あっ、お久しぶりです。←前回来週投稿するとか言って四週間音沙汰すらない奴
言い訳します。全部あのウィルスが悪いんだ!(それが全てではない)
お気に入り・評価していただいた皆様ありがとうございました。こんな作者ですがこれからもよろしくお願いします。
飛行訓練の一件から特に何事もなく、ハリー達は学校生活にいそしんでいた。
「なに読んでるの?」
出される宿題の量も増え始め、勉強に追われるハリーが、既に宿題を終わらせたジンジャーに問いかけた。
「この前見つけた魔法の本だ。」
そう言ってジンジャーが差し出したのは『ルーン魔術基礎理論』という、難しそうな本だった。
「面白いの?」
「あぁ。事前に魔法を用意しておけるというのは、とても面白い。杖なしで使える魔法なんて知らなかったよ。」
そのまま、ジンジャーは話し続ける。ハリーはこんなにも饒舌なジンジャーを見た事がなかった。
ある程度話すと、ジンジャーはハッとして話をやめる。
「ごめん。つい話すぎた。お詫びに宿題を手伝うよ。」
ジンジャーの話は実際面白かったため、その言葉でハリーも宿題のことを思い出した。
その後近くにいたマルフォイも一緒に、ジンジャー助けを借りてようやく魔法薬学の宿題を終わらせのだった。
そんな調子で日々は過ぎ去り、気付けばハリー達が入学してから2ヶ月が経っていた。
「トロールが!」
10月31日の夜。ジャックオーランタンなどで飾り付けられた大広間でハロウィンパーティーが催されている最中、その声は大きく響き渡った。
「トロールが地下室に!お知らせしなければと!」
そこまで言うと大声の主であるクィレルは、広間の床に倒れ伏した。
少しの間の後、言葉の意味を理解し始めた生徒達が悲鳴を上げながら我先にと駆け出した。
「落ち着け!」
トロールが分からずキョトンとしているハリーの前では、みっともなく叫び声を上げているマルフォイに、ジンジャーが注意を入れている。
「静まれ!」
最も最初に駆け出した生徒が広間の扉に差し掛かろうかというところで、先程のクィレルの声よりもさらに大きな声が広間を支配する。
その声に全員が静まりかえり、声を発したダンブルドアの方を向き直った。
「監督生の指示に従って寮に戻りなさい。無論、慌てずにじゃ。」
ダンブルドアの言葉通りに生徒達は動き出した。
「ジンジャーは落ち着いてたけど、トロールって何?」
寮へ戻る途中、ハリーがジンジャーに聞く。
「図体がでかいだけで、知性はない人型の生き物だ。下級生ならともかく、上級生や先生方ならどうとでもなる。」
「なるほど、あれ?じゃあ違和感が…。」
考え事にふけるハリーの視界の端でふと、地下室のほうへ向かう人影が映った。
「止めなきゃ!」
「どうした?」
「生徒が一人地下室の方に向かってた!」
そこまで言うとハリーは、その生徒を追って行った。
「おい!…まったく。マルフォイ、先生に会ったら一応説明しておいてくれ。」
「本気かい?」
マルフォイは、信じられないと言わんばかり表情で聞き返す。
「あぁ」
それだけ言い残し、ジンジャーもまた列を外れ、移動を始めた。
残されたマルフォイはぶつくさと文句を言いながら、その背中を見送った。
▪️ ▪️ ▪️
地下室への階段にほど近い廊下で、ハリーは追いつくことができた。
その人物をよく見ると、ハリーには初日に会った、ウィーズリーであることがわかった。
「どうしてこんなところに?」
息を整えながらハリーが聞く。
「ハリー・ポッター?」
どうやらウィーズリーもハリーのことは覚えていたようだった。
「早く帰らないと危ないよ。」
「でもハーマイオニーが!」
「ハーマイオニー?その子がどうかしたの?」
