アルカディア号になって艦これの世界にお邪魔してみた 作:Archangel
妙高:仕方ありません。北大路家が神崎家に後れを取る訳には参りませんから。
大船駅
横須賀第一鎮守府で行われた月例提督会議の帰路、荷物を網棚に押し込んでいると隣から花火のハミング聞こえてきた。
例の会議もつつがなく終わったのだろう、いつになく上機嫌。
大船駅で横須賀線から東海道線に乗り換える。
京急ではなく国鉄を利用すれば必ず通る駅のため、他にも大勢の提督と護衛艦娘達が降りてきた。
何人にも会釈し会釈されながら東海道線の下りホームへと向かう。
「アルカディア号さん、そちらではありません。こちらです。」
見れば花火と足柄は上りホームへ向かっている。
なるほど、一旦帝都(東京)駅へ出るのか。
「ほう、特急を使うとは珍しいな。」
花火は何かあった時、大淀からグチグチ言われるのを避けるためワザと特急を使わないのだが…。
「いえ、柱島に帰るのは明日です。今から私行くのは私の実家ですから(ウキウキ)。」
えと、あの…。
すみません、北大路花火嬢。
今、何と仰いましたのでしょうか?
「こちらに来た時は出来るだけ顔を出すようにとお父様から言われまして。」
「丁度アルカディア号さんもいらっしゃる事ですし、両親へ紹介させて頂こうと(ぽっ)…。」
そう言うと花火は両手を頬に当ててキャーな顔になった。
…。
なるほど、高雄が花火に耳打ちしたのはこれか。
(謀ったな、高雄! 謀ったな!)
いやガルマさんの真似をしてもどうしようもない。
一応、親子水入らずで過ごしてはどうかと進言するもあえなく却下されてしまった。
花火の父である北大路正道殿は非常に厳格な方である。
『一夜限りのサーカス』をチョイ見しただけでもそれは十分過ぎるほどに分かるのだが、そんな人とキャプテンハーロック、いや違ったその乗船であるアルカディア号のような無法者を引き合わせるなんてメントスをコーラの中に入れる様なもんだぞ。
足柄に止めなかったのかと聞いたところ、要らぬ手出しはするなと長姉の妙高に説得されかけた(主に物理で)らしく、また止める理由も無いしという事だった…。
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北大路邸前
タクシーが豪邸、いやお屋敷と呼ぶような建物の前で止まった。
こうなったら被害が大きくならないうちにトコトンやらかして二度と来るな、と言われるようにするのが一番だろう。
そう思うと幾分かドアも軽い…、気がする。
そのまま後ろに回りトランクから二人の荷物をそれぞれ両手に持つ。
どうだ、まずは勝手に娘の荷物を持ってやったぞ(笑)。
この間も北大路正道殿とその奥様とは一切目を合わしていない。
が、正道殿から向けられる視線は痛いほど感じられる。もはや睨まれているといったレベルですわ。
「花火、コチラの方は…。」
このような無法者を目にして不安にならない訳が無い、花火の御母堂様が探りを入れてきた。
「お父様、お母様、お久しぶりです。彼はアルカディア号さん。足柄と共に私の護衛という事で柱島から来て頂きました。彼は唯一の男性艦なんです。」
「まあ、それはそれは。北大路家にようこそ。」
それを聞いた御母堂様は笑顔になったが内心はどう思っているか分かったものでは無い。
何しろハーロックもアルカディア号もニュータイプでは無いのだ(近いかもしれないが)。
だがいきなり無礼に出る訳にもいかない。
少しづつ積み重ねていかなくては。
「提督の御父上と御母堂であらせられるか。提督殿から直々に護衛任務を頂いたアルカディア号だ。」
全力で任務を全うすることを誓おう、そう言って剣を抜いて前に掲げる。
だが、正道殿は黙ったまま。
そりゃそうだろう、車内で聞いたところによると花火が実家に帰るのは3ヶ月ぶりだというではないか。
愛娘との水入らずを邪魔された不満はかなりのものに違いない。
「ついて来なさい。」
正道殿はそれだけを告げると屋敷へとむかって歩き出した。
付いていっていいのかどうか迷っていると、御母堂様がさあ、どうぞと案内してくれた。
屋敷へと続く道は石畳となっており両脇にはツツジが庭との境界をなしている。
「ん?あれは…。」
門から玄関へ向かう途中、左側に立派な池があるのが目に入った。
中にはこれまた立派な錦鯉が気持ちよさそうに泳いでいる。
いや錦鯉だけではない、大きな真鯉も悠々とヒレを振っているのだ。
転生する前は専門に狙うほど鯉を釣るのが好きだった事もあり、つい池を覗こうと石畳を外れてしまった。
が、魚にばかり気を取られていたせいだろう、何かに躓いた?!
しまった、両手に荷物を持っているせいで手を着く事が出来ない!
