サクラ大戦外伝~ゆめまぼろしのごとくなり~   作:ヤットキ 夕一

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─11─

「……ん?」

 

 梅里は気がつけば和服を着ていた。

 いつもの黄色いシャツに濃紅梅の羽織という和洋折衷スタイルでも、食堂でのコックコートでもなく、もちろん夢組として活動するときに着ている白い男性用の夢組戦闘服でもない。

 上に着ている黒い和服の袖を掴んで広げ──自分の服を確認し、

 

「これ……紋付羽織袴、だよな?」

 

 しげしげと見ながらそう思う。しかもその服には「月輪に梅花紋」の家紋が入っている。

 

(これは武相家の本家ではなく、その分家筋の家紋……)

 

 武相本家の家紋はこれではいし、そもそも本家は兄が継ぐもの。分家となる梅里がつけるべきなのはこの家紋である。

 そんなわけで合っているのだが──そんな正式な家紋がついた紋付き袴をなぜ自分が身につけているのか。皆目見当がつかない。

 そこへ──

 

「おぉ、準備はできているようだな、梅里」

 

 戸を開けて入ってくるなりそう言ったのは、梅里の祖父だった。

 

「……あ、えっと、御爺様。これはどういうこと……でしたっけ?」 

 

 梅里が尋ねると祖父は驚いた顔をした後、大きくため息をついた。

 

「おまえは、なにを言っているんだ? この大事な日に……」

「大事な日?」

「その通りじゃ。相手はすでに準備ができて隣で待っておるぞ」

「相手? 隣で待ってるって……」

 

 戸惑う梅里に業を煮やしたのか、祖父は梅里の腕を掴むと、そのまま隣の部屋へと引っ張っていく。

 そこには──

 

(つの)(かく)し……って」

 

 見事な色打掛を身にまとった女性が大人しく座っている。

 その文金高島田に結った髪の上を、幅広い帯状の布が覆っており、それこそ──角隠しと呼ばれるものだ。

 そして、それが意味するところは──

 

「け、結婚……式?」

「今更なにを言っておる、梅里」

 

 不思議そうに梅里を見た祖父は、梅里の肩をガッチリ掴み、花嫁姿の女性の前へとつれてくる。

 

「ほれ、花嫁と対面じゃ」

「……え?」

 

 戸惑い続ける梅里だが、正直、心当たりというものがない。

 だから結婚する相手が、誰なのか──もちろん分からなかった。

 梅里がおそるおそる彼女の顔を見ると、今まで俯いていた彼女も顔を上げ──

 

 

「梅里様。わたくし、とても嬉しゅうございます……」

 

 

 そう言って頬を染めた彼女は、細い目をさらに細めて笑顔を浮かべる。

 

「……しのぶさん?」

 

 結い上げられた彼女の髪は美しく、またその純和風の装いは彼女にとても合っていた。

 そんな彼女の美しさに、梅里は思わず見とれて言葉を失う。

 

「梅里、なにをしている。ちゃんと言うべきことを言わんか……」

 

 そんな梅里に顔を寄せて、祖父が注意してくる。

 梅里は慌てながらも彼女をしっかり見つめ──

 

「しのぶさん、似合ってます。綺麗ですよ」

「梅里様……」

 

 そう言うや、しのぶはパッとさらに顔をほころばせた。

 

◆  ◇  ◆  ◇  ◆

 

 ──さて、いよいよ式が始まったのだが、梅里は疑問に思っていた。

 

(えっと……いつから結婚式の話なんて進んでいたんだっけ?)

 

 流されるままに式に出ているが、いつの間に結婚するという話になったのだろうか。それさえも思い出せない

 結納をやった覚えもないし、よく考えれば求婚した記憶も──

 

「では、誓いのキスを……」

「──はい?」

 

 考え込む余りに式がどこまで進行しているのかすら分からなくなった梅里が、その言葉に顔を上げると……

 

「コーネル? なんでキミが……」

 

 目の前には神父の服を着たコーネル=ロイドが珍しく生真面目な顔で梅里と、その隣の女性を見ていた。

 

(は? え? なんでコーネル? というか──)

 

