青い薔薇に棘があろうと握った手だけは離さない   作:ピポヒナ

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バンドの作品書いてるのに音楽の知識が無さすぎて練習場面全カットなのは自分でもワロてます。だって書けないもん_(:3 」∠)_

あ、紗夜さんと日菜ちゃんの初期イベは裏で起こってると思ってください。元々絡ませて書こうと思ってたけど、あんまりノらなかったので……許してクレメンス。


26歩目 あの日からずっと

 

 ――砂の上を走り行く姿と、ボールが転がる音だけがそこにあった。

 

 練習が終わった帰り道から少し外れた場所にある河川敷。

 沈みかけた夕日に照らされるそこに、彼はいつもいた。

 

 不揃いに散りばめられたコーンを巧みに躱し、思い切り足を振りぬく。

 蹴り出されたボールは綺麗な弧を描き、まるで吸い込まれるかのようにゴールの隅へと飛んでいく。

 そうして、ボールは鮮やかにネットを揺らすも彼は満足できないのか、首を横に振り、再び障害物へと突き進む。

 より早く、より正確に、より上手くなるために――より目標へと近づくために、何度も何度も、来る日も来る日も彼は一人で努力を続けていた。

 

 そんな彼の姿が、当時中学生だった友希那には眩しく見えた。

 

 父の音楽を認めさせるために練習に打ち込んでいた。そして、気が付けば仲が良かった幼馴染は隣からいなくなり、独りになった。

 それでも、練習を続けた。そうしているうちに先が見えなくなった。 

 形容し難い不安が胸に渦巻き、立ち止まりそうになっていた。

 

 そんな友希那にとって、どこまでもひたむきで真っ直ぐな彼のその強さが眩しく見えて仕方が無かったのだ。

 

「あなたは……怖くないの? 今していることが、本当に自分のためになっているのか……このまま続けることで、本当に自分の夢に近づけるのか……わからないのに」

 

 そう、彼に聞いたことがある。

 自分と同じで『ひとり』で戦う彼に怖くはないのかと、友希那は抱いている不安を全てぶつけてみたのだ。

 自分よりも先を行く彼なら、きっとこの不安を払拭する術を知っていると思って。

 しかし――、

 

「そんなの俺だって分からねぇよ。何をするのが正解で、どうすれば目標に届くかなんて俺が一番知りたい」

 

「――――」

 

「でも、それでも今やるしかないんだよ。そうじゃないと目標に……父さんには絶対届かないから。いつか届くと信じて、今俺が為すべきことをするために全ての時間を捧げる。――俺はさ……父さんの代わりにならねぇと生きている価値なんてねぇからさ……今、不安に怖がっている暇なんてねぇんだよ」

 

 しかし、彼の回答は友希那が求めていたものとは違った。

 不安も恐怖も何もかも背負い込んで、目標へ向かい走り続ける――それしか、彼には道が残されていなかったのだ。

 

「……じゃあ、その目標が……届かないとわかったら、あなたはどうするの……?」

 

 自分に残された道は一つしかないと言った彼に、恐る恐る口にした質問。

 その回答を、友希那は今でも覚えている。

 忘れるはずがない。

 だって――、

 

「その時は、友希那が俺に勇気をくれよ。もう一度立ち上がる勇気をさ」

 

 だって、それが稲城和也と交わした約束なのだから。

 一方的に結ばれたものであっても、忘れる訳が、ない。

 

 

 △▼△▼△▼△

 

 

「――友希那ー! って、いたいた。悪いな、遅くなっちまって。時間通り上がれそうだったんだけど、ギリギリに客がいっぱい来てさ、まりなさんに残業頼まれちまった」

 

 これお詫びの印な、と和也は友希那に缶コーヒーを手渡す。

 渡されたのは、コーヒーの中でも超絶甘さMAXなもの。友希那が特に気に入っているものだ。

 受け取った友希那はすぐに開けようとしたが上手くいかず、和也へと無言で手渡し代わりに開けて貰った。

 河川敷にあるベンチに二人で腰掛け、同時にコーヒーを口にする。

 

「ありがとう。……やっぱりおいしいわね」

 

