現実世界で遊戯王!   作:たけぽん

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13. デュエルの極意

「皆さん、お待たせしました!これよりカードショップアンドウ開店記念遊戯王大会を開催します!」

 

デュエルスペースにて、マイクを持った店長の開会宣言に、たくさんの拍手が鳴り響く。結局定員30人の枠はすべて埋まり、枠から漏れたであろう人たちも見物人としてこの場にいる。

 

「えー、それではさっそくルールを説明いたします。キョウコちゃん、ホワイトボード~」

「はーい」

 

真崎が店長の後ろホワイトボードを裏面に回す。そこには箇条書きで大会のルールが書かれていた。

 

「まず、本大会の参加者は総勢30名。そして、その30人の中なら誰と何回デュエルしてもかまいません」

「ええ!?それじゃあどうやって優勝を決めるの?」

「いい質問です。ホワイトボードをご覧ください。ほら、マグネットのついた星形の折り紙があるでしょ?参加者は最初にこの折り紙、スターチップを2個持ってスタートしてもらいます。デュエルにはこのスターチップを任意の数賭けてください。勝った方は負けた方からスターチップを受け取り、制限時間1時間半の間に一番多く集めた人が優勝です!」

 

つまりは原作の王国編と同じルールだ。流石にフィールドパワーソースとかはないけど。

 

「じゃあ、スターチップがなくなったらもうデュエルできないの?」

「いいえ、スターチップがゼロになっちゃったひとはお近くのスタッフから2個、スターチップをもらうことができます。今日のスタッフは私と、ホワイトボードを回してくれた真崎さん、そして受付をしてくれた武藤さんの3人です。3人とも同じ色のエプロンをしてますので、気軽に声をかけてくださいね!」

 

このスターチップ補充制度は、店長も取り入れるか悩んだらしい。そして導入を決めてから3日間夜なべして段ボール3個分のスターチップを用意したと言っていた。

……流石にそんなにいらんと思うけど。

 

 

「そして、リミットレギュレーションは最新のものを適用。例えばリンクロスは禁止だったり、ドラグーンは制限だったり、確認したいときはリストをこのホワイトボードに貼っているので各自見てください。また、ルール等で分からないことがある場合も、スタッフに聞いてください。調整中でなければお答えします」

 

 

少しばかり冗談めいた言い回しに参加者から笑い声が聞こえる。

 

「それでは、始めたいと思います。……ゴホン。デュエル開始イイイイイ!」

 

いや、あんた絶対それがやりたかっただけだろ。

 

まあそれはさておき、参加者たちはスターチップを手に取りさっそく対戦を始めた。

俺はそれを確認すると、近くのパイプ椅子に腰を下ろす。

 

『賑やかでいいですね』

 

大会の様子を見ながらソードマンが呟く。

 

 

『ほんと、みんな楽しそうです』

 

サイマジも笑顔でうなずく。

 

『まあ、こういう型にはまらない大会は目新しいし、ルールを聞いたときに盛り上がるだろうなって思ったさ』

『そういえば話は変わりますが、春先に起きていた連続放火事件、今月上旬からまた起きているようです』

『あーそういえばバイト先の人がそんなこと言ってたわ』

『我々も気を付けましょう。あのアパートがなくなったら行くところがありませんからね』

『そうだな。まあ、さっさと犯人が捕まってくれればいいんだけどな』

『ちょっと二人ともー、今は大会の方を見ましょうよー、そんな話帰ってからでいいじゃないですかー』

 

口をとがらせるサイマジに、俺とソードマンは苦笑いして大会の方へ視線を戻す。

 

「よーし、俺のターン!」

「その効果にチェーンしてトラップ発動だ!」

「え、そのカードテキスト確認してもいい?」

「ウィンたん可愛いお。僕の嫁だお」

「インチキ効果も大概にしろ!」

「エフェクトヴェーラーってパンツ見えてますよね」

 

本当ににぎやかだ。なんか一部よくわからんこと言ってる連中もいるが。

俺も、あんなふうにデュエルできたらな……。

思い出すのは小学生の時、構築済みではなく初めて自分で組んだデッキを使って友達とデュエルしたこと。確か使っていたデッキはBFだったか。あのころはDDBの強さがわからなくてアーマードウイングばっかり出してた気がする。勝ったり負けたり、もしかしたら負けの方が多かったかもしれないけど、俺は確かにデュエルを楽しんでた。

