青い薔薇に棘があろうと握った手だけは離さない   作:ピポヒナ

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 ……こんにちは……ピポヒナです…。
 また約一か月ぶりの投稿となりました…。すみません…。
 あこちゃんの誕生日には間に合うと思っていたのですが……間に合わず、残念。

 そんなこんなで、反省は後でするとして、本編どうぞー





8歩目 Present for

 『ライブハウスCiRCLE』。

 イベントの会場であり、幼馴染二人が一緒に演奏するの初舞台ともなるあるその場所の入り口の前で、足を止めた。

 相対するのは、店の前でよく見かけるような黒色ボード。

 そんな何の変哲もないようなボードが、何故か気になって仕方が無かった。

 

「達哉、ちょっと待ってくれ」

 

「ん?…ボードがどうかしたのか?」

 

「いや…なんか気になってな」

 

 先に行こうとした友人を呼び止めると、少し前かがみになってボードに目を走らせる。

 色とりどりに書き並べられているのは、今日出演するバンドの名前だろう。しっかりと数えては無いが、見たところ10バンド以上ある。

 そんな数あるバンドの中から一つ。

 青いペンで書かれたバンド名。

 

 ――――【Roselia】。

 

 まるで視線が吸い込まれているように。

 そのバンド名だけをジッと見つめる。

 今初めて見た――知らないバンド名。

 そのはずなのに、一目見た時から不思議と心が騒ぎ続けている。

 確信に近いものを持って直感が告げているのだ。

 だから。

 

「【Roselia】か、友希那の奴良いバンド名を考えたな」

 

 沢山悩み込む幼馴染の姿を頭に思い浮かべて、その成果を称えたのだった。  

 

 

 

 △▼△▼△▼△

 

 

「スタジオに行く前に、これ渡しに行ってもいいか?」

 

「ああ、構わないぞ」

 

 CiRCLEに入ってすぐ。

 右手に持った紙袋を見せながら達哉に聞いてみると、快く承諾してくれた。

 

「和也の幼馴染がどんな奴か気になるからな」

 

 まぁ、達哉が承諾してくれた主な理由はこれなのが少し気に触るけど。

 

「おいおい…、友達の幼馴染にそんなに期待するか普通?」

 

「そりゃあ、そこそこ付き合いがあるのに最近まで隠されてたともなると、何か面白い奴なのかな?って期待してしまうものだろ?」

 

「いや、共感を求められてもな……」

 

 達哉の言い分は、所謂タイムカプセルと同じだろう。いや、どちらかというと、長く寝かせて熟成させた物を心待ちにしているようなものか。

 その感覚は、俺もなんとなく分かる。共感できる。

 しかし、それでも首を縦に振らなかったのは、眠らせていた時間分だけ、幼馴染に対する達哉の期待感という名のハードルが高くなっていたのが気になりまくったからで、

 

「幼馴染のことを話してなかったのは話す機会が無かっただけであって、別に隠してないからな。それにもし達哉に聞かれたり、幼馴染の話題になってたら普通に話してたと思う。だから、その謎の期待は辞めてくれ」

 

 今現在、俺は出演バンドの控室に向かいつつ、変に上がってしまったハードルを下げようとしているのだ。

 

「和也にそう言われても信憑性がなぁ…。実際、事実さえなければそんなのどうとだって言えるだろ?」

 

「あのな…そもそも俺が幼馴染を隠すことに何のメリットがあるんだよ……」

 

「それは、知られたら不味いことがあるからなんじゃないのか?例えば、凄く変わった性格の持ち主とかで」

 

「もしそうなら、達哉をここに誘ってねーよ!それに、俺の幼馴染は変な性格じゃ無いからな。どこにでもいるような…っていうのは違うけど、少なくともお前が思ってるような性格じゃ無い!」

 

「おいおい、何でそんなに熱くなってるんだよ?」

 

「達哉が幼馴染を馬鹿にしたからだ」

 

「だとしてもそこまでなるか?あ、もしかして和也の幼馴染って男じゃなくて女子?」

 