 西洋式では服装がおかしいだろ? と思いながら隣をちらっと見ると、白いヴェールを頭にかけ、白いウェディングドレスを着た女性がいる。

 

「──え?」

 

 その事態に梅里は戸惑った。

 さっきは確かに色打掛に文金高島田という装いだったはずだ。それがなんで──見れば自分の服装も紋付き袴ではなく、タキシードに変わっている。

 

「なんで? いつの間に?」

 

 自分の服装さえも変わっている事態に梅里は混乱していた。

 すると花嫁がスッと動いて、梅里の方へと体を向ける。

 

「……誓いのキスを」

 

 横から、コーネルが催促するかのように、もういちど声をかけてきた。

 

(ああ、もうどうなってるんだよ……)

 

 大混乱の最中、サッパリわけのわからない事態に対する文句を思いながらも、今は結婚式の最中なのをかろうじて思い出す。

 さすがにここで手順をめちゃくちゃにするわけにはいかない。

 梅里は戸惑いながら花嫁のヴェールを上げ──

 

 

「梅里さん。私、幸せです。素敵な家庭を作りましょうね」

「……かずらちゃん?」

 

 

 いつの間にやら花嫁が入れ替わっていた。

 さすがに唖然とした梅里だったが、かずらはお構いなしに目を閉じて顔を上げ、キス待ちの体勢になっていた。

 

「え? なにこれ? ちょっと事態が……」

「梅里さん、早く……早くしてください」

 

 戸惑う梅里に小声で催促してくるかずら。

 

「早くしないと、あの人が──」

 

 

「その結婚、ちょっと待ったァァァッ!!」

 

 

 バーンと後ろのドアが勢いよく開け放たれ、そこに立っていた人影が堂々と言い放った。

 彼女が着ていたのは白無垢。頭には綿帽子をかぶっている。

 その彼女はその服装でよくそんな速度出せるな、という速さで梅里とかずらのところへサッと近づくと、梅里の手を取る。

 そして、見上げた彼女の顔は──

 

「せり……なにやってんの?」

「なにやってんの、じゃないわよ! あなたこそなにやってんのよ!!」

「なにってそりゃあ……」

 

 梅里は周囲を見る。

 目の前には白無垢のせり。

 反対側にはウェディングドレス姿のかずら。

 

「梅里様、わたくしというものがありながら……なんてひどい仕打ちを」

 

 いつの間にか背後には先ほどの色打掛に角隠し姿のしのぶが、「よよよ……」と泣いている。

 

「……どういう状況? いや、本気で」

 

 戸惑うを通り越して呆れかけている梅里。

 そんな彼に──

 

「さぁ、ウメくん! 誰を選ぶの!?」

 

 そんな声がかけられ──見れば先ほど神父服姿のコーネルがいたはずの壇上には、いつの間にか彼は姿を消し、代わりに修道服を身にまとった女性が立っている。

 セミロングの髪をポニーテールにした、実に楽しそうに満面の笑みを浮かべた──鶯歌であった。

 

「鶯歌……いったいなんだよ、これ」

「ん~、花嫁バトルロイヤル?」

 

 ちょっと考えて適当なことを言った鶯歌に、梅里は思わずため息をつきかけるが……そんな梅里を、せりとは逆の腕を掴んだかずらがグイッと引っ張る。

 

「さぁ、梅里さん。誓いのキスをしちゃいましょう。そうすれば他の泥棒猫たちも文句は言えなくなるはず──」

「だ・れ・が、泥棒猫よッ!!」

 

 そう言って、掴んだままの腕を力いっぱい引っ張るせり。

 言い合う二人の隙を突くように、スッと近寄るしのぶ。

 

「あの、梅里様……わたくし、あなた様に裸体を見られた以上、あなた様のところ以外にはお嫁にいけません」

「なによ、その謎のしきたりは!」

「そうですよ。それを言うなら、私だって梅里さんに裸を見られてますし……」

「かずらの場合は見せたんでしょうが。それに私だって見られてます~」

 

 かずらの言い分に、せりが口をとがらせて反論する。

 

