第9ターン
「俺のターン!ドロー!」
さて、五和のターンだ。モンスターは三体。そしてすべてが効果モンスターということは……。
「俺はドランシアの効果発動!素材を取り除き、アセンブリーナイチンゲールを破壊!」
アセンブリーが俺のフィールドから五和の墓地へと戻る。
「さあ行くぜ!俺は手札を一枚捨ててジェットシンクロンを蘇生!そしてドランシア、刻剣の魔術師、速攻のかかし、ジェットシンクロンの四体でリンク召喚!現れろ!ヴァレルロードドラゴン!」
豪華なのか何なのかよくわからない素材を使って、五和は切り札、ヴァレルロードドラゴンを場に出してきた。
「うおー、かっこいいぜ!」
「くっ……」
「よし、ここは一気に行くぜ!死者蘇生を発動!武藤の墓地からアカシックマジシャンを特殊召喚!」
死者蘇生も、今じゃストレージの肥やしなのか。
「バトルフェイズ!ヴァレルロードでクリボールに攻撃!そしてこの瞬間、ヴァレルロードの効果!今攻撃対象にしたクリボールの攻撃力を500下げる!そしてこの効果に対して、相手はカードを発動できない!」
これがヴァレルロードの効果の一つ。これを使えば相手モンスターの攻撃力を下げつつ、チェーンを封じることで攻撃反応のカードも防ぐことができるのだ。
「クリボールの攻撃力が0になったことで、武藤への戦闘ダメージも増加する!」
ハルカLP5700→2700
「さらにアカシックマジシャンでもう一体のクリボールを攻撃!」
「……」
『ま、マスター!』
「トラップ発動!マジカルシルクハット!」
「し、シルクハット!?」
「デッキから魔法、罠カードを2枚選択し、自分フィールドのモンスターと混ぜてフィールドに出す!俺は、サイレントバーニングと錬装融合をセット!」
これで確率は三分の一。ついでに言うと、俺の手札に次のターン召喚できるモンスターはない。ここでクリボールを当てられて、次のターンモンスターを引けなければ俺の敗北は濃厚だろう。
「うううん……どれだ……?ってスリーブで見分ければいいじゃねーか!えーっと……」
だが、俺のフィールドには黒い無地のスリーブに入ったカードが3枚。
「うわああ!なんで武藤と同じスリーブ買っちまったんだああああ!」
「安くて丈夫だからな、このスリーブ」
俺が大切に使っていることもあり、五和の新品のスリーブとでもちょっとやそっとじゃ区別がつかない状況になっている。
「く、くそお!一番右だ!」
俺は一番右のカードをめくる。
「このカードは、サイレントバーニング。外れだな」
「あ~外したぁー!」
「バトルフェイズ終了時、シルクハットでセットしたカードはすべて墓地へ行く」
「俺はこれでターン終了だぜ……」
五和 手札 2枚 フィールド ヴァレルロードドラゴン アカシックマジシャン
伏せカード なし
第10ターン
「俺のターン。ドロー」
ピンチは乗り切ったが、俺のドローカードもモンスターではない。
「墓地のサイレントバーニングを除外して効果発動。デッキから沈黙の魔術師サイレントマジシャンを手札に。そして墓地の錬装融合をデッキに戻し、カードを一枚ドロー」
まだ引けない。次の一手で状況を打破できるカードを引けなければ最悪負ける。
「トラップ発動!活路への希望!ライフを1000払い、相手とのライフの差2000ポイントに付きカードを一枚ドローする!」
ハルカLP2700→1700
「えーと、俺のライフは5900だから……差は4200!」
「よって、カードを2枚ドロー!」
ドローしたカードをゆっくりと視界に入れる。
「来たか」
「え?」
「俺は手札から、ブリリアントフュージョンを発動!デッキから素材モンスターを墓地へ送り、ジェムナイトモンスターを攻守を0にして融合召喚する!」
「ゆ、融合!しかもデッキから!?」
「俺はジェムナイトラズリーとギャラクシーサーペントを墓地へ送り、ジェムナイトセラフィを特殊召喚!」
「で、でも攻撃力も守備力も0なんだろ?」
「だが、効果は残っている。まずは今素材として墓地に送られたジェムナイトラズリーの効果!墓地から通常モンスター、ギャラクシーサーペントを手札に!そしてセラフィの効果で俺は通常召喚とは別にモンスターを召喚できる!ギャラクシーサーペントを召喚!」
これでピースはすべてそろった!
