アルカディア号になって艦これの世界にお邪魔してみた   作:Archangel

50 / 183
※とうとう50話になりました。
 もっと早く終わらせるつもりだったので自分でも本当に驚いています。
 お気に入りも300を超え本当にありがたい限りです。
 これからも少しづつ筆を進めていきたいと思いますので、宜しくお願い致します。

※諸兄氏はもうイベントクリアされましたでしょうか?
 私はようやく最終海域第一ゲージ突破です。
 早くホーネット迎えたい…。


第50話 食堂編1(艦娘側:一鎮伊勢)

 「まだ信じられないわ。全ての艦載機が噴進式な上に光線兵器を実用化しているなんて。」

 

 「うふふ、加賀さんはリアリストですから。」

 

 「いえ姉様、私も半信半疑です。」

 

 「妹まで…。不幸だわ。」

 

 「でもあの男性艦、アルカディアさんだっけ? イイ男だよねー。」

 ここ、横須賀第一鎮守府の艦娘用大食堂はお昼時という事もあって、柱島第七泊地提督である北大路大佐の随伴艦が一人で鬼姫級の連合艦隊を壊滅させた話で持ち切り状態。

 

 「伊勢には水を差すようで悪いが、我ら伊勢型のような地味艦など彼の目に留まるとは思えんぞ。」

 日向が呆れ顔で視線をこっちに向けてくる。

 

 「もう、日向ったら少しぐらい夢を見させてくれても良いじゃない。」

 そうは言ったものの、私も日向と同じ意見(笑)。

 だからまさかこの後、アルカディアさんとランチを共にできるなんて思ってもみなかったんだよね。

 ちょうどそこに出撃メンバーだった『武蔵・大和・大鳳・赤城・翔鶴・瑞鶴』の6名が入って来る。

 

 「おかえりなさい、大変だったわね。本当によく帰ってきてくれたわ。」

 出撃メンバーを労う陸奥さん。

 

 「で、どうだった?」

 北上ったら早速なの?(笑)

 

 「ええ、大変でした。もうここへ帰れる事は無いと…。」

 

 「もう、赤城さんてば。そうじゃなくて、ほら例の男性艦だよ~。」

 

 「ああ、アルカディアさん? いやぁ凄かったよ。もう、全てが桁外れだもん。」

 あー、瑞鶴ったら北上が聞きたいのはそういう事じゃなくて…。

 

 「そんなの中継されてたから知ってるよ。だからイイ男だったかって事だよ(ニヤニヤ)。」

 

 「ええ、背も高いしイケメンで最高ですね。まだ大和の腕にはアルカディア号さんの腕を抱きしめた感覚が残っています。」

 そうそう、そういう話を聞きたいんだって(期待)。

 

 「私、横須賀関係者以外の男の人を初めて見ました。その上、ハーネスを渡して頂く時に手が触れてしまって…。まだ胸がドキドキしています。」

 

 「大鳳さん、アルカディア号さんと手が触れたのですか?!」

 妙高も普段の淑女ぶりはどこへやら、か(笑)。

 でも、よくよく考えたら彼女がパーフェクトレディの仮面を脱ぎ捨てるぐらい大変な事なんだよね。

 ここの艦娘でも横須賀第一鎮守府や海軍軍令部以外の男性を一度も見た事が無いって娘も結構いるはずだし。

 

 「お声も渋いですよね。女として今夜は色々ともう…。」

 あの榛名と並ぶ清楚系艦娘代表の翔鶴だってとんでもない事を口走ってるし。

 

 「それからあの男の人特有の匂い! もう堪らないよね!」

 

 「ちょ、瑞鶴、今なんて言ったの?!」

 私達のほとんどは男の人を見かける事はあっても触れ合うことはまず無い。

 たまに運の高い艦娘が男の人ってなんだかいい匂いがしますなんて言ってみんなに小突き回されていたりする(笑)。

 

 「元帥さんとはまた違った匂いなんだけど、それでも何ていうかまさに男の人っていう匂いだったなぁ。」

 

 「ああ、あれは香水では無く純粋な男の体臭だ。この武蔵、思わずクラクラしてしまったぞ。」

 

 「ええ、確かにあれは危険ですね。私も違う意味で轟沈寸前でした(笑)。」

 ええ、何よそれ。めちゃくちゃ羨ましいんだけど。

 

 「仰られることもカッコ良かったです! 榛名もいろいろ言われてみたいです!」

 

