現実世界で遊戯王!   作:たけぽん

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11. 運命の序曲(後編)

ターン4

 

「俺のターン、ドロー!」

 

さて、このターンの攻撃を2体の守備モンスターと伏せカードで凌がなければいけない。手札をゼロにしてしまったことで超融合はただのブラフにしかならないが、もう一枚の伏せカードは一応発動できる。

 

「俺はバトルフェイズに入るぜ!」

 

スタンバイフェイズもメインフェイズも行動なし。それでも未来龍皇のプレッシャーが場を制圧している。

 

「まずはトーチゴーレムで見習い魔導師を攻撃!」

 

それに対し打てる手はない。素直に破壊される。

 

「続けて未来龍皇でセットモンスターを攻撃!」

「セットモンスターは見習い魔術師。戦闘で破壊されたことでデッキからレベル2以下の魔法使い族モンスターをセットする」

「なら未来龍皇の効果!素材のダンテを取り除き、その発動を無効!」

 

見習い魔術詩は墓地にいるため、コントロール奪取はされない。

 

「トラップ発動。ブロークンブロッカー。攻撃力より守備力が高い守備モンスターが破壊された場合、デッキから同名モンスター2体を特殊召喚する。デッキより2体の見習い魔術師を特殊召喚」

「へえ、珍しいトラップを使うじゃねえか。だが、俺のバトルフェイズは終了してないぜ!まずは今墓地へ送られたダンテの効果!墓地のファーファレルを手札に回収!そしてトラップ発動、エクシーズリボーン!墓地のグレンザウルスを特殊召喚し、このカードをエクシーズ素材にする!」

 

バトル中のトラップによる特殊召喚。つまり連続攻撃が可能。そしてグレンザウルスの効果は……。

 

「グレンザウルスで見習い魔術師を攻撃!そして戦闘破壊したことで、素材を取り除き1000ポイントのダメージを与える!」

「ならそれにチェーンして見習い魔術師の効果発動。デッキから水晶の占い師をセット」

 

ハルカLP7500→6500

 

「俺はメインフェイズ2に移行!カードを一枚セットしターンエンドだ!」

 

井上LP8000 手札2枚 フィールド 未来龍皇ホープ(素材1つ) トーチゴーレム グレンザウルス(素材なし) 伏せカード2枚

 

ターン5

 

「俺のターン、ドロー」

『はわわわ!まずいですよソードマン、マスター押されっぱなしですよ!』

『確かに、相手のフィールドには攻撃力の高いモンスターが3体、さらに確定している妨害札が一回。さらに正体不明の伏せカードが2枚。マスターの不利は火を見るより明らか。ですがそれよりも……』

 

ソードマンはおそらく俺と同じことを思っているのだろう。確かに未来龍皇は強力なモンスターで、このデュエルでもその力を遺憾なく発揮している。だが、さっきの力の源はこいつではない。つまり、やつのデッキにはまだ切り札があるはずだ。

その正体を知るためにも、まずはこのフィールドを何とかしなければいけない。

 

「俺はセットモンスターを反転召喚。水晶の占い師。そのリバース効果は、デッキから2枚めくり、一枚を手札に、もう一枚をデッキの下へ送る」

「そんな雑魚に未来龍皇は使わないぜ。めくればいい」

 

俺は2枚をめくる。一枚は黒牙の魔術師、もう一枚は貪欲な壺。

 

「……」

 

手札が少ないこの状況で貪欲な壺はありがたいが、デッキコンセプトとしては黒牙の魔術師を加えられるチャンスを逃すのも痛い。それにこいつを使えば未来龍皇の攻撃力を半減させることもできる。

 

「……貪欲な壺を手札に。黒牙はデッキの下へ。そして貪欲な壺を発動。墓地のリンクリボー、リンクスパイダー、アカシックマジシャン、見習い魔術師2体をデッキに戻しカードを2枚ドロー」

 

これで手札は3枚。

 

 

「手札からルドラの魔導書を発動。水晶の占い師を墓地へ送り2枚ドロー」

 

これで4枚。

 

「俺はカードを3枚セットしてターンエンド」

 

ハルカLP6500 手札1枚 フィールド 見習い魔術師(守備表示) 伏せカード4枚

 

ターン6

 

