現実世界で遊戯王!   作:たけぽん

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16. 命を賭けた死闘

ターン3

 

「俺のターン、ドロー!」

 

さて、問題はあのアブソルートZEROだ。さっきのターンは向こうの手札断札で難を逃れたが、あいつをフィールドに維持されたままデュエルが進めばその効果の威力は計り知れない。

 

 

「スタンバイフェイズ、サイレントソードマンの攻撃力がアップ!」

 

サイレントソードマン 攻撃力1500

 

さて、問題なのは奴の伏せカード。HEROデッキで最も警戒すべきは超融合だが、仮に前のターンに持っていたなら俺のモンスターを全滅させることができていた。手札消費を嫌った可能性はあるが、仮にあれが超融合でないとしたら、なんだ?

……初めて戦う相手の伏せカードなんて分かるわけないか。

 

「バトル!俺はサイレントマジシャンLV8でジ・アースを攻撃!」

 

その攻撃宣言に対し奴がカードを発動する気配はない。

 

「サイレント・バーニング!」

 

サイマジの杖から放たれた波動が一瞬でジ・アースを焼き尽くす。

 

――はずだった。

 

「なに、ジ・アースが消えていない……?」

「私は手札断札で墓地へ送ったネクロガードナーを除外し攻撃を無効にしたわ」

「くっ……俺はカードを3枚伏せてターンエンド」

 

ハルカLP8000 手札0枚 フィールド サイレントマジシャンLV8 沈黙の剣士

伏せカード 3枚

 

 

ターン4 

 

「私のターン!ドロー!」

「サイレントソードマンの攻撃力がアップ!」

 

サイレントソードマン 攻撃力2000

 

 

「リバースカードオープン!ブレイクスルースキル!サイレントソードマンの効果は無効!」

「この……またかよ!」

 

サイレントソードマン 攻撃力1000

 

 

「そして手札から魔法発動!平行世界融合!」

「また融合カード……!」

「平行世界融合は除外されているモンスターを素材にE・HEROを融合召喚できる。私は除外されているリキッドマンとエアーマンで再び融合!」

 

HEROと、風属性モンスター……あいつか!

 

 

「融合召喚!E・HEROグレートトルネード!」

 

突如フィールドに暴風が巻き起こる。それはまるで小規模な嵐と表現するにふさわしいほどの風圧で、俺は自分のほほの皮が切れ、血がつたうのを感じた。

そして、フィールドには3体目の融合HEROが現れる。

 

「グレートトルネードの効果発動!相手フィールドのモンスターすべてのステータスを半減させる!」

 

トルネードが発した暴風が、今度はダイレクトにこちらへ向かってくる。

 

「くっ……リバースカード、オープン!」

 

俺の宣言と同時に暴風がこちらへ直撃する。

 

「どう?これでサイレントマジシャンもサイレントソードマンも私のHEROより遥かに攻撃力が落ちたわ!」

「それは……どうかな……」

 

ゆっくりと風がやみ、俺のフィールドが晴れていく。

そこにいたのは、サイレントソードマンのみ。そしてその攻撃力は2500となっている。

 

「なんですって!サイレントソードマンの攻撃力が!?それに、サイレントマジシャンはどこへ……」

「俺はトルネードの効果に対し2枚の伏せカードを発動した。その一枚は、亜空間物質転送装置!このカードの効果でサイレントマジシャンはエンドフェイズまで除外され、トルネードの効果を回避!」

「で、でも……、サイレントソードマンには直撃したはず……!」

「直撃したさ。効かなかったけどな」

「マスターは私に対し、速効魔法、沈黙の剣を発動していたのだ!」

「沈黙の剣はサイレントソードマンの攻守を1500アップし、このターンの間相手の効果を一切受けつけない無敵効果を付与する!」

「くっ……トルネードの効果は実質無効にされたってことね……」

 

流石にミス・ドリームも苛立ちを隠せなくなってきたらしい。

 

「なら、バトルフェイズ!アブソルートZEROでサイレントソードマンを攻撃!……わかってるわよね?2体の攻撃力は互角。そして相打ちになればどうなるか!」

 