 

 

 

――いや、本当にあれが俺だとしたら、だけどな。

 

 

***

 

大会が始まってから40分が経過したあたりで、スターチップを失った参加者がちらほらでてきた。俺はレジに置かれた段ボールから予備のスターチップを取り出し彼らに2個ずつ渡していた。

そんな参加者の中で、すでに8回もスターチップを手渡した人物がいる。

 

「あー!また負けたア!」

 

それは先ほど受付で話したミズキだった。様子を見ていたが、どうやら一度も勝っていないらしい。

 

「うう……ありがとうございました」

 

流石に負けまくったのがショックなのか涙目で対戦相手にあいさつし、俺の方へと歩いてきた。

 

「ほい、スターチップ2個な」

「いらない」

「……?」

 

差し出されたスターチップを受け取らないミズキ。

 

「もう、デュエルしたくない。だって、どうせ負けるもん」

「……」

「せっかく頑張って組んだデッキなのに!俺が下手くそなせいでこいつらに勝たせてあげられないんだ!そんなのもう、いやだよ……」

 

その声が聞こえたのか、近くにいた真崎が駆け寄ってくる。

 

「えっと、ミズキ君だっけ。一応貸し出しデッキも用意してあるし、それを使ってみれば……」

「嫌だよ!」

「でも、せっかく大会に参加してくれたんだし、私たちは君にデュエル、嫌いになってほしくないな」

「でも……、このデッキが……」

 

俯くミズキは大粒の涙をこぼしている。

 

「……店長。10分くらいスタッフやめていいですか?」

「え?」

 

突然の提案に店長は疑問を浮かべる。

 

「10分でいいんで」

「……!なるほど。そういうことか。オッケーだよ武藤君。運営は僕とキョウコちゃんで何とかする」

「ありがとうございます。……ミズキ、お前がスターチップを受け取らないなら、このチップは俺がもらう」

「え?」

「だが、残念なことに俺のデッキはバックヤードのカバンの中だ。取りに行くのも面倒だから、お前のデッキを貸してくれ」

「俺の……デッキを?」

「俺がこのデッキを勝たせてやる。それを見たいなら一緒に来い」

「ハルカ兄ちゃん……」

「どうする。貸してくれるのか?」

 

俺の問いに、ミズキは慌てて服の袖で涙をぬぐう。

 

「う、うん。お願いします!俺、しっかり見て勉強します!」

 

ミズキから差し出されたデッキを受け取り、俺はエプロンを外して椅子の背もたれにかける。

 

「行くぞ」

「うん!」

「まって、武藤君!」

「なんですか先輩」

「本気なの?そのデッキに文句をつけるわけじゃないけど、あなたそのデッキ初めて使うんでしょ?それで勝つって……本気?」

「本気です。このデッキで、勝ちます」

「……そう。まあ、あなたのことだから考えがあるのかもしれないし、これ以上は何も言わないわ」

 

真崎との会話を終え、俺はミズキと共にデュエルスペースに入り、相手を探す。

 

「あの、すいません。デュエルしてくれませんか」

「え?僕?」

 

俺が声をかけたのは白い帽子をかぶった中学生くらいの男子。彼はスタッフの俺が参加していることに困惑した表情を見せたが、まだ少し涙目のミズキを見て察してくれたらしく、頷いてくれた。

 

「ありがとう。それじゃあ始めようか」

「よろしくお願いします。スターチップは何個賭けですか?」

「2つで」

「わかりました」

 

中学生は遊戯王ニューロンのアプリを開き、コイントスの画面を見せてくる。

 

「表で」

「じゃあ僕は裏で」

 

画面をタップすると同時にコインが回転し、ゆっくりと止まる。出たのは裏。

 

「それじゃあ、僕の先攻です」

「了解」

 

そこから、カット&シャッフルを済ませ、すべての準備が整った。

 

「いきますよ」

「ああ」

 

「「デュエル!」」

 

先攻 中学生 LP8000 手札5枚 デッキ35枚 エクストラデッキ15枚

後攻 ハルカ LP8000 手札5枚 デッキ35枚 エクストラデッキ15枚

 

 

 

ターン1

 

「僕のターン!スタンバイ、メインフェイズ。手札からコールリゾネーターを発動。デッキからレッドリゾネーターを手札に加えます」

 