「なんだよ、あんだけドローしといてモンスター引けなかったのかよ。ま、出しても未来龍皇の敵じゃないけどな!」

「無駄口をたたいてる暇があるならターンを進めろ」

「てめえ、デュエルが終わったらボコボコにしてやるからな……。俺のターン、ドロー!」

「……」

「容赦なくいくぜ、バトルフェイズだ!グレンザウルスで見習い魔術師を攻撃!」

「トラップ発動。トラップトリック。デッキから無限泡影を除外し、同名カードをセット。この効果でセットしたカードはこのターン発動できる。よって無限泡影を発動。これで未来龍皇の効果は無効」

『やった!これで見習い魔術師のリクルート効果は無効化されませんよ!』

『流石です。マスター』

 

はしゃぐサイマジ。にやりと笑うソードマン。

 

「見習い魔術師の効果。デッキから見習い魔術師をセット」

「この……なら、トーチゴーレムで見習い魔術師を攻撃!」

「再び効果。見習い魔術師をセット」

「未来龍皇で攻撃!」

「見習い魔笛使いをセット」

「ちまちま残しやがって……俺はターンエンドだ!」

 

井上LP8000 手札3枚 フィールド 未来龍皇ホープ(素材1つ) トーチゴーレム グレンザウルス(素材なし) 伏せカード2枚

 

ターン7

 

「ふう……」

 

なんとか凌いではいるが、このデュエル、俺は奴のライフをまだ1ポイントンも削れていない。そろそろ攻めに転じたいところだ。

 

「ドロー。スタンバイ、メインフェイズ。見習い魔笛使いを反転召喚し、効果発動。手札からモンスター一体を特殊召喚できる」

「チェーンはないぜ」

「俺はこの効果でマジシャンズヴァルキリアを守備表示で特殊召喚。さらに、デッキから幻想の見習い魔導師を墓地へ送りマジシャンズソウルズの効果発動。このモンスターを特殊召喚」

「またドローカードかよ……」

「俺はソウルズの効果発動。俺の場の2枚の伏せカードを墓地へ送りカードを2枚ドローする」

 

墓地へ送ったのは、マジシャンズプロテクションと超融合。超融合を手放すのは痛いが、もう一枚の伏せカードは残しておきたいカードなので仕方ない。

 

「墓地へ送られたマジシャンズプロテクションの効果。墓地からブラックマジシャンを特殊召喚」

 

これで俺の場にはモンスターが4体並んだ。

 

「へっ、いくら並べても未来龍皇の前じゃ……」

「いいや、すでに未来龍皇を突破するコンボは完成している」

「なに?」

「まじかよ、攻撃力3300でモンスター効果無効のモンスターを除去るってのか?」

「いや、流石に無理だお。仮に除去ってもトーチとグレンザウルスがいるお」

 

周囲もざわつきだす。まあ、見てなよ。俺のエンタメデュエルをさ。

 

「まずは、見習い魔笛使いとソウルズでリンク召喚!アカシックマジシャン!」

「……!しまった、未来龍皇の位置が!」

「そう。お前は2ターン目、スカルデットのリンク先であるエクストラモンスターゾーンの正面にホープを出した。そしてアカシックマジシャンはリンク召喚成功時、リンク先のモンスターをすべてバウンスする!」

「ち、ちくしょう……なーんちゃって!バカめ!モンスター効果による除去なんて通るわけねえだろ!未来龍皇の効果!アカシックマジシャンの効果を無効にし、コントロールを奪う!」

「だがこれで、そいつは素材を使い切った。もう俺のモンスター効果は無効化できない」

「何言ってんだ、お前の手札はたった2枚、場で攻撃できるのはブラックマジシャン一体!それで俺のモンスター4体を突破できるわけねえだろうが!」

「……それはどうかな」

「何!?」

「俺は手札から、ヘルモスの爪を発動!場のマジシャンズヴァルキリアを墓地へ送り、タイムマジックハンマーを特殊召喚する!」

 

エクストラデッキからフィールドに現れたのは一体の融合モンスター。攻撃力も守備力も貧弱だが、このカードの真の力はそんな数値なんて関係ない。

 

「タイムマジックハンマーの効果、このカードをブラックマジシャンに装備する!そしてこれを装備したモンスターが相手モンスターとバトルするとき、ダイスを振り、出た目と同じ数のターン分そのモンスターを除外する!」

