FAIRLY TAIL〜妖精軍師に愛されし者〜   作:しぐ

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ララバーイ編から。
本編を読了の上、頭を空っぽにしてお楽しみください。


エルザ帰還

 マグノリアからほど近い森の中、ここに妖精の尻尾(フェアリーテイル)支部は存在している。

 メイビスがいなくなった今、ただの家と化しているので、ギルド風ボロ家屋でしかない。建物自体は風化してしまわないように保護しているが、元がボロだし大工でもない2人の合作なので中々に不恰好だ。

 そんな所も思い出なので、しっかりと保存する。しかし、寝心地を求めてベッドだけは良いものに変えさせて貰った。

 

 

 

 所変わって妖精の尻尾ギルド内。

 今までは貼られることの無い依頼ボードを眺めるだけだったが、今は沢山の依頼から選べる立場にある。受けないけど。

 この紋章をつけて長い時間が経ったけれど、きちんと活動している時間としては新人だ。あまり働く気は無い。俺は、のんびりするのが好きなのだ。

 

「依頼は受けないんですか? 依頼を眺めては、私とお話しして帰る日々が続いてますけど」

 

「のんびりしてる方が好きなんだ。依頼がある、という事実が新鮮でつい眺めてしまってね。まだしばらく生活に困る予定はないから、暇人の与太話にでも付き合ってほしい」

 

「私でよければいくらでもお聞きしますよ」

 

 昼間っから酒は飲まない。依頼に誘われるかもしれないし、マカロフから何かあるかも……って。

 

「あれ、マカロフいないんだ」

 

「マスターなら、定例会で留守ですよ? あと、ラクナさんは新人なので、軽々しく呼び捨てにすると怪しまれます」

 

「あー……そりゃそうか。マカロフがマスター、くはは」

 

「?」

 

「いや、なんでもない。ところで、なんで敬語なの?」

 

「だって年上じゃないですか? それとも、年下に接する感じで話した方がいい?」

 

 前屈みになるのはやめた方がいいと思う。本当に、何故だかメイビスに怒られる気がするので良くないと思う。

 

「……任せる」

 

「はーい♪」

 

 ミラはニコニコとしている。俺と喋っている時も、マスターと喋っている時も、給仕をしている時も。まるで笑うことによって何かを隠そうとしている人のソレだ。従来の性格なのかも知れないが、メイビスみたく表情がコロコロ変わった方が人間味がある。

 

「あっ、エルザが帰ってきたわ」

 

「エルザ?」

 

 ザワつくギルド内、振り返ってみると、赤毛で巨大な装飾されたツノを引きずり、堂々とした足取りで1人の女騎士が入ってきた。

 

(関わらないでおこう)

 

 ああいうタイプの人間には関わらないに限る。何をされるかわからないし、今もギルド内の人達に注意して回ってるから隅の方で大人しく……

 

「エルザー! おかえりー♪ 疲れたでしょ? お水でもいかが?」

 

「そうだな、丁度喉が渇いていたところだ。ありがたくいただこう」

 

 このアマ、呼びやがった!

 移動しようと思った矢先にこの仕打ちだ。ここ数日あんなにうるさかったギルドが1人によって沈静化されている異常な状況で、それを起こした張本人をあろう事か俺の近くまで呼びやがった。

 今動けば確実に目立つ。どうにか目立たないように立ち回るしかない。

 

「む? 君は見ない顔だな、新入りか?」

 

「あ、ああ……ラクナだ。よろしく」

 

「私はエルザだ。よろしく頼む」

 

「聞いてよーエルザ。ラクナさん、ここ数日ずーっとこの席で飲んでばっかで」

 

「……なに?」

 

「依頼は受けないのかって聞いても、はぐらかされるばかりで……」

 

「ほう……」

 

「私、心配で……」

 

「……事実か?」

 

「まあ、違うと言えば嘘になるけど……」

 

 コイツ、エルザの顔がこっちを向いた瞬間舌を出しやがった……!

 確信犯じゃないか。俺は何も悪い事してないのに!

 

「そうか。……ふむ。丁度いい、ラクナと言ったか。貴様も来い」

 

「ちなみに拒否する事は?」

 

「させると思うか?」

 

「ですよねー」

 

 だってもう首根っこ掴まれて逃す気ないし。何ですかこの人我が強すぎませんかね。

 

「ナツ、グレイ。出発は明日だ。準備をしておけ。詳細は移動中に話す」

 

 ずるずると引き摺られ、ギルドを後にする。俺を売った張本人であるミラと俺に何かと『先輩』である事を強調してくるルーシィが楽しそうに話しをしているのが少しシャクに触った。

 

(というか明日まで俺どうすればいいんだ……?)