アークファイブでジャックが使ったレッドリゾネーター。効果も優秀で、しかもチューナー、ほんとアークファイブのジャックは優遇されてるよなあ。

 

「そして手札からレッドリゾネーターを召喚!効果発動、手札からレベル4以下のモンスターを特殊召喚する。そしてそれにチェーンして、緊急テレポートを発動!そして、さらにチェーン、サモンチェーンを発動!」

「わ、なんかいっぱい発動したよハルカ兄ちゃん!」

「サモンチェーンはチェーン3以降で発動できるカード。その効果はこのターンの通常召喚を3回にするんだ」

「そ、それじゃああと3回も召喚するの?」

「いや、すでに彼はレッドリゾネーターに一回召喚権をつかってるから、あと2回だ」

「その通り。それじゃチェーン2の緊急テレポートを解決。デッキから幽鬼うさぎを特殊召喚。そしてレッドリゾネーターの効果で手札からグリーンガジェットを特殊召喚」

 

なるほど、そういうデッキか。

 

「あれ、でもさ、あと2回召喚できるとしても、相手のお兄ちゃんの手札はあと一枚。先攻は攻撃できないのにそんなに手札を使ったらあとで困るんじゃないの?」

「いや、彼の出したグリーンガジェットがそれを補う」

「グリーンガジェットの効果でデッキからレッドガジェットを手札に加え、さらにレッドガジェットを召喚。その効果で今度はイエローガジェットを手札に加えます。そしてイエローを召喚。効果でグリーンを手札に」

「うそ、もうモンスターが五体も!?」

「僕はレベル4のグリーンガジェットにレベル2のレッドリゾネーターをチューニング。シンクロ召喚!スターダストチャージウォリアー!シンクロ召喚成功時、カードを一枚ドロー!」

 

これで彼の手札は3枚。どうやら手札消費を抑えながらシンクロするガジェットデッキらしい。

 

「そしてレッドガジェットと幽鬼うさぎでリンク召喚!水晶機巧ハリファイバー!効果によりデッキからジェットシンクロンを特殊召喚!そしてレベル6のスターダストチャージにレベル1のジェットシンクロンをチューニング!妖精龍エンシェント!」

 

禁止じゃない方の鰻か。フィールド魔法があると効果を発揮するモンスターだが、ガジェットに入るとしたら歯車街とかだろうか。

 

「ジェットシンクロンがシンクロ素材となったことで効果発動。デッキからジャンクシンクロンを手札に加えます。僕はこれでターンエンド!」

 

中学生 LP8000 手札4枚 フィールド ハリファイバー 妖精龍エンシェント イエローガジェット

 

ターン2

 

「俺のターン。ドロー」

 

さて、好き放題ぶん回されたことからわかる通り、手札誘発はこのデッキにはない。相手の中学生は、実質手札一枚消費でここまで展開したのだから大したもんだ。

 

「ハルカ兄ちゃん、なんかめちゃくちゃやられたけど大丈夫なの?」

「落ち着け。確かに手札もほぼ減らさず展開してきたが、彼のフィールドのモンスターはどれもこちらの動きを妨害するカードじゃないだろ?デュエルをするなら、自分だけでなく相手のフィールドも見ろ。効果が分からなければ相手に断って見せてもらえ」

「う、うん!なるほど!」

「それじゃあ、スタンバイからメインフェイズに入る」

「どうぞ」

「俺は手札からモンスターを一枚捨てて、ワンフォーワンを発動。デッキからレベル1のモンスター一体を特殊召喚する。この効果で手札からジェットシンクロンを捨てて黄泉ガエルを特殊召喚」

「なら、効果解決後、ハリファイバーの効果。このモンスターを除外し、エクストラデッキからフォーミュラシンクロンをシンクロ召喚扱いで特殊召喚。フォーミュラの効果でカードを一枚ドロー」

 

これで手札5枚。しかも、フォーミュラは相手ターンでシンクロ召喚できる効果がある。妖精龍エンシェントは闇属性ドラゴン族でレベル7。フォーミュラはレベル2のチューナー。来るのはあいつだろう。

 

「フォーミュラシンクロンの効果で、相手メインフェイズにシンクロ召喚する。妖精龍エンシェントにフォーミュラシンクロンをチューニング!シンクロ召喚!えん魔龍レッドデーモンアビス!」

 

