前回更新からだいぶ日が経ってしまったので忘れられてると思う部分もありますが覚えていてくださった方や目を通して下さった方々には大変感謝の念を感じると共に未来永劫の感謝を(くどいのでカット
街頭の店で、1人の女性がお茶を啜っていた。
彼女は品の良い香りを楽しみながらも、しかし周囲に十分な注意を払っている。
フードを目深に被っていたからか、或いは元から影の薄さに定評があったからか、周囲の人間は誰も彼女の事を気に留めていないようだった。
山賊を尋問してからかなり時が経つ。
猟師はあの後も十代目勇者の行方を追ってはいるものの、今のところ何の手がかりも得られていなかった。
ハンザブルグほど人の出入りが活発な場所ならもしや、そう思ったのだが…どうやら思い違いだったようだ。
結局のところ、彼女は遥々足を伸ばしてやってきたハンザブルグでお茶を飲む以外の何物も成し遂げていない。
彼を拐った賊共が何者かによらずとも、時が経てば経つほど勇者の不利は目に見えていた。
彼女はふと、顔を上げる。
あと2週間。
恐らくは、それが捜索にかけられる時間としては限度だろう。
あの悪党共の目的が何であるにしろ、それまでに"あの子"を見つけなければ、きっと生存の望みは薄くなる。
それにしても奴らは"あの子"の正体を本当に知っていたのだろうか?
そんな事を考えていると、街頭から見える人の多い通りのど真ん中で4人ほどの人間が馬に乗ってやってくるのが見えた。
その内3人はピッケルハウベを被っていたし、故にどこの誰だか遠目でもよく分かる。
アレは…辺境伯に違いない。
つい最近、異端に染まった方伯を懲罰したという"話題の"領主だ。
そんな彼は自由都市の城壁を見上げて、気の抜けたように口を半開きにしている。
恐らくあの田舎者の辺境伯は100年間この自由都市を守ってきた壁に、心底感心しているのだろう。
………………………………………………
私は壁の造りを見るに、この自由都市を攻略する上で確かな一撃を与えるには既存の全ての火器では不可能であると判断せざるを得なかった。
この壁の逸話には癪に触るものも多いが、確かにそれだけを語る価値はあろう。
こんな壁の頂上からライフル銃で撃ち下ろされた日にはもうたまらない。
現状のままでは私の軍隊はこの壁に新しい逸話を付け加える以外は何ひとつ果たすことはないだろう。
「…こりゃあ骨が折れるな。見事なもんだ。」
「ええ、辺境伯様。事実、今まで一度も破られてませんからね。…さてと、通貨の話でしたね?」
「ああ、アレハンドロ。ハンザブルグで流通してる通貨について知りたい。確かこの国は銀本位制を採用していたな?」
「はい。王国は貨幣をハンザブルグで発行し、換金可能な銀は国王が管理しています。自由都市とはいえハンザブルグも王国の一部だけあって、ここでも同じ通貨が信用されていますよ。」
アレハンドロはそう言って、自身の派手な財布から銀貨を取り出した。
驚くなかれ。
この通貨の名称は『ジンバブ=エドル』。
遠い昔にジンバブなる商人が考案した銀貨が由来らしいが………なんというか…なんだろう、この…通貨危機を経験してそうな名前、もうちょっとどうにかならなかったのかな?
兎にも角にも、私はその銀貨を見つめながらアレハンドロに問い続けた。
「王国内に銀の鉱山はない…少なくとも今のところ発見されていないな?」
「ええ、そうです。銀は専ら共和国で産出され、国王がその輸入量を管理する権限を持っています。だから魔王との戦争の間、諸侯の通貨を統一できた。」
「そりゃあ戦争中だってのに通貨もマチマチじゃ困るからな。国王が財政の主導権を握っていたからこそ統一した戦争指導をできた、とも言える。…と、なると銀の密輸はやはり無理かね?」
「できないことはありませんが、相当な資金と時間が必要ですよ。」
「ハニー、水を差すようで悪いが…辺境伯領の財政は大幅に回復したとはいえ限度がないわけでない。銀を密輸するとなれば、流石に国庫も打撃を受ける。王国との戦争を考慮すればかなり厳しい。」
「それに時間もかけられないしな。…国王は金の流通量も管理してるのか?」
「いいえ、辺境伯様。金に関してはそもそもハンザブルグでも流通量が少ない。まあ、共和国で調達しろとご命令されるなら、銀の密輸よりはよほど簡単で余計な費用はかかりませんよ。…勿論値は張りますがね。」
「確か…現在王国で一番金を多く保有してるのは教会じゃなかったかい、ゲルハルト?」
「そうだな、アンドレアス。教皇様の直轄地には金山も含まれてる。"保険"の方はこれで担保できそうだな。問題は、やはり銀の調達か…。」