 

 

 

 

 

「えっと、ここは……?」

 

「私の家だ」

 

「は……?」

 

 引き摺られてきた先は家の中。初対面の男を家にあげるか普通?

 よし、こうしちゃいられない。

 

「明日はばっくれないから、今日は帰らせてもらうな。じゃ、そう言う事で──ぐえっ」

 

 いきなり首根っこを掴むとぐえってなるから危ないって教わらなかったのか!

 

「宿だと思えばいい。別に、そう悪いやつにも見えんし、ギルドの一員という事は家族だろう? 遠慮する事はないさ」

 

「……まあ、そこら辺で寝るよ」

 

「一緒に寝なくていいのか?」

 

「寝るかっ!」

 

「……ふふ、冗談だ」

 

「……めんどくせえ」

 

 椅子に座ったエルザは、テーブルを挟んで向かいの椅子を指さす。座れという事らしい。

 

「……何か?」

 

「せっかく同じギルドの一員になった事だし、親睦でも深めないかと思ってな。何かの巡り合わせでこうして家に招いたわけだしな」

 

 巡り合わせも何も物凄く強引な何かが働いた所為だと思うのだが、これを口にすると良くないという事はしっかり学んである。

 

「……ちなみにだが、明日はついて行くとはいえ戦力としては数えないでくれよ。俺の魔法は戦闘向きじゃない」

 

「どういう魔法か聞いてもいいか?」

 

「構わないよ。 ……そうだな、例えばこのスプーンを、こうバキッと折るだろ?」

 

 二つに折れたスプーンをくっ付ける。

 

修復(リペア)

 

 片手を離して、プラプラと揺すって完全にくっついている事を見せる。

 

「物を修復するだけの魔法だ。あまり期待はしないでくれ」

 

 期待されても見守れと言われているからあまり手助けは出来ないんだけど。厄介な事を言われたと我ながら思うが、メイビスの言う事はなるべく守っていきたい。今も天狼島で今のメンバーの話をずっと待っているのだろうから。

 

「見せてもらって、私の魔法を見せないのは失礼だな。換装!」

 

「……へえ、凄いな」

 

「多種多様の鎧を着替えて戦うのが私の戦闘スタイルだ」 

 

「そうか。強いんだな」

 

「何を。ラクナは私より強いだろう?」

 

「……はっ、何を」

 

 殺気。

 

「ほら、容易く止めるじゃないか」

 

 コイツ、本気で首狙って来やがった……!

 さて、どう言い訳しよう。

 

「あー、たまたまだな」

 

「そうは見えなかったが」

 

「俺は普段ロクに働かない妖精の尻尾(フェアリーテイル)の新入りだよ。それ以上でも以下でもない。そう身構えないでくれ。取って食いやしないさ」

 

 先に仕掛けて来たのはそっちなのに、何故か見事に警戒されているという事実。どうしてこうなったと言わざるを得ない。エルザが実力差をしっかり見極められるだけの目を持っていたという事に他ならないのだが。

 

「……とある人に妖精の尻尾の子供達の成長を見守ってほしいと言われた。たしかに俺は強いが、何でもかんでも守っては君たちが成長しない。だからあまり手を出さないようにしろと言われた。君たちの物語を楽しみにしている人がいる、それを妨害しない為に、俺は修復使いの妖精の尻尾所属、ラクナでいる」

 

「……そうだったのか」

 

「意図を汲んでくれると助かる。まあ、どうしようもならないピンチとかなら喜んで手助けするだろうけど、ギリギリまで手助けしたくないというのが本音だ。成長してほしいからな」

 

「わかった。そのように取り計らおう」

 

「それは良かった。最悪記憶をいじらないといけなくなるかと」

 

「そんなことも出来るのかっ?」

 

「……ん? これ失言か? ……とにかく俺が言いたい事はただ一つ。俺が強いという事は黙っててくれ、それだけだ」

 

「ちなみにだが、私と本気で戦ったら、私はラクナ相手にどのくらい保つ?」

 

「換装する前に首を刎ねておしまいだな」

 

「はは、そうか。私もまだまだだな」

 

「そうだな、まだまだ強くなってくれ。俺は強くなってくれると嬉しい」

 

 登ってこい、高みへ──なんて、言うつもりはないが、成長が俺とメイビスの何よりの願いだ。

 誰よりも強くあってほしい。妖精の尻尾の軍師様は、強いコマをお望みだ。     

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに、ちゃんと夜は床で寝た。




よし、明日投稿しようと思って書いていても気持ちが乗らず、気づけば2日3日過ぎているのはザラです。
描くの久しぶりなので、本編を読み返しながら、とはいえあまり本編に囚われないように書いていきたい所存。

メイビスヒロインの小説、増えないかなぁ……
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