現実世界で遊戯王!   作:たけぽん

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虹光の宣告者でサーチするカードを間違えていたので変更しました。
なぜカオスソルジャーがここに?逃げたのか、自力で脱出を!?


18.ソリッドヴィジョンシステム

「……というわけだ。しばらくの間こいつをここに置いといてくれ」

 

あれから一週間がたち、一時帰宅した俺は真月をつれて新科学研究所に足を運んでいた。

 

「……」

 

俺の眼前では竹田が苦虫を噛むような顔で立ちつくしている。

 

「えっと、真月タケルです。しばらくの間お世話になります」

 

真月は深々と頭を下げ、手土産の引っ越し蕎麦が入った紙袋を渡す。

それを受け取った竹田は尚もこちらを睨んでいる。

 

「どうした竹田。蕎麦より冷麦の方が好みだったか?」

「いや、ちっがーう!」

 

急に叫んだ竹田が俺の首に手を回し、真月には聞こえないくらいの声で囁く。

 

「困るよハル君。うちのラボをホテル代わりになんて」

「もともと俺とお前しか使ってないんだし、一人くらい増えても変わらないだろ」

「変わるよ!そもそも真月くん、だっけ?彼がいたら精霊とか今後の動きとかのこと話せないじゃないか!」

「その点は問題ない。真月も精霊を見ることができる力を持っているんだ。確かにあまり深い内情は話せないが、あいつが協力してくれれば事は大きく進むはずだ」

「え、彼も精霊を……?ほほう、それは面白いねえ」

 

俺の言葉に、竹田の瞳の奥がきらりと光る。

すぐに俺から手を離し、真月の方へと駆け寄っていった。

 

「よろしくね、タケル君。今日から君も我が新科学研究所の一員だ!我らのプロジェクト完成への道をいっしょに走って行こうじゃないか!」

「は、はあ……よろしくお願いします」

「じゃあ、早速だけど、二人ともそこのソファに座ってて。見せたいものがあるんだ」

 

俺たちを促すと竹田は部屋の奥のテーブルをがさごそとあさり、すぐに戻ってきた。

その手には、白いプラスチック製の物体を持っており、それを俺たちの前のテーブルにゆっくりと置いた。

 

「これは……」

「アカデミーデュエルディスクか?」

 

目の前の物体はGXの放映時に発売された、デュエルアカデミアモデルのデュエルディスクだ。特典カードやスリーブなんかが同梱されていて、これの後に発売されたオシリスレッドモデルのプロモカードだったプリズマーはかなりの値段で取引されていた。

まあ、とはいってもこれはただのおもちゃだ。本当にソリッドヴィジョンを投影できるわけじゃない。

 

「なんだよ竹田、これの改造でもするのか?」

「いいやハル君。このディスクはもう完成しているよ」

「は?」

「ま、タケル君には何のことやらって感じだろうし、一から説明するよ」

 

竹田は少し咳払いしてから、ゆっくりと口を開く。

 

「まずは簡単に自己紹介から。僕の名前は竹田シゲハル。とある大学の3年生なんだけど、まあそれはこれからの話に関係ないから省くよ。今僕は遊戯王カードの疑似実体化装置、ソリッドヴィジョンシステムの制作を行っているんだ。そこにいるハル君の精霊であるサイマジちゃんやソードマン君に被験者になってもらってね」

「そ、ソリッドヴィジョン!?そんなのが現実で可能なんですか!?」

 

真月は目を輝かせる。デュエルが好きという彼の気持ちがひしひしと伝わってくる目だ。

 

「まあ、現段階ではプロジェクトの進行は芳しくないね。でも、それがもうすぐ大きな飛躍を遂げる可能性が浮上している」

「本当ですか、竹田さん!す、すごいや!」

「いやあ、タケル君はリアクションをしっかり取ってくれてやりやすいよ。ハル君なんて『そうか』とか『やれやれ』とかしかいってくれないんだよ?」

 

俺の真似ですと言わんばかりに竹田は声のトーンを下げる。

 

「竹田。くだらない話は後にしろ」

「ほらね?」

「……」

「おお、こわいこわい」

 

マリクかお前は。

 

「ま、話題を戻すとだね、僕の進めていたソリッドヴィジョン開発が、新たな段階に進んだってこと。で、ここからはタケル君には分からないような話も出てくるけど、それはあとでハル君に説明してもらってね」

「あ、はい。分かりました」

 

そこで一呼吸置いてから、竹田は再び口を開く。

 

「先日ハル君が戦ったHERO使いの女の子。彼女が去り際に落としていったボールペンのような形をした部品。あれの解析にずっとチャレンジしてたのがこの3週間だったわけだけど、調べていくうちにとんでもないことが分かった」

