この音は、ただ君の為に。   作:月の城

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暑さが緩和されたかと思いきや、相も変わらず暑い日々。


原作を尊重しながらもオリジナル要素も追加していきたい、でも筆者は展開が下手くそ。
そんな、創造力の乏しさを痛感しながらも今回も頑張って執筆しました。


誤字、脱字は筆者が気付き次第直していますが、読みづらい部分があれば申し訳ありません……。


12話

 

「お、おいチカ。どこ行くんだよ」

「自主練、イメトレ」

 

 バタンッ。

 

「あ、あの。えっとぉーー」

「泣くなコータ」

 

 三人組がオロオロとしている中、美人少女が眼鏡君に近付く。

 

「あの、先輩――――……」

「ごめん、僕もちょっと……」

 

 ガチャッ、と眼鏡君が出ていくとすぐにギャル娘が部室から出ていく。

 

 合同練習会に行く前日と打って変わって、今日は随分とギスギスしているな。

 片耳にイヤホンをつけながら練習風景を見ていたが、イケメン男子たちはそもそも練習方法を間違えている。

 外で聞いているとよく分かるが、リズムに一定性がない。

 

 お互いに相手の音が聴こえてから弾く、相手の指を見て弾くなんてやっていれば一生できるわけがない。そんなものは歪な繋がりで奏でられる不協和音だ。

 曲がりなりにも、合奏というモノはそんな見せかけで曲になるものじゃない。

 

 今日は、まともな練習になりそうにないな……。

 

 

 

 

 

 翌日。

 今日も望み薄だろうなぁと思いながら部室の扉を開けようとしたら、バタンと扉が勝手に開いて眼鏡君が飛び出してきた。

 

「ごめん!」

 

 飛び出してきた人に文句でも言ってやろうとしたが、それが眼鏡君だったこと、そして焦っているような表情を見て息を吐くだけに(とど)まった。

 

「今日も練習はなしですか?」

 

 中に入ると、イケメン男子と今出て行った眼鏡君以外全員集まっているようだ。

 

「そんな訳ないでしょ。今、倉田は仲直りをしに行ってるところなんだから少し待ってなさない」

「断言するんですね?」

「当たり前でしょ」

 

 ――――まただ。

 ここの人たちは、なんでこんな真っ直ぐな眼を出来る?

 

 

 わけわかんねぇ。

 

 

 

 

 

「あ! 二人とも来た!」

「ね、あたしの言った通りでしょー♪」

 

 本当に二人揃って来たよ。

 

 片耳にイヤホンを挿して音楽を聴いていると、部室の外で待っていた部員たちの声が聞こえてきた。

 

「よかった、仲直りしたんだねー」

「あ゛? 別にケンカとかしてねぇし」

「分かってる、分かってる」

「あんたたちがギクシャクしてるせいで練習遅れまくってんだからー。ね、鳳月ちゃん」

「明日からまた朝練導入するつもりなのでよろしく」

 

 朝練?

 なるほど。初心者が『龍星群』を弾けるからには絡繰(からく)りがあると思ったけど、ばっちゃんのところ以外でも練習してたってわけね。

 

「え゛っ、まじ……? 鳳月さん」

「大マジよ」

「わーい、久しぶりだね。朝練!!」

「朝練て、何時くらいからやんの?」

 

 次々と部室に人が入って来て、最後に眼鏡君が部屋に入るとすぐに驚きの発言をする。

 

「あのさ、僕やっぱり全国行くの無理だと思うんだ」

「――――え……?」

 

 今の実力で全国?

 冗談じゃないとしたら、随分と夢を見過ぎだ。

 

「神奈川トップの姫坂は、はっきり言ってうちの筝曲部よりはるか上にいる。現実的に考えてあの上を行くなんて無理だと思う」

 

 あぁ、合同練習で行った姫坂の曲を聴いたからの昨日か。

 

「――――今のままじゃ、僕たちが姫坂と同じ努力をしたって差は絶対に縮まらない。奇跡なんか起こらない、姫坂の何倍も、何十倍練習しても勝てるか分からない。どんなに努力しても、泣く確率の方がずっと高い。全国は甘くない」

 

 

 そうだ、全国は甘くない。

 桐生の実力があっても、中学のコンクールで優秀賞すら逃したことがあるんだ。

 君たちの練習方法じゃ、美人女子以外全国なんて言えるレベルじゃない。

 

 

 

「――――でも、それでもやっぱり僕は、ここにいるみんなと一緒に全国を目指したい」

 

 

 

 ……普段なら笑い飛ばすとこなんだけど、眼鏡君の雰囲気がね。

 静かな眼をした眼鏡君が、本気だってことは伝わってくる。

 

 

 

「おいメガネ、これ外すぞ」

「え?」

「何か新しい紙くれ」

 

 壁に貼ってあった『目指せ全国!』の紙を外して、机の上に眼鏡君から渡された紙を机の上に置く。

 

「っし、一人一文字な」

「それ足りなくね?」

 

 長髪ボーイが指で数えたが、前に書いてあったのは感嘆符を含めて六文字。

 七人で書くには一文字足りていない。

 

 

「「大丈夫、三文字(・・・)足せば」」

 

 

 ここでも息ぴったりとは。

 お互い睨み合っちゃってるけどお似合いだよ、お二人さん。

 でも、三文字?

