無惨様の受難(仮)   作:どす黒いニベア

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 えらい難産だった……
 思いつくまま書くと、やっぱりあとあと困るものだ。


 ※ 2020/5/13 誤字を修正しました。

   2020/5/14 
 ① 表現を一部修正しました。

「すぐに祈願祭を中止するよう嘆願した」
 ↓
「すぐに祈願祭を中止するよう直訴した」

「二日後、両親の嘆願も空しく~」
 ↓
「二日後、両親の嘆願も功を奏さず~」

「童磨は救いを認めない」
 ↓
「童磨は人々の夢見る救いを認めない」

 ② 段落ごとの改行になっていなかった箇所を修正しました。



その肆

 零余子の記憶は、冬の厳寒の骨身に染みる北の村で始まる。そこの農家の長姉として生を受けた。

 

 実家は貧乏で、北の村自体も特に名産品があったわけではないが、父や母や弟たちとの仲は焚火のように温かく円満で、近所付き合いも良好だったので、零余子にとって北の村は幸せな空間だった。

 

 気に入らない点があるとすれば、村の伝統行事の祭りだった。

 

 四月からの田植え期を前に、村ではその年の豊穣を土地神に祈願する祭りを数日間執り行うのだが、その初日に十三歳以上の村の乙女を一人、近くの洞窟に住むとされる土地神の使徒「有流邪悪之」に捧げるしきたりがあった。供物に選ばれたのは、数え年で十六になる美人で有名な女性だった。

 

 三つ年上のその女性を実の姉のように慕ってやまなかった零余子は、村長宅に押し掛けるや否や、すぐに祈願祭を中止するよう直訴した。何なら、自分が代わりに生贄になるとも訴えた。しかし、村長の返事は常に「私は村長です」のみで、まったく取り合おうとはしなかったのだ。

 

 会話のならなさに苛立ち、零余子は左正拳付きを髭の豊かな村長の頬に見舞った。拳闘家も惚れ惚れするような会心の一撃だった。村長は首を百八十度ほど捻じっただけの軽傷で済んだものの、暴力行為を働いた角で処分が決定するまで謹慎するよう言われ、二日後、両親の嘆願も功を奏さず零余子には重い罰が下された。

 

 村からの追放処分である。

 

 両親の必死の謝罪も空しく、零余子は着の身着のまま村を出、真冬の重苦しい曇天を頭上に何日もあてどもなくさまよった。暦の上の春は、その朗らかな言葉の響きとは異なり、吹きすさぶ風は容赦なく体温を奪い、空中を舞う雪は仏壇の白菊の花びらを思わせる。稀に晴れても、雲間から差す弱日程度では冬の気温に抗うこと能わず、夜になれば状況はいっそう悪化し、合わせて空腹や渇きのためについに零余子の体力は尽き、歩いていた小径の泥濘に倒れた。失った家族のぬくもりへの恋しさと、村長をもっとぶん殴っておけばよかったという後悔とが胸のうちで渦巻き、拳を力の限り握りしめたところで、

 

「小娘の行き倒れか。しかし、……どうやらなかなか生への執着心は強いようだ。果たして、お前は私の役に立てるのかな?」

 

 鬼舞辻 無惨により零余子は鬼と化した。

 

 なお、のちに風の噂で聞いたところによると、あの村長は破壊の力で満たされた零余子の両親の餌食になったらしい。世の中、不思議に満ち溢れているものだ、と零余子は何となく思った。

 

 鬼になった当初、零余子はその体のすばらしさに小躍りした。身体能力は人間を圧倒的に上回り、大怪我をしても自然治癒し、空腹や渇きで死ぬこともない。無惨の名を口にしてはいけないなどいくらか制約があるという欠点も、頑張って人間を喰らえば着実に強くなれるという利点に比べれば些事に思われた。そうやって調子に乗って人間を喰らい続け、血鬼術が使えるようになり、当時の下弦の一人に下克上を成功させ、十二鬼月の一員となるまでは順調だったのである。

 

 下弦の肆となった零余子は、もう下弦を辞めたくて仕方がなくなっていた。

 