「ま、まじかよ!」

「さらに手札から、拡散する波動を発動!ライフを1000払い、ブラックマジシャンの攻撃をフィールド全体に拡散させる!」

 

ハルカLP6500→5500

 

「ってことは、すべてのモンスターが……」

「そういうことだ!バトル!未来龍皇を攻撃!そしてダイスロール!」

 

さっき使った赤いダイスを振る。

 

「出目は……6!」

「ろ、6だと!?」

「よって未来龍皇は6ターン先へ吹き飛ぶ!続いてトーチゴーレムを攻撃!ダイスロール!」

 

再び転がるサイコロ。その出目は4。

 

「さらにアカシックマジシャンを攻撃!ダイスロール!3!」

「おいおい、なんかすげーぞあいつのデュエル!」

「すげーワクワクするぞ!」

 

周囲は盛り上がりまくっているが、俺にはそれに反応する余裕はない。

 

「ラスト!グレンザウルスを攻撃!ダイスロール!1!」

「お、俺のモンスターが……全滅」

「俺はこれでターンエンド」

 

ハルカLP5500 手札0枚 フィールド ブラックマジシャン(タイムマジックハンマー装備)  伏せカード1枚

 

ターン8

 

「俺のターン……。ドロー」

 

すっかり勢いのなくなった井上は力なくドローする。

 

「ふ、ふふ……」

「……?」

「ふふふははあはははは!なに勝った気でいやがる!モンスターは消し飛んだが、俺の優勢に変わりはないぜ!」

 

確かに、LPだけ見れば俺の方が低いが、フィールドアドバンテージで五分五分だ。それなのに優勢だと?どういう意味だ?

 

「まずはスタンバイフェイズ!1の目で除外されたグレンザウルスは俺のフィールドに戻る!そしてメインフェイズ、俺はこのマジックカードを発動するぜ!」

『!マスター、何か来ます!』

 

井上の出したカードに真っ先に反応したのはソードマンだった。それもそのはず。そのカードはこの状況下で最も効果的なカードだったから。

 

「RUMアストラルフォース!」

「アストラル……フォースだと……」

「このカードの効果により、フィールドで一番ランクの高いグレンザウルスを素材に、同属性、種族でランクが二つ高いエクシーズモンスターを重ねてエクシーズ召喚する!」

 

グレンザウルスのランクは3.属性は炎、種族は恐竜。つまり出てくるのは恐竜族炎属性ランク5のモンスター。該当するカードでこの状況を返せるカードと言えば……。

 

「ランクアップエクシーズチェンジ!現れろ!NO.61ヴォルカザウルス!」

 

そのモンスターの登場に、額から汗が零れ落ちるのを感じた。決して夏の暑さなどではなく、そのカードに秘められた力に対しての反応だった。なるほど、確かにこのカードを主軸にしているのなら後攻をとるのも理解できる。

 

『ま、マスター!このカード!』

『どうやらこのカードが力の源のようですね』

 

サイマジたちも驚きを隠せないようだ。俺たちがこの力を持つカードと対峙するのは一体いつぶりだろうか。そんな感傷に浸る間もなく、ヴォルカザウルスはエクストラモンスターゾーンに現れてしまう。

 

「いくぜいくぜ!ヴォルカザウルスの効果!エクシーズ素材をひとつ取り除き、相手モンスターを破壊!その攻撃力分のダメージを与える!対象はブラックマジシャン!」

「くっ……」

 

ハルカLp5500→3000

 

「これで終わりだと思うなよ?俺はヴォルカザウルスをカオスエクシーズチェンジ!現れろ、迅雷の騎士ガイアドラグーン!」

 

さらにガイドラ。これでヴォルカザウルスの直接攻撃不可のデメリットは帳消しになった。

 

「バトル!ガイドラでダイレクトアタック!」

 

ハルカLP3000→400

 

「これで俺はターンエンドだ!」

 

井上LP8000 手札3枚 フィールド 迅雷の騎士ガイアドラグーン(素材一つ) 伏せカード2枚

 

「教えといてやる。俺の伏せカードは、2枚ともエクシーズリボーンよ!つまりお前がガイドラを倒せばヴォルカザウルスが復活しバーンダメージをくらわすわけだ!」

 

そうでなくとも墓地にはグレンザウルスとダンテがいる。その2体を蘇生させるだけでも俺のライフを削りとるのはたやすいだろう。

 

