前の作品を見たことがあると言う『超』が100個ついても足りないぐらい激レアな方にはこんにちは。
どうもヒポヒナです。
まずは、皆さんこの作品を気になって開いてくれてありがとうございます。
『注意』
・この作品では、オリジナルキャラクターが数名登場します。(タグの通り、主人公がオリキャラです)
元のバンドリのストーリーを壊したく無いと言う方、オリキャラが嫌いな方は読むことをお勧めしません。
・投稿した後に誤字脱字、キャラの口調を修正することが多々あります。大きく内容を変更することはないので、そこまで気にしないでください。
・私が書く話は1話につき1万文字を超える事もよくあるので、時間に余裕を持って一気に読む、又は、隙間時間に刻みながら読むことをお勧めします。
注意は以上です。
それでは、本編どうぞ。
『すげぇ……』
ステージを照らす眩しいスポットライト。
数えきれない程いる観客達の熱気。
会場中のあらゆる物が生み出す独特の緊張感。
何もかもが初めてに思え、圧倒された。
『和也、もしかして緊張してる?』
『べ、別に緊張してねぇよ!』
『えー! カズ兄緊張してるの?!』
『だから、してないって言ってるだろ!!』
『緊張するのも分かりますが、ここは舞台袖です。それにそもそも私達ならともかくあなたが緊張する必要は無いのでは?』
そう、俺――
さっき俺を圧倒していた熱気やら、雰囲気やらはお溢れに過ぎず、それらを直接受けるあのステージの上からはいったいどんな景色が見えるのだろうか。
凄く気になるのだが、その景色を俺は見ることはできない。
俺にはあのステージに立つ権利がないのだから。
『和也さんの気持ち……分かります…。私も……少し…緊張していますから……』
『え…、俺ってそんなに緊張してるように見えてるの?まじで?』
『自分の膝を見てみなよ、ひーざ⭐︎』
『膝?』
会場に呑まれ圧倒されていたものの緊張はしていない! ……筈なのだが、そこまで言われると流石に自分自身を疑ってしまうものだ。
だから言われた通り、自分の膝を見てみた。すると、信じられないぐらい膝は震えているではないか!
『な、なんだよこれ! くそっ、止まらねぇ!』
『和也、本当に気付いてなかったの?!』
『はははー! カズ兄面白ーい!』
『そ、そこまで…緊張してるとは……思いませんでした…』
『あなた達、少し声が大き過ぎよ。他の出演者の迷惑にならないように注意しなさい』
『あはは〜、ごめんね〜。でも、和也の反応が面白くってさ〜』
『え? 俺が悪いの?』
んな理不尽な、と注意してきた人に視線を向けると、睨まれたので何も言わずにサッと目を逸らす。
あの睨みを前にしても平然といられるような強い勇気を、俺は持ち合わせていない。あー怖い怖い。と、軽く思っていたらまた睨まれた。やっぱり怖い。
『もうそろそろ私達の出番よ。準備して』
『オッケー』
『はい!!』
『はい…!』
『えぇ』
たった一言で、五人の少女たちを取り巻く雰囲気がガラリと変わった。
何故か分からないが、皆が作り出すこの雰囲気が大好きだ。
『おう! ……と言ってみたは良いものの、俺は別にステージに立たないから準備することも無いんだよなぁ』
『そうかしら? 和也にはやるべきことがあるでしょ? それに、私の目には準備万端な和也の姿が映っているのだけれど』
『ん?それはどういう…』
その指摘が何を意味しているのか分からず、何気なく下を見てみると、なんとさっきまで震えていた膝が止まっていた。
そして、顔を上げるとそれぞれの準備を終えた皆がこちらをジッと見ている。
ああ、そういうことか。ほんと、相変わらず分かりにくい言い方しやがって――、
『よし、皆――!!』
あれ、俺は今、途中からなんて言ったんだ?
『――』
『――!』
『――――』
『――…』
『――♪』
おいおいおいおい、皆の声も何故か聞こえなくなってるじゃねぇか。
ん…? そもそも、皆って誰のことだ…?
