【コミカライズ】最強の剣神、辺境の村娘に生まれ変わる。   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

83 / 87
遅れましたぁ!
コミカライズ作業で漫画の楽しさに目覚めちゃって、こっちのモチベーションががが……!


80 怒れる神

「リンネ、ちゃん……」

「すまん、アリス。遅くなった」

 

 疲弊状態の孫娘を安心させるべく声をかける。

 ……アリスもシオンも他を助けるために走り回ったのか、思っていた場所にいなくて、かなり焦った。

 

 そんな二人をこうして見つけられたのは、アリス達の機転あってこそだ。

 

「随分派手に暴れたな。良い判断だったぞ」

 

 周りを見れば破壊され尽くした森の姿。

 ここから聞こえてきたのは、他の戦場とは比較にならん大破壊音。

 ユーリのいる野営地から聞こえるそれに匹敵する轟音は、私をこの場へ走らせるのに充分な目印だった。

 

「シオンさんのアイディアです」

「そうか。頑張ったな」

 

 意識があるのか無いのかわからないほど疲弊して倒れているシオンを賞賛する。

 よくぞ考え、よくぞ時間を稼ぎ切った。

 

「!」

 

 その時、背後で一つの見知った気配が消えた。

 オリビアだ。

 ということは、つまり。

 

「オリビアくん、転移完了です!」

「よくやった!」

 

 これで援軍が来るのは時間の問題。

 アレクか、マグマか、騎士団の精鋭部隊か。

 それが来るまで保たせれば勝ちだ。

 

「奴とは私がやる。今度はアリスとシオンを守ってくれ。二人ともかなり疲れてるからな。ランスロット、お前も休め」

「リンネくん、俺は……」

「胸を張れ、剣聖!!」

「!」

 

 また情けない顔になりかけたランスロットに活を入れる。

 

「あれはウチの三剣士に届く化け物だ。それを相手に教国の『聖剣』も無しに持ち堪えた。充分だ」

 

 おかげで未来ある若者が誰も死なずに済んだ。

 

「お前が正式に剣聖の継承を済ませたら、心から頼れる味方になる。だから、今は胸を張って休んでろ」

「…………君には敵わないな。ますます惚れ込んでしまいそうだ」

「やめろ! 悍ましい!」

 

 妻よ、我が貞操を守りたまえ!

 

「──さて」

 

 味方への声かけを終え、改めて敵へ語りかける。

 

「待たせたな」

 

 私が喋ってる間、待てをされた犬のように、ワクワクした顔で止まっていたライゾウ。

 短い付き合いでもわかる、こいつの悪癖。

 戦いを楽しむためなのか、最大限ベストな相手の全力を味わおうとする。

 

「なんなら援軍が来るまで待ってくれてもいいが」

「さすがにそれは困るでござる! 殺し方は好きにしていいと言われていても、殺さずに帰ってきていいとは言われておりませぬゆえ!」

「なんじゃそりゃ」

 

 中途半端な飼い方をする飼い主だな。

 あるいは、こいつに根負けでもしたのか。

 

「まあ、それならある意味好都合」

 

 私には大人として、確実に子供達を守れる選択をする義務がある。

 だが、敵に見逃すつもりがないのなら、このハラワタを煮えくり返らせる怒りに、蓋をする必要がないのだから。

 

「くたばれ、ライゾウ」

「ああ、これが本気のリンネ殿……! 実に、実に滾るでござる!」

「死ね」

 

 ──神脚。

 一足でライゾウとの距離を詰める。

 そのまま剣を、下段から上段へと振り抜く。

 

「神速剣『一閃』!!」

「ッ!?」

 

 初手から全力全開。

 こいつ相手に比較的不得手な守りの剣を使えば、押し込まれて時間稼ぎすら成立しないだろう。

 なら、押して押して押しまくるのみ!

 

「ハハハッ! 速いッ!!」

「チッ!」

 

 さすがに向こうも速度に優れた剣士。

 ライゾウは普通に神速剣を見切り、防いだ。

 

「『五月雨』!!」

「ぬぉ!?」

 

 構わず連続攻撃!

 カゲトラとの戦いを見た感じ、こいつも私と同系統。

 守りより攻めに強く、比較すれば守りの剣に隙があるタイプ。

 

 その隙を強引に暴き出すように剣を振り続ける。

 なんなら、これで死んじまえ!