 完全実力主義の鬼の世界は、昇進すればするほど下位の連中からの突き上げがきつくなる一方、さらなる段階への一歩を踏み出す労力が指数関数的に増加していく。そこへ十二鬼月としての責務と長時間の無償労働、さらに無惨からの情け容赦のない圧力が加算されるので、零余子の胃は丈夫になったはずなのに針でつつかれたように毎日痛んだ。いっそこのまま胃に穴が開いて倒れられれば一時の休息となろうが、無病息災が当然の鬼の体ではそれすらもままならない。さりとて、無惨に労働環境の改善を進言しても、却下されるか殺されるかの二択に決まっている。

 

 成果の覚束ない日々の暁闇の空を見るたびに、零余子は深くため息をついた。村長をぶん殴るほどにあふれていたかつての溌剌さも、とうに懐かしい思い出の一部となっていた。

 

 そんなある日、涼やかな鈴虫の声音の響く森で零余子は一冊の落ちていた本と出会う。大正時代の本としては珍しく、表紙を覆う手触りの滑らかな包みはふんだんに彩色され、中身も可愛らしい絵や赤く強調された文章などが散りばめられていた。汚れのほとんどないその本の題名を、零余子は半ば無意識的に読んだ。

 

「『頭無惨でもわかる労働者の権利』……」

 

 農家出身の零余子は教育らしい教育を受けていないので、簡単な文章程度しか読み解けない。それにもかかわらず、零余子は本の題名を読んだ途端に、これこそが自分に真に必要な理念であると理解できた。

 

 宝物のように本をしっかり抱きかかえると、零余子は一目散に自分の拠点に帰り、むさぼるように読んだ。

 

 完全週休二日制、サービス残業は違法残業、内心の自由、八時間労働、労働組合、労働者の戦いの歴史……零余子の蒙は目からうろこの知識に啓かれていった。そして悟ったのだ。

 

 ―― 戦わねばいいように使役されるだけだ!

 

 こうして零余子は権利のための闘争と勉強を決意したのである。

 

 だが、一つ心配事があった。無惨の監視能力がどこまで有効なのかが問題だった。位置は把握しているのか、視界は共有しているのか、思考は読み取れるのか、鬼全員が対象なのかそうでないのか、これらは常時なのか意図したときだけなのか……うんうん悩んだ末、とにかく行動しようと開き直った。

 

 無惨は強大な敵だ。一人ではとても太刀打ちできないだろう。そこで零余子は同志を募るために他の下弦の鬼を訪ね、自らの計画を詳説した。時には拳や血鬼術を用い、首が飛んだり体が弾けたりしたが、最終的にはどの下弦とも固い握手を交わすことができた。そのとき、零余子は穏やかな海の向こうへ沈んでいく真夏のまばゆい太陽を幻視した。

 

 同志との意見交換は、用心のため基本的に累の血鬼術を使った糸電話で行われた。さすがは鬼殺隊を一瞬にして賽子状の肉片に変えてしまうだけあって、糸の性能は格別で、通話は長距離間であっても何ら支障がなかった。

 

 議論の内容はさまざまだったが、全員が難問と認識していたことに、無惨の監視能力と戦闘能力があった。

 

 前者は、零余子の最近の行動結果と他の下弦の経験から、おそらく目的とする相手の位置はわかるのだろうという結論に落ち着いた。常時思考や視界を盗み見ているのであれば、とっくに下弦全員を殺すなり無限城に召喚して詰問するなりしているはずだからだ。無惨の名前を口にしたら処刑される件については、手間を考えたら鬼化する際に流し込まれた無惨の血に、細工が施されていたと見做すのが自然だった。

 

 総じて、怪しまれるような行動をしなければ、すぐには計画は察知されないだろう。

 

 後者は解決の糸口がつかめなかった。話し合いで決着のつかない意見の衝突は、最終的には実力行使へと移行し、負けた側が勝った側の要求を飲まざるを得なくなる。しかし、現状零余子たちには無惨を論駁や打倒するだけの能力がない。

 