「うげっ。やっぱ何回飲んでもこの甘ったるさには慣れねぇな……」

 

「そんなに文句を言うなら、和也の分も私が貰うわよ?」

 

「どうぞどうぞ。って、言いたいとこだけど今日は駄目だ。もう日も暮れてる時間だし、なんせフェスの前日だからな。大事なリーダーがカフェインの取り過ぎで寝不足になられちゃ困る」

 

 そう言って和也はまた一口飲む。が、相変わらず顔をすぐに顰めさせた。

 

 今日は『FUTURE WORLD FES.』の前日。

 最後の練習を終えて解散した後、友希那は「仕事終わりに話したいことがある」と言って和也を呼び出したことで今に至る。

 

「友希那が俺を呼びだすなんて珍しいよな。どうした? フェスを目前にして急に不安にでもなったか?」 

 

「違うわよ。コンテストの時よりも演奏は皆上手くなっているし、不安なんてない。明日は今までで最高の演奏ができるはずよ」

 

「おぉ、そりゃ心強い! 明日の演奏を聴くのがスッゲー楽しみだ」

 

「……和也は明日フェスに来るのよね?」

 

「ん? ああ、そりゃもちろん行くぞ?」

 

 さもそれが当然のことであるかのように。

 友希那の質問がわからず少しポカンとしてから、和也は嬉しそうに続ける。

 

「なんてったって友希那とリサの晴れ舞台だからな! それに、【Roselia】の皆が目標の舞台で演奏する姿を俺は見たい! なんだかんだでバンド結成前から【Roselia】を近くで見てきたんだ。なのに、一番大事なところだけ行かねぇ訳がねぇだろ?」

 

「それもそうね」

 

「だろ? つーわけで、プレッシャーをかけたい訳じゃねぇけど、明日スッゲー演奏をしてくれること期待してるからな?」

 

 そう言って、和也は拳を突き出した。

「ほら」と友希那が拳を合わせ返すのを促し、応えてくれるのを待っている。

 しかし、友希那は突き出された拳から視線を外すとベンチから立ち上がり、キョトンとする和也の方に顔を向けた。

 

「和也は……前にここで私と話したこと、覚えてる?」

 

「えっと、前にって……いつぐらい前?」

 

「……二年前。中学三年生の時よ。あなた、チームでの練習が終わった後にいつもここで練習していたでしょ? それで私が話しかけた時があったじゃない」

 

「あっ、あーー! 友希那に球出ししてもらった時か! 友希那がボール蹴ると絶対に変なところに飛んでいくから、瞬発力鍛えられてスッゲー良い練習になってたんだよなー。いやぁ、懐かしい」

 

 しみじみと懐かしむ和也に、友希那はムッとした表情をして、

 

「そこじゃなくて、その前に私と話した内容を覚えているのかを聞いているの! その時にした約束、覚えてる?」

 

「約束? そんなのしたっけ……?」

 

 頭に手を当て、思い出そうとする和也。しかし思い出せないのか、唸り声を上げるだけの彼に友希那は少しガッカリする。

 とはいえ――、

 

「いいわ。――和也が覚えていなくても、私が覚えているから」

 

 そう言いながら、友希那は和也へと体を向けた。

 そして、相変わらず頭を抱えている和也へと向かって、友希那はグッと体に力を入れて言う。

 

「私は明日、『FUTURE WORLD FES.』に出るわ! お父さんの音楽を認めさせるために、幼いころからずっと目指していた舞台で、私は明日歌う。ここまで来れたのは……和也、あなたのおかげよ」

 

「――。俺おかげ? いやいや、お世辞だとしてもそんなわけねぇだろ。どう考えても【Roselia】の皆と友希那自身が必死になって努力をした成果だ。ちょっとサポートしただけの俺が入る余地はどこにもねぇよ」

 

「違うわ! 少なくとも私にとっては違う。だって……あの時に和也がいなければ私はきっと折れていた。この場所で、あなたの頑張り続ける姿を見ていなければ、私はきっと高校に入る前に諦めていたわ。――あなたに何度も勇気を貰っていたの……!」