「俺は、サーペントとセラフィでリンク召喚!水晶機巧ハリファイバー!」
レアコレで安くなった超汎用カード。禁止にされる前に使っておこうと思って買ってみて正解だったな。
「ハリファイバーの効果で、デッキからレベル3以下のチューナーモンスター、ジェットシンクロンを特殊召喚!そしてジェットシンクロンでリンク召喚!サクリファイスアニマ!」
「お!サクリファイス!たしかペガサスの使ってたカードだ!」
「俺はアニマをリリースし、沈黙の魔術師サイレントマジシャンを特殊召喚!」
「武藤の手札は8枚……攻撃力5000!?」
「さらに、ハリファイバー一体でリンク召喚!リンクロス!」
「な、なんだ?リンク2のモンスターをリンク1に?」
「リンクロスの効果で、ハリファイバーのリンクマーカーの数分トークンを生み出す。ハリファイバーはリンク2、よって2体のトークンを特殊召喚!」
これで俺の場には、サイレントマジシャン、裏守備表示のクリボール、リンクロス、リンクトークンが2体。
「行くぞ五和。俺はセラフィの効果でサーペントを召喚したため、通常召喚権がまだ残っている。リンクロスとリンクトークン2体を生贄にささげ……」
「え、三体の生贄?」
「オシリスの天空竜を召喚する!」
「お、オシリスううう!?」
俺の場に現れた紙のカード……げふん。神のカード、オシリスの天空竜。DMで闇遊戯が従えていた三幻神の一体。流石に原作のようないかれた効果ではないが、それでも、この状況だけで言えば圧倒的な神だ。
「俺の手札が減ったことで、サイレントマジシャンの攻撃力は500ポイントダウンする。だが、オシリスの特殊効果!手札一枚に付き攻撃力が1000ポイントアップ!俺の手札は7枚!」
「じゃ、じゃあ攻撃力は……7000!?」
「俺のバトルフェイズ!サイレントマジシャンでアカシックマジシャンを攻撃!」
オシリスの召喚で攻撃力が下がったとはいえ、それでもサイレントマジシャンの攻撃力は4500。アカシックマジシャンとの差は歴然だ。
五和LP5900→3100
「この一撃で終わりだ!オシリスでヴァレルロードを攻撃!」
「ヴァレルロードの効果!オシリスの攻撃力を500下げる!……でもダメージは3500か……」
「くりくり~」
「え?」
「ん?」
『あら?』
俺たちは唐突に聞こえた声に反応する。
「なあ、今なんか言ったか?」
「いや、オシリスの攻撃宣言しかしてない」
『でもマスター、私にも聞こえました!』
俺たちは顔を見合わせるが、結局声の正体がわからないのでプレイを続行することにした。
「それじゃあ、オシリスの攻撃で俺の負け……!いや……」
「ん?」
「まさかな……俺は手札からクリボーの効果発動!」
「……!」
それはさっき、五和がお守り代わりにデッキに入れたクリボーのカード。たしかに、五和の使ったクリボーンの効果で蘇生できるモンスターではあったが、このタイミングで手札にそのカードがあったとは。
「クリボーの効果でオシリスとの戦闘ダメージをゼロに!」
「……。俺はカードを一枚伏せてターンエンドだ」
ハルカ 手札6枚 フィールド オシリスの天空竜 沈黙の魔術師サイレントマジシャン クリボール(裏守備表示)
伏せカード なし 炎舞天キ
第11ターン
「なあ、武藤。確かオシリスには召喚したモンスターに2000ポイントのダメージを与える効果があったよな?」
「ああ。攻撃表示限定だが、2000以下のモンスターは場に出た瞬間破壊されるな」
「あちゃー、まじか。実はさ、俺のデッキ、もう攻撃力2000以上のモンスター居ねえんだよな」
終わりの始まりで除外したカードの中にあったダークアームドやダークネクロフィアも一枚ずつしか買えなかったということか。
「まあ、でもせっかくこんな熱いデュエルができたんだ。サレンダーなんかじゃ終わりたくねえ。だから、ドローするぜ!」
「五和……」
「……俺はターンエンドだ」
五和 手札 2枚 フィールド モンスターなし 伏せカード なし
第12ターン
「俺のターン。ドロー!バトルだ!サイレントマジシャンでダイレクトアタック!」
五和LP3100→0
「俺の負けだぜ……!」
***
「いやー、楽しかったなあ!」
午後8時。俺たちはカードショップを出た後、ファストフード店で休憩し、帰路についていた。
「まあ、楽しかったならよかったよ」
「テンションひっくいなあ。デュエルの時は結構熱くなってたのによ!」
「え?俺が?」
「ああそうよ。武藤も結構熱い奴なんだって知れてうれしいぜ!」
「よせよ、気持ち悪い」
「でも、結局負けちまったしなあ。やっぱり強い奴には勝てねえのかなあ」
「いや、お前十分強かったぞ」
「え?まじで?」
「ああ。20分、それもストレージのカードが大半を占めるデッキで、それを最大限に活かすプレイングをしていた。特に最後のクリボーの発動には驚かされた」
「あーあれなー。なんかわかんねえけど、クリボーが使ってほしそうな顔してたんだ!……なんつって、絵柄が急に変わったらホラーだっての!」
「いや、それはどうだろうな……」
もしかしたら、五和のクリボーにも……。
「っと。俺の家、こっちだから」
曲がり角で五和は右側を指さす。俺たちの家は左側なので、必然的にここで解散になる。
「ああ、それじゃあな」
「おう!武藤、いろいろありがとな!デュエル、楽しかったぜ!またなー!」
こちらへ大きく手を振ってから自宅へと走りだす五和を見送ってから、俺も曲がり角を左に曲がる。
『マスター、楽しかったですか?』
「……普通だよ」
『あの……もう気にしなくていいんじゃないですか?『あの時のこと』』
「……」
『いえ、すみません。今の言葉は忘れてください……』
そこから家に帰るまで、俺とサイマジが言葉を交わすことは無かった。