アルカディア号になって艦これの世界にお邪魔してみた 作:Archangel
※2020年05月01日 誤字修正
気まずい…。
執務室で北大路花火提督と向き合っているのだが、後ろに並ぶ18名から半端ない視線を感じる。
おまけに誰も一言も発しない。
見つめられ過ぎて椅子の背もたれに穴が開くのではないかと思われた時、ようやく提督が口を開いた。
「アルカディアさん、今回は当泊地所属艦娘18名の命を救って頂いて本当にありがとうございました。改めてお礼を言わせて下さい。」
先ほどの手足の震えがウソのように背筋を伸ばし凛とした北大路花火嬢。
それに引き換えコチラは何でもない状態を装うのにも必死なのだ。
まさに凛(りん)と憐(れん)、一字違いだが大違いである。
ついでに言えばリンとレンでもない(歌う方ね)。
「はい、本日の秘書艦である私、高雄からも御礼を申し上げます。一度は愛宕や鳥海と共に妹の摩耶を失う覚悟をきめた程でした。」
うーん、読めない。
この言葉と表情だけでは彼女が何を考えてるかまでは分からない。
後ろにいる加賀さんは口をへの字にして何かを考えているようだ。
「気にしなくていい。逆にこちらこそ彼女達にこの世界の情報を貰えた事に感謝せねばならん。」
取り敢えず下手に出る。
いや貴方達に敵意はありませんし出来るだけ早く他の泊地(フレンドリーな)を探しに出て行きますから。
しかし何でこうなったんだ?
ああっ女神さまっ、私はどこで間違ったんでしょうか…。
男自体が珍しいんじゃなかったの?
存在がツチノコ並なんでしょーが!
キャプテンハーロック、イケメンだろ!
なのにハーレムにならないのはナンデ?!
「まず最初に…。武蔵さん、男性なら男性だとそういって欲しかったですね。」
北大路花火提督が武蔵にジト目を向ける。
ひょっとしてこの柱島第七泊地は男子禁制で判っていれば招き入れなかったという事だろうか?
そんなの悲し過ぎる…。
「ん? 私はちゃんと伝えたはずだが?」
北大路花火提督の指摘に不思議そうな顔をしつつ説明する武蔵さんだが『艦⤵娘⤵』と『艦⤵息⤴』では理解できないのも無理はない。
流石は自他共に認める脳筋である。
案の定、彼女は全員に突っ込まれていた。
「さて、アルカディアさん、いくつかの質問をお許し頂いでも宜しいでしょうか?」
来た、ついに来てしまったよ…。
一体何を聞かれるんだろう?
一部屋で多勢に無勢、こんなのまるで査問か尋問である。
「うむ、わかる範囲でなら何でも答えよう。」
そう答えたものの、気が気ではない。
「まず、今まではどうされていたのでしょうか?」
ド直球な質問である。
何と答えるべきなのか?
まさか馬鹿正直に『違う世界でブラック企業勤めしてました』なんて言えるはずがない。
「ふむ、それは私にもわからん。何しろ気が付いたら海上だったのだ。」
大体、艦娘が顕現(特にドロップ)するのなんてそんなもんだろ。
艦としての記憶を持ったまま気が付いたら海の上でしたって事じゃないのか?
だが、これでは北大路花火提督が納得するはずがない。
仕方ないので『マゾーン』とは何か、それは今から約960年後である事、船長の名前はキャプテンハーロックという宇宙海賊であった事などを一通り説明した。
当然、北大路提督の表情は信じられないというモノだ。
「では何故この子達を助けてくれたのでしょうか?」
このままでは埒が明かないと考えたのだろう、次の質問が来た。
そんな分かり切った事を聞く?
ピンチにさっそうと登場→夢精無双してスゲー→感謝される→ではこれぐらいエエよなぁ(ゲス顔)→あ、イケマセン…→良いではないか(ジュル)を実行するためである。
…。
……。
………。
これも言える訳が無い。
もしこんな事を馬鹿正直に答えてしまったらあっという間に各鎮守府や泊地はおろか海外泊地にまでも噂が広まってしまうだろう。
自らの手でハーレムを潰す事などあってはならない。
「俺のキャプテンは信と義に篤い男でな。女子供が危険な目に合っているのに、それを見過ごせるようなヤツでは無かった。乗船である俺自身も勝手に体が動いただけの話だ。海賊行為も決して民間船相手ではなく腐った地球政府の輸送船が相手だった。」
我ながら上手く答える事が出来たのではないだろうか?
キャプテンハーロックの性格を考えれば、これは事実である。
「他にアルカディアさんと同じような船はいないのでしょうか?」
クイーンエメラルダス号の事かーっ!
あ、これは
しかし、それはどうなんだろう?