レッドデーモンアビスはターン1でフィールドのカード一枚の効果を無効にするカード。これで1妨害か。ともあれ、動いていかないとデュエルには勝てない。

 

「俺は黄泉ガエルをリリースし邪帝ガイウスをアドバンス召喚。その効果により、レッドデーモンアビスを除外する」

「え、でもそれは無効にされるんじゃないの?」

「その通り、レッドデーモンアビスの効果で、ガイウスの効果を無効にします!」

「だが、その効果は一ターンに一回。バトルフェイズ。ガイウスでアビスを攻撃」

「そんな、アビスの攻撃力は3200でガイウスは2400だから勝てないよ!」

「ダメージステップに入ってもいいか?」

「……!はい、どうぞ……」

 

中学生は何をされるか大方予想がついたらしく、苦い表情をしている。

 

「速攻魔法、禁じられた聖槍。アビスの攻撃力を800下げて、他の魔法罠の効果を受けなくする。これでバトルする2体の攻撃力は互角。相打ちとなる」

「くっ、破壊されます」

「すげー!あの強いシンクロモンスターを倒した!」

「大体の場合、デュエルはモンスターだけでは勝てない。魔法だけでも、トラップだけでも勝てはしない。大事なのはその組み合わせだ」

 

まあ、世の中にはフルモン超重武者とか緑一色大逆転クイズとかあるんだが、それは今はいいだろう。

 

「俺はメインフェイズ2に入り、そのままターンエンドだ」

 

ハルカ LP8000 手札2枚 フィールド モンスターなし 伏せカードなし

 

ターン3

 

「僕のターンです。ドロー!」

 

これで彼の手札は6枚。先攻で消費したリソースが完全に回復している。

 

「まずは手札からジャンクシンクロンを召喚!」

 

さっきジェットシンクロンの効果で加えたモンスターだな。

 

「その効果で墓地からジェットシンクロンを特殊召喚!そしてレベル4のイエローガジェットにレベル1のジェットシンクロンをチューニング!シンクロ召喚!TGハイパーライブラリアン!」

 

でた、新マスタールールのせいで制限に逆戻りしたカード。こいつ当時はジャンプの付録だったんだよなあ。当然俺も3冊買いましたとも。

 

「さらに手札を一枚捨てることで、ジェットシンクロンを墓地から特殊召喚!レベル5のハイパーライブラリアンにレベル1のジェットシンクロンをチューニング!シンクロ召喚!BF星影のノートゥング!」

「うわ、連続でシンクロ召喚してきた!」

「ノートゥングの効果で相手プレイヤーに800ポイントのダメージを与える!」

 

ハルカLP8000→7200

 

「そして、場にシンクロモンスターがいることで手札からシンクローンリゾネーターを特殊召喚!僕はレベル6のノートゥングにレベル3のジャンクシンクロンとレベル1のシンクローンリゾネーターをダブルチューニング!シンクロ召喚、レッドデーモンズドラゴンタイラント!」

「ええ、レベル10で攻撃力3500!?」

 

やるじゃねえか、ジャッケロォ!

……ふざけてる場合じゃねえ。タイラントは自身以外のフィールドのカードを全滅させる効果と、バトルフェイズ中の魔法トラップの発動を無効にする効果がある。特に一つ目の効果は、俺が前のターン墓地に送っておいた黄泉ガエルの蘇生による防御を完全に無力化している。

 

「シンクロ素材に使われたシンクローンリゾネーターの効果で墓地のレッドリゾネーターを回収して、バトルフェイズ!タイラントでダイレクトアタック!」

 

ハルカLP7200→3700

 

「うわ!ライフがあ!」

「僕はこれでターンエンドです」

 

中学生Lp8000  手札4枚 フィールド レッドデーモンズドラゴンタイラント

 

ターン4 

 

「俺のターン、ドロー」

「まままずいよハルカ兄ちゃん!俺たちのフィールドはがら空きで、向こうは攻撃力3500だよ!あれと手札にあるガジェットモンスターで攻撃されたら負けちゃう!」

「落ち着け。デュエルにおいて冷静さを欠いたら負けだ。手札の数だけ可能性があるし、墓地に送られたカードだって決して無駄じゃないんだ」

「で、でも……」

「スタンバイフェイズ、墓地の黄泉ガエルの効果。このモンスターを特殊召喚する」

「通ります」

「そしてメインフェイズ開始時、強欲で金満な壺を発動」

「あ、それは前にリサイクルショップのガチャガチャで手に入れたカード!」

「エクストラデッキからカードをランダムに6枚除外して、2枚ドローする!」

 

