部室棟の奥にある遊戯王部のドアを勢いよく開けると、部室内は荒れに荒れていた。
本棚の書籍は床に散らばり、ページが破られているものもあった。カートン買いしたボックスの詰まった段ボールも、もはや原型をとどめておらず、中のカードが散乱していた。
そして、部室の真ん中のテーブルを見ると、真崎と誰かわからないもう一人、髪を紫に染めた男子生徒がデュエルをしていた。
「行け、潜航母艦エアロシャーク!ダイレクトアタックだ!」
「そ、そんな!」
真崎LP700→0
丁度決着がついたらしく、敗北した真崎が膝を折る。
「けっ、遊戯王部部長つってもこの程度か……。余興にもならなかったぜ!」
「て、てめえ!よくも真崎先輩を!今度こそ俺が!」
紫に五和が詰め寄る。
「ああ?てめえはさっき負けただろうが!引っ込んでろクズ!」
「ぐはあっ!」
腹に思いきり蹴りを食らった五和が、こちらへ転がってくる。
「お、おい、五和!大丈夫か?」
思わず駆け寄り、五和の上半身を起こす。
「ぐあ……。む、武藤!?馬鹿野郎、なんで来たんだ!?」
「なんでって……。それよりこれはどういうことなんだ?」
あたりを見渡せば、五和以外にも何人もの部員が倒れている。どうやら全員デュエルに負け、暴行を受けたらしい。
「お前が武藤か?」
紫が俺に視線を向けている。
「そうだ。俺が武藤ハルカだ。お前は?」
「てめえ!ゼロさんに向かってなんて口の利き方だ!」
近くにいた紫の仲間らしき男子が怒鳴ってくる。
「黙ってろ。俺は今武藤と喋ってんだ」
「ひっ!す、すみません!」
男子はその言葉に委縮し黙り込む。
「俺は神代レイ。デュエルギャングのリーダーだ」
「デュエルギャングの……リーダーだと?」
「そうだ。絶対零度のデュエリスト、人は俺を『ゼロ』と呼ぶ」
「ゼロ……」
絶対零度にゼロなんて単語を聞かされると嫌が応でもミス・ドリームのことを思い出してしまうが、こいつは男だ。ミス・ドリームとは関係ないはず。
なのに、俺は奴の放つプレッシャーに押しつぶされそうになっている。
「まったく。お前がさっさと来てくれればそこのクズどもも痛い目見なくて済んだのにな」
「全員、お前がやったのか?」
「ああ、ワンターンでな」
これだけの部員、しかも真崎や五和までもをすべてワンキルしたっていうのか……。
「俺を探していたようだが、いったい何の用だ?」
「お前に聞きたいのは、これだ」
ゼロは制服のポケットから一枚の写真を取り出す。
「……こ、これは!」
そこに移っていたのは、シューティングクェーサードラゴンと、それに切りかかるサイレントソードマンの姿。それは紛れもなく、先日俺とタケルがデュエルしたときの光景だった。
「こいつは俺の手下が先日古ぼけたバスケットコートで撮ったものだ。クェーサーの方は知らねえが、サイレントソードマンを使ってたのはお前だろ?」
迂闊だった。まさかあそこにやってくる人物がいるなんて。確かに不良集団の一員が毎日おとなしく学校で授業受けてるわけもない。
「……」
「ちっ、だんまりかよ。まあいい。じゃあ、こういうのはどうだ?俺とお前でデュエルして、俺が勝ったらこの写真に写っているモンスターについて知ってることを全部吐いてもらう」
「そんなデュエル、受けると思うか?」
「いいのか?お前がデュエルを受けないなら、ここにいる全員のデッキを破り捨てるぜ?」
「みんなのデッキを人質にするってことか……」
「そういうことだ」
「わかった。そのデュエル受けよう」
俺は意を決してテーブルに着く。
「や、やめて武藤君!こんなデュエル受けちゃだめよ!」
悲壮な顔で真崎が俺を止めようとする。
「先輩……」
「さっきあいつも言ってたでしょ?私たち全員ワンターンキルで負けたのよ……。あいつの強さは異常だわ、いくらあなたでも勝つなんて無理よ!」
「いいのかよ部長さん、武藤がデュエルを受けなきゃあんたの大事なデッキも、いやこの部活さえもなくなっちまうんだぜ?」
「そ、それは……」