 せめて、何らかの形で無惨の力が弱体化すれば好機はあるのだ。行き詰ったまま零余子たちは意見交換を重ねていったものの、有用な案は一向に見つからないままだった。そこへ、則巻 アラレを十二鬼月全員で殺せとの無惨の命が飛び込んできた。

 

 気のせいか無惨の急いている様子に違和感を覚えつつも、吉原でアラレたちと拳を交え、敗北し、無限城で無惨から叱責を受けていた零余子は、平伏を装いつつ溢れ出そうになる興奮の波を隠すのに手間取った。

 

 アレは使えるのでは? 無惨が去ってすぐに零余子は閃いた。

 

 そうして、あれよあれよと後日アラレと再戦する段取りになった翌日、上弦の弐の童磨が突然零余子に会いに来た。

 

 

 

 

 童磨にとって、この世は広大な砂漠であり、この世で渇きと灼熱に苦しむ人々は蜃気楼に頼みの綱を繋げようとする、哀れな迷子だった。

 

 幼少の時分より、万世極楽教の教祖の立場なのに童磨は人々の夢見る救いを認めない。天国を認めない。そして、神仏を認めない。

 

 救いを欲するあまり実子を人買いに売って得た金を持参してきた夫婦のように、父の女遊びが発端で母が父を惨殺し、その後母が自殺したように、両親の血塗れの死体を前に片づけが面倒程度にしか思わなかった自分のように、世界には少しの潤いもなく、あるのはひたすらの非情さだけなのだ。鬼になって以降も、その哲学に変わりはない。

 

 童磨の七色の瞳の奥の奥には、闇夜の奈落よりもなお暗い冷笑がたゆたっていた。そんな彼を、一変させたのがアラレだった。

 

 姿形や声は童女そのものなのに、やることなすことすべてが破天荒な様は、まさに理不尽の権化だった。しかし、それにもかかわらず、童磨はアラレに現実で味わうような渇きを覚えなかった。むしろ、アラレの無邪気な笑顔に新緑萌ゆる春のやわらかな青空を見た。

 

 つまり、ホワホワしたのである。

 

 それの正体が何なのか気づくのに時間は要しなかった。

 

「今わかったよ。恋の心は彼女だったんだね」

 

 拝殿での教祖の突然の意味不明な発言に、集まっていた信者は一様に首を傾げた。

 

 童磨はすぐさま行動を開始し、零余子のもとを訪れた。以前から、下弦の中でも零余子の様子が特に変わっているのに気づいていたのだ。いつも軽薄な言動を取っているが、教祖を無難に勤められている童磨は、実のところ頭も良ければ人の機微にも敏い。そうでなければ、どうして他者の相談に乗れようか? その鋭敏な頭脳が、零余子たちは何かを企んでいると囁いたのである。

 

 零余子の住処は山中の小ぢんまりとした昔ながらの民家である。茅葺屋根の木造建築で、玄関の古びた引き戸を軽く叩いたのち開けると、猫の額ほどの土間と囲炉裏のある居間が一望できる。目につくのは、燃料用の木材と衣装箪笥、それに硯と筆の乗った机、あとは煎餅布団や大小様々な本だ。零余子は囲炉裏の側に机を置いて、童磨が来たことにも気づかず、本に夢中になっているようだった。

 

 面白い小説でも読んでるのかねぇ、と微笑ましく思いながら、童磨は強めに引き戸を数度叩いた。

 

「こんばんは、零余子。何を読んでるのかな?」

 

「ど、童磨殿!?」

 

 屋根を突き破らんばかりに零余子は飛び上がった。彼女の読んでいた本が宙を舞い、童磨の頭上へと飛来する。

 

「そんなに驚かなくたっていいじゃないか。別にとって食おうってわけじゃないんだよ?」

 

 童磨は本を片手で受け止めると、表紙に目をやった。

 

「あ、いや、その、急なことだったのでつい……って、私の本!」

 