思わず危ないと叫んでしまったものの、後の祭りだ。
てか何だよ、危ないって。
自分で躓いて自分で叫んでりや世話無いわ。
そのまま俺は全盛期のダイナマイトキッドを彷彿とさせるような見事なダイビングヘッドバッドをツツジの茂みに決めてしまった。
早速、やらかしカウント1である。
と、オデコにガツンと強い衝撃が走った。
イテテ、と思いながら目を開けると何とPT子鬼が気絶していたのである。
てかコイツら陸地で活動できるの?
取り敢えず、茂みから引っ張り出すと気絶したと思っていたPT子鬼は息絶えてしまっていた。
全長400mもあるアルカディア号に突っ込まれたと考えれば無理もないか。
「PT子鬼?! アルカディアさん、他には?!」
「今のところコイツだけだ。だが襲撃が失敗した以上、再度、刺客が来る可能性が高い。足柄、油断するな。」
二人の荷物についた泥を落としながら立ち上がる。
どうだ、大事な娘のカパンを汚してやったぞ(笑)。
「PT子鬼は通り過ぎだ後、後ろから狙うつもりだったのだろう。大した武器は持っていないが、それは艦娘に対してだ。相手が人間であれば十分な脅威となる。」
だが、PT子鬼という刺客が潜んでいた以上、何の警戒も無く過ごしてもらっては困る。
危機感を持ってもらわなければ命が幾つあっても足りないからな。
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北大路邸居間
花火の両親と花火、そして足柄の5人で居間の座卓を囲んでいる。
最初は部屋の隅に控えようとしたのだが、花火から座卓に着くよう言われてしまった。
それにしても気まずい。何しろ誰も一言も発しないのだ。
正道殿はムスッとしているので話しかけられない。
御母堂は表情からは何を考えいるのか分からない。
只でさえ堅苦しいのは苦手なのに…。
気まずさから逃げるためにかなりのお茶をお替りしてしまった。
庭にある鹿威しが何回目かの小気味よい音を立てた時、ようやく花火が帰宅の挨拶をした。
背筋を伸ばし三つ指を付くその姿はさすがに子爵令嬢として精錬されていて思わず見とれてしまった程である。
厳格とは云え、やはり正道殿も人の子なのであろう、娘である花火には近くにいて欲しいらしくブルーメール閣下の下での勤務を希望されておられるようだ。
だが、花火も一泊地を任されている身、配下の艦娘達を残していくわけには…、と言葉は柔らかいがハッキリとこれを拒否。
代わりに月例会議の帰りには必ず里帰りするという事で正道殿を納得させていた。
だが、このあたりからお茶を飲み過ぎたせいか猛烈にトイレに行きたくなってきたのである。
どんだけ利尿作用が強いお茶なんだよ、と思ったがよくよく考えれば、乗り継ぎの関係もあり途中、一度もトイレに行けていなかったのを思い出した。
やらかしてやろうとはいったが、粗相とくれば話は別である。
流石にこれは恥ずかしいな(by響)、が頭の中でリフレインし始めた。
「少し失礼する。」
そう言って席を立つ。
膀胱が臨界点を迎えそうなのだから仕方ない。
廊下へ出ると中庭に小さな建物があった。
ドアを開けると、汲み取り式ではあったがビンゴである。
存外、近くにあった事にホッとしながら放水を開始すると、中からイギャアアア!という叫び声と共にPT子鬼が飛び出してきた。
このままだと飛び付かれる?!
そう思った俺は反射的に重カサーベルを抜いてPT子鬼を突き刺してしまっていた。
え、可哀想?
だって幾ら自分のでもソレで濡れたら嫌じゃん?
さらにPT子鬼が叫んだせいで、居間にいた全員が出てきてしまっていた。
「一つお聞きしたい。アルカディア殿には近くにという事が分かっておられたのか?」
正道殿がこちらを真っ直ぐ見据えたまま近づいてくる。
「ああ、そう遠い場所なはずが無い。」
普通、トイレって居間から遠い場所に設置する訳が無いと思うんだが?
多くのご家庭でも近くにあるもんじゃないの?
そうは思いつつも正道殿の厳しい視線に耐え切れなかった俺は重カサーベルを洗うためにPT子鬼ごと近くにあった井戸へ足を向けた。
ともかくこれで刺客の気配は完全に消えた。
アルカディア号のレーダーにも反応は無い。
念のため、夜間は花火の自室前で待機しようと思っていたのだが、正道殿からは部屋の中でと要請されてしまった。
より娘の側にいて(守って)やってくれという事か。
ふっ、正道殿も意外と甘いようで(笑)。
※「一夜限りのサーカス』
OVAであるサクラ大戦『ル・ヌーヴォー・巴里』の第一話です。
※「妙高に説得されかけた」
その夜、銀行窓口係のように何十枚もの間宮券を数えている妙高と高雄が目撃されたとか…。
※「正道殿も以外と甘いようで」
元は紫のオバさんが兄である総帥に掛けた最後のお言葉、兄上も意外と甘いようでが元ネタ。
※この後、タウイタウイ第二泊地であった事件についてアルカディア号は正道殿に大変感謝されたそうな。
さらに横須賀での活躍や人質となった娘の救出劇などを聞かされたご両親から、義賊扱いされぜひ北大路家を継いで欲しいと話が広がったとか…。