ハリーには、なにがなんだか分からなかった。
「ずっと女子トイレにいて、トロールのことを知らないんだ。」
ウィーズリーが言い切ったその時、地下室の方から大きな影が唸り声を上げながら階段を上がってきた。
ハリーとウィーズリーはとっさに物陰に隠れる。
のっそりと登ってきたのは、予想通りトロールだった。
トロールはそのまま近くにある小さめの扉に入っていく。
「あれが本物のトロールか。」
突然、ハリーの真後ろから声がした。
「え?…なんだジンジャーか、びっくりした。」
その声にハリーが急いで振り返った先には、追いかけてきたのだろうジンジャーがいた。
「それで?なんで帰らない?」
「生徒が一人女子トイレにいて、トロールのことを知らないんだって。連れ戻してあげなきゃ。」
それを聞くと、ジンジャーはこわばった顔になる。
「その生徒がいるのは、あの女子トイレじゃないよな?」
言いながらジンジャーはある扉を指差す。
ハリー達が指差す先を見ると、そこは先ほどトロールが入っていった場所だった。
瞬間、扉の奥から大きな悲鳴が上がった。
「ハーマイオニー!」
ウィーズリーは青ざめた顔で走り出そうとする。
「最悪だな。」
ジンジャーはウィーズリーを掴みそれを阻止する。
「何するんだ!」
ウィーズリーが怒りもあらわに怒鳴りつける。
「相手は腐っても化け物だ。一年が無策で突っ込んで勝てる相手じゃない。」
「じゃあハーマイオニーを見捨てるっていうのか⁉︎」
「そんな事はしない。…まぁ、確かに作戦なんか伝えてる時間はないな。」
そこでジンジャーは少し考えるような仕草をする。
「よし。お前達は何も考えずにその生徒の所に向かってくれ。そして合図をしたら目を瞑れ。そこからは俺がなんとかしよう。」
「分かった。」
不安そうな顔ながらも、ウィーズリーもうなずく。
そして、三人は女子トイレに突入する。
中ではグレンジャーが逃げ回っている最中だった。
「助けて!」
グレンジャーがハリー達を確認し、声を上げる。
ハリー達は至近距離で見るトロールの大きさに一瞬怯むも、その声を聞き、ジンジャーに言われた通り駆け出す。
逃げるグレンジャーを追いかけ回していたトロールも、自分の足下を走る人間は気になるのか、そちらに狙いを定め棍棒を振り回す。
ハリー達は、なんとかそれをかい潜りグレンジャーの元にたどり着いた。
ただ、グレンジャーにとっては、なぜトロールに何もせずに自分の元へやってきたのか、訳がわからなかった。
その懸念通り、トロールは元気に自分たちの方へ武器を持って近づいてきている。
「今だ!」
しかし、グレンジャーがその考えを口に出す暇もなく、ジンジャーからの指示が飛んでいた。
ハリーは、トロールが武器を振りかぶるのも気にせず目を瞑る。
ウィーズリーは恐怖心もあり、目を瞑る。
「ルーモス・マキシマ!」
その直後、ジンジャーの呪文を唱える声が響き、杖から小さい何かが飛び出す。
それは、今にも棍棒を振り下ろさんとするトロールの目前まで来た瞬間、辺りに光を撒き散らし、弾ける。
同時に、甲高い悲鳴と、野太い呻き声が上がった。
「よし!トロールが動けない今のうちに!早く!」
ハリーはまぶたの向こうから光を感じたあと、目を開ける。
そこには、目を押さえてのたうち回っているトロールと、同じく目を押さえているグレンジャーがいた。
「何が起こったの⁉︎」
「いいから早く!」
状況を理解したハリー達は、未だ動けないグレンジャーの手を掴み、出口へと向かう。
「急げ!」
しかし、もう少しで出口というところで声が上がる。
その声に、トロールの方を向き直ると、目を閉じたまま手当たり次第に棍棒を振り回していた。