あぁ、頭がこんがらがってきた。
もう訳が分からない。
だけどなんでだろう――、
『ぶちかまして来いよ』
ステージに向かう五人の背中は、何よりも鮮烈に輝いて見えた。
――――――――
『ジリリリリリリリリリリリ!!』
「ファッ!!」
突如鳴った暴力的な響音に頭の中を掻き乱され、稲城和也――俺は無理矢理覚醒させられた。
「ん…え、あれって夢?! 今時そんな漫画やアニメみたいなことあるのかよ」
ゲンナリとしてそう言いながら、未だに鳴り続けている目覚まし時計のスイッチを切った。
寝起きは良い方だ。起きた直後に二桁の掛け算程度なら暗算で解けるぐらいには頭も体もすぐに動くようになる。
まぁ、寝起きがいいからといって、自然と目が覚めるというわけではないのだが。
「それにしてもほんっとこの目覚ましの音凄いな…」
俺が時間通りに功労者である目覚まし時計を手に取って、その性能を褒め称える。
何が凄いって、この目覚ましに変えてから寝坊した試しが無い。
毎朝頭が痛くなるような音に起こされるのは正直嫌だが、遅刻が無くなるのであればそれぐらいは我慢しよう。
だとしても――、
「今日の夢はもっと見ていたかったな」
内容は九割九分九里忘れてしまったが、良い夢だったという感覚は何となく覚えている。
気分がいつも以上に良いのもその夢のおかげなのだろう。
良い夢を邪魔された。この点だけで見れば絶対起こすマン――目覚まし時計は悪い働きをしたと言えよう。
「いや、待てよ…機械だからマンじゃおかしいな。マシーン…ガジェット…他には……ってやばっ!」
ふと気がつくと、起きてから5分経っていた。
これはまずい。時間が許すギリギリまで寝ておきたいタイプなので、目覚ましのアラームが鳴る頃にはダラダラするような余裕は残されていない。
急いで昨日用意していた制服に袖を通し、階段を駆け下りる。
「早く朝ご飯食べねぇと!」
「おはよう和也。もうちょっと余裕を持って起きようと思わないの?」
「おはよう、それが出来るんだったらしてるっていつも言ってるだろ?」
走り気味に食卓に向かうと、朝食を作り終えた母さんが少し呆れた顔で出迎えてくれた。
ほぼ毎朝こんな感じだから母さんの言ってることも頷ける。が、布団の誘惑から抜け出せないのが人類の性であるためやはり無理だ。
「お弁当ここに置いとくね。それじゃあ、仕事行ってきます」
「ん、行ってらっしゃい。早く俺も食べて出ないと走る羽目になるな…いただきます」
体は動くが、朝から長距離走ができるとは言っていない。まぁ、できないこともないのだが、嫌だからやりたくない。疲れるからと言うより、気分が乗らないのだ。だから、走るのは最終手段。
と、朝食のトーストを食べ終わったので、流しで皿を洗ってから洗面台へと走り、
「よし」
顔を洗い、歯を磨き、寝癖を直すついでにドライヤーで軽く髪型を整えて準備完了。
リュックを背負い玄関へ――、
「て、危ねぇ危ねぇ」
お弁当を入れるのを忘れていた。
前に忘れたことがあったが、その日は食堂でお金を使わないといけないわ、帰ってから母さんに怒られるわで散々だった。
苦い記憶と共にお弁当の存在を思い出した過去の自分に心の中で親指を立てながら、お弁当をリュックに入れる。念のために確認もする。
しっかりとお弁当は入っていたので、今度こそ正真正銘の準備完了。
「行ってきます」
返事は返ってこない。というより、いつも最後に家を出るのが俺だから、返事が返ってきたらそれはそれで事件になるので当たり前の事である。
それでも毎日欠かさずに言っているのは、ただの癖でもあるが。
「和也じゃん、おはよう♪」
「ん? あぁ、リサと友希那か。おはよう」
