだった。

 交易都市の商人たちはその内に王国内の諸侯に比類ないほどの富を持つようになり、その富で強力な軍を雇って国王を脅迫するようになる。

 "我々に自由を、さもなくば王国に死を"

 

 歴代国王にとって最大の脅威は魔王国であった。

 それ故、交易都市の商人と諍いを起こして希少資源の流通を途絶されれば、自身が窮するのは目に見えている。

 余裕のない戦争は、この商人たちに自由をもたらしめたのだ。

 交易都市は自由都市に名前を変え、その内にハンザブルグなどという大層な名称を自らに与えた。

 以来、商人たちは常に時代の最先端の兵器と兵士を雇い、自らの資産を守り通してきたのだ。

 国境沿いの山賊共、共和国から流れてきたロクデナシ、時には国内諸侯や国王の軍勢からも。

 将軍も言うように、100年の間、あの街の防壁と傭兵団を撃ち破った者はいない。

 

 

「将軍らしくないな、いつもなら勇んでいるところだろ?」

 

「わしは決して愚か者ではない!打算もできぬ愚将と一緒にしてくれるな!」

 

「これは失礼…では将軍。私がハンザブルグを攻め落とせと命じた場合、我が軍に足りない物は何かね?」

 

 

 考え込むカリウス将軍。

 あのね、もうね。

 どっから見てもビスマルクだわ。

 ほっとけば電報文に加筆しそうなくらいビスマルクだわ。

 

 将軍は一通り考え込むと、私の方を見て頭の中で纏めたであろう意見を述べる。

 

 

「まず、情報が足らん。防壁の事を傍に置いておくとしても、敵の兵力、装備、編成、そのいずれも分からんとすれば何の手も打てん。」

 

「その通り、まずは情報がいる。よって…明日、私とアンドレアス、それにダニエラさんの3人で偵察を行ってくる。」

 

「「ブフォオッ!」」

 

 

 今度はシュペアーとシュタイヤーが吹き出した。

 3人とも顔を背けなかったせいで卓上はソンムの戦いと化してしまう。

 しかし、彼らはそんな事を気にも留めていない様子だった。

 

 

「頭が狂っておるのではないか!?」

 

「辺境伯様、私としても同意できません!そもそも適任の者なら他にもいます!」

 

「例えば?」

 

「親衛隊長なら間違いなく任務を遂行しますよ!」

 

「……シュペアー、君がハンザブルグの商人だったとしよう。親衛隊長が平服を着ていたとして、どう見ても屈強な身体つきの見知らぬ顔の男たちが城壁の内部を見て回っていたら…どう思う?」

 

「………」

 

「彼らはこう思うだろう。"どこかの間抜けが偵察を送り込んだのだ"と。」

 

「しかし、その理屈で言えば辺境伯様ご自身が行く方が…」

 

「私はハンザブルグへ向かうための名目を用意できる。何たって、ハンザブルグにはノルデンラント家お抱えの商人がいるんだぞ?」

 

「あっ…」

 

「私がお抱えの商人を訪ねたところで、誰が偵察だと思う?護衛もつけていないような、無用心な大間抜けの田舎者な地方貴族が城壁の内部をジロジロ見てたって、誰も怪しむ事はない。せいぜい鼻先で笑って終わりさ。」

 

「じゃがの、護衛をつけないのであれば、それではあまりに無用心」

 

「心配するなシュタイヤー。ダニエラさんはとても優秀な護衛にもなれる。ね、ダーリン♪」

 

「ああ、その通りだよ、マイハニー♪…2人くらいの護衛など容易いものだ。」

 

「…あまり大勢を連れていくと却って注目を引く。我々を無知な田舎者と思わせておくのが上策だろう。」

 

「一つよろしいですか、辺境伯様?」

 

 

 シュペアーがおずおずと手を挙げて質問をする。

 私は彼の方を向き、発言を促した。

 

 

「どうしたシュペアー?」

 

「辺境伯様は、ハンザブルグから帰ったら何をするんですか?」

 

俺、帰ったら結婚すr死亡フラグ立てさせんな馬鹿野郎ォォォオオオッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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