 「私が痺れたのは体を差し出そうとした北大路提督を止めた時かな。あんなに可愛らしくて若い女性だよ? 普通はパクっといっちゃうって!」

 まるで映画のワンシーンのようだった場面を思い出す。

 今夜は北大路提督を私に変えて脳内ヘビロテ、これで決まり(笑)。

 

 「あの…、それはどういう意味でどういう状況だったのですか?」

 

 「北大路提督は神崎先輩とグリシーヌ、それから二人の艦娘18名を助けてあげて下さいと涙ながらにアルカディアさんに依頼されたのですが…。」

 

 「ただ、対価としてお渡しできるものが無いと、その…、体で払おうとしたんだ。」

 高雄と日向が大和に説明する。

 

 「でも、アルカディア号さんは嫁入り前の娘が何をしている、感心出来る事ではないと仰って…。」

 胸の前で手を合わせうっとりした表情の妙高。

 へぇー、妙高のヘビロテシーンはそこなんだ(笑)。

 

 「ええ、花火が本当に好きな人が出来た時にまでとっておけって受け取らなかったんです。その気持ちだけ受け取っておくと。榛名、感激しました!」

 うんうん、そこも良い場面だったよね。

 アルカディアさん出撃前の超感動シーン、クライマックス!

 

 「馬鹿な、配下の艦娘ではない我々になぜそこまでして下さるのだ?!」

 

 「盟友のブルーメール少将の艦娘達ならまだ分かるけれど…。」

 妙高と榛名の説明を聞いた出撃メンバーは一様に戸惑っていたけど、赤城の提案で食事後、改めてお礼に行こうとなったみたい。

 

 「でも午後からまた会議では?」

 

 「大鳳さんの言う通りですね。夕方になるけれど仕方が無いわ、瑞鶴?」

 

 「うん、後で二鎮の私にも知らせておくね。」

 

 「うむ、それが良いだろう。二鎮のメンバーは北大路大佐に張り飛ばされていたからな。この事実を知っておくべき…。」

 日向?

 どうしたの、目が点になってるじゃない。

 え?

 何、後ろ?

 

 「え、嘘。そんな…。」

 

 「やだ、こんな…。榛名は大丈夫じゃ、ないです…。」

 高雄と榛名までおかしくなった原因を見ようと後ろを振り返った私の目に飛び込んで来たのは…。

 

 黒い上着に黒いマント。

 胸にある大きな髑髏。

 両腰には西洋剣とガンホルダー。

 ライトグレーのパンツに黒のブーツ。

 中継で見ていた通りの出で立ちで食堂の入り口に立つアルカディアさんの姿が!

 

 ど、どうなってるの?

 なんでアルカディアさんがここに?!

 横須賀第一鎮守府の艦娘用大食堂が一瞬にして静まり返る。

 先程まであれだけ騒いでいたとは思えないほどの静けさの中、彼がゆっくりと歩みを進める音だけが響く。

 やがてカウンターの前で止まると、奥にいる鳳翔さんに声を掛けた。

 

 「女将、いや鳳翔殿。ここは現金精算か?」

 

 「いえ、艦娘であれば無料です。それに神崎提督からアルカディア号さんが来られるのはお聞きしておりますので。」

 鳳翔さんが慌てて前に出て来た。

 

 「あと鳳翔殿なんてそんな、鳳翔とお呼びくだしゃい。」

 よほどテンパっていたのか最後、カワイイ噛み方をしてしまった鳳翔さん。

 真っ赤になって目から下をトレイで隠しちゃったよ(笑)。

 

 「そうか。しかし皆が敬意を持っている中、俺だけ貴女を鳳翔などと呼び捨てにする事など出来ん。悪いが我慢してくれ。」

 

 「わ、分かりました。では何にされますか?」

 

 「カツ丼、いやネギトロ丼を頼む。」

 てっきり洋食にされると思っていただけに鳳翔さんも驚いているみたい。

 

 「お待たせ致しました。どうぞ。」

 量からすると長門盛と加賀盛の中間ぐらい。

 ここで割り箸を取ろうと伸ばした鳳翔さんの手が、同じく割り箸を取ろうとしたアルカディアさんの手を上から握ってしまった。

 あーあ、食堂の空気が変わっちゃったよ。

 

 「ひゃうっ! もももも、申し訳ありません!」

 私ったら殿方に何て事を、と先程以上に真っ赤になって右往左往する鳳翔さん。

 あの人がこんなに取り乱すのを見たのは初めてだよ。

 

 「悪かったな。気になるなら消毒液や石鹸で手を洗ってくれ。」

 鳳翔さんが違うんです、そんなつもりではと完全涙目になっちゃったよ。

 でさ、当のアルカディアさんは気にも留めずにトレイを持ったまま振り返ったのよね。

 

 「あ、あの! どうぞこちらに!」

 ここで、すかさず妙高がアルカディアさんを呼んだ。

 榛名と高雄が慌てているけど妙高、よくやったよ!