 

「――――」

 

「だから、約束通り今度は私があなたに勇気をあげる」

 

 もう一度和也が立ち上がるための勇気を。

 今まで貰った勇気を返すべく、友希那は和也の瞳を真っ直ぐに捉え、今まで言えなかった願いを口にした。

 

「明日のフェスで【Roselia】が最高の演奏をしたら、お願い――もう一度サッカーを始めて」

 

 

 △▼△▼△▼△

 

 

「明日のフェスで【Roselia】が最高の演奏をしたら、お願い――もう一度サッカーを始めて」

 

 大事な幼馴染に言われたそのお願いは、予想外の物だった。

 

 ――一度辞めたサッカーを、もう一度始めてほしい。

 

 なぜ、そんなことを。友希那にとって一番大事な時期であろうこのタイミングでしたんだ。

 サッカーを辞め高校に進学してから今まで、友希那がそんな風に思っているなんて素振りは少しも見せてこなかったというのに。

 友希那の行動が――大事な、大事な、幸せにしなければならない大切な彼女の考えが、行動が少しも分からなかった。

 

 ――だから、約束通り今度は私があなたに勇気をあげる。

 

 その言葉を思い出すまでは。

 

「――。あぁ……思い出したよ、全部。そう言えばそんな話してたな……」

 

 頭の中に蘇った友希那とのやり取り。中学生の頃、自主練をしていたところに突如顔を見せた友希那と話した際に、自分がそんなことを言っていた。

 もしも折れてしまった時は友希那がもう一度立ち上がるための勇気を俺にくれ、と。

 

「でもあれは……その場のノリというか。絶対にそんなことにはならないとあの時は思ってたし、早く練習を再開したくて適当なことをいっただけで……」

 

 友希那がこんなに大事な時期に気にすることではない。

 和也は自分の頭を強く掴み、大きなため息を吐く。

 

「ちなみにいつからだ? いつからそうやって考えていた?」

 

「和也がサッカーを辞めた時からよ。【Roselia】が結成してからはマシにはなったけれど……それまでの和也は無理をしているのが伝わってきて、正直見ていられなかったわ」

 

「――。マジかよ。……じゃあ、あれか? 【Roselia】が結成する前から、俺が【Roselia】の演奏を近くで聴けるようにしてくれてたのも、全部俺に気を遣ってか?」

 

「……そうね。私は歌うことしかできないから……和也に勇気を与える方法もこれしか思い浮かばなかった」

 

 そういえば、思い返すと疑問だった。

 音楽に妥協を許さない友希那が、音楽経験と知識がゼロの和也を【Roselia】の近くにいられるようにしてくれていたのか。

 近くに和也を置いていてもガヤにしかならず、それこそ初めの頃の紗夜のように反対していてもなんら不思議ではないのに。

 

 なのに、和也が帯同することにずっと賛成の姿勢を友希那が取っていたのは、自らの歌声を一番近くで聴かせることで、彼女なりに勇気を付けさそうとしてくれていたから。

 和也は違いにすぐに気が付く、ともっともらしい理由を言っていたのも全て嘘で、ずっと友希那は和也のことを気に掛けてくれていたという訳だ。

 

「そんなの……ダメだろ……」

 

 自分の知らないところでずっと、友希那の負担になってしまっていた自分が許せなかった。

 過去の自分の何気ない一言がずっと友希那を縛り付けていたなんて、そんなことあっていいはずがない。

 だから――、

 

「だから、あの時言ったことは気にしなくていいぞ。ありがとうな、覚えていてくれて」

 

 嬉しかったよ、と本心から言い、和也は笑顔を作る。

 優しくて、不器用な彼女の背中には、既に父の音楽という大事なものが背負われているのだから。

 これ以上、彼女に背負わせるわけにはいかない。

 

 あの時言った言葉を覚えていてくれて、一方的に結ばれた約束を果たそうとしてくれただけで、和也にとってはもう十分過ぎる救いなのだ。

 

「――嫌よ。これは私がやると決めたことなの。いくら和也でも、この意思は曲げさせないわ」

 

「――――」

 