見えないながらも声に反応したのか少しずつこちらに近づいてきている。
そこでジンジャーが動く。いつのまにか手に持っていた洗面台のかけらを、トイレの奥に向かって投げつけたのだ。
それは、ガシャンと音を立てながら割れる。
トロールは、その音のなった方にのっそりと向かっていった。
その隙にハリーはグレンジャーの口を押さえ、音を立てないようにしながら今度こそトイレを脱出した。
「ふぅ。さっさと寮に戻ろう。」
ジンジャーはトイレの扉に鍵を掛けながら、焦ったように言う。
「こんなところ先生方に見られたら、なんて言われる…か。」
扉から廊下に向き直ったジンジャーの歯切れが、後半になるにつれ悪くなってゆく。
何があったのかと、ハリーも廊下に目を向ける。
そこには、鬼の形相でこちらに掛けてくるマクゴナガルの姿があった。
「これはいったいどういうことですか⁉︎」
マクゴナガルは、ハリー達がいる女子トイレの前まで来ると、一気に捲し立てた。
「なぜトロールの呻き声がする部屋からあなた達が出てくるのです⁉︎」
「えーっと、そのー…。」
あまりの気迫に気圧され、ハリーにはうまい言葉が出てこなかった。
「俺たちはウィーズリーに頼まれて、手を貸しただけです。詳細はウィーズリー達に聞いてください。」
ジンジャーの言葉に、先生達の視線が一斉にウィーズリーに向けられる。
「あー…。僕のせいなんです。僕のせいでハーマイオニーが女子トイレにこもってて、それで呼びに来たんです。」
「貴方のせいとはどういう事ですか?」
「それは…」
ウィーズリーは悩ましげな表情を浮かべた後、続ける。
「僕がハーマイオニーに、その…ひどいこと言っちゃって、それが原因です。」
マクゴナガルは、一つ、大きなため息をつく。
「事情は分かりました。…Mr.ウィーズリー、レディを泣かせるなど言語道断です。グリフィンドールから5点減点!」
ウィーズリーから悲痛な声が上がる。
「しかし、グレンジャーを助けに来たその勇気は認めましょう。…グリフィンドールに十点。」
次に、マクゴナガルはハリー達に向き直る。
「この十点は貴方達にもです。」
今度は全員を見渡す。
「ただし、今度からは生徒だけでなく、教師に助けを求めることです。…寮にお戻りなさい。それぞれの寮でパーティの続きをしているはずです。」
そこまでいうとマクゴナガルは、着いてきていたスネイプとクィレルを引き連れ、女子トイレに入って行った。
「ジンジャーはすごいね。」
お礼の言葉を受け取り、ウィーズリー達と別れスリザリン寮に戻っている道すがら、ハリーが切り出した。
「何がだ?」
「何って… あの子を助け出したことだよ。」
その言葉に、ジンジャーはフッと笑う。
「あれくらいなら君もすぐに思いつけるようになる。」
「そうかなぁ?」
ハリーは疑いの眼差しをジンジャーに向ける。
「あぁ、スリザリンに入ったってことは、少なからずそういう素質を持っているって事だと、俺は思う。」
ハリーは少し考え、表情を明るくする。
「そうかもね。じゃあ、もし次に危ない事が起こったら私が助けてみせるよ。」
「そうそうそんなことは起きないだろうがな。」
そのジンジャーの言葉に苦笑する。
「…あ!でもちゃっかりウィーズリーに頼まれたことにして、責任全部押し付けたのは尊敬できないな。」
「…まぁ、それもスリザリンらしいと言えばらしいだろう?」
ハリーの咎めるような言葉と視線に、ジンジャーは目を合わせずにそんなことを言ってのける。
そんな話をしながら、二人は寮への道を進んで行った。
どうでしょうか?作者の考えるスリザリンらしさ、伝わりましたか?この作品はこんな感じで進んでいく予定です。