この音は、ただ君の為に。   作:月の城

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間もなく、今年も折り返し地点になるわけですが1日中寝ていたいです。

もしくは、家でこの音とまれ!のアニメを一気見したい。
はい、そんな時間は取れませんのでコツコツと小説を書いていきます。

初感想ありがとうございます!
凄く嬉しかったです。


6話

「ねぇねぇ、例の対決って今日なんでしょ?」

「あ、それ聞いたよ! 例の筝曲部VS教頭のやつ」

「ホントにやんのかそれ? 冗談じゃなく?」

 

 うるさい。

 

「久遠とかすげー暴れたりするんじゃねえの? ハタから見てる分には面白れーけど」

「てか、なんで筝曲部?」

「似合わねぇ」

 

 耳障りな音が周囲を満たしている。

 正直、ここまで煩いと朝礼なんか関係なく帰るんだが……、俺にはばっちゃんというカードを学校側に握られているのでこの前みたいなことは出来ない。

 それに、周りの雑音の中にあった筝曲部と教頭の対決。

 以前、ばっちゃんの家で聞いた全校朝会の演奏という単語から今日あの眼鏡君たちが演奏するのだろう。

 

 しかし―――――早くしてほしい。

 イヤホンも充電が切れたから教室で充電中、予備のコードイヤホンも忘れたから顔をしかめながら待っているのだ。

 

「えー、では続きまして筝曲部の発表に移りたいと思います。発表に関して教頭先生よりお話があります」

 

 やっとか、つかマジで周りが煩い。

 

「あ~、いつもならここで朝会を終える所なんだが、今日は特別に君たちに見て判断してほしいことがある。我が校にある筝曲部の存続を認めるかどうかだ」

 

 お、眼鏡君と長髪ボーイが出てきた。

 うん、少し楽しみにしていたから心を落ち着けないと。こんなささくれだった気持ちでせっかくの演奏を聴きたくない。

 

「約1ヶ月前、彼らは私とある約束をした。その約束が果たせなければ、筝曲部は今日限りで廃部となる! ――そして、その約束とは、今日この場にいる全員を納得させる演奏をするということだ」

 

 ザワッ。

 

「は? 何それ、意味分かんねー」

「つーか、何? コト? の演奏を聴けってこと?」

「ケンカすんじゃねぇのかよ、つまんねぇ」

 

 ……我慢、我慢だ。

 

「私からは以上だ。筝曲部の健闘を祈る」

 

 あちこちで喧騒が大きくなる。

 イライラが溜まっていくが、壇上にいる6人は随分と落ち着いている。

 うん、リラックスして演奏に臨む。当たり前だけど、それが出来る人は極めて少ない。

 誇っていいと思うよ、みんな。

 

「うわ、ほんとに弾くんだ」

「熱いね~」

「私たちまで巻き込むなよって感じだよね、正直どうでもいいし」

 

 だったら帰れよ!

 と、叫びたいが俺の勝手で眼鏡君たちに迷惑がかかる。

 クッソ。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 教員たちが立つ場所。

 その校長先生の隣にばあちゃんがいた。

 

「悪かったね、無理言って中入れてもらって。部外者だってのに」

 

「何言ってるんですか。シズさんには、ずっと我が校の筝曲部の面倒を見てもらって来てるんです。それに―――実は昨日工藤君が私の元に来ましてね。『当日、すげーいい演奏を聴かせるって約束したんでいいっすか? いいっすよね』だそうです。慕われてますねぇ」

 

「ふん、あんたも意地が悪いね。校長のあんたが一言、部を存続させると言ってやればこんな大袈裟なことにはならなかっただろうに」

 

「ふふっ、だって面白いじゃないですか? 頑張っているのになかなか周りに見つけてもらえない子。黙っていても悪目立ちしてしまう子。正反対の二人が並んだあの日から、私はなんだかずっとわくわくしているんです。この子たちが奏でる音は一体どんな音なんだろう? そして、理解を得られず孤独に弾き続ける彼もいつか……」

 

「そうかい、あんたも事情を知っているんだったね……」

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 イケメン男子が箏の前に座ると、体育館中から笑いが溢れる。

 

「ぶふっ、まじで!!」

「久遠、あいつもまじでコト弾く気か!?」

「嘘だろ、超うけるんだけど」

 

 ギリッ。

 

「ええと、全校生徒の皆さん。僕たち筝曲部は―――『いいからさっさとやれよ!』」

 

 眼鏡君の言葉を遮って、どこかの馬鹿が声を上げる。

 

「俺らの貴重な時間を使ってつまんねぇ演奏聴いてやんだからよー」

「そーだ、さっさとやれよ!」

「コトなんか弾くより教頭と喧嘩した方がはえーんじゃね?」

 

 あぁ、……限界だわ。

 ガタン!!!