 しかし、それは許さないと琥珀の瞳が強く訴えていた。

 もう背負わなくてもいいと引こうとした和也の手を離さず、無理矢理にでも小さな背中に背負おうとする。

 

 ――あぁ、本当に。本当に友希那は優しいな。

 

「昔から本当によ……優し過ぎんだよ……」

 

「別に私は優しくないわよ。これも、中学生の時に和也から貰った勇気を返すだけだから」

 

「いやいや、友希那は十分過ぎるぐらい優しいからな。その優しさに俺も救われてるんだ」

 

「そんなことあったの?」

 

「あったんだよ。まぁ、その話は今は置いといて。明日の演奏が最高だったらサッカーをもう一度始めて欲しいって話だけど……ごめん。気持ちはスッゲー嬉しいけど、約束はできない」

 

 申し訳ない気持ちにいっぱいになりながら、「ごめん」ともう一度言って和也は頭を下げた。

 大事な幼馴染からのお願いにはできる限り応えてやりたいが、唯一これだけは応えてやれない。

 

「そう、わかったわ。じゃあ、明日は普通に私達の演奏を楽しみにしていて」

 

「――。いいのか? ずっと友希那は俺のこと気にかけてくれてたのに……」

 

 思いの外すんなりと引き下がった友希那に驚き、和也は下げていた頭を上げる。

 友希那は「ええ」と頷いて、

 

「和也自身がやりたいと思えないなら、無理強いさせるつもりは無いわ。それに、和也がサッカーの他に心の底からやりたいと思えることができたなら、私はそっちでも良いと思ってるし」

 

「つまり、友希那は俺に自分のやりたいことをして欲しいと思ってるってことか?」

 

「ええ、そうよ」

 

「だったら、今のままじゃダメなのか……? 友希那とリサの役に立つこと、あと【Roselia】の力になりたいって本気で思ってる!」

 

「そうね。和也が私達のために尽くしてくれているのには感謝しているし、実際に和也のサポートは【Roselia】のためになっているわ」

 

「だったら……!」

 

「ただ……和也はまだ、サッカーに未練があるんじゃないかしら? 少なくとも私にはそう見えるわ」

 

「――っ!!」

 

 まるでそうだと肯定するかのように。

 友希那に指摘された途端、和也の胸がズキリと痛んだ。

 そして和也の脳裏に浮かんだのは、世界中の誰よりも憧れ、尊敬しているエースストライカー――もう既にこの世にはいない父親の姿だった。

 

「そりゃ……未練はあるよ。父さんの代わりにならなくちゃいけないのに、なれなかったんだ……っ、未練が無いわけがないだろ……! でも、それを全部わかった上で辞めたんだ……! 俺は……こんな俺じゃ、父さんの代わりにはなれないって……そう、分かっちまったから…………諦めたんだ……」

 

 フツフツと自分自身に苛立ちが湧き出し、和也は拳を強く握る。

 手のひらに爪が食い込む痛みにすら縋ってしまいたくなるほどに、この軟弱者を誰かに裁いて欲しい気分だった。

 

 しかし、友希那はそんな和也を慰めるような声音で、

 

「……ええ、知っているわ。和也がサッカーを辞めるって決めた時に傍にいたもの。その時の和也がどんな思いだったのか、その全てが分かるだなんて言わないけど、諦めることがどれだけ苦しくて辛いことなのは少しぐらいは分かる。……私も、お父さんのために歌ってきたから」

 

「――――」

 

 そう言って、友希那は和也を抱きしめた。

 これ以上ヒビが広がらないようそっと優しく包み込むように。

 

「ごめんなさいね、辛いことを思い出させてしまって。和也はもう十分傷ついたわ。だから、これ以上自分のことを責めないであげて」

 

 優しく頭を撫でられる感覚。

 和也は寄せられた友希那の体を抱き締め返す。

 

 本当に、小さくて華奢な体だった。だが、その自分よりも二回りは小さい彼女に、和也は今もこうして支えられている。

 腕の中にある友希那の温もりを感じながら、ふとした瞬間に安心感が押し寄せるのを感じた。

 彼女の髪が肩に触れ、柔らかな感触が心地よい。和也は自分自身を包み込むような温もりに浸りながら、友希那の笑顔を思い浮かべる。

 先程まで蠢いていた自身への怒りや失望はいつの間にか消え去り、和也の胸には友希那の温かさで満たされていた。

 