真崎の言葉を遮るように、俺はデッキケースからデッキを取り出しテーブルに置く。
「ほう、やる気十分だな」
「黙れ……」
「おお、こわいねえ」
「黙れって言ってるだろ!さっさとデッキを出せ!ぶっ潰してやる!」
「へっ、いいだろう!ギンを倒したお前の実力、見せてもらうぜ!」
ゼロの方もすでに準備万端らしく、こちらに自分のデッキを渡してくる。
「「お互いのデッキを、カット&シャッフル!」」
「先行後攻はお前に決めさせてやるよ」
「なら、俺は後攻を選ぶ」
こいつのデッキ内容はほぼ不明だが、先ほどの真崎とのデュエルの決着がモンスターによる攻撃だったことからして、後攻を取らせなければワンターンキルはないはずだ。
その分俺は圧倒的ビハインドを背負う可能性もあるが……。
「行くぜ……」
「来い!」
「「デュエル!」」
先行 神代レイ《ゼロ》 LP8000 手札5枚 デッキ35枚 エクストラデッキ15枚
後攻 武藤ハルカ LP8000 手札5枚 デッキ35枚 エクストラデッキ15枚
***
ターン1
「俺の先行だ!メインフェイズ、俺は手札から鰤っ子姫を召喚!」
鰤っ子姫……。魚族デッキなのか?だとすればこいつの効果を通すことは、『あのモンスター』を呼ばれることに直結してしまう。
「鰤っ子姫の効果!こいつを除外して、デッキから魚族モンスターを特殊召喚する!」
「させるか!手札から灰流うららの効果発動!鰤っ子姫の効果は無効だ!」
「フン、流石に対抗手段は持っていたようだな。だが、甘いぜ!俺は手札からPSYフレームギアγの効果発動!自分フィールドにモンスターがいない時、このカードとデッキのPSYフレームドライバーを特殊召喚して、相手のモンスター効果を無効にする!」
「くっ……」
せっかくのうららの効果を無効にされた揚句、奴の場にモンスターが2体増えてしまった。
「そして、うららの効果が無効になったことで、鰤っ子姫の効果は有効!現れろ、カッターシャーク!」
やはりそいつが出てくるか……。
「俺はレベル6のPSYドライバーにレベル2のギアγをチューニング!シンクロ召喚!レベル8、魔救の奇跡ドラガイト!」
いきなり強力なシンクロモンスターの出現。さらに、カッターシャークにも効果がある。
「カッターシャークの効果発動!フィールドのカッターシャークを対象に、それと同じレベルの魚族モンスターをデッキから特殊召喚する!現れろ、セイバーシャーク!」
「レベル4のモンスターが2体……」
「俺はレベル4のカッターシャークとセイバーシャークでオーバーレイ!エクシーズ召喚、バハムートシャーク!」
バハムートシャーク……。エクシーズ素材に水属性の縛りこそあるが、その効果は凶悪そのもの。先行を渡したのは大きな間違いだったかもしれない。
「バハムートシャークの効果発動!エクシーズ素材を一つ使い、エクストラデッキからランク3以下の水属性エクシーズモンスターを特殊召喚できる!現れろ、餅カエル!」
「でた!ゼロさんのエクシーズコンボだ!」
取り巻きがあほなことを言っているが、ドラガイトにバハシャ餅とは、相手のデッキは最高のスタートを切っているようだ。
「俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ!」
ゼロ LP8000 手札2枚 フィールド 魔救の奇跡ドラガイト バハムートシャーク 餅カエル 伏せカード1枚
ターン2
「俺のターン、ドロー!」
ドローカードを確認し、手札に加える。
相手のフィールドにいるモンスターの中で、こちらの行動に制限をかけてくるのはドラガイトと餅カエル。前者は俺の魔法罠を無効にし、後者は魔法罠モンスターの効果を無効にし、そのカードを自分フィールドにセットすることができる。つまり、俺の発動するカードは種類にもよるが、2回無効にされてしまう。
「俺は手札から、黒き森のウィッチを召喚!」
「な、魔法使い族!?この前虎尾とやった時は幻影騎士団を使ってたはずだぜ!?」