考えた事も無かったが他に転生者がいれば可能性はあるかもしれない。
他に作品繋がりだと、ヤマトや999だよなぁ。
「うむ、さっきも言ったが俺も気が付いたらここにいただけなのだ。似たような船に心当たりはあるが、彼女達がこちらの世界に来ているかどうかまでは分からない。」
というかエメラルダス号が来ていればとっくに噂になっているだろう。
「救出に向かった6名は当柱島第七泊地のエース級達です。失礼ですが、その6名でも防戦一方だったのにアルカディアさんはどうやって戦局をひっくり返されたのでしょうか?」
なるほど、この質問の意図は分かる。
それだけに説明するより青葉の動画ファイルを見てもらった方が良いだろう。
「ふむ、見てもらった方が早いか。青葉、撮影した動画ファイルをここで再生してくれ。」
青葉が待ってましたとばかりに動画ファイルを再生し始めた。
最初は訝しげだった北大路提督だが、どうやら彼女の中で先の話が真実味を帯びてきたのだろう、顔色が変わり始めた。
高雄さんも妹の摩耶に動画の内容が事実なのかを確認してたし(笑)。
動画ファイルを見終わった後も北大路提督は信じたくないようだったが、弱々しく動画ファイルの消去を命じた。
青葉のがっかり具合に何か掛けてやれる言葉は無いか探す。
『鉄郎、いつかまた星の海の何処かで会おう』だったけ?
よし、これで行くか。
「青葉、いつかまたこの広い海の何処かで会おう。その時にはまた好きなだけ見せてやる。」
さすがはキャプテンハーロックだ。一発で青葉のヤツが立ち直ったぞ(チョロイな)。
が、この言葉は思わぬ副作用を生んでしまった。
「え? アルカディアさん、行ってしまわれるのですか?!」
大和が腕をガッチリと両手でホールドしてきたのである。
「キャプテンハーロックは『俺の旗の下、俺は自由に生きる』という男だったからな。乗組員42名にも他人のためではなく自分の信じるモノのために闘えと常に言っていたぐらいだ。それに海賊船を匿ったとなれば北大路提督どころかこの柱島第七泊地自体の存続が危うくなる。」
ええ、私はもっとフレンドリーな艦娘さん達のいる泊地を探す旅に出ますので、その手をお放し下さい。
「そんな、せっかく出会えたのに、大和は嫌です! 次回の期間限定海域には一緒に出撃しましょう、ねっ?」
大和さんのこの言葉に全員が頷いた。
恐ろしい。
彼女達はこう言っているのだ。
次の期間限定海域はお前が主になって攻略しろ。
所詮、私達は数合わせかルート固定要員である。
最終海域ボスマス手前では大和ホテルと武蔵屋旅館でドンチャン騒ぎやってるからお前一人が鉄砲玉となってこい、と…。
「提督! 提督からも何とか言って下さい!」
北大路提督も席を立つと呆れ顔でコチラに来た。
それにしても大和さんがこんな子供みたいな駄々をこねるなんて意外だわ。
「アルカディアさん、失礼ながら行く宛はおありなのですか? もし無いのでしたら私からもここでの生活と共闘をお願いします。」
待って待って!
花火さん、アンタ大和さんのワガママを諫めに来たんとちゃうんかい!
「海賊船である以上、軍属になるつもりはないぞ?」
ここに残るなら短期間とはいえ軍属になる必要があるだろうとおもったのだが…。
「ええ、それで結構です。海賊船とはいえ海賊行為を行うとは思えないですから(笑)。」
ナ、ナンダッテー!
これで退路は完全に防がれた…。
「あと、当泊地の設備は好きにお使い下さい。行動も自由にして頂いて結構です。海外艦の方もたくさんいらっしゃいますし、所属艦娘とは『いろんな意味で仲良く』してあげて下さい。もちろん私ともですよ(笑)。」
いろんな意味で…、ってどういう意味なんだよ、怖すぎるよ。
私でも手に負えない艦娘さん達は任せますねって事デスカ?
「という訳で鳳翔さん・伊良湖さん・大鯨さん、そこにいらっしゃるんでしょう? 今夜は歓迎会です、早速の準備を!」
北大路提督がそう言うと執務室の扉が開いて鳳翔さん・伊良湖さん・大鯨さんが入ってくる…。
何ですかこの既定路線感?
その後ろにも大勢の艦娘が集まっている。
次期イベント海域はそれほど苦労しなくて良いと分かったのだろう、執務室の中と外に大歓声が響き渡った。
これだけの人数を前にしては、そのような意味ではないと言えるはずがない。
ハメるつもりが嵌められたのだ。
北大路花火、恐ろしい子…。
※主人公も色々と惜しいですねぇ…。
でもね、やっぱりこれだけの戦闘力を持った上で、見目麗しい艦娘さん達に頼られ
たら大体の人は調子に乗っちゃうんじゃないかなぁと思うわけです(笑)。
少なくとも私はそうなので、主人公には共感できるかな…。
目指せ、等身大の主人公?!