「さらにさらにい!俺の墓地にはダンテで落とした光の護封霊剣もある!お前が奇跡でも起こして俺の布陣を突破しようが防御も万全だぜ!」

『ま、マスター……』

『……』

「これでねーちゃんは俺のものだ!ねーちゃんよお、別れの前にこいつに言っとくことはあるか?」

 

問いかけられた真崎は、特に焦るわけでもなく、こう言い放った。

 

 

「いうことなんて何もないわ」

「だとよ!残念だったな!ねーちゃんも弱っちいお前を見限ったらしいぜ1」

「勘違いしないでくれる?」

「はあ?」

「私は、武藤君が負けるはずないから言うことがないのよ。彼のことだからどうせえげつない方法で勝つのは容易に想像できるし」

「な、なに言ってんだ!この状況で、モンスターも手札もないこいつが勝てるわけねえだろ!」

「それはどうかしらね。さ、武藤君、あなたのターンよ!」

 

真崎のやつ、俺を評価してくれてるのか、それとも入学式の日のワンキルをまだ根に持ってるのかわからんな。だが、確かにこの状況下で俺が勝つ方法が一つだけ残っている。それにはあのカードを引くのが必要不可欠。果たして引けるか……?

 

 

『マスター……』

『……心配すんなサイマジ。仮に負けても俺たちが失うものは同じだ』

『そうですよサイレントマジシャン。我々は以前もこうしてマスターと一緒に戦ってきた。信じるのです。マスターを』

 

ターン9

 

「俺の……ターン」

 

不思議だ。先ほどまでうるさいくらいに騒いでいたギャラリーの声も、モールに流れるクラシックも、何も聞こえない。俺はただ、このカードを引くだけ。それ以外の情報は完全に意識の外だ。こんな感覚は久しぶりかもしれない。

 

「ドロー!」

 

引いたカードをゆっくりと確認する。

 

「来たか……」

「な、なにを引いた……?」

「俺は今引いたカードを召喚する!現れろ、黒牙の魔術師!」

「黒牙の魔術師を通常召喚だと?バカが、ペンデュラム効果を使っていればガイドラを弱体化させ、さらに墓地の魔法使いを蘇生できたものを!」

「トラップ発動!連鎖破壊!」

「連鎖破壊!?なんだそのカードは!」

「攻撃力2000以下のモンスターが召喚に成功した時、そのコントローラーのデッキから同名カードをすべて破壊する!」

「同名カード……ま、まさか!」

「俺はデッキから2枚の黒牙の魔術師を破壊する!」

 

これがこのデッキで俺が狙っていたコンボ。この効果の為に手札に複数来てしまった黒牙の魔術師をデッキに戻せるスカルデットやバウンドリンクを採用していたのだ。

 

「黒牙の魔術師のモンスター効果!破壊されたとき、墓地の闇属性魔法使い族を特殊召喚する!甦れ、ブラックマジシャン、ナイトエンドソーサラー!」

「その効果、破壊される場所に指定ないのかよ!」

「ナイトエンドソーサラーの効果!特殊召喚に成功した時、相手の墓地のカードを2枚除外する!護封霊剣とダンテを除外!」

「く、それにチェーンして護封霊剣を除外!このターンの直接攻撃を封じる!けっ、ビビらせやがって、所詮お前の場のモンスターじゃ俺のガイドラも次のターンのヴォルカザウルスも対処できまい!」

「俺はレベル4の黒牙の魔術師にレベル2のナイトエンドソーサラーをチューニング!シンクロ召喚、ドロドロゴン!」

「場にブラマジとドロドロゴン……ま、まさかだろ……」

「俺はドロドロゴンの効果発動!このモンスターとブラックマジシャンで融合召喚する!現れろ、超魔導竜騎士ドラグーン・オブ・レッドアイズ!」

 

出てきたのは登場してから環境に君臨し続ける超高額モンスター、通称ドラグーン。ヴェルデアナコンダで真紅眼融合をデッキから発動し融合召喚するのが一般的だが、流石にドラグーンとアナコンダをそろえる資産はなかったので、俺のデッキではこの出し方しかできない。

 

「おいおい、なにあのかっこいいドラグーン……」

「ヘイトがたまらないドラグーンとか初めて見たでござる」

「いや、まあそれはアナコンダのせいでもあるんじゃね?」

 

