アルカディア号になって艦これの世界にお邪魔してみた 作:Archangel
同時刻、件の横須賀埠頭先。
海中に没するかと思われた通信機を小さな手がキャッチする。
あきつ丸が引き摺られて行き、再び埠頭先が静けさを取り戻すと、ようやくそれは顔を出した。
「あきつ丸さん、必ず助けに行きますから…。待って下さいね。」
あきつ丸が連れ去られた方を見ながらそう呟いたのは横須賀第二鎮守府所属の陸軍特殊潜航艇『まるゆ』。
万ーを考え、グリシーヌ・ブルーメール少将が独自の判断であきつ丸と神洲丸の後ろを追わせていたのである。
あきつ丸の意思を継いだその彼女によって、今度こそ全鎮守府・泊地・基地・警備府へ向け、大本営の狼籍が一斉配信される事となった。
当然、それは柱島第七泊地にも届いたのである。
― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
「キャプテン!」
寝る前のルーチンとして小用を足していると、トイレのドアが勢いよく開き血相を変えた螢が飛び込んで来た。
「どうした螢?」
首だけを出来るだけ後ろへ向けて聞き返す。
「緊急事態です、北大路提督がいえ、他の提督さん達も!」
その前にちょっと待って。
いくら緊急事態といったってトイレの戸を平気で開けてくるってどうなのよ?
が、まさしく緊急事態という内容に思わず放水を停め、首を真後ろどころか体ごと正対してしまった。
「あ…。」
「…。」
思わず二人で固まってしまったが、ややあって螢が口を開いた。
「短小包って…、何気に詫び寂びよねぇ(笑)。」
待つんだ、螢。色々と間違えているぞ。
誤字報告しておくから後でちゃんと適用するんだ、いいね?
― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
「明石、いるか?!」
「どうしたんですか、そんなに慌てて? ひょっとして私に会いに来てくれたとか?」
蹴破るような勢いで工廠のドアを開けると直ぐに明石が出迎えてくれた。
「勿論それもあるが、今回は緊急事態だ。ライトセイバーの使用可能な本数は?」
「50本ちょっとありますね。現在もX-ウイングと併せて生産ラインが絶賛稼働中です!」
彼女が指し示す方には段ボール箱に入ったライトセイバーが。
艦娘用が30本ちょっとに提督用が20本以上か。
「上出来だ。ん、こいつは? 随分と変わった形だが…。」
何だろう、ライトセイバーの柄にしては妙な形をしてるのが1本ある。
「ああ、それは神崎提督専用です。薙刀になってるんすよ。しかもスイッチーつで両薙刀にもなる優れものです!」
奥から夕張が顔を出した。
ライトセイバーの技術を応用したビーム薙刀か。ゲルググみたいでカッコイイな。
俺もぜひ使ってみたいが、薙刀なんて扱えない上にそもそも霊力が無いんだった、凹む…。
それから二人には言っておかなくてはならない事がある。
「二人とも仕事熱心なのは悪い事ではないが睡眠不足はいい仕事の敵だ。それに美容にも良くない。」
熱心なのは大いに結構だが、工廠に寝泊まりするのはやり過ぎというものだ。
「二人とも緊急事態だ。落ち着いて聞いてくれ。」
先程受信した電文の内容を伝えると二人とも絶句してしまった。
だが、いつまでも呆然としていてもらっては困る。
花火は勿論、他の提督達を救い出すために無理をきいて貰う必要があるのだ。
「副長、今から大至急、こいつを造ってもらいたい。明石と夕張は仮眠をとった後、彼を手伝ってやってくれ。」
― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
「大変ですっ! 陸軍が、大本営がっ!」
本日の秘書官である長門の許へと向かうべく廊下を執務室へと急いでいると、後ろから駆けて来た大淀が凄い勢いで執務室に飛び込んでいった。
まるで二匹の子ヤギが置いてきぼりにされる程の勢いである。
「ほとんどの提督さん達と護衛艦娘達が、大本営によって拘束されました!」
