アルカディア号になって艦これの世界にお邪魔してみた 作:Archangel
第143話 新たな姫級編1(艦娘側:軍令部足柄1)
タウイタウイ第一泊地 ワインバーグ少将自室
「サジータ提督、遠征部隊より緊急入電です! スリガオ海峡にて姫級が確認されました!」
執務も終わり部屋でゆっくりしようという時、扉が勢いよく開かれると同時に秘書艦の長良が血相を変えて飛び込んで来た。
「何だって! 昼間に別の遠征部隊が通った時には何も異常はなかったはず、報告をしてきた遠征部隊の旗艦は?!」
新たな姫級の出現、まさに寝耳に水の事態にタウイタウイ第一泊地司令官であるサジータ・ワインバーク少将の表情が一気に険しくなる。
エクストラ・オペレーション、通常E・O海域と呼ばれる海域に定期的に陣取る個体は確認されているものの、それ以外に鬼姫級は大規模侵攻作戦以外に出現した事は無かったからだ。
「川内さんです。」
「川内か…。夜目に優れる彼女が誤認するとは考えにくいね。直ぐに軍令部に報告を、それから当該遠征艦隊の帰投を以って偵察部隊を編成するからね!」
何かの誤認である事を期待したが、無類の夜戦好きである川内からの入電であればまず間違いない。
「川内達には交戦を避けるよう指示を! それが難しければ航路を変更しても構わない、何としても無事に帰らせて!」
通信室へと急ぐ長良の背中を祈るような気持ちで見送る。
だが、この時の彼女には後の騒動など知る由も無かった。
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海軍軍令部参謀総長室
夜間当直室を出て足早に参謀総長室へと向かう。
結構遅い時間だけれど、そんな事も言っていられない。
当直の足柄である事を告げ、ドアをノックする。
「真宮寺参謀総長、タウイタウイ第一泊地より緊急入電! スリガオ海峡にて新たな姫級を確認せりとの事です!」
そう、真宮寺長官のお父様であらせられる真宮寺一馬さんはあの騒動以来、細川大将の穴を埋める形で参謀総長として勤められているの。
細川派の人間からは反対があったものの、肝心のトップが失脚してしまっては意見を押し通せるはずもなかったってわけ。
「分かった、大神君とさくらには?」
前代未聞の報告であるにもかかわらず、真宮寺参謀長はそれほど慌てた様子も無いわね。流石といったところかしら?
「真宮寺長官には羽黒が報告に向かっています。大神元帥についてはこれから私が…。」
「いや、構わん。大神君には私から連絡を入れておこう。遅い時間で申し訳ないが、君は羽黒君と共に第一作戦室へ向かってくれ。そこで続報を待つ。」
大神さんには私が、と思ったのだけれど参謀総長は自分がやると仰ったわ。
「了解致しました。」
ちょっと残念だけれど(何が?!)、仕方ないわ。
代わりに送られてきた写真を人数分プリントしておきましょうか。
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海軍軍令部第一作戦室
「お父…、いえ参謀総長、大規模侵攻でもないのに新たな姫級というのは本当なのですか?」
長官たら、参謀総長をお父様って…。
気を付けないとそれはマズいわよ(笑)?
