アルカディア号になって艦これの世界にお邪魔してみた 作:Archangel
今回はこの物語の中での深海棲艦がどうやって誕生したかが波野静香から語られます。
デスシャドウ島ブリーフィングルーム
今、アタイ達はコの字型に並べられたテーブルに座っている。
中央には拘束された波野静香。そして艤装を展開したアルカディア殿が睨みを利かせているといった状態だ。
元帥も真宮寺長官もいつになく深刻な顔をして座っている。
いや海軍関係者だけではなく、先の米田一基陸軍中将までもが大神元帥の隣に座っているのだ。
隣にいる『すみれ』や『マリア』にコッソリと聞いてみたが、二人とも一体何事かは知らねえって事だった。
護衛艦娘さえ排除する位だ、軍機扱いに準ずるのは間違いねえ。
やがて長官がおもむろに口を開いた。
「皆さんは深海棲艦がどうやって誕生したかご存知ですか?」
皆顔を見合わせる。
1.どうやって誕生したのか?
2.目的は何なのか?
3.ドコから現れるのか?
この三つは奴等が現れてから今までずっと謎だった事だ。
「ここにいる波野静香はマゾーンだ。マゾーン名はパフィオ、マゾーンの地球総司令官だ。」
途端に今まで静かだった室内が俄かにざわつき始める。
異星人と聞いていただけにホイミスライムのような見た目を想像していたが、私達と何ら変わりはない(それはそれで可愛いが)。
聞けば艦娘や深海棲艦と同じく女性体しか存在しないというじゃねえか。
そして何より…、ため息が出るほど美しい。
女のアタイから見ても、だ。
『すみれ』や『ラチェット』に引けを取らないどころか、それ以上なのは間違いねえな。
「ちょっと待ってえな。ほな長官は深海棲艦がどうやって誕生したか知っとるんか?!」
「落ち着いて下さい、紅蘭大佐。私もつい先程ですけれど、ね。波野さん?」
長官が波野静香とやらに目を向けた。
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話を振られて観念したのだろう、波野静香とやらが口を開いた。
「貴女達は降魔、と呼ばれる闇の存在を知っているかしら?」
そういうと彼女は陸軍の中に降魔と呼ばれる魔の力を持って戦争を有利に運ぼうという考えがあった事から説明し始めた。
そして、その中心にいたのが山崎少佐や京極陸軍大臣だったって話だ。
降魔というか魔物など、先日までは一笑に付していただろうが、京極の力を見せつけられた今となっては信じざるを得ない。
彼等は数少ない男性である事を活かし、周りの女性士官や将官を取り込むと降魔を降ろせそうな対象を見つけようと躍起になった。
その中にマゾーンの地球侵略先遣部隊の兵がいたらしい。
通常なら使用する兵器が段違いなのでマゾーン兵が遅れを取る事は無いのだが、まれに人海戦術に屈する者がいた。
まあ、あれだ、ティーガー戦車がM4シャーマンやT34に飲み込まれていくようなもんだ。
だが、マゾーン兵でも降魔を降ろす器とは成り得なかった。
おかげで計画は頓挫するかに思われたが、ここで起こってはいけない奇跡が起こってしまったのだ。
陸上植物に同化していたマゾーン兵ではなく、海藻に同化していたマゾーン兵に降魔を降ろす事に成功したのだ。
何度やっても結果は同じで水生植物に同化、あるいは擬態していたマゾーン兵だと降魔を降ろす事に成功する。
ここで辞めておけばよかったのに欲をかいたのが仇となった。
更なる究極の生物兵器となるように放射線を当て続けたっていうじゃねえか。
だが見た目に変化が無くても、ヤツらはその裏で日に日に進化を遂げていやがったんた。
そしてそんな危険な存在を人類が制御できる訳が無い。
そして、事故は起こってしまったのだ。
ある日、研究員のミスに乗じて一体の研究生体が脱走、地下の研究施設を破壊し(研究員曰く、檻が飴細工のように曲げられたとの事)、仲間達と共に全検体が海へ川へと帰って行ったらしい。