「そうだけど、それがどうかしたか?」

 

「あ~なるほどな~。余計に会うのが楽しみになった!」

 

「いや…何でそうなるんだよ…」

 

 達哉が浮かべた不敵な笑みに不安を覚え、俺は『超』が付くほどのドデカい溜息を吐く。

 ハードルを下げようとした筈なのに、色々あった結果逆に達哉の興味を煽ってしまうという最悪な結末になってしまった。

 ほんと、思った通りにいかないものだな。

 

「――――」

 

「ん?」

 

 と、その時。

 一人の少女とすれ違った。  

 

「今のって…」

 

 もしやと思い、立ち止まっては振り返る。

 鮮やかな茶髪にウェーブのかかったハーフアップ。太ももまであるベージュ色の肩出しセーター。斜めに巻いた黒色のベルト。ニーハイの黒いロングブーツ。そして、首には黒、耳にはピンクを主としたウサギのアクセサリー。

 ――やっぱりそうだ。間違いない。

 そう思うやいなや。

 俺は来た道を少し戻って、その少女の肩をトントンと優しく叩いた。

 

「ちょっとそこのお嬢さん」

 

「っ!?は、はいっ」

 

 すると、少女は一瞬ビクッと驚いてから、俺が叩いた方に振り返り、

 

「えっ、か、かじゅや!?にゃんでここに?!」

 

「ようリサ!随分と可愛い話し方だな」

 

 ふにゃり、と。

 柔らかいその頬を、俺が予め立てていた人差し指に突かれるのであった。

 

「――――っ!」

 

 そのことに気づくとすぐさま、リサはバッと身を翻し、肩に触れていた俺の手を離す。

 

「おいおい、俺にからかわれるのがそんなに嫌だったのか?」

 

 顔を赤く染め、突かれた方の頬を手で抑え、下を向いて視線を合わせてくれない。

 そんないつもと違う反応をしたリサに、どうしたと尋ねる。

 それに対して、ごにょごにょ、と。

 リサは不鮮明でいて小さな声で何か言った。

 

「そうじゃなくて……和也が…………嫌ってわけじゃ……いきなりだったから………心の準備が………」

 

「えっと…なんて?」  

 

 あまりにも聞き取れなかったので、その内容を聞いてみる。

 が、

 

「何でもない!!」

 

「いや…さっき俺がどうとか――――」

 

「――――本当に何でもないから!!」

 

 リサは目をギュッと瞑りながら、何でもないの一点張り。

 俺の言葉を塗り潰してまで強く主張する。

 

「そ、そうか」

 

 それに堪らず俺は、これ以上追求するのを諦めた。

 これと似たようなことが前にもあった気がする。――――ああ、この前のオーディションで白金さんに感謝された時か。あの時もあこちゃんと白金さんに迫られて渋々折れたんだっけ?

 もしかして俺ってば、押しに弱いのでは。まぁ、リサと友希那に弱いのは元々だけど。

 そんな風に最近の経験を元にして自分を解析していたら、

 

「おいおい和也~」

 

「…あ、忘れてた」

 

 放ったらかしに、(もとい)、待ってもらっていた達哉が、ねっとりとしたウザイ言い方で突っかかってきた。

 

「友達がいるのに堂々とナンパとは、和也も随分と大胆になったな」

 

「ちげーよ。幼馴染がいたから声をかけただけだ」

 

「へー、ということは、この子が………あー、やっぱりそう言うことだったのか」

 

「えっと~………和也、この人は?」

 

 自分を見て何故か納得した達哉に、リサは苦笑いを浮かべる。

 

「一応友達なんだけど………悪い、連れてくる奴を間違えたみたいだ」

 

「その言い方は無いだろ?達哉と和也、二人揃って『THE・タッチ』ってクラスの皆から呼ばれてるぐらい、普段の俺達は仲が良いのによ」

 

「そんな呼ばれ方されたことねーよ!仲いいのは認めるけど!」

 