「残念ながら本当だ。足柄くん、羽黒くん。」
参謀総長に促された後、羽黒と二人で全員に写真を配る。
「これは…。」
「二体?!」
大神さんと長官の目が大きく見開かれたわ。
「そうだ。だが、ワインバーグ少将によると、ただ二体という訳ではなくどうやら二体で一個体を形成しているようなのだ。」
さらに昼間には確認できず、夜に出現した事から夜間にのみ出現する可能性があるとも。
「夜戦しか出来ないという事ですか?!」
夜戦というのは火力や射程を含め昼戦におけるそれとは少し違う。
射程距離に関係なく、お互いに旗艦から順番にノーガードで殴り合っていくのが夜戦。
攻撃も良く通るけれど、こちらも相手の攻撃を受けやすく、喰らってしまえばほぼ一撃大破。
夜戦火力の高い艦を編成しても攻撃を行う前にこちらが無力化される可能性が十分にあるわ。
「決戦においては空母艦娘が役に立たないという事ですか…。」
空母艦娘は基本夜間攻撃が出来ない。
大多数の空母艦娘は道中に置いて活躍の場があるものの、肝心の新たな姫級との決戦に於いて攻撃手段が無い。
ごく一部に夜間攻撃可能な空母艦娘もいるものの、搭載機数の関係で今度は逆に昼戦での攻撃力に欠けたりするわ。
「そうだ。しかし、道中を考えると空母艦娘を編成しない訳にはいかぬ。かといって空母艦娘の投入は前述の理由から最小限に抑える必要がある。」
「そうすると空母艦娘は多くても二隻。これでは道中を突破してスリガオ海峡に辿り着くのも難しく…。」
腕組みをして大神さんが唸る。
「あるいは三隻にして、その中の一隻を夜間攻撃可能な空母艦娘にするか、ですよね…。」
「連合艦隊が使えればいいんだが…。」
「最低でも遊撃部隊は欲しいところです。」
確かに大神さんの言う通り連合艦隊が組めるとなるとかなり攻略の幅がグッと広がるわ。
遊撃部隊も連合艦隊に比べれば劣るけれど、通常六隻で編成される艦隊が七隻使えるという点では長官の仰る通り空母三隻の投入も一気に現実味を帯びてくるわ。
「現在もサジータ・ワインバーグ少将が偵察部隊を編成し、情報を収集中だ。何か進展というか朗報があれば良いのだが…。」
全員が押し黙ってしまった中、ドアがノックされてタウイタウイ第二の時雨がコーヒーを淹れて来てくれたわ。
現在、タウイタウイ第二の艦娘達の身分は軍令部預かりとなっていて、私達軍令部直属艦娘と演習を行う事で練度上げを行っているの。
あと、たまにアルカディア号さんが来た時は大型艦を中心に特別演習が組まれているわね。
さらに提督との本来の接し方などを学ぶための一環として将官達のお世話なども同時に行っているってわけ。
ところが、その時雨が新たな姫級の写真をみてまるで雷に打たれた様に固まってしまったの。
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「こ、これは?!」
「時雨さん、軍機扱いを覗き込むのは感心しませんよ?」
長官が時雨に注意をしたんだけれど、大神さんがそれを制したわ。
「いや、いい。時雨くん、何か思い当たる節があるのかい?」
大きく頷く時雨。
「これ、タウイタウイの近くで撮影されたんじゃないのかい? もっといえばスリガオ海峡じゃないのかい?」
時雨?!
「え、ええ。その通りです。でも一体何故分かったのですか?」
時雨の返答に驚く真宮寺長官。
いえ、長官だけじゃないわ。私も羽黒も、いえここにいる全員が驚いているわ。
「僕だけじゃない、最上だって山雲だって朝雲だって満潮だってわかるさ。」
「西村艦隊の面々だね。でも一体…。」
どうして?と言いかけた大神さんだけど、直ぐにピンと来たみたいね。
「まさか…。」
「…。」
長官も参謀総長も気が付いたみたい。
「そうだよ、これは扶桑と山城だ! それも僕たちの…、タウイタウイ第二の扶桑と山城に間違いないよ!」
※新たな姫級はどうやらいつぞやのイベントで提督諸氏が苦戦した『海峡夜棲姫』のようです。
カルチェラ提督の無謀な指揮によりスリガオ海峡でMIAとなった彼女達の成れの果てですが、元同僚の時雨は直ぐに見抜いたのでした。
※この後、ワインバーグ少将より払暁戦が可能という情報がもたらされます。
夜戦で日が昇るまで足止め、そして昼戦という逆の流れになるのですが、昼戦が後に来るため火力キャップが制限される状態でトドメを刺さなければならず苦戦は必至です!