「おはよう」
弾むような声で挨拶をしてくれたのは、隣に住んでいる今井さんの娘、今井リサ。
その後にテンション低めに挨拶を返してくれたのは、今井家の隣に住んでいる湊さんの娘、湊友希那。
どちらも昔から家族ぐるみで仲良くしてくれている幼馴染だ。
「和也も一緒に登校しない? 途中まで道同じでしょ?」
「ああ、良いぞ」
別に断る理由も無いし、その提案を受け入れると、リサは上機嫌に笑みを浮かべた。
ほんとリサはよく笑っている。こっちとしても気分の良い限りだ。
「友希那も良いよね?」
「どちらでも構わないわ」
「うん! じゃあ行こっか♪」
そう言って、リサが先陣を切って歩き始めた。
それにしても、リサの明るさと比べて友希那の方はほんと暗い。いや、暗いと言うより落ち着いていると言った方が当てはまる。大人びていると言う訳だ。
「そういえば今日は二人とも家を出るの遅いけど、どうした?」
いつも俺が家を出る頃には既に登校している二人をこの時間に見るのは珍しい。
ふと疑問に思ったので聞いてみる。
すると、リサは「あっはは」と笑い、意地悪そうに隣を見て、
「それは友希那がねぇ〜」
「リサ」
「別にいいじゃん、和也だよ?それに、隠す程のことでも無いしさ」
「だとしても…」
なんだか友希那が嫌がっているように見えるのは、言いにくい事だからだろうか。
ならば、気を利かせるのが男って訳で、
「言いたく無いのなら無理してまで教えてくれなくても別に良いぞ。隠すって程だから、友希那が寝坊した〜ぐらいの事じゃない気がするし。……え、何、二人とも急にこっちを見ながら固まってどうした?」
友希那の方を見ると、立ち止まったまま下を向いていた。
そのため、顔はよく見えないのだが、長い髪の間から見える耳が真っ赤になっており――、
「あ」
急いでリサの方を見ると「あちゃ〜」と頬をポリポリかいており、目を逸らされた。
まじか。図星かよ。
「えっと…寝坊は仕方ないと思うぞ?お、俺も今日寝坊しかけたしさ!な!?ははっ、お揃いだな友希那!だから気にするなって!…あ、いい目覚まし時計があるから良かったら教えてやろうか?すっげぇうるさいけど効果は抜群だからさ!」
原因の核心を突いてしまったまでに、気を利かすのを失敗した後の対応は、我ながらなかなかの取り乱し様である。
効果は抜群だってなんだよ、ポ○モンかよ。
すると、友希那はまだ頬が僅かに赤いままの顔を上げ、
「…別に気にしてないわ。……そうよ、今朝は寝坊したのよ。…リサ、元々一緒に行く約束なんてしていないのだから、私を待たずに先に行ってても良かったのよ?」
「もー、そんな事しないってー。友希那と一緒に登校したいから毎日待っている訳だし?だから、アタシは私のやりたい事のために待っていたの⭐︎それに今日はたまたまこうやって三人で話す機会が出来たから結構嬉しかったりするんだー」
「そう」
「…うん!」
リサのおかげでマシにはなったものの、少し空気が重くなった気がするのは気のせいでは無い。
ここはその原因である俺が、次の話題を提供した方がいいのだろう。
――何か良い話題は…気になったことでも良いから何か話題を早く出さないと……あっ、そういえば
「俺はともかく友希那が寝坊なんて珍しいな。昨日の夜何やってたんだ?……あ」
言い終わってから気がついたが、普通に考えてこれは無い。さっきの爆弾――話題から派生している為、友希那が参加し辛い。
何故この話題を出した?パッと出てきた疑問がこれだったからだ。アホだろう、いやアホだ。もう少し考えてから口に出せ。
5秒前の自分をぶん殴ってやりたいところだ。
「そういえばさ、昨日のにゃんにゃん庭園見た?」