俺の一手を見て、以前のデュエルを見ていたであろう取り巻きが驚いている。
「へえ、お前、マルチデッカーかよ。おもしれえ、煮えたぎってきたぜ」
「その余裕をすぐにぶっ潰してやる。俺は黒き森のウィッチ一体でリンク召喚!聖魔の乙女アルテミス!」
「なるほど、モンスターの数こそ変わっていないが、これでウィッチの効果が発動できるわけだ」
「黒き森のウィッチの効果発動。デッキから守備力1500以下のモンスターを手札に加える」
「チェーンはねえよ」
「なら、デッキから沈黙の魔術師サイレントマジシャンを手札に加える」
『マスター!あんなやつさっさとやっつけちゃいましょう!』
奴らの暴挙に、サイマジもかなり腹を立てている様子だ。
「分かってる。俺は、アルテミスをリリースし、沈黙の魔術師サイレントマジシャンを特殊召喚する!」
「なるほど、ウィッチの効果でサーチしたモンスターはそのターン効果を発動できないが、そいつの特殊召喚は発動する効果じゃない。問題なく出せるってわけだ」
「サイレントマジシャンの攻撃力は、俺の手札一枚につき500ポイントアップする。俺の手札は4枚!」
サイレントマジシャン 攻撃力1000→3000
「攻撃力3000、ドラガイトと並んだか……」
「バトル!サイレントマジシャンでドラガイトを攻撃!」
「相打ち狙いか?」
「攻撃宣言時、速効魔法サイレントバーニング発動!互いのプレイヤーは、手札が6枚になるようにドローする!そして、このカードの発動は無効化されない!」
「ちっ、ドラガイトでも餅カエルでも無効にできないってわけか……。だが、俺の手札は2枚でお前は3枚。ドローできる枚数は俺の方が多いぜ!」
「さらに速効魔法発動。手札を一枚捨てて、ツインツイスター。お前の伏せカードを破壊する」
「なら、ドラガイトの効果でその発動は無効!俺の伏せカードは破壊されない!」
「だが、今のツインツイスターで俺の手札は1枚になった」
サイレントバーニングの発動条件は相手より自分の手札が多いことだが、それはあくまで発動するための条件でしかない。効果処理時の手札の枚数は無関係だ。
「サイレントバーニングの効果により、俺は新たに5枚のカードをドロー!」
「フン、俺は4枚ドローだ!」
「俺の手札が6枚になったことで、サイレントマジシャンの攻撃力はさらにアップ!」
サイレントマジシャン 攻撃力3000→4000
「いけ!ドラガイトを爆殺!」
ゼロ LP8000→7000
「メインフェイズ2。俺はカードを3枚伏せてターンエンドだ」
ハルカ LP8000 手札3枚 フィールド 沈黙の魔術師サイレントマジシャン 伏せカード 3枚
ターン3
「俺のターン、ドロー!ドラガイトを倒したくらいで調子に乗るなよ?俺にはまだ餅カエルと素材を持ったバハムートシャークがいるんだぜ!」
確かに、ライフこそ削りはしたが、向こうの強力な陣形はまだ崩せていない。
「俺はバハムートシャークの効果発動!素材を取り除き、エクストラデッキから潜航母艦エアロシャークを特殊召喚!さらに、こいつをフルアーマードエクシーズチェンジ!FAブラックレイランサー!」
これで奴の場にはエクシーズモンスターが3体。
「手札から2体目のカッターシャークを召喚!効果により自身を対象とし、ランタンシャークを特殊召喚!この2体でエクシーズ召喚!ヴァリアントシャークランサー!」
ヴァリアントシャークランサーはランク5、本来はレベル5のモンスターを素材に要求しているが、カッターシャークとランタンシャークはどちらも水属性エクシーズモンスターの素材になるときレベルを3、または5として扱える。
「魔法カード、エクシーズギフトを発動!ヴァリアントシャークランサーとブラックレイランサーの素材を一つずつ取り除き、カードを2枚ドローする!」
「サイレントマジシャンの効果発動!魔法カードの効果を無効にする!」