「なになに……『打倒、ブラック企業! 全国の労働者よ、団結せよ!』。こりゃまた随分な本を読んでいるね。ブラック企業が何なのかわからないけど、ふむ、目次を読んだ感じ、悪質な組織に労働者が集団で抗議しようって本かな? 紡績業の女の子たちの労働環境、酷いらしいからねぇ。こういう本が出版されるのもむべなるかな。ふむ、労働者が自分たちの権利を訴えるのは自然なことです、か……なるほどねぇ。いやはや、なかなか勉強になる本だね。こんな本を読んでいるからには、零余子は誰かに対して抗議したいことがあるんだね?」

 

 目を細め、半ば確信的に告げると、零余子はおろおろと多角的な動きをし始めた。

 

「いえいえいえいえ、そそそそそんなことは、ご、ござりやせんよ、御代官様」

 

「挙動不審の時点であるって白状してるようなものだよ」

 

「どうか、どうか内密に! あの方にはどうか内密に御願いします! あとで山吹色のお菓子を差し上げますから! どうかどうか! 何なら、あの方の若き日の痛々しい詩集を差し上げますから!」

 

「いや、どこで手に入れたのよ、そんなの」

 

 大仰に何度も何度も土下座を繰り返す零余子に、童磨は苦笑した。

 

 零余子にこれほど怖がられているのは、無惨からの刺客だと思われているからに違いないが、もし本当にそうだったなら、童磨はわざわざ引き戸を叩いて訪問を知らせたりはせずに、家ごと血鬼術で零余子を刻んでいただろう。同じ十二鬼月でも、上弦と下弦では実力に天と地ほどの差があるのだ。

 

 謝り通され続けては会話にならないので、童磨は大きな音を立てて扇を広げた。零余子が動きを止め、恐る恐るといった様子で顔を上げる。

 

「今回、君に会いに来たのはね、君の企みに一枚噛ませてもらおうと思ったからさ。もちろん、最終的な決定は君が何を企んでいるかちゃんと話してもらってからだがね」

 

 保留を含めた理由を告げると、口を開いたまま零余子は停止した。

 

「冗談、ですよね?」

 

「本気だよ。不安なら、俺の頸を飛ばしてあげようか?」

 

 扇を頸筋にあてて、血が垂れるほどにめり込ませると、零余子は慌てて首を振った。

 

 日輪刀以外で頸を飛ばされても実質無害とはいえ、その行為の宣言があるとないとでは、やはり言葉の重みが違ってくるのである。諦めたように大きなため息をつくと、零余子は「本当に内密にしてくださいね」と念押しし、訥々と計画を話し始めた。今の労働環境が辛いこと、考えまで監視されるのはたまらないこと、もう少し自由が欲しいこと、下弦全員でそれらを訴えようとしていること、そしてもしかしたらアラレは交渉材料になるのではないかと期待していることを伝えると、零余子は最後に童磨に疑問を呈した。

 

 果たして、アラレは交渉材料になり得るか? 童磨の答えは簡潔だった。その表情に、普段の軽薄な薄笑いはない。

 

「なるだろうね」

 

 机上の蝋燭のほのかな灯りに照らされる童磨の美顔は、陰影が明晰になったことにより、その真剣な表情に凄みが与えられ、上弦の弐以上の圧迫感がある。唾を飲んだ零余子が理由を問うと、童磨は滔々と語った。

 

 暴君に近い無惨が長期間組織の頂点にいられたのは、彼に比する存在が鬼側にも鬼殺隊側にも現れなかったからにほかならない。同等以上の何者かがいないのであれば、その時点で最も力のある者が絶対的な地位を確立するのは必定だ。当然、それを覆したいのであれば、下位の存在は強くなるなり団結するなりして対抗するしかないが、無惨は刃向かう鬼が出てこないよう対策をしている。監視能力はその一端だろう。

 

 ところが、ここで則巻 アラレが現れた。童磨は、無惨がアラレを脅威に思っていると予想していた。異例にも十二鬼月を全員招集し、焦った様子で殺してくるよう命じたのが根拠である。

 