過去の自分を非難をしているうちに、すかさずリサが話題を変更した。
そのチョイスも少しどうかと思うが、誰かさんの話題よりは断然良い、流石リサだ。
一瞬俺への視線をキツくなった気がするが、全面的に俺が悪いのでしっかり受けよう。
痛い。ごめんなさい、反省しております。
「俺も見たぞ、あのしましまの猫可愛かったよなぁ。何ていう種類だっけ?」
「普通にアメリカンショートヘアじゃない?」
「あー、…確かそうだっけ?」
「うん、多分そうだよ。で、友希那はどこが良かったと思う?」
「――音楽」
「「音楽……?」」
はて、あの番組に音楽のコーナーなんてあっただろうか。
チラッとリサを見たが、リサも心当たりが無いらしく、肩を窄め、顔を小さく横に振っている。
「そんなシーンあったか?終始可愛い猫のコーナーだった気がするんだが」
「にゃー………猫の番組の事では無いわ。今日の準備のためにも、昨日は夜遅くまで音楽を聴いていたのよ。」
「今日の準備って…何かあんの?」
友希那が言いかけた昔と変わらない猫の呼び方。
幼馴染しかいないのだから別に隠さなくても良いぞ、と掘り返すのは絶対に駄目だという事は、流石に学習した。同じ失敗はしない。
「友希那……今日もライブハウスに行くの?」
「ライブハウス……?」
「ええ」
「ここ最近ずっと行ってない?無理してるじゃ…」
「リサには関係無いことよ」
「アタシはただ…友希那を心配して……」
友希那の音楽に対する執着心は俺も知っている。そして、そうなった原因も。
だけど、俺が知っているのはほんの浅瀬程度だろう。
きっとリサの方が俺より深く知っている。だから、色々と思うことがあるということは分かっている。
「だけどな……」
「だからリサには関係無いことって言っ」
「はい、この話終わり!!」
「「??!」」
言い終わると同時に一発。
突然目の前に移動し、手を叩いた和也にリサと友希那は目を丸くして驚く。
良いリアクションだな、と少し感心しながら驚いている二人の目を見る。そして、二人と目が合ったところで頭を下げ、
「変な話題を振った俺が悪かった!マジでごめん、この通り!でも、朝から暗い話は無しだ。せっかくの新しい一日の始まりが暗くなる。それにな……」
「う、うん…」
「俺がこの空気に耐えられない!それが一番の理由だ!!だから他の楽しい話題を話そうぜ!」
決して二人の会話に置いていかれそうになったからでは無い。
重い空気は多分生まれた瞬間から嫌いだからだ。
「笑顔でいると心も体も軽くなる。そしてなによりもその場の空気が明るくなる!笑顔でいるとそうそう悪い事に繋がりやしない。だから二人とも笑ってみろよ。特に友希那、最近お前が笑っているところを見た覚えがない」
もはや『笑う門には福来る』が座右の銘と言っても過言ではないぐらい俺はよく笑っている。と、前に学校で友達から言われた。
そこまで言われるほど俺がよく笑ってるかどうかについては、これから慎重に審議を重ねていきたいところなのだが…確かに明るい雰囲気が何よりも好きだ。そっちの方が楽しいに決まっているのだから。
「――プッ、はははは!あ〜もう、ほんっと和也って昔から和也だよね」
そう言いながらリサはお腹を抱えて笑い、その隣で友希那はまだ固まっている。
何が面白かったのかは分からないが、さっきの空気よりは明るくなったので良しとしよう。
「そりゃ俺は昔から俺だからな、当たり前だ」
「そういうところも変わってないなぁ〜」
「あー、笑った笑った」とリサは大きく深呼吸を数回し、自身を落ち着かせ、