相打ちになれば強制効果であるアブソルートZEROの効果がチェーン1、サイレントソードマンの効果がチェーン2となり、逆順処理でサイレントソードマンモンスターが特殊召喚、その後アブソルートZEROの効果で俺のモンスターが全滅する。そこに3体のモンスターの総攻撃を喰らえば、俺のライフは1100まで削られる。

 

「だが、トラップ発動!強制脱出装置!」

「そのカードは!?」

「フィールドのモンスター一体を手札に戻す!対象はアブソルートZERO!」

 

アブソルートZEROは場を離れると相手モンスターを全滅させるが、その効果が発動しない除去の手段がデッキバウンス。なぜ発動できないかは知らん。コナミに聞け。

 

「アブソルート!……なら、ジ・アースでサイレントソードマンを攻撃!」

「なに!?」

「行け!アースコンバーション!」

 

その命令に、ジ・アースの胸部のメタルパーツから青いビームが発射され、ソードマンに直撃するが、ソードマンと攻撃力は互角のためその半分が彼の振りおろした剣により反射される。

 

「ソードマン!ぐあああああああ!」

 

ジ・アースとソードマンが同士討ちする。プレイヤーへのライフダメージはないがその衝撃は再び俺の肉体にダメージを与えてくる。

 

「サイレントソードマンの効果で、デッキからLV7を特殊召喚!」

 

ソードマンが再びフィールドに舞い戻る。

 

「トルネードでサイレントソードマンLV7を攻撃!」

 

2体の攻撃力は同じ。トルネードが起こした竜巻をソードマンが剣で八つ裂きにし、2体の距離は数メートル。ソードマンはとどめのひと突きを、トルネードは風をまとった拳を、互いにぶつけ合い、それは両者の体を貫通する。

 

 

「ソードマン!」

 

俺の叫びもむなしく、ソードマンはトルネードとともに消滅した。

 

「ありがとうトルネード……いけ!イゾルデ!ダイレクトアタック!」

 

先ほどとは違い、金髪のイゾルデはスカートの裾から短剣を取りだし、俺に向かって投げる。

俺は回避しようとしたが、先ほどまでのデュエルのダメージのせいか体がうまく動かず、短剣は俺の腹部に刺さる。

 

「ぐはあっ……!」

 

ハルカLP8000→6400

 

腹部に走る燃えるような痛みはすぐに全身の力を奪ってゆく。あまりの痛さに腹部を抑えた手は俺の鮮血にそまっていた。

だが、短剣もイゾルデのもとから離れると長くはその姿を維持できないらしく、数秒で消える。

だが、一般的な男子高校生の肉体にとってそれは致死レベルの攻撃であり、俺は膝を折る。

 

「あら、大丈夫?勝敗がつくまでもつかしら?あなたの体は?」

「……ヒールアシスト」

 

俺の声と同時に腹部をピンクの光が包み込む。その光は短剣に負わされた傷口を徐々にふさいでゆく。

 

「へえ、その体でもまだそんなことができるのね」

「はあ……はあ……。デュエルを続けるぞ……」

「いいわ。私はこれで、ターンエンド」

「エンドフェイズ、亜空間物質転送装置で除外されたサイレントマジシャンが帰還する!」

 

フィールドにまばゆい光が放たれ、サイマジが戻ってきた。除外されていても、彼女にはこのターン何が起きたかすべて見えているせいか、心配そうに俺を見る。

 

「マスター……。大丈夫ですか……?」

「死ななきゃ安い……」

「いいえ、あなたは、あなたたちは死ぬのよ!このデュエルでね!トラップ発動!ミニチュアライズ!サイレントマジシャンの攻撃力を1000下げ、レベルを1下降させる!」

「うっ……!」

 

サイレントマジシャンの背丈が一回り小さくなる。

 

サイレントマジシャンLV8 攻撃力2500

 

ミス・ドリーム LP5000 手札1 フィールド 聖騎士の追想イゾルデ 永続罠 ミニチュアライズ

 

 

ターン5

 

「俺のターン!ドロー!」

 

俺の手札は1枚。向こうも1枚。けして多くはない。だが墓地のリソースがふんだんにあるため、トップでミラクルフュージョンを引かれてピンチに陥る確率も十二分にある。

そして俺のドローカードは……。

 