 仮にアラレが無惨を超える力の持ち主だとすると、もはや無惨の地位は絶対的ではなくなる。つまり、相対的な弱体化を意味するだろう。それは敷衍すれば、十二鬼月の立場の相対的な強化にも繋がる。なぜなら、アラレを倒すには、まずは鬼殺隊の柱たちを倒さなければならないだろうからだ。

 

 上弦の壱、弐、参の攻撃に平然と耐え、星を叩き割る少女を、鬼殺隊が重要視しないわけがない。吉原での戦闘は、今更ながら思えば、アラレの真価を把握する前の鬼殺隊の不意を付けた最後の機会だったのかもしれない。次の戦闘からは、アラレには複数の柱がついてくるだろう。あるいは、即座に柱が駆け付けられるような態勢を採用しているだろう。そのとき、無惨が一人で柱たちの猛攻を捌きながらアラレを殺せるのかと言えば、素直に頷くことはできない。自分よりも強い敵を相手にしながら、それなりに厄介な連中を捌き切るのは至難の業だろう。したがって、無惨には十二鬼月の助力が必要になる。

 

 換言すれば、十二鬼月の価値が上昇するのである。

 

 無論、鳴女の血鬼術を使用して、アラレが単独になるような状況を作る手もあるが、それはあくまでも理想論であり、理想で生死をかけた戦いを語るほど童磨は愚かではない。机上の議論で実戦に完璧に対処できるのならば、歴史上の戦略家たちが頭を悩ます必要などなかったはずだ。

 

 以上の仮説を説明した上で、童磨は最後に、

 

「だから、もし君たちが労働環境の改善を訴えるのであれば、次の戦いが終わったあとにしたほうがいいよ」

 

 と、軽薄な笑みを浮かべて言った。零余子はかわいらしく唇に細い指をあてた。

 

「今すぐにじゃないんですか? 次の戦いで、もし則巻 アラレがあの方より弱いとわかったら、機会がなくなるじゃないですか」

 

「それなんだがねぇ……俺、アラレのほうが強いと思ってるんだよね」

 

 衝撃的な本音に零余子はのけぞった。

 

「だってさ、よく思い出してごらん。俺や黒死牟殿や猗窩座殿の血鬼術喰らってもピンピンしてるんだぜ? どんな体してたら無傷でいられるんだよって話になるでしょ? おまけに、光線吐くわ麩菓子割るみたいに地球割っちゃうわで、正直規格外すぎて何やっても焼け石に水にしか思えないんだよね。そりゃあの方だって強いけどね、斬られたら当然ケガするんだぜ? 何されても無傷な方と、何かされたらケガを負う方とじゃ、どっちが有利かなんて考えるまでもないだろ?」

 

 それは童磨のどこまでも現実的な脳が算出した結果だった。

 

 驚異的な力を持つ無惨が理不尽な存在であるのは間違いない。しかし、童磨にはアラレが無惨を凌駕する理不尽にしか思えなかった。それでいてホワホワさせてくれたからこそ、童磨ははじめて恋を知ったのである。

 

「そうそう、さっきの俺が参加するかどうかの話だけど、参加させてもらうよ」

 

「本当ですか!? ……あ、いやでも、どうして私たちと組もうとするんです? 必要ないですよね」

 

「時には意外な行動をとったほうが相手に効果的なこともあるんだよ」

 

「ついでにもう一つ質問いいですか? なぜ、あの方に楯突くような真似を?」

 

 この質問に恥ずかしさを覚え、童磨は腕を組んで正直に言おうか言うまいか唸ったが、仲間なのだからまあいいかと割り切り、

 

「アラレが好きだからさ」

 

 七色の瞳を奥の奥からきらめかせながら、快活に笑った。

 

 明日の天気は槍のち日輪刀かな、と零余子は呟いた。

 

 

 

 

 




 無惨が常時すべての鬼を監視しているわけではないとの設定は、吉原の堕姫の様子を見に来た時の発言と、無惨の他の鬼への接し方から推論しました。
 常時監視しているのであれば、あのような過去と比較するような発言はしないだろうし、自分第一の無惨が他の鬼の監視をいつもやってるもんかな、と思ったんですね。

 忌憚のない感想をお待ちしています。


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