「途中でデレるなよ」

 

「うるせぇ!」

 

 本当にめんどくさい奴が入ってきた。まだリサに渡したい物を渡せていないというのに。しかも、それなのに何となくだが今日の達哉からはいつも以上にめんどくさいものを感じるのがこれまた恐ろしい。

 この予感が外れて、何も起こらないことをただ願うだけなのだが――。

 しかし、そんな俺の祈りを畔笑うように。

 達哉はニンヤリと笑みを浮かべて言ったのであった。

 

「それで、二人は付き合ってるのか?いや、付き合ってるんだろ?そうだろ?」

 

「っ!!?!!??!」

 

「………」

 

 予感というものはなんとも奇妙なものだ。良いことだとあまり当たらないのに、嫌なことは大抵当たる。今のこれがその典型的な例と言えるだろう。――ああ、めんどくせぇ。

 突然の達哉の狂言に、リサは固まり、俺は頭を抱える。

 だが、それでも達哉は止まらない。

 

「和也がこの子の事を話さなかったのは、変な虫から彼女を隠すためだったんだな!俺にだけ教えたのは、信用してくれたからか?」

 

「……」

 

「無視は冷たいなー。和也のこういう噂全然無かったから、これでも心配してたんだぞ?いや~、でも、正直安心した!いつの間にこんなに可愛い子を落としてたんだよ!案外抜け目のない奴だな!」

 

 こいつー、と達哉は俺を肘でつつく。

 なんかハイテンションですっげー嬉しそうだ。もしかして、本当に他意なく、達哉なりに祝福してくれてるのでは。

 そう思うと、不思議と気分は悪くならない。めんどくさいこと自体は変わらないが、達哉は俺のことを心配してくれていたということなのだから。

 しかし、その祝福を受け取ることはできない。例えそれが100%善意であったとしても。

 

「あのな…達哉」

 

「お?何だ?」

 

「俺とリサは付き合ってない」

 

 変な装飾は付けずにシンプルに。

 俺は達哉に真実を伝えた。

 まあ、達哉は「恥ずかしがんなって」と笑っているので、全く信じてくれていないのだが、それはまだ想定内だ。

 勢いづいた達哉をこれぐらいで止められるとは元々思っていないので、俺は第二手目へと移ろうする。

 だけど、それよりも早くに。

 

「そ、そうだよ!アタシと和也はそういう関係じゃないから!ただの仲の良い幼馴染だから!!」

 

 リサが伸ばした両手をブンブンと交差させながら、俺が言ったことに便乗する形で否定した。

 耳まで赤くなっているのは、おそらく勘違いされるのが嫌で必死だからだろう。俺としては、付き合っているぐらい仲良く見えたということに関していうと嬉しいのだが、リサにこれ以上迷惑をかける訳にはいかない。

 俺は「そうだぞ」と頷いてから、リサの便乗に更に便乗して続いた。

 

「リサは恋人とかじゃなくて、仲が良い幼馴染で………って、何でリサは落ち込んでんだ?」

 

「…ううん………何でもない…気にしないで……」

 

「?そっか。まあそれでだ。俺だけじゃなくてリサも同じこと言ってるんだから信じろよ。言っとくけど、さっき達哉が言ったことの全部が間違っているからな」

 

 項垂れるリサを不思議に思いつつ、ビシッと達哉が間違っていることを指摘し、一刀両断する。

 達哉にはこれぐらいド直球で言わなければもっとめんどくさくなるからだ。

 と。

 いきなり達哉が笑い出した。

 

「ハハ、ハハハハハハッ!!」

 

「お、おい、急に笑い出すなよ」

 

 引き気味にそう言うと、達哉は笑いを堪えながら言った。

 

「俺が想像していたよりずっと面白いことになってたんだから仕方ないだろ?」

 

「…つまり?」

 

「俺も流石にこれ以上は言えないな。こればっかしは和也自身が気付いてやれ」

 

 ポン、と。

 達哉は、俺の肩に手を置く。

 そして、衝撃の告白をした。

 