「とんでもないこと?」

「あの物体の中にはものすごい容量のエネルギー粒子が高密度に圧縮されていたんだ。簡単に説明するとアレ一本で宇宙船だって動かせるほどだ」

「う、宇宙船!?すごいですね、そんなエネルギーがこの世に実在しているなんて……」

 

話の全容は教えていないが、真月にもスケールのでかい話だということは分かってもらえてるようだ。

 

「いいや、これはそもそもこの世のエネルギーじゃないんだよ」

「え?」

「今現在科学的に解明されている事例を見ても、こんなエネルギーは地球上にも、果てはこの宇宙のどこを探しても存在しないんだ。仮にあったとしても、それをボールペンサイズまで圧縮するなんて何万年たっても人類には不可能なんだよ」

「そ、それじゃあ一体?」

「異世界だ」

 

俺の発言に、竹田はパチンと指を鳴らす。

 

「そうさ、この世界に存在しないエネルギーの存在を認めるのなら、この世界以外の世界の存在も認めることが必要なんだ」

 

まあ、そんなことは百も承知だ。この会話はミスドリームと俺の戦いのことを知らない真月へのチュートリアルでしかない。

 

「異世界……、それってまさか……」

「そう、少なくとも僕たちの世界よりも高度な文明をもった世界だよ」

「じゃあ、もしかしてそのエネルギーを使えば竹田さんが言ってたソリッドヴィジョンシステムも?」

「そう、完成するのさ。そして出来上がったのがこちらになります」

 

3分クッキングかよ。

心の中で突っ込みつつも、俺は再度テーブルの上のデュエルディスクを見る。

どこからどう見ても、当時の小学生が遊んでいたプラスチック製品だ。だが、竹田は完成したと言った。それはつまり、これを使えばソリッドヴィジョンの投影、もっと行けば精霊の実体化が可能ということだ。

 

「さすがだな竹田。こんなものをこのわずかな期間で作り上げるなんて」

「おどろくのは、まだ、はやい!」

 

今度はミザエルかよ。

 

「実はこのデュエルディスク、もう一つあるんだ!」

 

再び机をがさごそと漁る竹田。いや、最初から二つもってこいよと言いたいが、まあ言っても無駄だろうな。

 

「じゃーん。こっちはファイブディーズバージョンだよ」

「うわあ、かっこいいですね!」

 

真月は興味深々と言った様子だ。

 

「だが、あのエネルギーの入った入れ物は一つだったろ。どうやって二つに分けた?」

「それは、企業秘密かなあ」

「……」

「怖い顔しなくても、今度ゆっくり教えるよ」

 

竹田の視線が真月に向くのを見て察した。

おそらくはその企業秘密とやらをあまり知られたくないらしい。

 

「いいなあ、これでデュエルなんてできたら楽しいんだろうなあ……」

「いや、してもらうよ?」

「え?」

「今日はそのためにハル君を呼んだわけだしね。おめでとう、君たちは我が新科学研究所の発明したソリッドヴィジョンシステム初号機のテスターに選ばれました!」

「い、いいんですか!?僕がこれを使っても?」

「何を言ってるんだ、君もこのプロジェクトの一員なんだよ、タケル君」

「やった!ありがとうございます、竹田さん!」

「というわけで、お願いできるよね?ハル君」

「まあ、構わないが……。真月はデッキを持ってないぞ」

「え?そうなの?」

 

竹田が間の抜けた返事をする。

 

 

「は、はい。持ってるカードはこれだけなんです」

 

真月は俺があげたデッキケースからハネクリボーのカードを取り出し竹田に見せる。

 

「ハネクリボー……。じゃあ、これが君の精霊なのかい?」

「はい、そうです」

「ハネクリボー……。ハル君の虹クリボーといい、クリボーってのはもしかして……」

 

竹田はうんうんとうなっていたが、ふと何かを思い出したのか三度机を漁りだした。

 

「タケル君。これ使いなよ」

 

それはほこりをかぶった赤いデッキケースだった。

 

「これは?」

「僕のデッキさ。最近は使ってないからしばらく君に預けておくよ。君が使いこなせればハル君とも戦えるはずさ」

「わ、分かりました。大事に使わせてもらいます!」

 

真月は嬉しそうにケースからカードを取り出しデッキ内容を確認する。

その間に俺はひとつの疑問を竹田にぶつける。

 

「竹田。このデュエルディスクに使っているエネルギーがミス・ドリームのものだってことは、ソリッドヴィジョンどころか実体化して真月に大けがを負わせることにならないか?」

「ああ、それは心配ないよ。そのデュエルディスクにはセーフティー装置がつけてあるから、僕以外の人間にはそれを解除できない。つまり、これからやるデュエルは完全に安全さ」

