アルカディア号になって艦これの世界にお邪魔してみた 作:Archangel
後悔はしていない、多分…。
2月2日、岩国駅
「では横須賀第二鎮守府へ行ってきます。留守中は宜しくお願いしますね。」
岩国駅で寝台列車に乗り込む花火が留守を預かる矢矧に声を掛けた。
「了解、この矢矧にお任せ下さい。」
矢矧は妙高にも匹敵するクソ真面日な艦娘である。
留守を任せるにこれほど適任な艦娘はいないだろう。
「伊勢さんも日向さんも大変だとは思いますが、特別な瑞雲は私達の戦い方を一変させてくれました、あちらの方々にもぜひその恩恵を。」
今回、ブルーメール閣下の要請で花火と四航戦の二人は特別な瑞雲(瑞雲ファンネル)の指南役として向かう事となったのだ。
剣を前に構え花火と四航戦の二人を見送る。
客車のテールランプが夜の闇へと吸い込まれていった後、ホームに人はほとんど残っていなかった。
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同時刻、柱島第七泊地食堂
所属するほとんどの艦娘達が集まった柱島第七泊地の大食堂。
異様な熱気と興奮に包まれた中、金剛4姉妹が前に立った。
「Hey、皆サーン! 今年の節分はこの金剛型四姉妹がディレクションさせて頂きマース!」
「今日から3日間、提督が不在になりマース! 何時も良い子の我々ですが今こそは破目を外し我々の野望を実現させる時ネ!」
「本命(アルカディア号)に行くも良し、ナイスミドル(魔地機関長)に行くも良し、デブ専(ヤッタラン副長)に行くもし、若さ(台羽君)に狙いを定めるのも良し、皆さん! 気合! 入れて! 行きましょう!」
「大豆は一人一升を鳳翔さんが用意して下さいました。なお、この戦いには当然鳳翔さんも眼鏡っ娘委員長の大淀さんも参戦されますが榛名は大丈夫です!」
「姉妹艦同士に限らず、艦種を超えて共闘して頂いても結構ですが、床に落ちた豆を再装填するのは禁止です。戦いの開始時刻は明朝マルロクマルマル。なお、朝食・昼食・夕食の間は一切の戦闘を中止すること。この協定を破ったものは即失格となります!」
「では各自の健闘を祈りマース!」
金剛、比叡、棒名、霧島と続き、そして最後に再び金剛が挨拶を締めくくった途端、割れんばかりの歓声が沸き起こった。
その誰もが鼻息荒くターゲットの名を口にする。
やがて各自、升に入った大豆を受け取り帰って行ったのだが、戦いはもう始まっているらしく、あちこちで作戦会議を行うグループが見受けられたらしい。
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2月3日、柱島第七泊地
起きた途端、俺は謎の寒気に襲われた。
風邪でも引いたのだろうか、そう思ってパブロンゴールドを飲もうとした時、ドアがノックされた。
「キャプテン、風邪薬をお持ちでしたら頂けないでしょうか? なんだか朝から寒気がして…。」
台羽の声だ。
「お前もか。実は俺もなんだ。」
そう言って薬を渡してやると、副長も機関長も寒気がするって言っていましたから、全員なにか流感にでもかかってしまったのかもしれませんと顔を曇らせた。
「だが、熱も無いし関節の痛みも無い。取り敢えず朝飯を食いに行くぞ。」
食堂へ歩いていると、ふと台羽が立ち止まった。
「キャプテン、これ…。」
「な、なんだこれは…。」
何と廊下には俺達4人の顧写真が貼ってあり『節分、お豆砲戦懸賞』の文字が?!
俺達が理解できずにいると、見い~つけたと後ろから声がした。
「は、早潮さん?!」
「早く食堂へ行ってご飯を食べた方が良いよ~。食事時以外は私達がアルカディアさん達を好きにできるんだから(笑)。」
「好きにできるって…、一体どういう事だい?」
「それは勿論、あんな事やこんな事よね~。もちろん、そこを砲撃して奪い取るのも自由。正面から堂々と撃ち合って相手を排除するのも自由。」
「要するにアルカディアさん達は『節分お豆砲戦』の賞品なんだよね(笑)。」
それを聞いた俺達は全力でそこを後にした。
そのままデスシャドウ島の自室へ逃げ込もうと思っていたのだが、庁舎の出入り口にはしっかりと鍵が掛かっている!
え? 自分だけなら逃げれるだろ、って?
そりゃそうだが、台羽と機関長と副長を残していくのはさすがの俺も気が引ける。
さらに、逃げる際に皆とバラバラになってしまったのも思い留まった一因だ。
魔地機関長と副長は望むところ、と息巻いていたが台羽が心配だ。
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柱島第七泊地重巡寮屋上
対人(妖精?)レーダーを作動させると台羽が重巡寮の屋上にいる事が分かった。
あいつ、重巡寮へ逃げたのか?