「にしても、和也がリサちゃんに話しかけてるところを見た時から付き合ってないことは分かってたけど、まさかそっちだったのか」

 

「はぁぁ??!それって最初からじゃねぇか!それじゃあ付き合ってるか聞いたのはなんでなんだよ?!」

 

 意味がわからねー!と詰め寄り、問いただす。

 

「あれはちょっとした仕返しだ。和也、俺をライブに誘ってからも、幼馴染の事話さなかっただろ?それに対してのな」

 

「うっ…確かに…」

 

 悪気が無さそうに達哉が言った答えに、言い返せなくて絶句する。

 言われてみれば、俺は達哉をライブに誘ってからも、幼馴染のことを少しも話してなかった。

 それこそ幼馴染の性別すら。

 

「ってことは…友希那のことも知らないんじゃ……」

 

「ゆきなって?」

 

「やっぱりか…」

 

 案の定。

 俺は達哉に友希那のこと、というか、幼馴染が二人いることすら言ってなかった。

 今日のライブは、二人のために来ているみたいなものなのに。

 流石にここまでくると話す機会が無かったという理由は言い訳にしかならず、もはや通用しないだろう。

 申し訳ないと思いつつ、俺は友希那のことを恐る恐る簡潔に紹介した。

 

「リサと同じバンドのボーカルで、俺のもう一人の幼馴染なんだけど……」

 

「まだ幼馴染いたのかよ?!」

 

「…実はいました」

 

 俺が肯定すると、達哉は頭を軽く掻いてヤケクソ気味に言った。

 

「あーもう、そのことについては俺も和也に言ってない事があるからチャラにしてやる。けど、後で聞くから覚悟しとけよ」

 

「お、おう」

 

「それなら次は…」

 

 達哉はリサの方を見た。

 突然視線を向けられ、リサは一歩後ずさる。

 その光景を見て、俺は何かあればすぐにでも止めようと覚悟する。

 しかし、そんな事は起きる事はなく、

 

「いや~、巻き込んじゃってごめんねリサちゃん。正直鬱陶しかっただろ?」

 

 陽気で軽い感じで、達哉はリサに話しかけたのだった。

 

「あっははは…少し」

 

 振られた質問に対して、リサは遠慮気味に笑う。

 すると、達哉がリサにとある案を持ちかけた。

 

「邪魔しちゃった罪滅ぼしとは言わないけど、リサちゃんにとって耳よりの情報を教えるからさ、ちょっと耳を貸しくれない?」

 

「?別に良いけど」

 

 なんだろう?と不思議に思いつつ、リサは耳を傾ける。

 

「それじゃあ、失礼して」

 

 達哉は口元を手で隠しながら、リサに耳打ちした。

 まるで何を言ったのか俺に一切分からせないようにしているかのように。

 

「――――――――」

 

「――――?!!?」

 

 耳打ちが終わった直後。

 言われたことが相当驚く内容だったのか。

 リサはギョッとした表情を浮かべて達哉を凝視する。

 その視線に少し笑い、達哉は俺の方を見て言った。

 

「ちょっと便所行ってくるから、和也はリサちゃんに渡すもの渡しておいてくれ。ロビーで待ってるから」

 

「おう…分かった」

 

「それじゃあ、頑張れよリサちゃん」

 

 最後にリサを鼓舞すると、達哉は去っていった。

 

「……何がしたかったんだ?」

 

 まるで台風のように荒らすだけ荒らして去って行った友人に対して、感想を溢す。

 テンションが高いということは分かっていたが、今日の達哉の言動がわざとらしく、怪しいようにも感じた。

 結局のところ達哉は何がしたかったのだろうか。

 達哉は何を企んでいたのだろうか。

 それらを導き出すための手掛かりになると思い、達哉が去っていった後も目をぱちくりとさせるリサの顔を覗き込んで尋ねてみた。

 

「リサ、達哉に何を言われたんだ?」

 