「そうか、ならいいが」

「さ、それじゃあ外のバスケットコートに移動移動!」

 

ウッキウキでデュエルディスクを抱えスキップしながら出ていく竹田の後を追い、俺たちも新科学研究所の建物を後にした。

 

 

***

 

場所は新科学研究所の建物の裏手にあるバスケットボールのコートに移動した。古ぼけたゴールに、色の剥げかけたライン、そして周囲はところどころ破損したフェンスで囲まれている。これだけでもうこのコートが使われていないことが分かる。まあ、この辺りはスラム街同然だし、こんなところまでバスケをしに来るやつもいないだろう。

フェンスに引っかけてある時計を見ると11時56分。今日は火曜日だからまっとうな人間は学校だの会社だので絶賛活動中。ゆえにここに俺たち以外の人が立ち入る可能性はゼロだ。

 

「それじゃあ、二人とも準備してねー」

 

竹田はというと時計の下のベンチに腕組みをして座っている。

俺は二つあったデュエルディスクのうち、アカデミーモデルの方を左腕に装着する。

 

「すこし、重いな」

 

まあ、スフィアフィールド内で俺が使うデュエルディスクは機械的な部品は一切使用されていないから、このディスクに重量感を感じるのも仕方ないか。

俺はベルトに装備されている二つのデッキケースのうち、右側の方からデッキを取り出しコートの中央へと歩を進める。

反対側から、ファイブディーズモデルのディスクを装着した真月が歩いてくる。

さて、デュエルをする前にやることと言えば決まっている。

 

「はい、シャッフルお願い」

「ああ」

 

俺たちは互いのデッキを交換し、念入りにシャッフルする。

 

「ったく、竹田の奴あれだけ自慢しといてオートシャッフル機能をつけ忘れたなんてな」

「いやいやいや、ソリッドヴィジョンだけで十分でしょ」

 

真月がツッコミを入れてくる。

 

「まあ、それもそうだな」

「それはそうと、武藤君とのデュエル、凄くわくわくするよ」

「竹田のデッキは使いこなせそうか?」

「んー、まあ、デッキコンセプトは理解できたし、多分ね」

「そうか」

 

シャッフルを終え、デッキを再び交換し、デュエルディスクにセットする。

 

 

「楽しみだな、君の精霊を見るの」

「お互いベストを尽くそう。先行後攻はお前が決めていい」

「おっと、余裕だねえ」

「狂った大学生との同居を勧めた詫びってとこだ」

「はは、じゃあ遠慮なく先行をもらうよ」

「了解だ」

 

俺たちは握手をしてから互いに距離を取る。

竹田が渡したデッキの中身は俺でさえ知らないが、あいつの作ったデッキならば俺も全力で行くしかあるまい。

 

 

「準備出来たぞ、竹田」

「おっけー。じゃあ、いくよー!デュエル開始いいいいいい!」

「「デュエル!」」

 

***

 

先行 真月タケル LP8000 手札5枚 デッキ35枚 エクストラデッキ15枚

 

後攻 武藤ハルカ LP8000 手札5枚 デッキ35枚 エクストラデッキ15枚

 

 

ターン1

 

「僕のターン!」

 

さあ、竹田が渡したデッキの正体は……。

 

「僕は手札のジャンクコンバーターの効果発動!このカードと手札のチューナーモンスター、ジェットシンクロンを墓地へ送り、デッキからシンクロンモンスターを手札に加える!……手札に加えるのは、ジャンクシンクロン!」

 

なるほど、これであのデッキがシンクロモンスターを使うであろうことは知ることができた。となれば、次はおそらくモンスターを召喚するはず。早々にこのデュエルディスクの性能を確かめることができるな。

 

「そして手札から、ジャンクシンクロンを召喚!」

 

真月がディスクのモンスターゾーンにカードを置くと、彼の前方に以前俺とミス・ドリームが対戦した時のような光がともる。

そして、その光の中からオレンジ色の帽子をかぶった小柄なモンスターが出現する。

 

「お、おお!すごい、本当にジャンクシンクロンが出てきた!」

 

なるほど、確かにソリッドヴィジョンだ。まさかこの世界で本当にソリッドヴィジョンが出現しているなんて、ここにいる俺達でなければ知る由もないだろう。

 

「あ、ごめん、デュエル続けるね。ジャンクシンクロンの効果発動!墓地からレベル2以下のモンスターを効果を無効にして守備表示で特殊召喚する。よみがえれ、ジャンクコンバーター!」

 

ジャンクシンクロンが右に手をかざすとその場所に再び光がともり、ジャンクコンバーターが出現する。

 

「そして、レベル2のジャンクコンバーターにレベル3のジャンクシンクロンをチューニング!シンクロ召喚!ガーデンローズメイデン!」

 