「酒に酔って服を脱いだ酒乱とか、自ら裸になって見せた痴女と違って、私の場合は覗かれたんですけど、ね!」

「あぁ、ということは事故ということですね。つまりは、せりさんにとって梅里さんは見せたくもない相手ということですもんね」

「あぁ、梅里様。おいたわしや……事故で見たくもないものを見せられるとは本当に……」

「あのねぇ。別にそうはいってないでしょ。そもそも、酔っぱらいに裸を見せられる方がよほど事故でしょうが」

 

 そう言って、せりは意地悪く失笑し──

 

「しかも、それが見るに耐えないようなものではなおさら……」

「見るに耐えないとは、どういう意味でございましょうか!?」

「あぁ、それは夢も希望もない、しのぶさんの胸のことじゃないですか?」

 

 コンプレックスを指摘されて激高するしのぶに、それをあおるかずら。

 

「~~ッ!!」

 

 しのぶはもはや我慢ならないとばかりにキッと顔を上げ、そして梅里に詰め寄った。

 

「梅里様! あなた様にとって女性の価値は胸だけではございませんよね? むしろ“すれんだぁ”な方が好みでございますよね?」

「あらあら、必死ですねぇ、しのぶさん。梅里に変な嗜好を求めないでくださいませんかぁ? やっぱり男の人が見るのは胸ですよ、胸」

「そういうせりさんも言うほどありませんよね……花組のカンナさんとかに比べたら、ぜんぜん普通じゃないですか。その点、私はまだまだ発展途上ですし、梅里さんの好きにしてもらって……」

 

 そう言ってズイッと詰め寄るかずら。

 負けじとせりも距離を詰め──

 

「梅里!」「梅里様!」「梅里さん!」

 

 

「「「──誰を選ぶんですか!?」」」

 

 

 綿帽子のせり、角隠しのしのぶ、ヴェール姿のかずらが見上げるように梅里に詰め寄った。

 そんな姿を修道服の鶯歌が楽しそうに傍観し──

 

◆  ◇  ◆  ◇  ◆

 

「う~ん…う~ん……」

「あの……大丈夫ですか? 武相主任」

 

 中庭のベンチでうなされている梅里を、真宮寺さくらが体を揺さぶって起こそうとしていた。

 その隣には心配そうな大神もいる。

 

「──ハッ!? こ、ここは……」

 

 ビクッと体を震わせて、梅里が目を覚ますと、心配そうな顔をしたさくらと大神が梅里を覗き込んでいた。

 

「えっと……帝都、だよね?」

「は、はい。大帝国劇場ですけど……」

 

 梅里は恐る恐る自分の服装を確認する。

 濃紅梅の羽織に、黄色いシャツといういつもの服装。紋付き袴でもタキシードでもなかった。

 それを確認して、思わず大きく安堵のため息をつく。

 

「よかった……夢か」

「主任さん、大丈夫ですか? なにか、だいぶうなされていたみたいですけど……」

 

 そう言ったさくらの姿を見て、梅里は思わず後ずさった。

 悪夢の内容から生まれた女性への恐怖感から、思わず距離をとってしまったのだ。

 そんな梅里の反応を不思議そうに見るさくらに、梅里は思わず謝る。

 

「ご、ゴメンね、真宮寺さん。それと、心配してくれてありがとう。大神さんも……」

「いやいや、武相主任がそこまでうなされるなんて、いったいどんな夢だったんだい?」

 

 苦笑混じりに訊いてくる大神。

 そんな彼をじっと見つめる梅里。

 

「……大神さんも同じような悪夢、見そうだけどなぁ。対象人数は僕の倍もいるんだし」

「え?」

 

 思わず梅里が小声でつぶやくと、大神は戸惑った顔になる。

 そんなやりとりをしていると──なにやら騒がしい一団が中庭へと駆け込んできた。

 女性が三人。そのメンバーはといえば──

 

「せりさんに、しのぶさん、それにかずらちゃん……いったいどうしたんですか?」

 

 その鬼気迫る三人の様子を、さくらが驚いた様子で見ている。

 なにかを抱き抱えた様子のせりが視線を走らせ──

 

「──いた!!」

 

 そう叫ぶや、三人が揃って駆け寄ってくる。

 ベンチに腰掛けていた梅里の元に、給仕服姿のせりとしのぶ、それに緑の着物袴姿のかずらがやってくるや、一気に詰め寄った。

 