 すると、リサは「えっと~………」と悩んで、頬をポリポリと掻いてから、  

 

「そんなことよりさ、何か渡すものがあるんじゃないの?ほ、ほら達哉君が最後にそんな感じのこと言ってたじゃん?アタシももうそろそろ戻らなきゃいけないから、そっちの方を優先しようよ。うんそうしよ!」

 

 視線と共に話を逸らした。

 

「もしかして、言いにくいことなのか?」

 

「……ちょっっとだけ言いにくい…かな?」

 

「ちょっっとだけねぇ…」

 

 よほどのことなのか、それとも他に理由があるのか。

 リサはぎこちない笑みを浮かべる。

 ――なら、仕方が無いか。

 俺は、右手に持っているお菓子の入った紙袋をリサに差し出した。

 

「はいこれ、どーぞ」

 

「えっ?どーぞって?」

 

 渡された紙袋に、リサはポカンとする。

 

「差し入れだよ。時間が無いから渡すものを渡してほしいってリサが言ったんだろ?それとも達哉に何を言われたかもっと言及した方が良かったか?」 

 

「いやいや全然っ!こっちの方が良いです!」

 

 ちょっと意地悪に説明すると、リサは慌てて俺から差し入れを受け取った。

 ほんと可愛い幼馴染だ。達哉が言ったことは全部違うと否定したが、リサが可愛いという点だけはあっていたようだ。

 

「あっ、友希那は十中八九喜ぶと思うから、そこは期待してくれてもいいからな」

 

「うわー。今、和也凄く悪い顔してるけど、何を選んだの?」

 

「それを言ったら面白くないだろ?だから秘密だ。まあ、リサなら多分すぐに分かると思うけど」

 

「うーん…なんだろ…友希那が喜ぶものでしょ……あっ!もしかして」

 

「はいそこまで!答え合わせは開けるまでのお楽しみだ」

 

「はーい、分かりましたー和也せーんせ♪」

 

「良い返事だリサ君」

 

 悪乗りに悪乗りを重ね、いつものようにお互いふざけ合う。

 

「って、ふざけてる場合じゃないんだった」

 

 と、そこで思い出した。

 時間の残りが少ないことのに自分にはまだ渡すものが残っていることを。しかも、結構大事な物。

 俺は鞄の中を探る。

 突然ゴソゴソと鞄を探り始めた俺を見たリサは、浮かび上がった疑問を投げかけた。

 

「どうしたの和也?何か忘れものでもした?」

 

「そうじゃなくて……お、あった。リサ、手を出してくれ」

 

「こう?」

 

 俺が言ったように、リサはそっと手を差し出す。

 

「――――」

 

「……和也?その…そんなにマジマジと見られると照れるんだけど」

 

「あ、悪い悪い。これ、初ライブのお祝いだ」

 

 そう言い、俺はベースを持ったウサギのキーホルダーをリサの掌の上に置いた。

 

「わぁ、可愛い…!」

 

「そうだろ?それを見つけた時、リサにピッタリだと思ったんだよな」

 

 ウサギとベース。 

 リサの好きな物が組み合わさった――俺からしてみれば、リサを表したようなそのキーホルダーは、絶対にリサに合うだろうと思っていた。そして、リサは今嬉しそうにはにかみながらキーホルダーを見つめている。

 喜んでくれて良かった。

 これがリサにプレゼントを渡した感想であり、顔が綻んだ理由である。

 俺は、リサに秘密を教えた。

 

「ちなみに、今回はリサだけの特別だぞ」

 

「えっ?それじゃあ、友希那の分は……」

 

「用意してない」

 

「!?どうして?!」

 

 初ライブのプレゼントが自分の分だけだと知ったリサは、驚きながらも理由を尋ねてくる。

 今まで俺がリサか友希那に何か上げる時は、二人一緒に渡していた。それは、かけがえのない存在であるリサと友希那に上下を付けるよなことをしたくなく、平等にしようと思っていたからであり、この考えは今も変わらない。

 しかし。

 それでも今回はどうしても――、

 

