アルカディア号になって艦これの世界にお邪魔してみた 作:Archangel
「どうしたというんだ、全く。」
ソファーに座りアンドロメダレッドバーボンをグラスに注ぐ。
執務室からの戦略的撤退となった訳だが、ただ逃げただけでは無い。
実は執務室を出る時に超小型の盗聴器を仕掛けてきたのだ。
ただ、そのサイズゆえ指向性と電波到達距離にやや難があり、加えて俺の自室は電波遮断性が高いため受信状況はすこぶる悪いと思われる。
『螢』を信用していない訳ではないのだが、伝え漏れがあったりしてはいけないので背に腹は代えられない。
手の中にある小さな機械のスイッチをオンにする。
「イっちゃう。アルカディア号さん…で…イッちゃう…」
アンドロメダレッドバーボンを盛大にグラスへ吹き戻してしまった。
顎から床へと垂れ落ちる液体をタオルで顔を拭うという事すら頭から飛ぶほどの衝撃的な発言。
「提督…アルカディア号さんと…したいと…仰って…
今度は赤城の声だ。
え、何? 花火さん、俺としたいと言ってたの?
で、
「私が…アルカディア号さん…して…。」
「…私…が…果てた…。」
執務室は蜂の巣をつついたような大騒ぎとなっている。
そりゃそうだろう、男の少ない世界でこんな赤裸々な事を聞かされて皆、冷静でいられる訳が無い。
今からアルカディア号さんと夜戦してくると息巻く川内を神通と那珂が必死で止めている。
いやそこは止めなくて良いんですよ?
「フフッ。」
『螢』の笑う声が?!
「…キャプテンは…イかないわ。それこそ…限りね。」
どうやら何かが無い限り達することは無いと言っているらしい。
多分、女の匂いがないとイけないと性癖の暴露をされているのではないだろうか。
どうしよう、明日からどんな顔して皆と顔を合わせればいいんだ?
俺、分かんねーよ…。
「本当…、ですか?」
しかもシッカリと確認されちゃって、まあ…。
どちらかというと髪の匂いや体臭はカンフル剤なだけで無いとイけない訳ではないんですが、それは。
「側室…心配…分かるわ。」
「…キャプテンにとって一番は…なのよ、信じて…」
何だろう、側室まで順が回ってくるかどうかを心配しているのだろうか?
大丈夫です、この不肖アルカディア号、一層の奮励努力を致します!
でも一番は…、って何だ?
何と言われてるんだ?
騒然となっているという事は髪の匂いとかではなく
まあ普通、そんなの信じないのも無理は無い。
だから『螢』は最後に信じてと付け加えたのだではないだろうか。
「まあ、…『すみれ』さん…『マリア』さん…拒まず…感じ…ないでしょう…」
げげっ?!
神崎中将閣下を相手にした事までシッカリと情報共有されているではありませんか!
まだ誰にも言っていないというのに『女の子だけが持ってるウルトラエクセレンス、第六感コンピューター』恐るべしである。
が、悪い事ばかりではない。
どうやらタチバナ中将閣下が(俺を)拒まずらしい(よっしゃ!)。
次のターゲットは決まりと思ったら、何と彼女が(俺では)『感じないでしょう』だと?
くっ、見ているがいい、必ずタチバナ中将を満足させてみせる!