「主任!」「梅里様!」「梅里さん!」

「「「──これは、どういうことですか!?」」」

 

 三人がいいながら、せりが抱いていたものを梅里に突きつける。

 先ほどの悪夢を思い出した梅里が顔を引きつらせつつ、差し出されたものを恐る恐るみる。

 それは──

 

「赤ちゃん、ですか?」

 

 梅里の傍に残っていたさくらも興味深そうにその子を見ていた。まだ幼いその子は寝ており、三人がこれだけ騒いでも気にすることなく寝続けていることに驚いた。

 将来はさぞ心の強い子になるだろう。

 

「え……と、どういうことって──どういうこと?」

 

 梅里が苦笑しながら頬を掻く。するとせりが怒って赤ん坊をさらにつきだした。

 

「とぼけないでよ! さすがに今回は、私もあなたを許せないからね」

 

 そう言って梅里の手に赤ん坊を抱かせる。

 

「え? この子はいったい……」

 

 梅里が戸惑っていると、その子を包んでいる布の上に置いてあった手紙が地面に落ちた。

 それを大神が拾い上げ──読み上げる。

 

「えっと、なになに……約束の子をお連れいたしました。どうぞ自分の子供と思って大切に扱ってください……武相梅里様へ…………」

 

 最後まで読み切って、なんとも気まずそうに梅里を見る大神。

 そしてその横にいるさくらの梅里を目はあまりに冷たかった。

 

「主任さん、これはあまりにも……」

「さくらさん、大丈夫。ここは花組の手を煩わせるわけにはいかないわ。私たちで断罪するから」

 

 抗議しようとしたさくらをせりが遮る。

 

「え? いや、ちょっと待って……いったい、この子、どうしたの?」

 

 戸惑う梅里に対し──

 

「先ほど本部に来られた道師様が「劇場の入り口で渡された」とおっしゃいまして……」

「それで、食堂にいた私たちが調べたら、さっき大神さんが読んでくださった手紙が入ってて……」

「あなたの、隠し子ってことが判明したのよ」

 

 しのぶ、かずらの後を継いだせりがキッとにらみつける。

 それを聞いた梅里は慌てて否定した。

 

「はあッ!? 隠し子!? いやいやいやいや、ないってそれ!!」

「この期に及んでまだしらを切るつもり!?」

「梅里様、手紙があるのにそれは、あまりにも往生際が悪いかと……」

「いや、だって……身に覚えないから! 本当に知らないんだって。大神さん、さっきの手紙、最後にわざと僕の名前出してません? 本当は大神一郎様へって書いてあったんじゃないですか?」

「な、なにを言い出すんだ! 武相主任!!」

 

 巻き込まれた大神が焦る。その隣ではそれで疑念を向けたさくらが大神をジト目で見ている。

 

「……大神さん?」

「ご、誤解だ、さくらくん。むしろねつ造だよ! さっきの手紙を見ればわかる!!」

 

 大神が焦り、さくらがひったくるようにその手紙を奪うと、それを確認し──

 

「武相主任、往生際が悪いですよ。サイテーです」

 

 誤解が解けたさくらは、その元凶である梅里を、まるでゴミを見るかのような目を向ける。

 

「いや、違うんだって。これはなにかの勘違いで……」

 

 テンパったままの梅里は、まだその手にある赤ん坊をどうしようかとオロオロしていると、それをかずらが受け取った。

 

「パパは薄情でちゅね~。こんなにかわいい女の子なのに……は~い、私がママでちゅよ~」

「「はあッ!?」」

 

 今度はせりとしのぶが驚いてかずらを見る。

 

「か、かずら、あなた……まさか……」

「せりさん、落ち着いてくださいませ。かずらちゃん、今まで妊娠なんてしていなかったじゃありませんか」

「そ、そうよね……ど、どういうつもりよ、かずら」

「え? だって、この子のお母さんは分からないわけですし、でも梅里さんの子供なのは確定ですから、それなら私の子供でもあるわけで……」

「なんでそうなるのよ!!」

 

 抗議するせりに対しかずらは──

 

「私は、そんな梅里さんの甲斐性をも許容できますよ?」

 