「新しい一歩を踏み出すリサに何か送ってあげたかったんだ」

 

「――――」

 

「リサはライブ自体が初めてだろ?それに、友希那のライブを見に行ったあの日からずっと頑張り続けてるリサを見ていたら、これぐらいの特別扱いはしてあげないと気が済まなくてさ」

 

 これは単なる自己満足なのかもしれない。いや、疑う余地なく自己満足なのだろう。

 だけど、後悔はしていない。

 それどころかリサにプレゼントを渡す時――差し出されたリサの手を見た時。

 

 ――間違ってなかった。

 

 そう心の底から思った。

 

「……」

 

「リサ?」

 

 リサは何も言わない。 

 

「あっ、友希那にはその分、差し入れに好きな物を選んだから!だから、別に友希那をハブったわけじゃないし、嫌ってるって訳でもないぞ!」

 

 口を閉ざすリサに焦りを覚えた俺は、パタパタと手を空中で迷子にさせながら、リサが黙ったであろう理由に補足を入れる。

 すると、そのおかげか。

 リサは閉ざしていた口を開いた。

 

「もう、せっかくちょっとジーンって来てたのに和也のせいで引っ込んじゃったじゃん。それにそんな心配しなくてもちゃんと分かってるって」

 

「そ、そうだよな。あはは」

 

 リサと友希那がそんなこと思うはずがないのに、つまらない心配をしていた自分に呆れ、嘲笑を送る。

 

「和也」

 

「ん?」

 

 呼ばれて顔を上げると、リサは胸の前でキーホルダーをギュッと握っていた。

 

「――――ありがと。すっごく大事にするから!」

 

 そして、ニッ、と。

 リサは微笑みを滲ませた。

 その笑顔が、いつもと違うように見え、強く脳裏に焼き付いた。

 

「そうか。そんなに気に入って貰えたのなら俺も渡した甲斐がありまくるってもんだ!」

 

 照れを隠すように。

 俺は両手を腰に当てて、エッヘンと得意気に胸を張る。

 そこから名残惜しくはあるものの、別れを切り出した。

 

「それじゃ、渡す物も渡したし、達哉をこれ以上待たせる訳にもいかないから俺はもう行くわ。友希那に【Roselia】ってバンド名、すっげーバンドに合ってて良いと思うって伝えといてくれ」

 

「分かった。ちゃんと伝えておくね☆」

 

「あ、それと」

 

 最後に、と。

 少しだけ前置きをしてから、俺はリサの背中を押した。

 

「緊張するとは思うけど、リサなら絶対に大丈夫だから自信持てよ!――――ライブ、楽しんでこい!」

 

 願いでもあるその言葉達を伝え、俺はリサに手を振った。

 心がいっぱいの幸福感に満たされているのを感じながら。

 まいった。まだライブ前だというのにこれは困る。

 しかし。

 

「何ニヤニヤしてるんだよ和也」

 

 自然と破顔していく表情を止めることは出来ず、ロビーで待っていた友人にそのことを指摘されるのであった。

 

 

 

 

  

 

 




 最後まで読んでいただきありがとうございました。
 
 はい、今回はいつもより文字数少なめです。この作品では初めての8000文字でした。
 これには、8話でやる元々の予定を半分に切ったことや、とある人から長いと言われたことなど色々な理由があるのですが、そんな事は置いておいて。
 やはり、最初の頃のように早く書くことが出来なくなりました。完全にスランプです。書きたいシーンはあるんですけどね…まだまだ先です。それにまだRoseliaの初ライブ演奏してないとか何事って感じですね、早く展開進めろって言いたいですよね、私も凄く共感します…。
 8話を書き始めた時はライブ終わりまで書こうとしていたんですけど、次回になりそうです。

 と、まあ、こんなに展開も更新も遅い作品を読んでくれて本当にありがとうございます。
 
 それでは皆さん、また次回にお会いしましょう!なるべく早く上げれるように頑張ります!ばいちっ!
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