「ごめん……ありがとう、友希那。もう大丈夫だから」

 

 そう言って体から手を離すと、友希那はゆっくりと離れていった。

 温もりが遠ざかっていくことに若干の寂しさを感じるが、これ以上甘えることもできないのでグッと堪える。

 そして、乱れた髪を手ぐしで整える友希那を見やり、和也は改めて感謝を伝えた。

 

「ありがとう友希那。やっぱり友希那は優しいな」

 

「またその話? 幼馴染が泣きそうになっていたら普通誰でも慰めるわよ」

 

「いやいや泣いてねぇし! 男は生まれた時と親が死んだ時しか泣かねぇ生き物だから!!」

 

「そう? その割には既に5回以上は泣いている所を見ている気がするのだけど」

 

「なんでそんなに覚えてんだよ! そう言うのは男子のプライド的にも今すぐ忘れてくれるとありがたいんだけど!!」

 

「無理よ。だって、幼い頃の泣いている和也可愛かったもの」

 

「更にエグってくるのやめてくれぇ!」

 

「ふふっ。本当にもう大丈夫そうね」

 

「たった今大丈夫じゃなくなったけどな!」

 

 恥ずかしい記憶を掘り返され、のたうち回りたい気分の和也。そんな元気な彼を見て、友希那は安心したように柔らかく微笑んだ。

 

「とりあえず、そういうことよ。明日の演奏でダメでも、私は和也が立ち直れるまでずっと勇気を与えられるように歌うから」

 

「おう、スッゲー嬉しいよ。友希那がそんな風に思ってくれてたなんて思わなかったからさ。その気持ちにすぐに応えてやれねぇことはやるせないけど、でも……友希那に勇気を貰うからには、俺も少しずつ向き合い直せるように頑張ってみる」

 

「ええ、今はその言葉を聞けただけで満足だわ。明日も早いし、帰りましょうか」

 

「こんな夜に可愛い女の子一人で帰らせる訳には行かねぇし、家まで送ってくぜ?」

 

「家がすぐ近くなんだから元々一緒でしょ。変なこと言ってないで早く帰るわよ」

 

 そう呆れたように言って歩き出した友希那の後を、「へいへーい」と返事をして和也は追いかける。

 

『FUTURE WORLD FES.』の前夜は、今まで気付かなかった友希那の気持ちを知ることができた、和也にとって忘れられない思い出となったのだった。

 

 

 △▼△▼△▼△

 

 

 ――そして、あっという間に夜は明け、『FUTURE WORLD FES.』当日となった。

 

「よっしゃーー!! お前ら、気合い入ってるか!? ようやく掴んだ夢の舞台だ、臆せず存分に楽しんでこい!!!」

 

 そう大声を上げ、「最高の演奏期待してるぜ?」と和也は五人の少女達の前に拳を突き出す。

 ニッと笑って拳を突き出された少女ら――【Roselia】の面々は、それに呼応するように拳を重ねた。

 

「言われなくてもそのつもりです!」

 

「うん! 最高の演奏するから、ちゃんと見ててね和也♪」

 

「漆黒の闇より授かりし力を纏い、我ら【Roselia】の嵐が会場中全てを飲み込むその瞬間をとくと見よ!! やった言えた! カズ兄ありがとうー! 頑張ってくるねー!」

 

「き、緊張しますが……頑張ってきますね……!」

 

「和也――私達の演奏、よく聴いてて」

 

「おう! 当たり前だ!!」

 

 そう言い、和也は【Roselia】を送り出した。

 小さいが頼もしい五人の背中が見えなくなるまで、期待を胸に見送る。

 

 彼女達の努力はすぐ近くで見てきた。

 だからこそ、彼女達が国内最高峰の舞台でも輝けることを、和也は誰よりも信じている。

 

 そう、世界中の誰よりも信じているのだ。

 

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