 そう言って、菩薩のような笑みを浮かべる。

 そんなかずらに、せりは絶句していたが──

 

「……かずら。あなた、赤ん坊の抱き方がなってないわよ」

 

 せりが指摘すると、かずらは「え?」と戸惑い、その隙をついてせりが赤ん坊を奪う。

 そして──

 

「は~い、やっぱりお母さんに抱かれるのが一番安心するわよね~」

 

 手のひらを返したせりがあやし始める。それをジト目で見つめるかずら。

 

「誰がお母さんですか! さっきまでとはまるで態度を変えて! 卑怯ですよ、せりさん!」

「私も考えを改めたのよ。子供に罪はないってね。そもそも……あんなあやし方で、今まで幼い妹弟の世話を見てきた私に、かなうとでも思ってるのかしら?」

「あの……そろそろ赤ちゃんが可哀想かと……」

 

 せりとかずらがにらみ合う横で、苦笑を浮かべるしのぶ。

 そこへ──

 

 

「アーッハッハッハ!! 愉快愉快。楽しませてもらえたのう」

 

 

 大爆笑しながら、高齢の女性がやってきた。

 もちろん梅里達は見覚えがある。

 

「ど、道師……」

 

 戸惑う四人と、大神&さくら。

 やってきたのは夢組除霊班の支部付副頭にして武術師範であり、隊員達から『道師』と慕われる女性だった。

 

「いやいや、隊長殿。この子は隊長の子なんかじゃありゃせんぞ」

「──はい?」

 

 ポカンとする梅里。

 

「いや、前に言っとったじゃろ? ワシの孫を見たいと」

「あー、言ったような……気がする」

 

 一月の『夢十夜作戦』の説明をしたとき、たしかそんなことを言ったはずだ。

 

「……ということは、まさか」

「この子は、道師様の……」

「御孫さん、ってことですか?」

 

 せり、しのぶ、かずらが道師と赤ん坊を見比べるように視線をその間で動かしつつ、恐る恐る尋ねると、道師は豪快に笑いながら──

 

「その通りじゃ!」

 

 キッパリと肯定した。

 

「では、この手紙は?」

 

 訝し気に大神が尋ねると、道師はニヤリと笑みを浮かべる。

 

「嘘は書いてないじゃろ?」

「え? ……それは、たしかに」

 

 戸惑いながらも再び手紙を見て、そして納得する大神。

 どこにも梅里の子供とは断定していないし、自分の子供のように大切に、とは丁寧に扱うようにととらえればその通りだろう。約束していたのも間違いない。

 ついでに言えば、帝劇の前で自分の子供から預かったので、三人に渡すときの話も嘘をついていない。

 

「なーに、こう書いておけばおもしろい展開になると期待しておったのじゃが……予想以上の成果じゃったのう」

 

 さらに声をあげて笑い、御満悦な様子。

 

「ただなぁ、このままだとこの子がせりやかずらの嬢ちゃんを親と間違えて覚えかねないからの。ワシも怒られてしまうし、こうして名乗り出たというわけじゃ」

 

 悪びれることなく、せりの手から赤ん坊をひょいと奪い去る道師。

 そんな彼女に対し──

 

 

「「「「道師ーッ!!」」」」

 

 

 四人があげた抗議の声に、道師は豪快に笑うのであった。

 

◆  ◇  ◆  ◇  ◆

 

 ──天下太平こともなし。

 こうして梅里たち夢組や、大神たち花組が戦闘もなく日常を楽しめるのも、平和である何よりの証拠である。

 しかしそれは、彼ら帝国華撃団が勝ち得たものである。

 大きな戦いに勝利し──藤枝あやめという尊い犠牲をはらい、どうにか得たその平和が一刻も長く続いて欲しい。

 それはあの戦いを生き抜いた者達の切なる願いであった。

 




【よもやま話】
 実は、旧版のエンディングもこんな夢を見てました。
 思えばリメイクして、いきなり主人公が幼なじみの命を奪うというシリアスなシーンから始めたはずなのに……気がつけば刺されたそのキャラまで登場してのドタバタコメディで終わるという、最初と最後では落差のある作品になりました。
 それに悔いはありませんけど。
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