「……!このカードは……」

「どうしたの?上級モンスターでも引いてしまったのかしら?」

「……バトル!サイレントマジシャンでイゾルデを攻撃!サイレントバーニング!」

 

ミス・ドリームLP5000→4100

 

「くっ……!」

「俺はターンエンド」

 

ハルカLP6400 手札1枚 フィールド サイレントマジシャンLV8(ミニチュアライズにより弱体化)

 

ターン6 

 

「私のターン!」

 

ミス・ドリームの手札は1、ライフは4100。弱体化しているとはいえサイレントマジシャンの攻撃を2回喰らえば敗北するラインだ。

あの手札がモンスターでないのなら、このドローカード次第でデュエルの勝敗が決まる。

 

「くっ……私は……負けるわけにはいかない……武藤ハルカ……あなたを倒すためにすべてを投げうってここまで来たのだから!ドロー!」

 

ドローカードを確認した奴は……笑った。

 

「私は手札から、貪欲な壺を発動!墓地から、イゾルデ、エアーマン、ヴァイオン、ジ・アース、トルネードをデッキに戻し、2枚ドローする!」

 

ここで貪欲な壺とは……。

 

「私は手札から、エアーマンを召喚!その効果で、デッキからD・HEROディアボリックガイを手札に!」

「これで、場と手札に合計2体のモンスター……」

「魔法発動!融合!手札のディアボリックガイとエアーマンを融合!複数の体を持つ闇の英雄よ、風を導く英雄よ!いま正義の名のもとに大義をなせ!融合召喚!E・HEROエスクリダオ!」

 

現れたのはHEROとは言い難いまがまがしく黒いボディをした戦士だった。その鋭い眼光を俺に向け、戦闘態勢を取る。

 

「バトル!エスクリダオでサイレントマジシャンを攻撃!エスクリダオの攻撃力は墓地のE・HERO一体につき100アップする!」

 

墓地にはエアーマンがいるのでその攻撃力は2600。ここでサイレントマジシャンを破壊されると、今度は俺が窮地に立たされる。

 

「さあ、消えなさい!サイレントマジシャン!」

「そうはいかない!手札から虹クリボーの効果発動!」

「に、虹クリボーですって!?」

 

俺の宣言ともにフィールドに七色の光が輝きだす。

その中から現れたのは、丸っこい小さなモンスター。だが、その丸い体は、しっかりとエスクリダオの手刀をとらえている。

 

「攻撃してきたモンスターに虹クリボーを装備し、その攻撃を封じる!」

「くりくりー!」

 

虹クリボーの額から七色の光線が発射され、エスクリダオを押し戻す。

 

 

「やっとデュエルで会えたな。虹クリボー」

 

俺は自嘲気味に笑いながら虹クリボーに話しかける。

今年の4月、廊下に落ちていたこのカードを拾ってから今日にいたるまでデュエルで使用したことはなかったからな。

 

「くりくり~!くりくり~!」

 

虹クリボーは俺の言葉の意味がわかったのか、嬉しそうに飛び跳ねる。

 

 

「まさか……なぜあなたがアストのカードを!?」

「アストだと?」

「くっ……まあいいわ。どの道あなたのサイレントマジシャンでは私のエスクリダオは倒せない。次のターン、ほかの融合ヒーローを出して叩き潰してあげるわ!ターンエンド!」

 

ミス・ドリームLP4100 手札1枚 フィールド エスクリダオ(虹クリボー装備により攻撃不可)

 

ターン7

 

 

 

一応サイレントマジシャンを守り、エスクリダオも封じてはいるが、俺にも攻め手はない。そして向こうがトップで強いカードを引けばすぐに決壊する。

 

「俺はここで死ぬわけにはいかない……」

「ふざけないで!世界中どこを探したってあなたの死を悲しむものなんていないわ!」

 

その言葉に対してミス・ドリームは声を荒げる。それはデュエル開始時の冷静な彼女からは想像できないような怒りを示していた。

 

「……俺もちょい前まではそう思ってたさ。どこへ行こうと、俺の存在を受け入れてくれる場所なんてないって。だがな、俺を、武藤ハルカの死を悲しむ奴は存在してるんだ!」

 

俺はスフィアフィールドの下の真崎と五和へ視線を向ける。離れていて声は聞こえないが、あいつらは必死に何か叫んでいる。何を言ってるかは知らないが、二人が武藤ハルカという存在のために必死になってくれているのは事実だ。