もうこの時点でお気づきの方もいるかもしれない。
私はこの国に莫大な量の銀を流通させる気でいる。
かつて欧州では銀本位制が覇を唱えていた。
だからこそスペイン人達は遠く離れた南アメリカまで出向いていって、先住民達を極限まで酷使して銀をかき集めたのだった。
しかしそうしてかき集められた銀も、いざ欧州に辿り着くと彼らの思い通りにはいかなくなってしまう。
南米から大量にもたらされた銀が、欧州に存在していた銀の価値を押し下げてしまったのだ。
結果として欧州ではインフレーションが巻き起こり、銀山を保有していたフッガー家や土地収入に依存していた旧来の封建領主を没落させてしまったのだった。
たしかに、この『価格革命』には欧州での人口増加も充分に加味されているし、実際のところ銀の流入はあまり影響しなかったという説もある。
しかしながらこの典型的なファンタジー世界に於いて人為的な『価格革命』を起こすというなら、有効打は期待できるはずだ。
近年銀の産出が増加傾向にある共和国では既に金本位制に移行しつつあるというし、そもそも自国通貨の根拠を輸入資源に頼るのは大変よろしくない。
国王がその辺をどう考えているにせよ、私にとって『価格革命』は…もし相応の備えが間に合うのであれば…魅力的な選択肢に思えた。
銀の価値さえすり減らすことができれば、この街はすぐに陥落する。
問題はその銀をどこから調達するか、である。
確かに共和国では銀の増産が進んでいるが、その密輸となるとアレハンドロという通りリスクと費用と時間がかかりすぎる事だろう。
最悪の場合、自分から絞首台に登るような形になる。
だからそれ以外の選択肢をどうにか見つけ出す必要があった。
私は同行するアンドレアスの方に向き直る。
「ねえ、アレハンドロ。ないとは思うけど安定した電力とかあったりする?」
「言いたいことはわかるよ、ゲルハルト。僕も同じことを考えてた。必要な薬品ならあの女魔術師が揃えてくれるだろう。粗銅なら新しく獲得した方伯領内にある。…けど、問題は電気だね。」
「なんか…三相交流とか出せる便利なモンスターとかいないかな?」
「夢を見過ぎだよ、ゲルハルト。」
「横から口を挟んですまぬが…ハニー、その"さんそーこーりゅー"とは、どんな竜なのだ?」
「ダニエラさん、ドラゴンじゃなくて電気だよ、電気。」
「でんき…?」
ファンタジー世界の住人に近代文明というものを伝えることのなんと難しいことか。
私は身振り手振りでどうにか伝えようと奮闘する。
「ほら、なんていうかな。バリバリ、ビリリッ!ってくるやつ。」
「ばりばりびりり」
ダメだこりゃ
「そんな例えじゃ分からないよ、ゲルハルト。…ダニエラさん、雷って言えば分かるかい?」
「おお、なるほど!それなら我でも出せるぞ、ハニー!」
「うんうん、そうか。分かってくれたなら…今何つった?」
衝撃のあまり目をひん剥いたのが自分でも分かる。
そんな私の様子を察したのか、馬上のおっぱいデカデカダークエルフは渾身のドヤ顔で腕を組んで見せた。
…分かった、正直に言おう。
私の目線は腕組みで寄せられたおっぱいから離れない。
「さっすがダーリン!」
「ふふん。もっと我を頼ってもいいのだぞ?我の
「驚いたな…」
アンドレアスがそう言いつつも目線をアレハンドロの方へ向けた。
あくまでダニエラさんの"種族"に関する話は我々だけの秘密である。
ところが彼の心配は杞憂だったようで、肝心のアレハンドロは雇い主をほっぽり出して道行く娼婦を追いかけ始めていた。
処してやろうかな、あいつ。
「その程度のことなら"我々"でも対応できる。」
「雷を人為的に起こせるのか?」
「ああ、ハニー。黒魔術を使えば容易なことだ。殊、安定した出力が欲しいならダークエルフの右に出るものはいまい。」
「すっばらしいね、おっぱいさん!」
未だに腕組みおっぱいから目を離せないせいでつい本音がダダ漏れになってしまっている。
道行く子供が一瞬怪訝な顔でこちらを見つめたが、すぐに母親が「見ちゃいけません」とか言いながら連れ去って行った。
そうだな、見ない方がいい。
このおっぱいは私専用ザ●みたいなモンだからね!
「ただ………ハニーがどれだけを求めているのかは分からぬが…求められる量によっては条件があろうな。」
「それは…どんな条件?」
ダニエラのおっぱいを凝視しながら条件を問う。
おっぱいは少しばかり間をおいてから、私の耳に口元を寄せて問いに答えた。
「我の仲間を何人か集める必要がある。…まずは、再び新魔王様に会ってもらわねば。」
ええ……
………あのエロスナックママ擬きにまた会うの?