「だから甘いって言ってんだよ!速効魔法、禁じられた聖杯!サイレントマジシャンの効果を無効化し、攻撃力を400ポイントアップさせる!」
「何……!」
サイレントマジシャン 攻撃力2500→1400
「よってエクシーズギフトは有効!俺はカードを2枚ドローする!」
くっ、サイレントバーニングも込みでかなりのドローをさせてしまっている。ドラガイトを倒すためとはいえかなり無茶だったか。
「ヴァリアントシャークランサーの効果!素材を取り除き、サイレントマジシャンを破壊!」
シャークランサーには、他の水属性エクシーズモンスターが破壊された時、魔法カードをデッキトップに置く厄介な効果がある。なら、今ここでつぶすしかない。
「させるか!リバースマジック発動!わが身を盾に!1500ライフを払い、サイレントマジシャンの破壊を無効にし、ヴァリアントシャークランサーを破壊する!」
ハルカLP8000→6500
「かわしたか。ならバトルだ!餅カエルでサイレントマジシャンを攻撃!」
「トラップ発動!聖なるバリアミラーフォース!相手の攻撃表示モンスターをすべて破壊する!」
ゼロの場には攻撃表示モンスターしかいない。これが通ればモンスターは全滅する。
「餅カエルの効果発動!自身をリリースし、ミラーフォースを無効にするぜ!」
「それは読めている!リバースマジック、墓穴の指名者!墓地の餅カエルをゲームから除外し、同名カードの効果を無効にする!」
餅カエルは制限カード。ここで消せばそう簡単には復活できないはずだ。
「ちっ、破壊されるぜ」
「やった!武藤君の起死回生の一手が決まったわ!」
真崎が歓喜の声を上げる。
が、一方ゼロは全く動じていない。
「その程度で俺が止まると思ったか!トラップ発動!エクシーズリボーン!墓地のバハムートシャークを復活させ、このカードをその素材にする!」
「バハムートシャークは効果を使ったターンバトルができないが……」
「そうだ、復活したバハムートシャークはその制約から外れている!サイレントマジシャンを攻撃!」
ハルカLP6500→4300
「くっ、だがサイレントマジシャンの効果で、レベル8を特殊召喚!」
「メインフェイズ2!バハムートシャークの効果発動!エクストラデッキからNO.71
リバリアンシャークを特殊召喚!カードを1枚伏せてターンエンドだ!」
ゼロLP7000 手札5枚 フィールド バハムートシャーク NO.71リバリアンシャーク《守備表示》 伏せカード 1枚
ターン4
「俺のターン、ドロー!」
ドローしたカードはエフェクトヴェーラー。こいつは手札にキープしておこう。
これで俺の手札は4枚。場には攻撃力3500のサイレントマジシャンレベル8。
ライフこそ負けているが、まだ勝機はあるはずだ。
「俺は手札から、Emダメージジャグラーを召喚!さらに、フィールドにモンスターが2体以上存在することで、Emハットトリッカーは特殊召喚できる!」
「こ、これで武藤の場にも、レベル4のモンスターが2体……頼む、武藤!ゼロを倒してくれ!」
五和が体の痛みに耐えながら声を絞り出す。
「黙ってな!クズが!」
「キサマ……、人をクズ呼ばわりするのはやめろ!」
「ああ?本当のことだろ?そいつも、他の部員たちも、この俺にたった1ターンで負けた!クズなんだよ!弱いくせに部活なんて立ち上げて、くだらない友情ごっこまでしてよ!
弱いデュエリストなんて、必要ねえんだよ!」
――『弱きデュエリストなど、必要ない!』
頭の中に、その言葉が、忌わしい記憶が蘇る。思い出すだけで吐き気を催すほどの記憶が。
――『矛盾してますよ』
そして、先ほど屋上で遊城が言った言葉も同時にリフレインされる。
「……れ」
「ああん?」
「黙れ!黙れ黙れ黙れ!」
「おいおい、とうとうおかしくなっちまったのかよ?」
「黙れって言ってんだろ!俺はダメージジャグラーとハットトリッカーでオーバーレイ!エクシーズ召喚!Emトラピーズマジシャン!」
もう御託はいい、とにかくこいつをつぶすのが先決だ!