 

「行くぞ、俺のターン!ドロー!……!?」

 

ドローしたカードを確認した俺は困惑する。それは俺がデッキに入れた覚えのないカード。だが、このカードを所持していたことははっきりと認識していた。なぜならそれはさっき店長が俺にくれた謝礼だったから。

そして新しく手に入れたカードを勝手にデッキに入れる奴なんて俺は一人しか知らない。

 

「サイマジ、またお前の仕業か」

「あー、ばれちゃいましたか。テヘペロ」

「なにがテヘペロだよまったく」

「でも、店長さんはそのカードをマスターに使ってほしくて渡してくれたんだと思います」

「まあ、この状況下ならまったく無意味ってわけでもない。……使ってみるか」

 

意を決して俺はドローしたカードをディスクに挿入する。

 

「行くぞ!永続魔法、熱き決闘者たちを発動!」

「熱き……決闘者たちですって!?」

「俺はこれで、ターンエンド!」

 

 

ハルカLP6400 手札0枚 フィールド サイレントマジシャンLV8(ミニチュアライズにより弱体化) 永続魔法 熱き決闘者たち

 

 

ターン8

 

「私のターン!ドロー!……なにが熱き決闘者たちよ!そんなカードがあったって、何の役にも立ちはしないわ!」

「……」

「私は手札から融合回収を発動!墓地の融合とエアーマンを手札に!そして墓地のディアボリックガイを除外し、同名モンスター一体を特殊召喚!現れなさい、正義を貫くサーキット!」

 

空中にサーキットが現れる。

 

「召喚条件は戦士族2体!ディアボリックガイとエスクリダオをリンクマーカーにセット!リンク召喚!聖騎士の追想イゾルデ!効果でデッキからオーシャンを手札に加え、さらにエアーマンを召喚!デッキからオネスティネオスを手札に!」

 

オネスティネオスはHEROの攻撃力を2500ポイントアップするカード。そして、手札には融合とオーシャン。

 

「私は融合を発動!手札のオーシャンと場のエアーマンを融合!深海を守護する英雄よ、風を導く英雄よ、いま正義の名のもとに大義をなせ!融合召喚!E・HEROアブソルートZERO!」

 

再びフィールドに現れたアブソルートZERO。その攻撃力は弱体化しているサイレントマジシャンLV8と互角。だが、オネスティネオスを使えばその攻撃力には大きな差が生まれる。

 

「バトルよ!アブソルートZEROでサイレントマジシャンを攻撃!手札からオネスティネオスを……!?」

 

ミス・ドリームは気づいたようだ。攻撃命令を下されたアブソルートZEROが動かないことに。

 

「ど、どうしたのアブソルート!?攻撃よ!」

「無駄だ!熱き決闘者たちの効果により、エクストラデッキから現れたモンスターはそのターン攻撃できない!」

「なんですって!?」

「お前がエースであるアブソルートで来るのは分かっていた。このカードはそのための布石だ!」

「く……私はターンエンド……」

 

ミス・ドリーム LP4100 手札2枚 フィールド イゾルデ アブソルートZERO

 

ターン9

 

「俺のターン!ドロー!」

「く、たとえ一ターン延命したところで、次のターンにはあなたのモンスターは確実に破壊されるわ!」

「……次のターンがあればな」

「え……?」

「バトルだ!俺はサイレントマジシャンで、聖騎士の追想イゾルデを攻撃!」

「大口たたいた割には、私のライフを900削るだけじゃない!」

「熱き決闘者たちの効果発動!サイレントマジシャンの攻撃を無効にし、トラップカード、ミニチュアライズを破壊!これでサイレントマジシャンの弱体化はなくなる!」

 

 

サイレントマジシャン 攻撃力3500

 

「それがなに?すでにサイレントマジシャンの攻撃は無効になったじゃない!」

「それはどうかな……。俺は速効魔法、ダブルアップチャンス発動!」

「ダブルアップチャンス!?そのカードは……!」

「モンスターの攻撃が無効になったとき、そのモンスターは攻撃力を2倍にして、もう一度攻撃できる!」

 