周囲はドラグーンの登場に盛り上がる。

 

 

「ドラグーンの効果!融合召喚の素材にした通常モンスター一体に付き一回、相手モンスターを破壊し、その攻撃力分のダメージを与える!素材にした通常モンスターは一体、よってガイアドラグーンを破壊!」

「ぐおあっ!」

 

井上LP8000→5400

 

「これでターンエンドだ」

 

ハルカLP400 手札0枚 フィールド 超魔導竜騎士ドラグーン・オブ・レッドアイズ

 

ターン10

 

「お、俺のターン!ドロー!」

「スタンバイフェイズに、タイムマジックハンマーで除外したアカシックマジシャンがフィールドに戻る」

「くっ……ドラグーンは効果の対象にならず効果破壊もできねえ……ヴォルカザウルスを蘇生させても……。ターンエンドだ……」

 

井上LP5400 手札4枚 フィールド アカシックマジシャン 伏せカード2枚(エクシーズリボーン)

 

ターン11

 

「俺のターン。ドロー。スタンバイフェイズ、トーチゴーレムがお前のフィールドに戻る。そしてメインフェイズ、ドラグーンの効果!トーチゴーレムを破壊!」

 

井上LP5400→2400

 

「そしてバトル!アカシックマジシャンに攻撃!」

 

井上Lp2400→1100

 

 

「ターンエンド」

 

ハルカLP400 手札1枚 フィールド ドラグーン

 

ターン12

 

「く、くそ……手札にドラグーンを処理できるカードがねえ……。しかもターン1でカード効果は無効にされちまう……。このドローで何とかしねえと……」

 

相当焦っているらしい井上はひとりでぶつぶつとしゃべった後、意を決したようにデッキへ手を伸ばす。

 

「お、俺のターン!ド」

「ちょっとあんたたち!」

 

急に割って入ってきたのは、フードコートの店員らしきおばちゃんだった。相当お怒りのご様子で、かなり険しい表情をしている。

 

「フード―コートはご飯を食べるところだよ!まったく開店早々ギャーギャー騒いで!他のお客さんの迷惑だよ!さっさと片付けな!」

 

おばちゃんがテーブルをたたくと同時に井上のデッキが崩れ落ちる。

 

 

「ああ!てめえ、なにすんだ!ババア!」

 

だが、井上の言葉など意に介せずにおばちゃんは持ち場へと戻って行ってしまった。

 

「あーあ、いいとこだったのに中断かよ」

「でも、正直いまのデュエルはドラグーン出したやつの勝ち確だったし、まあいんじゃね?」

「てか、そろそろショップ開くんじゃね?」

「おーそだそだ、早く行こうぜ!」

 

ギャラリーたちも俺たちのデュエルから興味を失ったらしく、あたりに散っていった。

 

「く、くそ……。何が勝ち確だ。まだ俺がドローしてなかっただろ……」

「どうする井上。もう一度デュエルするか?」

「う、うるせえ!調子に乗りやがって!もうてめえもそこの女もどうでもいい!とっとと消えちまえ!」

「……そうか。じゃあな」

 

俺は席を立つ。

 

『マスター、さっきのヴォルカザウルス、回収しなくていいんですか?』

『この状況でカードふんだくれると思うか?それに、中断こそしたがデュエルには勝ったんだ。以前と同じならもうあのカードには大した力は残ってない』

『確かに。マスターの言う通りです』

 

サイマジとソードマンも納得したようで、姿を消した。俺はというと、散っていったギャラリーのいた場所にぽつんと立つ真崎の方へとたどり着いたところだ。

 

「お待たせしてすいません。スタバ、行きますか」

「いや、もうショップ開店だから」

「なん……だと」

「それにしても、連鎖破壊なんてマイナーカード、よく使おうと思ったわね」

「前から何か使えそうなカードだとは思ってたんですよ」

「そう。それにしても不愛想で私に興味ないとか言ってた武藤君が私の為にナンパ男に勝負挑むなんて意外だったな~」

「別に。ただ、他人をもののように扱うあいつの言葉に少し腹が立っただけです」

「ふーん」

「じゃあ、ショップ行きますか。4時くらいには帰りたいですし」

「すでに帰宅前提!?しかもはやっ!」

 

これが今日の最初のデュエルだった。

 

 

そう、最初の。

 

 

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