サクラ大戦外伝~ゆめまぼろしのごとくなり~   作:ヤットキ 夕一

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 部屋に入り、正面の席に座っていたのが米田一基中将。そしてその横には軍服を身にまとった女性が立っている。梅里が実家で会った藤枝あやめだった。

 そして部屋の中にはもう一人、二人とは少し離れた場所に、褐色の肌に青みがかった黒髪の異国人の女性が立っていた。服装もゆったりとした異国風のもので、彼女は落ち着いた様子で目を伏せてジッとしていた。

 梅里は、そんな彼女からすぐに視線を正面の米田に戻して一礼する。

 

「お久しぶりです、米田中将。武相梅里、参りました」

「久しぶりだな、ウメ坊……って坊はマズいな」

 

 砕けた様子で話し始めた直後に苦笑を浮かべる米田。

 

「アイツは元気か?」

「祖父なら変わりありません。あ……」

 

 今頃になって気づいたように、梅里はあわてて敬礼する。

 

「し、失礼しました」

「気にするな。慣れてないのがバレバレで逆にみっともねぇぞ」

「……努力します」

「いや、それに関してはお前は努力しなくていい」

「え?」

 

 これから軍の部隊に入ろうという梅里に、生粋の軍人である米田がそう言うのはかなり違和感があり、梅里は戸惑う。

 梅里の視線を避けるように、米田は視線を逸らす。

 

「お前は軍属にはならず、民間登用という立場になる」

「……軍隊に入るのに、ですか?」

「ああ。ウチの部隊はそういう奴らが多いから、ま、その辺りはあまり気にするな」

 

 米田は雑に説明した後、隣のあやめに視線を向けて話すように促した。

 

「梅里クン、お久しぶりね。あなたの帝国華撃団の入隊を歓迎するわ」

 

 あやめはそう言って見事な敬礼をする。

 

「さて梅里クン、以前も説明したけど、あなたは強い霊力を持っているけどその霊力の質が霊子甲冑の中枢である霊子水晶との相性が悪いせいで動かすことができません。単体相手とはいえ、降魔を単独で相手にして討滅できるのに勿体ないとは思うけど……」

「──え?」

 

 そう言ってしのぶが初めて驚いた様子を見せる。

 梅里が会ってから今まで、その極端に細い目のおかげで見えなかった彼女の瞳がわずかに見えたほどだ。それほど衝撃だったのだろう。

 

「……事実よ、しのぶ」

 

 あやめがそっと言う。面をくらっていたしのぶもそれですぐに落ち着いたようで普段の様子に戻った。

 コホンと咳払いをしてあやめは話を戻す。

 

「だから戦闘部隊である花組ではなく、霊力と技術でその花組を霊力でサポートする部隊に入ってもらうわ」

「花……組?」

「帝国華撃団には五つの部隊がある」

 

 梅里のつぶやきに応えたのは米田だった。

 

「霊子甲冑に乗り込み霊障と戦う降魔迎撃部隊・花組。

生身で潜入や偵察等の情報収集を行う隠密行動部隊・月組。

他の隊の人員や装備、兵站等の輸送や管理を行う輸送空挺部隊・風組。

悪天候や厳しい条件下における他隊の活動をサポートする局地戦闘部隊・雪組──」

 

 一つ一つ挙げつつ指を曲げる米田。

 

「──そして、予知や過去認知といった霊視から除霊のような小規模霊障への対応、封印や結界による他の隊を支援する役目を帯びた霊能部隊、それがウメ、お前が配属される部隊だ」

 

 梅里のつたない軍事知識では全く聞いたことがない名前だった。ただ、特殊部隊とは聞いていたので、そういうのもあるのだろうと、知識がないことが逆にそれを受け入れていた。世界的にも珍しい部隊なのだが、そういう認識は梅里にはもちろんない。

 

「その名を夢組という。帝国華撃団夢組だ」

 

「霊能部隊……夢組、ですか」

 

 米田に言われ、やっと軍に入るという実感がわいてきた。

 今まで帝都に来てから劇場と遊園地という軍隊とはかけ離れた施設だったので全く実感はなく、むしろ観光に来たような気さえしかけていたのだから。

 

「そうよ。そして梅里クンを迎えにいった塙詰しのぶ──」

 

 あやめに言われてしのぶは深々と一礼する。

 

「──それにこちらのティーラ、アンティーラ=ナァムも夢組で、二人ともその副隊長よ」

 そう紹介されたのは先ほどから米田やあやめと一緒に梅里たちが入ってくる前から部屋にいたもう一人の女性だった。彼女もあやめ同様に頭を下げて一礼する。

 

「ティーラ? さっき塙詰さんが言っていた、予知の……」

「おぉ、もう知っていたのか。その通り、ティーラの特技は未来予知でな。普段はこの花やしきの占いの館で占い師をやっている。そうそうウメ、お前は普段は大帝国劇場の食堂で働いてもらうからな。実家で慣れてるだろ?」

「初耳ですよ、それは……って食堂? それも劇場の!?」

「帝国華撃団は秘密部隊なの。その存在を隠すため本部は大帝国劇場、支部はここ花やしきで、有事以外は花やしきか大帝国劇場で働いてもらうことになるから、そのつもりでお願いね。それと……」

 

 あやめがそっと米田を見る。米田は目を閉じたままジッとしていたが、一度大きく頷いた。

 

「梅里クン、あなたには帝国華撃団夢組の隊長をやってもらうわ」

「…………え?」

 

 いろいろ驚かされた日である今日の、一番の驚きだった。

 

「僕が、隊長ですか?」

 

 梅里は思わず自分を指さして問うと、米田は目を閉じて重々しく──

 

「ああ、その通りだ」

 

 ──と言い、それを聞きつつあやめもまた梅里を見つめながら頷いて肯定した。




【よもやま話】

 やっと米田の下に到着。そしてオリジナルではティーラが初登場。
 旧作ではティーラにあたるキャラはもっと後の登場でしたが、色々事情があってここで登場となりました。
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