 

俺はエクストラデッキを裏向きのまま並べ、中学生に6枚選ばせてそれを除外し、2枚ドローする。

 

「来たな……」

「あ、そのカードはハルカ兄ちゃんがくれたカード!でも、この状況で使っても……」

「俺はカードを3枚伏せターンエンド」

 

ハルカLP3700 手札1枚 フィールド 黄泉ガエル 伏せカード3枚

 

ターン5

 

「僕のターン、ドロー!レッドデーモンズドラゴンタイラントの効果発動!フィールドの自身以外のカードをすべて破壊する!」

「トラップ発動!ブレイクスルースキル!タイラントの効果は無効!」

「く、ならレッドリゾネーターを召喚!効果でグリーンガジェットを特殊召喚!グリーンの効果で、レッドを手札に!そしてレベル4のグリーンにレベル2のレッドリゾネーターをチューニング!シンクロ召喚!スターダストチャージウォリアー!効果で一枚ドロー!そして手札からシンクローンリゾネーターを特殊召喚!」

 

そう、タイラントの効果を無効にしたため、このターン彼はタイラント以外のモンスターでも攻撃できるのだ。そのための、追撃のシンクロモンスターが何かによってこのデュエルの勝敗が大きく変わる。

 

「レベル6のスターダストチャージウォリアーにレベル1のレッドリゾネーターをチューニング!シンクロ召喚!サイバースクァンタムドラゴン!」

 

クァンタムは相手モンスターを手札に戻し追加攻撃できるモンスター。黄泉ガエルをバウンスされさらに追加攻撃、そしてタイラントで攻撃されれば俺の負けとなる。

 

「バトルフェイズ!クァンタムで黄泉ガエルを攻撃!そして……」

「トラップ発動!ナイトメアデーモンズ!」

「な!?」

「そんな!ハルカ兄ちゃんがくれたカードだけど、今使ったら大変なことになっちゃうよ!」

「黄泉ガエルをリリースし、相手フィールドにナイトメアデーモントークン三体を特殊召喚する!」

「いいんですか?このトークン、確か攻撃力2000ですよね?」

「ああ、構わない。続けてくれ」

「なら、攻撃対象がいなくなったことで、攻撃を巻き戻し、クァンタムでダイレクトアタック!」

 

ハルカLP3700→1200

 

「そして、タイラントでダイレクトアタック!」

「トラップ発動!魔法の筒!相手モンスターの攻撃を無効にし、その分のダメージを与える!」

「うわっ!」

 

中学生LP8000→4500

 

「なら、ナイトメアデーモントークンでダイレクトアタック!」

「手札から、バトルフェーダーの効果発動!このモンスターを特殊召喚し、バトルフェイズを終了する!」

「何やってんだよハルカ兄ちゃん!それがあったならクァンタムの攻撃宣言時に使ってダメージを食らわずに済んだじゃないか!」

「……僕は1枚カードを伏せてターン終了です」

 

中学生 LP4500 手札1 フィールド レッドデーモンズドラゴンタイラント サイバースクァンタムドラゴン ナイトメアデーモントークン3体 伏せカード1枚

 

ターン6

 

「俺のターン。ミズキ、俺がフェーダーを温存した理由。それは……勝つためだ」

「勝つ……ため?」

「俺のターン……ドロー!スタンバフェイズ黄泉ガエルを特殊召喚!そしてメインフェイズ、手札から強欲で貪欲な壺を発動!」

「ここで強貪とは、運がいいですね」

「それは違う。このデッキにはもともとドローカードがふんだんに入っている。全てはデッキに一枚しかない切り札を引くためにな」

 

そうだ、俺は見ていた。ミズキのデュエルを。こいつは大好きなあのカードを引くためにドローするカードをたくさん使っていた。だからこそ、俺は使ったことのないこのデッキを信じることができた。ミズキが一枚一枚のカードに込めた思いを感じられたから。

 