 俺が声を上げようとした瞬間、イケメン男子が椅子から立ち上がり一睨みで場を鎮めた。

 

 ちっ、転生してから汚いモノばかり見てきて喧嘩っ早くなった自覚はあるけど、イケメン男子が我慢したんだったら俺も喧嘩沙汰はやめておこうか。

 ――暴力(・・)は、ね。

 

「いちいちうるせぇんだよてめぇら」

 

 静かになった体育館内で響く俺の声に、皆の視線が集まる。

 

「耳障りな声で喋らないと人の話聞けないってんなら、お前ら全員の喉潰すぞカス」

 

 右手の骨を鳴らしながらゆっくりと握りこぶしを作ると、俺の周囲に空間ができる。

 いいぞ、これで大分聴きやすくなった。

 教師が何か言いそうだったのは先に睨みを利かせておいたおかげで何も起きない。

 今時の教師なんて、進んで面倒ごとには関わろうとしないゴミばかりだから大丈夫だとして。

 

「話の腰を折ってすみません、どうぞ続けてください」

 

 眼鏡君に向かって一礼をして謝る。

 二度も彼の場を壊してしまったのだ、あとでまた謝りに行こう。

 

「――おかしければ笑ってくれて構いません、つまらなければ文句を言ってくれて構いません」

 

 眼鏡君が手に持っていた紙を握りつぶして、何か決意をしたような顔をしている。

 

「それでも、大事な仲間を、居場所を失いたくないので僕たちは最後まで真剣に弾き切ります」

 

 

 彼らがそれぞれの箏の前に座る。

 

 

 さぁ、見せてくれ。聴かせてくれ。君たちの音を!

 

 

 

 

 ザァアアアアアアア、ダララララ!!!

 ジャラララ。

 ダンッタララ、ダンタララ!!

 

「ちょ……え? 何これ……コトってこんな音――」

 

 

 

 ダラララララン。ピキキキキ。

 

 美人女子のソロパートに入るまでは今のところ目立ったところはない。

 初心者ばかりだと聞いていたから、もっと簡単な曲と思っていたらまさか『龍星群』とはね。

 インパクトが強い分、確かにこういった場に合っている。

 

 そのせいで、彼女だけレベルが違いすぎて浮いているのが一目瞭然だ。

 この17弦を使ったソロパート、俺の解釈では龍の鳴き声を表すものだ。それを彼女は龍が孤独で泣いているような音を出している

 

 意識的……ではないのだろう。彼女の表情を見ればわかる。

 あれは彼女の心境が無意識に箏の音に乗っているだけだ。

 

 ソロから合流して、――この感じだと次のソロは(いち)コトのイケメン男子君かな?

 

 ピンッ。

 ダッ。

 

 可愛い系男子の入りそびれた音から、おデブと長髪ボーイの音がずれ始める。

 元の曲から離れていくけど……これはちょっとないかな。

 

 ダァン!

 

 と思ったら、美人女子が小節の頭を強くしてリズムを取りやすくしている。

 うん、戻りはしたけど大分ぐちゃぐちゃだ。

 初めて箏を弾く人には誤魔化せるけど、分かったのは彼女だけが少なくても音を理解しているということだけ。

 

 とかなんとか、考えている内にイケメン男子君のソロパート付近まで来た。

 ここまで荒れた曲を、君はどう弾くんだい?

 

 

 

 ピィーン。

 

 

 

 ゾクゾクッ!!

 

 左手で口を隠すと、背中に立った鳥肌に身震いしてしまう。

 

 粗削りだが、芯がしっかりとしている。

 

 そして暖かく優しい音で、ここにはいない誰かに向かって弾いている。

 

 

『――俺の音が聴こえているか?』

 

 

 直接心に語り掛けて来る。

 シンプルにそう思わせる音を響かせるイケメン男子。

 右手で左胸に手を当てて服に皺をつける。

 

 予想だにしない余りの衝撃に、いつの間にかラストスパートに入っていた。

 最後の盛り上がり。

 考えるのをやめ壇上を再び見ると、六匹の龍が飛んでいる。

 

 

 

「すげーーーーー!!!!」

「何々。コトってこんなだったの!? すっごい迫力!!」

「鳥肌たったよ、やべぇーー!」

 

 

 

 演奏が終わって周りが騒ぎ始める中、俺はこっそりと体育館から出た。

 

「随分とガタガタな曲だったけど……悩んじゃうなぁ」

 

 

 

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