「…貴女はここの司令官…私情を優先…良くありません。」
これは提督部門の正室だからといって俺を独り占めしたり、他の正室や側室に嫉妬するなという事に違いない。
まあ、こちらも当面は向こうから飛び込んでくる獲物だけにするつもりだしな。
そう思ってスイッチを切ろうとした時、赤城の声が飛び込んで来た。
「…一人で…よがり…狂った…はせず…。」
Oh…。
これ以上、衝撃的な内容が聞こえてこないよう俺は手の中の機械を握り潰したのであった。
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30分ほどしてからその赤城が訪ねてきた。
ドアを開けるなり鬼気迫る表情で、ここからいなくなってしまうのですか?!と勢い込む。
だが、これに関してはいつも言っている通りで、追い出されない限り出て行くことは無い。
彼女にもそう答えたところ、少し落ち着いたのだろう、尋ねてきた理由を話してくれた。
昼間の件で横須賀二鎮の南雲部隊の方が大事にされていると思ったらしく、自分達は捨てられてしまうのではないかと不安になったらしい。
「それは悪かった。だが一番は
それでもまだ不安だったのだろう、今度は他の私との差別化は無いのかですかと訊いてきた。
「欲張りだな(笑)。」
「一応、空母の正室ですから(笑)。」
「ならばこのアルカディア号がお前達だけの未来を変えてみせる。全員で運命の五分間を共に越えるぞ!」
我ながらイイ感じの台詞ではないか(サムズアップ!)。
「そんな事を言われたらもう我慢できません。イイですよね?」
どうやら赤城には想像以上に刺さったらしい。
まあ、拒む理由なんで何も無いしな、うん。
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翌朝…。
朝食の時間だというのに起きる気がしない。
理由は散々赤城に搾り取られたからで、最大の原因は
通常は戦車でも軍艦でも大口径・大火力の砲身は耐用年数があり、何発撃てば新品に交換となる。
だが、アルカディア号のコカンカノン?は重装甲を誇る船体と同じマテリアルで出来ており、耐用年数などあって無い様なもの。
砲身は最大仰角を保っているというのに、めでたくエネルギーの方が先に尽きてしまったという訳だ。
という訳で朝食を食べに行くより少しでも横になっていたい…。
何しろデスシャドウ島にあるエネルギー鉱石『グラビューム3006』を取りに行くのも憶劫なんだよ。
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「アルカディア号さん、どうかされたのですか?」
食堂に姿を見せなかった事を心配した花火が明石を伴って部屋に来た。
鳳翔さんも朝食をカートに載せて傍に控えており、不安そうにしている。
「着任、いえここに来られてがらずっと激務でしたから疲れがどっと来たのでしょう。精の付くものをご用意致しましたので召し上がって下さい。」
カートには鳳翔さん特選印の『ウナギの蒲焼』・『山芋の短冊』・『レパ刺し』・『カキフラィ』・『生卵』・『赤まむしドリンク』、さらにはアツアツの『スッポン鍋』が鎮座していた。
まさかとは思うが、花火が研ナオコさんのようにナマタマゴ~やアカマムシ~とかやったりしないだろうな?
「…。」
何だろう、随分と意味深なモノばかりだ。
ひょっとしたら赤城から何か聞いたのかもしれない。
頭の中でバツが悪そうな赤城がペコペコと鳳翔さんに頭を下げている様子を想像してしまった。
「直ぐに手配します、呉か佐世保で精密検査を受けて下さい。」
「少しガス欠になっただけだ。心配は要らん。」
「駄目です。もし貴方を失うような事があったら私は生きていけないのです!」
検査入院なんてヒマな上につまらない事この上ない。
仕方なく何故ガス欠になったか理由を説明する。
真っ赤になって固まる明石。
それに対して、あらあら、
おまけに、じゃあ次は加賀ちゃんの番ですね。なんてニコニコしている。
で、花火は…。
「あ゛?」
怖っ、三白眼?!
おまけに聞いた事がないほどの低い声!
鷹森淑乃さんってそんな低い声出さないから!
取り敢えず明石を無理矢理に再起動させ、デスシャドウ島の資材がらグラビューム3006を持って来てもらうよう依頼をする。
「…ない。」
「ん?」
「足りない!」
「私の方が全然足りない! 今のお話では私の倍以上の回数を赤城と(ギリッ)…。」
さっさとこれ全部食べやがれ下さいとスッポン鍋を無理矢理スプーンで流し込んでくる花火。
熱い熱い、って駄目だ、完全にハイライトが仕事を放棄してしまってますよ!
あらまあ、提督まで済ませておられたなんて、とこれまた嬉しそうにする鳳翔とは対照的。
さらには揚げたてのカキフライを口に突っ込まれ…。
この日、執務室の全艦娘の名前が記されたボードには俺の欄に『一航戦旗艦により腎虚』とで記入がなされていたという。
多くの海防艦キッズ達や駆逐艦達からは『腎虚』について質問が飛んだらしいが花火や大淀は何と答えたのだろう?
またこの日を境に大型艦達の目の色が変わっていった気がするのだが…。
※『女の子だけが持ってるウルトラエクセレンス、第六感コンピューター』
とあるアニメのOPですが、殿方にとってはEDの方がドキドキしたものです(笑)。
※私の方が全然足りない
二~三日掛けてシッカリと赤城を超える回数を務めさせた北大路提督。
(加賀:私の番はまだでしょうか…。)
※ここまでお付き合いありがとうございました。
長かった対陸軍編はこれで終了となります。
以降、しばらくは日常回となりますのでアルカディア号が戦闘に出向くことはありません。<(_ _)>