「何?! 一体どういう事だ?!」
廊下の外にまで二人の声が聞こえてくる。
中に入ると大淀が、
1.首相から今後の国政と国防は陸軍が行うとの命令書が京極陸軍大臣に渡った事
2.海軍は武装解除し陸軍に投降する事
3.抵抗する場合、そこの提督の安全は保障しない
とする電文を受信した事を告げていた。
「当然、海軍としてはそんな要求は認められん。陸軍もそれは織り込み済みであるが故、人質として各地の提督を次々と拘束していったという事だろう。」
「こうしてはおれん! 今すぐにでも北大路提督の救出に向かうぞ!」
「待ちなさい、武蔵。まだ北大路提督がどこに捉えられているか分からないのよ。」
いきり立つ武蔵を諌める加賀。
「そんなもの大本営か横須賀一鎮に決まっているだろう! 今こそ海軍、いや艦娘の力を陸のヤツに見せてやる時だ!」
そう言って武蔵が壁を叩いた時、ドアが開いてビスマルクにオイゲン、そしてワシントンとアークロイヤルも入って来た。
「私とワシントンのレーダーがとんでもない通信を捉えたわ!」
やはり通信設備や電波探知機は海外艦の装備の方が優れているみたいだ。
「ええ、ここの通信設備でも受信しました。各地の提督が大本営に拘束されたというモノでしよう。問題はこれが本物かどうかです。」
「海軍暗号で打たれた電文なのよ、本物に決まってるじゃない?!」
ビスマルクとワシントンが大淀に食って掛かる。
もう、この頃になると日付が変わったにもかかわらず多くの艦娘が集まっていた。
戦艦組はビスマルク、空母組はアークロイヤル、重巡組はオイゲンによって話が広がったのだろう。
「とにかくこうしてはおれん! 帝都に向かうぞ!」
頭に息巻くビスマルク・ワシントン・サウスダコタ・霧島・瑞鶴・アークロイヤル・ホーネット・足柄・摩耶・天龍・不知火・磯風達。
「まて、武蔵。どうやって行くつもりだ? もう最終列車が出てしまってる以上、始発を待つ以外あるまい。」
それに鉄路を含め陸路は抑えられているとみた方がいいだろうとは長門の意見だ。
「そんな…、北大路提督は私達をあの地獄から救い出してくれた恩人なのよ!」
「それなのに私達には何も出来ないなんて…。」
拳を握り締めるビスマルクとホーネット。
それから2時間は進展も無く執務室で過ごしただけだった。
中には貨物列車を強制停車させ乗り込むべきとかいう意見もあったが、信号やポイントを側線側に切り替えられるとそれだけで詰んでしまう。
鉄路を使うのは相当難しいと見ていいだろう。
道路も幹線は軒並み抑えられているだろうし、長門の考えている通りと見て間違いあるまい。
この間にもひっきりなしに他所の泊地や基地などから先の通信について連絡が飛び交っている。
大方、他もここと同じようになっているのだろう。
「ねえ、アルカディア。」
不意にビスマルクが俺を呼んだ。
「その…、アルカディアは平気なの? 最愛の人が拘束されて人質状態になってるのよ?」
まあ、そう見えても不思議ではないか…。
「当然平気ではないさ。今すぐにでも大本営に乗り込みたいぐらいだ。事実、俺一人なら案外早く着けるだろう。」
じゃあ、どうしてという顔をする彼女には『待つのだ、時が来るのを…。』と返す。
更に1時間ほど経った時、執務室のドアがバーンと開きヤッタラン副長が飛び込んで来た。
「キャプテン、お待たせや! 完成したで!」
「流石は副長、バラすも造るも仕事が早い(笑)。」
自信作でっせ、とヤッタラン副長が胸を張る。
「よし、大本営に殴り込みを掛けたい奴はブンカーに集合しろ!」
※だが睡眠不足はいい仕事の敵だ。それに美容にも良くない
ジブリ好きな方はピンと来るかもですね。某ブタさんが女技師に送ったアドバイスです。
※二匹の子ヤギ
本来なら一緒に透き通った日差しの中を駆けなければいけません(笑)。
※待つのだ、時が来るのを…。
ある立派な方が焦る古代進と島大介に落ち着くように指示された時のお言葉。
※流石副長、バラすも造るも仕事が早い
元ネタは福屋工務店の関西ローカルCM。売るのも買うのも仕事が早い?!