「でも、確かに朝から暗い空気は嫌だよね。それに、アタシも最近友希那の笑っているとこ見てないなぁ。友希那の笑顔可愛いし久しぶりに見てみたいかも」
「だろ?ってことで友希那、笑おうぜ」
「大きなお世話よ」
「これぐらいの世話焼かせてよ〜」
ここからはまた空気が重くなることも無く、他愛も無い会話が続いた。
何故か懐かしく思い、少し感傷に浸りながら、それでいて二人にはバレないように会話をしていると、あっという間に別れ道に着いた。
楽しい時間は早く過ぎるところだけが欠点だと昔から思っている。
「んじゃ、ここでさよならだな。友希那、授業中に寝るんじゃないぞ」
「っ!?…寝ないわよ……」
「おーい、ちゃんと目を合わせろー」
もっと話を続けたいが、その為には二人についていく必要がある。しかし、これ以上ついていく事は今の俺には出来ない。
ついて行くには、まず二人が通う高校――『羽女』こと『羽丘女子学園』に転校し…そういえば羽女は女子校だから、転校する前に性別を変え――、
「辞めよう。寒気がする」
「いきなりどうしたの?和也?」
「いや、何でもない」
生憎そんな趣味は持っていない為、自分が女性になった姿などあまり想像したくない。
封印しておくことにする。
「??まぁいっか、じゃあね和也!また三人で登校しようね⭐︎」
「おう、じゃあな二人とも」
「バイバーイ」と手を振るリサと、その隣で両手で鞄を持ちながらジッと見てくる友希那。
昔からの付き合いという事もあり、やはりこの二人といると楽しい。
会話が終わってしまった喪失感が少し漂うが、それは次にまた三人で話す機会が来るまでの楽しみに変換しておこう。きっとすぐにその機会は訪れる。
「――って、時間やばくね?」
普通に歩いていればギリギリ間に合う!筈だったのだが、時計を見ると長い針が5を指していた。
登校時間は30分まで。そして、ここから学校までは歩いて約8分――普通に行くと遅刻である。
「はぁ…これは最終手段を使うしかないか…」
全身を、特に足を中心に軽くほぐし、前を見据える。
幸いなことに人も車も自転車も、交通量は少ない。
――これなら大丈夫だ
「…スゥーー………ッッ!!」
大きく深呼吸をして呼吸を整えると、全力で大地を蹴った。
全ては反省文を書かなくて済むように。
「うひゃぁ…和也めっちゃ走ってるじゃん」
「そうね」
「あ!アタシ達もちょっと急がないとまずいかも!」
「リサ、行きましょう」
――――――――――――――
―――――――――
――――
――
「あれから時は流れ、現時刻は12時45分。昼休みの真っ最中である」
「いきなりナレーション口調でどうした和也?気持ち悪いぞ」
いくら友達だからといっても言って良いことと悪いことがある。
そして、『気持ち悪い』は悪い方に分類される為、大抵の場合は言ってはならない。とはいってみたものの、同じことを目の前で友達に言われると咄嗟に同じ事を言いかねないので、「うるせぇ」とだけ返しておく。
「そういや和也、あの試合見たか?」
「ん?何の試合?」
「昨日の夜にあったグリロナが後半だけでハットトリック決めてユーバが勝った試合。あの年齢になってもバリバリ点を取れるグリロナってやっぱり最高だよな!それに――」
さっき友達に向かって気持ち悪いと言い、今はサッカーの好きな選手のずっと語っているのはクラスメイトの
リサと友希那には及ばないが、そこそこ長い付き合いの友人である。
親友……とも呼べなくも無いが、少なくとも数秒前に達哉は俺の逆鱗に触れた。それも特に大きいやつ。
「お前が言ったその試合…昨日前半で寝落ちしたから帰って後半を見ようとしてたんだよ!…よくも結果をバラしたな……!!」
しかも、ビッグクラブ同士の好カード!