 ただし、先程以上に空気が変わってしまったけど。

 

 「すまないな、助かる。」

 何と、そう言ってアルカディアさんが本当に私達のテーブルにやって来てくれたの!

 

 「高雄に妙高、それに伊勢型と榛名か。艦娘を代表するパーフェクトレディ2人に世界初の航空戦艦、浮砲台となりながらも日本海軍の戦艦として最後の主砲を撃ったフロイラインに同席できるとは光栄だ。」

 アルカディアさんが私達を褒めてくれてるよ!

 しかも、ちゃんと私達一人一人の事も知ってくれていて泣いちゃいそう。

 でもこれでまたまた空気が変わっちゃったみたい。

 全員の刺すような視線が痛いけど負けないからね!

 

 「いえ、光栄なのは私達の方です。先程のアルカディア号さんの戦いぶりを見せて頂きましたがあれほどとは…。」

 

 「ああ、艦載機も私達とは違い噴進式なのに驚いたよ。おまけに君の武装はあの空中魚雷と対空兵装を除いて全て光線兵器なのだな。」

 

 「ああ、あれはレーザーという。俺は伊勢型は勿論、航空戦艦や航空巡洋艦には武装をレーザーに改装した瑞雲のファンネル化が出来ないかと考えている。」

 アルカディアさんによるとあの光線兵器はレーザーというみたい。

 しかも私達の瑞雲に搭載? 素敵じゃない!

 でも『ふぁんねる』って何かしら?

 

 「さ、では食べるとしよう。」

 アルカディアさんが箸を割る。

 

 「どうしてカツ丼を止めたのですか?」

 ああっ、高雄が何気ない質問をする振りをしてアルカディアさんをスンスンしてる!

 

 「柱島第七泊地の歓迎会で足柄に振舞ってもらう約束をしたのでな。それまではカツ断ちという訳だ。」

 

 「向こうのあの娘(足柄)ったら、そんな約束を…。ここの足柄を呼びましょうか?」

 ちょっと、妙高までフンフンしてるじゃない?!

 

 「足柄さんほどではありませんが、榛名も作れます!」

 くっ、榛名までアルカディアさんをクンクンしてる!

 こうなったら私も!

 

 「私はそんなに…。アハハ…。」

 そう言いながらアルカディアさんの匂いを目一杯吸い込む。

 

 え、ちょっと何なのよ、これえ?!

 もう催淫薬レベルなんですけどぉ!!

 何とか正気を失わずに済んだものの、次の攻撃で私は沈められちゃった…。

 

 テーブル上のお醤油差しを掴んだ私の手ごとアルカディアさんが握りしめてきて?!

 そのまま、彼は私の手ごと自分のネギトロ丼に付いてきた山葵の御皿にお醤油を注ぎ始めた。

 ゴツゴツした男性特有のがっしりとした手の感触が私の、私の手に伝わって?!

 

 「お先。」

 何がお先よぉ、こんなの絶対確信犯じゃん。

 真っ赤になって睨み付けるとアルカディアさんが山葵をお醤油で溶きながらニヤニヤしてる。

 でもちょっと待って?

 もしかしたらお前は俺のものだって事じゃない、これってば?

 そうか、そうよね!

 それが分かった今、もはや周りの絶対零度の視線も気にならない。

 むしろ見て、もっと見てよ!

 

 宇宙海賊船アルカディア号、戦艦の火力と正規空母並みの航空機運用力…、ね、(彼って)素敵でしょ?

 




※いや改めて文字にするとアルカディア号と北大路提督のシーンは良いシーンですねぇ。
 典型的なお互い知らない方が幸せという例ですね…。

※ここ横須賀第一鎮守府の伊勢が選ばれたんだから柱島第七泊地に付いて行くなんて言い
出さない事を祈っています。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。