 

「やっぱ最初はたけぞー先輩だねっ、はい!」

 

 天然君がマッキーを眼鏡君に渡すと、迷いなく何かを書き始める。

 

「勝てるって分かってる勝負なんて、一番つまんねーもん。なっ?」

「一人で頑張んだったらちょっとキツイけど、みんないるし。なっ?」

「厳しいのは苦手だけどっ、俺も本気で頑張ってみる! はい、ヒロ先輩!」

 

 長髪ボーイ、おデブ、天然君と順番に書いて次にギャル娘がマッキーを受け取る。

 

「さんきゅー。あ、あとそうだ。言ってなかったけど、今日からあたし副部長だからーよろしく」

 

「「「え゛!!?」」」

 

 気軽にとんでもないことを言っていたが、そんな簡単に新入部員が副部長?

 まぁ、ここにいる二年生は眼鏡君とギャル娘だけという点を見れば分からなくもないけど。

 

「なんかあったらヒロ先輩に相談おし、かわいい後輩諸君」

「ヒロ先輩すごーい」

「はい、鳳月ちゃん。二文字(・・・)何足すの? びっくりマークとか?」

「いえ……私の目標は元々こう(・・)だったので。私一人の力じゃ無理だけど、みんなと一緒なら。でしょ?」

 

 ギャル娘から美人女子、そして最後にイケメン男子の手に渡る。

 

「目標は、少しでも高ぇ方が面白ぇかんな!」

 

 さて、何を書いたのかと壁に寄りかかったまま壁に貼るのを待っているとイケメン男子からペンを投げ渡された。

 なんで?

 

「ほら、最後はお前の番だから早く書けよ」

「何言ってるんだ? 俺は公式の手合いで一緒に弾かないって言ったはずだけど?」

「そんなもん、お前の口からごめんって言わせて一緒に弾かせっ――モガ!?」

 

 三人組がイケメン男子の口を塞ぐと、眼鏡君が今度は口を開く。

 

「確かに言ってたね」

「だったら――」

 

 

「でも、君は僕たちと同じ時瀬高校の筝曲部の仲間だ」

 

 

 ……仲間?

 

「一緒に大会に出なくても、神崎君も一緒に練習して同じ時間を過ごす仲間だ。だったら、筝曲部の目標を、同じ部員である君にも書いてほしい」

「生意気でも、あんたは筝曲部の後輩なんだから早く書きなさいよ」

 

 眼鏡君だけじゃない、ギャル娘。他の人も全員、普通の目(・・・・)で俺を見て来る。

 

 

 脳裏に蘇るのは、嘲笑、軽蔑、憎悪。そういった負の視線を向けて来る大人や同年代の子供たち。

 

 

 何、こいつら?

 俺より長く生きてないとはいえ、なんで普通でいられる?

 

 普段の付き合い方で接している俺の態度は?

 一度とはいえ、『龍星群』を一緒に弾いたときのお前らの態度はどうした?

 

 

 

 

 

 ―――――お前にもいつか、一緒に弾きたいって思わせてくれる仲間が絶対に見つかるはずだ

 

 

 

 

 

 認めない、認めないよ。爺さん。

 こいつらだって、他の連中と同じに決まってる。

 

 

「…………それで、何を書けば言いわけ? 三文字足すとか言ってたけど、全国の後に何を足す――」

 

 

『目指せ全国一位』

 

 

 紙には、自分が書いた一文字の近くに名前も一緒に書いてあった。

 こんなの俺が書くまでもなく、終わりでいいじゃん。

 

 まぁ、眼鏡君の宣言から考えればそれっぽい文字があることにはあるけど。

 

「これ、俺が書く必要あります?」

「書けよ、お前が書かないと始まらない」

 

 イケメン男子がセロテープを用意しながら、背を向けた状態で言ってくる。

 始まらない、か。

 そこは終わらないの間違いじゃないか?

 

 これ以上グダグダして、練習時間が無くなるのも阿保らしいからさっさと書いた。

 

「っしゃ、できた!!」

「貼んの、ここら辺でいーか?」

「あ、もうちょい右!」

「おー、いー感じ!」

 

 もやもやしたのを感じながら、壁に出来上がった紙を貼っていくのを離れたところで見る。

 …………一瞬、本当に一瞬だけ壇上でここにいる部員と一緒に弾く姿を連想したが、ありえないと一笑に付した。

 

 

 

 

 

 

『目指せ 全国一位へ!!』

 

 

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