楽しみにしていた事の結末をバラすなど、到底許される行為ではない。と言うことで、親友では無い。
「え……マジか、それはすまんかった。謝罪としちゃなんだが、このハンバーグを…いや、それじゃ足りないな…和也が欲しいやつを好きなだけとって良いぞ」
「お、おう…そうか…、次から気をつけてくれれば良いだけだし、そこまで気にしてないぞ」
いつもなら突っ掛かってくるのに、と予想の斜め上を行った謝罪に少し驚きながら申し訳程度にハンバーグを1つ貰う。
自分がした行為を振り返った結果、悪いと感じたからだろうが、イマイチ達哉の物差しが分からない。
そして実際、達哉の性格を掴めない時が時々ある。
「達哉ってほんと変だよな」
「いやいや、和也には負けるって」
「なるほど、戦争を望むのか」
ほとんど毎日昼休みは達哉と戦争という名の雑談をしている気がする。
これの怖いところは、気がつくとサッカーの話にすり替わっているということだ。
さっき熱く語っていたように達哉は大のサッカー好き。そして、俺も達哉ほどではないがサッカーは好きだ。
だから、サッカーの話になるのは普通に感じるかもしれないが、前にM1グランプリの話から始まった筈の会話が、昼休みが終わる頃にはW杯の話になっていた時は流石に戦慄した。
「確かにグリロナの決定力は凄い。だけど、それは周りの選手の動きもあるからで」
「でたでた、だから1からチャンスを作る事もできるメッチの方が上だって言うんだろ?確かにメッチの上手さは俺も認めてるけど、メッチは」
『キーンコーンカーンコーン――』
「「あ」」
「…また明日だな」
「…そうだな」
チャイムが鳴り響き、昼休みは終わりを告げた。
そして、今日もサッカーの話は完結しないまま午後の授業が始まる。
いつもと変わらない日々。そんな毎日が退屈だとは思わない。
満足しているとは言えないものの、そこそこ楽しんでいる。
でも、ただ一つ求めるものがあるとするならば――、
「何か夢中になれるもの…ねぇかな?」
――――――――――――――
―――――――――
――――
――
「――で連絡は以上だ」
「起立、礼」
『さよならー』
HRが終わり、挨拶をすると、各々が一斉に動き出す。
一箇所に固まって雑談するテニス部員。
ゲームのガチャを引いて盛り上がるバレー部員。
部活へと急いで向かうバスケ部員。
そして、特に急ぐ様子もなく俺の席へと来たサッカー部員。
「なんで部活行かないで俺のところに来るんだ?サボりは感心しないぞ。もしかしてお前、俺のこと好きかよ」
「部活の開始は40分後で、早く行きすぎてもやる事が無いから来てるだけであってサボってはいない。あと、そんなわけあるかよ、気持ち悪いこと言うな。そう言うお前の方が、気があるんじゃないのか?」
本日二度目の友達に対しての『気持ち悪い』発言。ただ今回も立場が逆なら、俺も同じことを言ってると思うのでスルー。
「はっ、馬鹿言え。好かれるなら女性からだけで良いに決まってるだろ。モロッコにでも行って取るもんとってから出直し……いや、達哉の時点で無理だ。ごめん」
「なんで俺がフラれたみたいになってんだよ!そんなのこっちから願い下げだ!」
どういう訳か今日だけで、自分含めた男二人の女装姿を想像する羽目になるとは…なんて日だ!とあの坊主頭の芸人よろしく叫びたい気分だ。
しかし、今それをやると変人確定なので、衝動をグッと抑え付け、とりあえず「そりゃどーも」と軽く受け流しながら、教科書やファイルをリュックへと詰めていく。
すると、それを見ていた達哉がふと思い出したように、
「なぁ和也。お前、何かの部活に入る気はないのか?運動神経良いんだし、多分すぐに追いつけるだろ」
「入るつもりはねーよ。まぁ、特に理由はないけど」
「せっかく中学までサッカーやってたんだし、今もプロの試合とか見てるんだからさ、今からでもサッカー部に入ったらどうだ?」
「んー……」
そう言われたら確かにそうだな、と納得するところもあり少し考える。
それこそ部活に入る事で夢中になれるものが見つかるかもしれない。
サッカーを辞めた理由もよくあるもので、トラウマ持ちだとか、大きな怪我が原因だとかの様な大層な過去は持っていない訳で、別にサッカー部だけとは言わず、他の部活にも入りたくないという強い信念は無い。のだが、何故がいつも気分が乗らない。
「……ごめん、スタメン直々のお誘いはありがたいけど、やっぱ辞めとくわ。…今更入ってもベンチ温めるだけで終わりそうだし」