真月の動作に合わせてジャンクシンクロンが三本の光の輪に変わりジャンクコンバーターを囲む。すぐにそれは一筋の光となり、白いドレスの女性が出現する。これはアニメファイブディーズでよく見たシンクロ召喚の演出そのものだ。

 

「ガーデンローズメイデンの効果!デッキからフィールド魔法、ブラックガーデンを手札に加える。それにチェーンしてシンクロ素材となったコンバーターの効果も発動!墓地からジャンクシンクロンを特殊召喚!」

 

これで真月の場にはレベル5のシンクロモンスターとレベル3のチューナーモンスターが並んだ。ここから出てくるのはさらにレベルの高いシンクロモンスターか、それとも……。

 

「僕は……、ってあれ?このディスク、エクストラモンスターゾーンが無いんだけど……」

 

確かに、GXの時代にもファイブディーズの時代にもエクストラモンスターゾーンなんて概念はなかったのだから、その時のアニメをモデルにしたこのディスクにはエクストラモンスターゾーンは無いように思える。

俺はそんな疑問を込めて竹田の方に視線を向ける。

 

「大丈夫だよタケル君!エクストラモンスターゾーンの解放を宣言するんだ!」

「え?あ、はい!エクストラモンスターゾーン、解放!」

 

その言葉と同時に真月のディスクの右から2番目のモンスターゾーンの上部から新たなモンスターゾーンが展開された。

 

「なるほど、竹田の奴考えたな……」

「召喚条件は、チューナーを含むモンスター2体!リンク召喚!現れろ、水晶機巧ハリファイバー!」

 

空中に現れたサーキットにモンスターがセットされ、リンク召喚が行われる。

 

「ハリファイバーの効果でデッキからブンボーグ001を特殊召喚。そして再びリンク召喚!現れろ、幻獣機アウローラドン!」

 

次にリンク召喚されたアウローラドンは航空機をモデルにしているだけあってなかなかのでかさだ。どうやらこのディスクで投影できるソリッドヴィジョンには大きさの制限は特に無いらしい。オーディンとか入れてたらとんでもないことになってたな。

 

「アウローラドンの効果で、三体の幻獣機トークンを特殊召喚!そして機械族モンスターが2体以上同時に特殊召喚されたことで、墓地のブンボーグ001を特殊召喚!」

 

これで一気にモンスターが5体。だがアウローラドンの効果でこれ以降リンク召喚はできない。

 

「アウローラドンの効果で、アウローラドン自身とトークン一体をリリースして、デッキから幻獣機オライオンを特殊召喚!そして、レベル3の幻獣機トークンにレベル2のオライオンをチューニング!シンクロ召喚、アクセルシンクロン!」

 

この展開、かなりやばいな。だが残念なことに、俺の手札にこの連続召喚を止めるカードはない。

 

 

「墓地に行ったオライオンの効果で、幻獣機トークンを特殊召喚!そしてアクセルシンクロンの効果。デッキからチェンジシンクロンを墓地へ送り、そのレベル分、アクセルシンクロンのレベルを下げる!」

 

チェンジシンクロンのレベルは1。よってレベル5のアクセルシンクロンのレベルは4になる。

 

「まだまだ行くよ!レベル3の幻獣機トークンに、レベル1のブンボーグ001をチューニング!シンクロ召喚、アームズエイド!」

 

今度はメカメカしい腕が出現。どうでもいいけど、こいつのカードイラスト、イカに見えるよな。

 

「そして、手札一枚をコストに墓地のジェットシンクロンを特殊召喚!そして最後のトークンにチューニング!シンクロ召喚、虹光の宣告者!」

 

これでレベル4のシンクロモンスターが3体。しかもそのうち一体、アクセルシンクロンはチューナーモンスター。これは、あのモンスターがくるに違いない。

 

「オーバートップクリアマインド!レベル4のシンクロモンスター、アームズエイドと虹光の宣告者に、シンクロチューナー、アクセルシンクロンをチューニング!」

 

先ほどまでと違い、アクセルシンクロンが金色の輪となって2体のモンスターを包み込む。

 

「リミットオーバーアクセルシンクロ!シューティングクェーサードラゴン!」

 

まばゆい光の中から現れた白いドラゴン。まさにシンクロモンスターの終着点ともいえるこのモンスターの攻撃力、守備力はともに4000。さらに強力な効果を3つも持っている。

 

「墓地に行った虹光の宣告者の効果で、デッキから儀式モンスター、古聖載サウラヴィスを手札に加える。これで僕はターンエンド!」

 

 

 

タケル LP8000 手札4枚 フィールド シューティングクェーサードラゴン《守備表示》 伏せカード なし

 

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