いや逃げたのならいいが、連れ去られたとすると既に美味しく頂かれてしまっているかもしれない。
急いで屋上へ出ると給水塔の後ろから声がする。
「んー、んんーっ!」
「もう、往生際が悪いですわよ? 大人しくこの熊野に頂かれて下さいな。」
なんと給水塔の裏では拘束された台羽が熊野に伸し掛かられていた。
傍には当然だが鈴谷の姿も見える。
「節分ねー、熊野、節分って何やるか知ってる? って、あぁー、何か咥えてるねぇ。あぁー。」
「はむっ、ふっふっ、ふっふん、いいこと鈴谷? この恵方巻は…、ん、ん…、一気呵成に食する事で、はむっ、一年の無術息災等を…、はむっ、ふっふっふっ、ぐっーん、んっ、痛っ!」
「きゃあっ!」
突然、熊野と鈴谷が悲鳴を上げた。
彼女達の前方には大豆の入った升を持った那智が!
「ふふ、こんな所にいたとはな。節分砲戦もこの那智に任せてもらおう!」
そういうと那智は両腕をピンと天に伸ばし体を捻る。
あ、あれ知ってるわ。
日本人メジャーリーガーのパイオニアとして海を渡った野茂英雄のトルネード投法だ。
この追撃を叩き込まれた鈴谷と熊野はあえなく沈(珍)黙。
「節分か。まあ、今日ばかりはポン酒(白酒:意味深)にしてみるか。足柄、羽黒、貴様らもどうだ?」
「台羽さん、節分ですね。あの…、羽黒がお相手を致しましょうか? えっ、それは…(顔真っ赤)。」
何が起こって、いやこれから何が行われるか見当が付いた俺は台羽の冥福を祈りつつ重巡寮を後にした。
まあ、若いし干からびたとしても数日すれば元に戻るからいっか(鬼畜)。
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柱島第七泊地空母寮
「鬼は外! 福は内!」
空母寮から威勢の良い声が聞こえてくる。
良かった、空母達は俺の知る節分をやってるみたいだ。
丁度いい、空母組には全艦種正室の翔鶴がいるし、空母正室と側室筆頭は一航戦だ。
ここに逃げ込めば誰も手出しは出来ない…、はず(そう思っていた時が俺にもありました)。
空母寮へと飛び込んだ途端、後ろで扉が閉まる音がした。
後から思えばこの時点でこいつらも危険だという事に気付くべきだったのだが…。
「節分かあ。良いわね、楽しそう! 南雲部隊の鬼役は…。え、加賀さん?!」
「節分ね、いいんじゃない? 鬼は…、加賀さんかぁ。誰よ、決めた人。提督? 赤城さん?」
ロビー入り口では鬼役を示す仮面を頭にチョンと載せた加賀を前に蒼龍と飛龍が豆を投げて良いのか迷っているところだった。
ところが遠慮する二航戦の二人を尻目に加賀に大量の豆を浴びせた勇者が!
「痛い。豆? そう、節分の…、って私に当てた子は誰? そう…。」
加賀の視線の先にはドヤ顔の瑞鶴。
「翔鶴姉、毎年節分だからって鬼役を買って出なくていいの! 鬼はちゃんとあそこにいるんだから!」
「面白いわね。ではこちらも遠慮なくいかせてもらうわ。」
加賀が両手腕を高々と突き上げる。
「ちょ、何で鬼役の加賀さんが豆を持ってんのよ?! おかしいじゃない!」
「鬼役だからってアルカディア号さん争奪戦に参加してはいけないという決まりは無いわ。」
「瑞鶴、貴女は手強い。一撃で仕留めさせてもらいます。」
あ、あれは?!
マサカリ、まさかのマサカリ投法ですよ!
轟音と共に空気を切り裂いた大豆が先程まで瑞鶴が立っていた場所を通過する。
「な、何て威力?! ちょっとは加減しなさいよ、この焼き鳥空母っ!」
割れ落ちた廊下の壁を見て驚愕する瑞鶴。
というかあれ本当に大豆か?
バチンコ玉と言われても別に不思談ではない威力だぞ、あれは。
怪我人が出る前に辞めた方が良いんじゃなかろうか?
「言ってはいけない事を…。分かりました、そこまでいうなら生意気な七面鳥を焼き鳥にしてあげます。」
再び加賀が両腕を突き上げる。
「くっ、望むところよ! 搭載機数だけが取り柄の大食い空母になんか負けてたまるもんですか!」
モビルスーツが動く時と同じ音を立てて瑞鶴もダイナミックに振りかぶる。
加賀のマサカリに対して瑞鶴はオーンドックスだが無茶苦茶ダイナミックな投球フォームだ。
あれは…、たしか…。
二階堂定春! 緑山高校の超剛腕、二階堂定春だ!
あんなのを喰らったら幾ら元戦艦といえども加賀が危ない!
止めようとしたのだが、時すでに遅く、
「うっ!」
「ぐはっ!」
二人ともこれ以上無い見事な相打ちとなりその場に崩れ落ちてしまった。
「加賀さんも瑞鶴も熱くなり過ぎじゃない?」
「ホントホント。しかしこうも狙い通りにあっさりと争奪戦から退場してくれるなんて(笑)。」
薄ら笑いを浮かべアーニャの目をした二航戦がこちらに振り向いた。
※果たしてこの男性四人の争奪戦の結果は如何に?!
北大路提督の帰還まであと3日…。
※恵方巻…。彼女達が追い求める恵方巻とは一体?!