 

「『雷神憑依』!!!」

「くっ……!」

 

 ライゾウの肉体が雷撃を纏う。

 シオンの未熟な模倣とは違う、本家本元の和国の奥義。

 

 雷の修羅の口元に、大きな大きな笑みが浮かぶ。

 まだ二十代の前半。

 肉体はともかく技術の全盛はまだまだ先だろう若造から、とんでもないプレッシャーを感じる。

 

「リンネ殿。心より侘びるでござる。所詮はシオン殿より年若い幼子だと、心のどこかで見くびっていた」

「見くびったまま死んどけよ」

「それは武人としてあんまりでござるよ!?」

 

 うるせぇ。

 こちとら根っこが武人じゃなくて不良兵士なんだよ。

 

「ともあれ、これより全力! ご賞味あれ!」

 

 雷撃を纏ったライゾウが動き出す。

 踏み込み、直進、振り下ろし。

 

「『稲妻斬り』!!」

「ッ!?」

 

 速いわ!?

 老年期の私を超えかねない圧倒的なスピード。

 通常攻撃が必殺技!

 

「『流』!!」

 

 まずは一発受け流す。

 このまま守りに入れば終わり。前に出ろ!

 

「『一閃』!!」

 

 前に踏み込みながらの受け流しで懐に入り、小娘の短いリーチを活かして至近距離からの一閃!

 

「!?」

 

 だが、突然ライゾウが消えた。

 消えたと錯覚しそうなスピードで後退し、即座に助走をつけて戻ってくる。

 

「『電光刺竜・雨』!!」

「ぐぅぅ……!」

 

 突進しながら、超速の刺突の連撃!

 まるで雷の雨のようなそれに押され、弾き飛ばされる。

 

「リンネちゃん!?」

 

 アリス達から引き離され、開けたところに出た。

 

「『雷速太刀足』! 『雷旋風』!」

 

 周囲を囲むようにライゾウが跳ね回る。

 四方八方前後左右上下から絶え間なく雷刀が飛んでくる。

 

「ッ……!」

 

 私のお株を奪う高速連続攻撃。

 正直、結構マズい。

 

 今の私が自分の全力に耐えられる時間は約10分。

 それはあくまで、自分のペースで戦えればの話。

 リズムを崩され、ダメージが蓄積すれば、当然限界はより早く訪れる。

 

「ああ、クソ……! 衰えを感じる……!」

 

 前世の頑強な肉体があれば、たとえ枯れ果てた老人の身でも限界を越えられた。

 限界を引き出し続けることもできない、魔剣もロクに持てない、限界突破なんてもってのほかの小娘の身体でそれは不可能。

 何より、こんな言い訳じみた考えが浮かんでくること自体、衰えの証だ。

 

「どうする……!」

 

 ライゾウは強い。

 圧倒的な才覚に充分な鍛錬、加えて十剣すら手にした猛者。

 弟子どもに勝ちうる『最強』の領域に片足を突っ込んでいる。

 衰えた心身では相当厳し──

 

「ッッッ!!!」

 

 その時、視界の端に、アリスの姿が映った。

 心配して様子を見に来たのかもしれない。

 

 瞬間、目が覚める。

 

「十一の太刀──」

 

 ライゾウが動く。

 連撃の中に新しい技を混ぜ込んでくる。

 

「『虎挟』!!」

「それは──」

 

 私も動く。

 ライゾウの動きに完璧に対応する。

 

「前に見た!!」

「!?」

 

 後ろに回った時に魔法を使い、それが発動する前に正面に回って挟み撃ちにする技。

 カゲトラとの戦いで使った技。

 

 後ろから来る雷の槍を躱し、その軌道に合わせるように剣を振るう。

 己の剣撃にライゾウの雷を混ぜ、擬似的に威力の限界を越える!

 

「神速飛剣『大嵐』!!」

「ぬわぁあああ!?」

 

 雷撃を纏った極大衝撃波がライゾウを吹き飛ばす。

 負担の大きい大技。

 それでも決定打には程遠い。

 

 だから、覚悟を決めて切り札を使う。

 

「できれば使いたくなかったが……」

 

 収納の魔道具からソレ(・・)を引き抜く。

 ライゾウとも因縁のある一振りの刃。

 和国との交渉が纏まるまで、私が預かっている十剣の一つ。

 

「カッコ悪いところは見せられないんでな……!」

「おお! それは!」

 

 ライゾウの瞳が一層キラキラと輝く。

 ──『妖刀』紅桜。

 目の前の天才に脳を焼かれた哀れな男を狂わせた、呪われた名刀。

 

「これを抜いたからには、秒で終わらせるぞ」

 

 今の傷ついた身体で十剣を使えば、1分と保たずに戦闘不能になるだろう。

 すまん、ユーリ。

 できれば少しは余力を残して手伝いに行きたかったが無理そうだ。

 

「──来い。『最強』と呼ばれた剣技を見せてやる」

「ッッッ〜〜〜!!!」

 

 口角を限界まで吊り上がらせ、頬すら赤く染めたライゾウが構える。

 さあ、最後の攻防だ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。