「トラピーズマジシャンの効果発動!素材を取り除き、サイレントマジシャンに2回攻撃の権利を与える!さらに装備魔法、サイコブレイド!2000ライフを払って、サイレントマジシャンに装備!払ったライフ分攻撃力を上昇させる!」
ハルカLP4300→2300
サイレントマジシャン 攻撃力3500→5500
「バトルだ!トラピーズマジシャンでリバリアンシャークを攻撃!」
『ま、マスター!駄目です、その攻撃は!』
「やれ、トラピーズマジシャン!」
「……リバリアンシャークの効果でデッキトップにランクアップマジックを置く」
「無駄だ!サイレントマジシャンで、バハムートシャークを攻撃!」
ゼロLP7000→4100
「これで終わりだ!サイレントマジシャンでダイレクトアタック!」
「終わってんのはお前の方だ!トラップ発動!ドレインシールド!」
「な!?」
「攻撃を無効にし、その数値分ライフを回復する!」
ゼロLP4100→9600
「ライフポイント、9600……。バトルフェイズは終了だ」
「おっと、忘れてもらっちゃ困るぜ?トラピーズマジシャンの効果を受けたモンスターは、バトルフェイズ終了時に破壊される!」
「くっ……ターンエンドだ」
ハルカLP2300 手札1枚 フィールド Emトラピーズマジシャン 伏せカード なし
何やってんだ俺は……。怒りに身を任せて攻撃し、挙句の果てにエースモンスターを無駄死にさせるなんて……。
だ、だが、まだトラピーズマジシャンがいる。こいつがいる限り、俺はその攻撃力以下のダメージを受けない。
次のターンを耐えて……。
「次のターンを耐えれたら、な」
「……!」
「はあ、くだらねえ、実にくだらねえデュエルだ。武藤、お前がここに来る間に俺が倒した奴らは確かに弱かった。だが、友情ごっこだとしてもこいつらなりの正義と、仲間意識で俺に挑んできた。それに引き換えお前はどうだ?頭に血が上って、勢いのままデュエルを始め、プレイングミスをし、そして今俺にターンを回してきた」
「何が言いたい……?」
「はっきり言ってやるぜ、この中で一番弱いクズデュエリストは武藤、お前だってな!」
「な、なんだと……?」
何とか返事こそしているが、俺の意識は朦朧としていた。手札のカードさえテキストが読めるか怪しいほどに。
ターン5
「もう終わりにするぜ。俺のターン!」
と、とにかく、守りきらないと……。
「俺が引いたカードは、RUM七皇の剣!そしてメインフェイズに入り発動!エクストラデッキから、NO.101S・H・Ark Knightを特殊召喚し、カオス化させる!」
何か、何か手は………。
「現れろ!CNO.101S・H・Dark Knight!」
「……くっ」
「ダークナイトの効果で、トラピーズマジシャンをこのモンスターのエクシーズ素材とする!」
「チェーンは、無い……」
『ま、マスター!て、手札手札!』
「……!し、しまった!」
前のターンにドローしていたエフェクトヴェーラー。これを使うにはこのタイミングしかなかったというのに。意識がおぼつかないせいですっかり頭から抜けてしまっていた。
「行け!ダークナイト!ダイレクトアタック!」
この攻撃を防ぐ術は……ない。
ハルカLP2300→0
「そ、そんな……武藤が……」
「武藤君が……負けた」
そんな声が聞こえた気がしたが、俺はそれに対し何かを言えるわけでも、何かを出来るわけでもなく、その場に倒れこんだ。
「やりましたね、ゼロさん!」
「馬鹿馬鹿しい。こんな奴に勝ったって虚しいだけだ」
「そ、そっすか。……そういえばあの写真のこと聞くんじゃ?」
「気を失ってる奴にどうやって聞くんだよ。面倒だがクェーサー使ってた奴を探しだしてそっちに聞くしかないだろ」
「い、いいんすかそれで?」
「ああ、もうこんな奴にも、この部にも興味はねえ。お前ら、行くぞ」
「「「「へい!」」」」
俺の近くを、どたどたと去っていく足音がする。
「……同族嫌悪ってやつなのかもな」
意識を失う瞬間、俺が最後に認識できたのはゼロのそんなつぶやきだった。