脱走した検体の捕獲を試みたが所詮は陸軍、海の戦い方など分からない彼らに勝ち目など無かった。
それ以前に、そもそもの戦闘力が違い過ぎた。
捕獲部隊の全滅が二桁を超えた頃、今度は密かにマゾーンへと泣きつき協力を依頼したのだ。
彼女達の地球侵略を手助けする代わりに始まりの深海棲艦の捕獲、そして侵略後の自分達ポストの保障と引き換えに、だ。
マゾーン側も最初は突っぱねたかったらしいが、ある時マゾーンの大隊が全滅した。
調査の結果、この始まりの深海棲艦達とそれが作り出した鬼姫達の攻撃を受けた事が原因だと判明。
このままでは人類とは比べ物にならない障害になると判断した彼女は地球総司令官として、何とかしようとしたが、始まりの深海棲艦達はレーダーに引っ掛かりにくい上にマゾーンの地球先遣隊では鬼姫までしか攻撃が通じないのだという。
マゾーンにしてみればかつては自分達の一兵卒に過ぎない連中が牙を剥いてきたのだ。
当然、面白くはないだろうし、このまま放っておく訳にはいかねえ。
已む無く、京極や山崎と情報共有をしてたって訳だ。
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「それは本当ですの?」
『すみれ』の言う通りだ。
アレを作り出したのが人類?
冗談じゃねえ、そんな話があってたまるかよ…。
「信じるも信じないも貴女達の自由よ。でも、いずれ女王ラフレシア様の本隊が始まりの深海棲艦の殲滅をしてくれるはずだわ。」
「その始まりの深海棲艦とやらは…、何隻おるんや?」
「五隻ね。そして彼女達は単独で動く事はあまり無いわ。普段は海底ピラミッドの奥深くで、侵攻してくる時はお互いの長所を活かし短所を補うために五人一体となってやってくる…。」
「なんだい、そりゃ。アンタ達でもどうにもならないってんなら、一体こっちはどうすれば良いってんだ…。」
ロベリアの言う通りだよ、全く。
何でも放射線を当て続けたのが悪かったらしく、それに対する耐性が出来てしまったとも…。
「俺もそんな連中が三位一体どころか五位一体となっていたなんて聞いた事が無いがな。一体、いつの事なんだ?」
「米田さんが知らないのは無理もないわ。それはマゾーンに対してだったから。それに、連中は自分たちが耐性がある事を利用して大規模な放射線兵器を開発してる事も私達は掴んでいるわ。」
な、何だって?!
大規模な放射線兵器って…、何だそりゃ。
そんな物騒なモン使われたら人類どころか地球が終わっちまうぞ!
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「とにかくだ。そこにいる波野静香の言葉を信じるってんなら、あんな連中を作り出したのは我が陸軍って事だ。責任を持って研究施設の跡地や研究結果が残っていないか徹底的に調査を行うことを約束しよう。」
米田中将は何か分かり次第、いや見つかったものは全てデスシャドウ島の研究施設へと持ち込むと約束してくれた。
けど、アタイ達に出来る事って一体何なんだ?
武装や武器だけ未来技術を取り入れても使う艦娘達が今のままでは限度がある。
第一、陸軍の大半は海軍に対して協力的ではないし、他にもまだまだ問題点は山積みだ。
ただ100%鵜吞みには出来ねえが、幸いにも波野静香が言うには大規模侵攻などの動きは見られないという。
だが、それもいつ連中が攻勢に出るか分かったもんじゃない。
それに対する備えと対策、対応などをシッカリと協議しておく必要があるだろう。
私達はここで一旦、解散となったが元帥と長官、それにアルカディアの三人は夕食前までブリーフィングルームから出て来る事は無かった。
※この世界の深海棲艦の誕生秘話が波野静香から語られました。
彼女によると大規模な放射線兵器を使う可能性もあるとの事。
もし、地球が放射線で汚染されてしまったらどうすれば…。