「でも、強貪はデッキの上から10枚除外するカード。デッキに一枚しかない切り札が消えてしまうリスクがありますよ?」

「確かに、その切り札を引く目的なら、もっといろんなドロソがあるかもしれない。でも、ミズキはたとえ必要なカードを3枚揃えられなくても、自分がパックで引いたり、店のガチャで引いたりしたカード一枚一枚を大切にしている。こいつにあと足りなかったのは、デッキに応えようとする思いだったんだ!」

「ハルカ兄ちゃん……」

「強欲で貪欲な壺のコストで裏側で10枚除外し、2枚ドロー!」

 

こんなに熱い気持ちでデュエルしたのはいつ以来だろう。今年に入ってから真崎や五和、虎尾、井上達とデュエルしたが、俺の気持ちはどこか冷めていた。だが、ミズキのデッキが俺を初心に帰らせてくれたのかもしれないな。

 

「ハルカ兄ちゃん!」

「武藤君……」

『マスター!』

『来て!逆転の切り札!』

 

俺はゆっくりとドローしたカードを確認する。

 

「来たぜ……。俺はバトルフェーダーと黄泉ガエルをリリースし、破壊竜ガンドラを召喚!」

「ガンドラ……来てくれたんだ!」

「俺は手札を一枚捨て、ジェットシンクロンを特殊召喚!そしてガンドラの効果!ライフを半分払い自身以外の全てのカードを破壊し除外する!」

 

ハルカLP1200→600

 

「僕のモンスターと伏せカードが……」

「ガンドラはこの効果で破壊したカード一枚に付き攻撃力を300アップする。破壊したカードは7枚。よって2100ポイントアップ!さらに、ナイトメアデーモントークンが破壊されたとき、コントローラーは一体に付き800ポイントのダメージを受ける!」

「3体ってことは、2400!?」

 

 

中学生LP4500→2100

 

「バトルだ!破壊竜ガンドラでダイレクトアタック!」

 

中学生LP2100→0

 

***

 

「うわー、負けちゃった。でも、なんかアニメみたいですごく楽しいデュエルでした。ありがとうございます」

「こちらこそ。よくできたガジェットシンクロだった」

「あ、そうだスターチップ2個、どうぞ。あと……」

 

中学生はミズキの方を見る。

 

「君のデッキ、すっごく面白かったよ!今度会ったらデュエルしてくれる?」

 

その言葉にミズキは満面の笑みを浮かべる。

 

「うん!そのときは俺がこのデッキ使いこなして、絶対勝つから!」

「はは、負けないよ!それじゃあ、残りの試合もお互い頑張ろうね!」

 

中学生はデッキをケースにしまい、俺に軽く会釈してから席を立った。

 

「どうだ、ミズキ。デッキは力を示した。後はお前がそれに応えるだけだぞ?」

「うん、俺、強くなるよ!今日ハルカ兄ちゃんが教えてくれた冷静さ、状況の確認、そして勝つためのプレイング、全部できるようになって、いつか兄ちゃんに挑戦するよ!」

「ああ。待ってるぜ」

 

ミズキはそう言って、俺からスターチップを受け取ると次の相手を探しに行った。俺はそれを確認してからデュエルスペースを出て、椅子に引っ掛けたエプロンを再び身にまとう。

 

「いやー武藤君!いいデュエルだったよほんと!僕感動した!」

 

店長は俺を両肩に手を置き、号泣しながら首をブンブンとふる。

 

「ほんとにね、お疲れ様武藤君。ちょうど10分よ」

「ああ、どうも」

「戻った」

「はい?」

「やっぱり武藤君って遊戯王の話とかプレイしてる時と普段の変わりよう激しいわね」

「そうですか」

「なのにどうして遊戯王部の勧誘を断ったり、デュエルから遠ざかろうとするの?」

「……別に、いいじゃないですか。俺の自由でしょ」

「それは、まあ、そうだけど」

「……ちょっと、水飲んできます」

 

俺は真崎に背を向けその場を去る。

 

そうだった。真崎の言葉で思い出した。

俺はデュエルから身を引かなければいけない。

 

 

それが、俺の犯した罪への償いなのだから。

 

 

***

 

「あれが、武藤ハルカ……。彷徨える魂」

「おい、なんで俺は大会に出ちゃいけねーんだよ!あいつにさっきの借りを返す絶好の場だったのによ!」

「あわてないでカズマ。その時はもうじき来る。でも……」

 

 

 

「やはりこの世界のデュエルでは彼の真の力は引き出せそうにないわね」

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