サイレントマジシャンの杖が、真っ赤に染まる。それは普段なら絶対に現れない、莫大な力が込められていることを示していた。

 

サイレントマジシャン 攻撃力7000

 

「攻撃力7000!?」

「いけ、サイレントマジシャン!イゾルデを攻撃!」

「行きますよ、マスター!」

「「サイレント・ダブルバーニング!」」

 

 

サイマジの杖から先ほどの数倍の大きさの波動が放たれ、それはまばゆい光を放ちながらミス・ドリームのフィールドへ向かっていく。

 

「きゃあああああああああ!」

 

 

ミス・ドリームLP4100→0

 

***

 

 

「くそ……私が、武藤ハルカに、あなたに敗北するなんて……そんなの許されるわけが……」

 

サイレントマジシャンの攻撃によってライフを失い、膝をついて荒い呼吸で悔しがるミス・ドリーム。その仮面の右側には大きなひびが入っていた。

 

「何とか……勝ったな」

 

だが、勝利した俺でさえもはやまともに立っていられるほどの力は残っていなかった。その事実が、このデュエルの恐ろしさを物語っている。

そして、俺が膝をついたとき、スフィアフィールドに異変が起きる。

 

「マスター!スフィアフィールドが崩壊します!急いでにげ――」

 

 

だが、言葉の途中でサイマジの姿は消える。どうやら俺の力が底を突くのと同時に彼女の実体化を保つエネルギーも消えてしまったようだ。

 

「く……やっぱりこの世界でスフィアフィールドを展開するのは相当な負荷みたいだな」

 

ものすごい音を当てながら、スフィアフィールドはばらばらと砕けていく。

そして、それが全損するのと同時に俺のデュエルディスクとDスキャナーも消滅し、俺とミス・ドリームはモールの屋上へと落下していく。

 

「お、おい!なんかあの球体が消えちまったぞ!」

「そんな、あんな高さから落下したら武藤君は……!」

 

薄れゆく意識の中、真崎と五和の叫び声が聞こえる。

 

 

――結局、これで死ぬのか……。

 

俺が全てをあきらめた時、急に落下速度が緩やかになった。

見ればミス・ドリームがこちらへ手をかざしている。どうやら彼女が何らかの力で互いの周囲に小さなエネルギーによるクッションを出現させたらしい。

それにより俺たちはゆっくりと屋上へと着地した。

 

「武藤君!」

「武藤!」

 

着地した俺に二人が駆けよってくる。

 

「大丈夫か、武藤!?」

「ああ……命だけは助かったらしい」

 

だがもう体に力が入らない。

それを察したのか、五和が俺に肩を貸してくれる。

 

「だから言っただろ!あいつは俺が倒すって!でかい口たたいといて結局負けてんじゃねえか!」

 

前方には満身創痍であろうミス・ドリームと、その胸倉をつかむ井上の姿が見える。そして、掴まれた彼女のデュエルディスクから小型のペンのようなものがこちらへ転がってくる。

 

「ごめんなさい……カズマ」

「ちっ!くそが!……取りえずここは退くしかねえな……」

「まて……、ミスドリーム!なぜ……俺を助けた?あのまま落下していれば俺は……」

 

俺の問いにミス・ドリームは井上の手をひきはがし、こちらを見る。

 

「勘違いしないで、あなたを消すのは私の力……デュエルでなければならない。落下して死なれても何の意味もないだけよ……」

 

そう言い残すと、ミス・ドリームはこちらに背を向ける。同時に井上が右手の指を鳴らすと、周囲にまぶしいほどの光が発生する。

 

次に目を開けた時、奴らの姿は屋上にはなく、モール一体に及んでいた氷はすべて粉々に砕け散った。

 

「うわあ!か、火事だ!炎がすぐそこに……あれ?」

「火が消えてる!それに、さっきの化け物は……?」

 

氷から開放された人たちは状況が飲み込めず困惑している。

 

「おい、武藤!あいつら何だったんだよ!」

 

五和の問いに応えることもなく、俺の意識はだんだんと闇に落ちていく。

 

「ちょっと、武藤君怪我してるじゃない!五和君、救急車呼んで!」

「は、はい!おい、武藤!死ぬな!おい!」

 

最後に聞こえたのは、五和が俺を呼ぶ声だけだった。

 

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