「……そっか。でも、お前ならいつでも歓迎するから、気が向いたら言ってくれよ!」
「まぁ、その時が来たら素直に歓迎されるとするわ」
「おう。んじゃ、そろそろ部活行ってくる」
「頑張って来いよ」
「うーい」と気怠げな返事を最後に達哉は更衣室へと去っていった。
そして、ここに取り残された帰宅部が一人。
「よし、帰るか」
帰りを急ぐ理由は無い。かといって、これ以上学校に居続ける理由も無い。
ならば帰るのが普通だろう。少なくとも和也はそうする。
「さいならー」
「はい、さよならー」
重たくなったリュックを背負い、黒板の掃除をしていた担任に挨拶をして、和也は学校を後にした。
校門を出てすぐ近くの横断歩道。
運悪く目の前で信号が赤に変わった。
「ん?あれって…」
信号待ちをしていると、向かいの歩道を見覚えのありすぎる二人が並んで歩いていた。
そして、その片方が俺に気付き、右手を顔の高さまで上げて横に振りながら、
「おーい、和也ー!」
リサは先に進もうとする友希那の手を掴み、その場に留まった。
待ってくれた幼馴染のためにも、信号が青に変わると俺は早歩きで横断歩道を渡り切る。
「よう、リサ、友希那。この道で会うって事は二人でどこか行くのか?」
「うーん、半分正解で半分不正解かなぁ?」
「というと?」
「アタシはアクセサリーショップで、友希那はCiRCLEっていうライブハウスに向かってるんだ。それで、近くまで道が同じだから一緒に行ってるって感じ」
「あー、なるほどな」
「リサが勝手についてきただけじゃない」
「もー、そんな冷たいこと言わずにさー?」
そういえば三人で登校している時に、友希那が今日ライブハウスに行くと言っていたのを覚えている。確か――、
「今日の準備……」
「和也、何か言った?」
「ん、あぁ、朝のこと思い出しててさ…なぁ、友希那」
「…なに?」
「もしかして、そのライブハウスでステージに立つのか?」
「…えぇ、そうよ」
いつもと変わらない口調で友希那は言った。
緊張している様子も、誇らしげにしている様子も無く、いつも通りの湊友希那だ。
「……ちなみに…何回目?」
「数えてないわ」
「いつの間にそんなに?!」と驚いたが、リサは既に知っていたのか表情を変えない。
――なんだよ…俺、友希那の事全然知ってねぇじゃん
「…なぁ、リサ」
「なに?和也?」
「そのアクセサリーショップって今日じゃないと駄目か?」
「いや…別にそういう訳じゃ無いけど」
「なら一緒に友希那のステージを見に行かないか?…無理なら俺一人でも行くつもりだけど」
いくら幼馴染が出るとはいえ、未だに行ったことの無いライブハウスという場所に入るには勇気がいる。ハッキリ言うと襲ってきそうで怖い。
それでも一人でも行くと言ったのは、二人に置いていかれているような気がして、いてもたってもいられなかったからだ。
「アタシは良いけど…」
「けど?」
「友希那が良いって言ってくれるかなって」
「友希那、二人で聴きに言ってもいいか?!」
「どちらでも構わないわ。好きにして」
「よし!好きにさせてもらうぞ!」
別に友希那の全てが知りたいという訳では無い。
ただ、一人の幼馴染が自分の知らない場所で、自分の想像を遥かに超える程夢中になっている音楽というものをどうしても聴きたいと思った。
「それじゃあ早く行こうぜ!」
「そんなに急がなくてもライブハウスは逃げたりしないってばー」
「…」
期待、不安、焦り、その他色々な感情を胸に和也はCiRCLEへと向かうのであった。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
リサ姉と友希那さんという至高の幼馴染に、失礼ながらももう1人主人公である稲城和也というオリキャラを入れさしていただきました。
リサゆきは、私がバンドリ内で一番好きなカプでありながら、好きなキャラの1位と2位(ほぼ差はない)です。
Roselia箱推しなので、紗夜さん、あこちゃん、りんりんももちろん大大大好きです。
そんな大好きなRoseliaを主体とした作品を書くのはワクワクと共に、不安と緊張も襲ってきます。だけど、途中で辞めずにしっかりと最後まで書きたいなと思っています。
高評価、お気に入り登録、応援コメはモチベ上昇に繋がります。遠慮せずどしどししてください。
次回は、あの、風紀を乱す側に立っていることが多い気がするあの風紀委員や、闇より舞い降りし漆黒のドーン!バーン!な堕天使や、その堕天使を支える可愛くて美しい次期生徒会長が出てきます!
それでは皆さん、ばいちっ!