アルカディア号になって艦これの世界にお邪魔してみた 作:Archangel
※そのかわり、今回は数名の方からリクエストのあったグリシーヌが登場です。
今までは知識として艦娘は轟沈するものだと認識していた彼女ですが、自分の艦娘が本当に轟沈寸前にまで追いやられた事で、他人事ではないとなったみたいです。
※諸兄氏はイベントの戦果はいかがでしたでしょうか?
筆者は第4号海防艦と駆逐艦有明が未入手に終わってしまいました(泣)。
「近海哨戒部隊、能代・睦月・如月・弥生・卯月・皐月以上6名、参りました!」
「ご苦労、近海とはいえ、はぐれ艦がウロ付いている可能性もある。気を抜かずに任務に当たれ。それから明らかな戦力差のある敵艦隊に遭遇した場合は直ぐに連絡を入れ…、ぐっ!」
心音が聞こえるのではないかと思う程の動悸、さらに立っていられない程のめまいに襲われた私はその場にしゃがみこんでしまった。
「テートク?!」
二鎮から護衛艦娘として連れてきたコマンダンテストの声も、実際はすぐ側にいるのにずいぶん遠くから聞こえる。
さらに呼吸も思ったようにできず視界がブラックアウトしてしまった私はそのまま意識を手放してしまった。
「気ガ付ツカレマシタカ?」
意識を取り戻した私をコマンダンテストが心配そうに覗き込んでいる。
あれから彼女は私の代わりに近海哨戒部隊に出撃を命じ、私を医務室まで運んでくれたとの事だった。
「一体、ドウサレタノデスカ?」
「出撃を命じようとしたら急に動悸が激しくなってめまいと呼吸困難に…。恐らく午前中の迎撃部隊が全滅するかもしれない状況になった恐怖からだと思う。」
アルカディア殿がいなければ間違いなく『金剛・榛名・赤城・瑞鶴・飛龍・大鳳』を一度に失っていただろう。
そう考えると震えが止まらない。
「迷惑を掛けてすまなかった。私は少し頭を冷やしてくる。貴艦は先に護衛艦娘控室に戻ってくれ。」
医務室を後にする。
宿泊棟の階段を上り切り、屋上への扉を開くと冬の冷たい海風が私を迎えてくれた。
そのまま居並ぶ給水塔への裏へと身を滑り込ませる。
「もう嫌だ。皆、良い娘ばかりなのに…。何故、神はこのような惨い仕打ちを…。」
「出撃が死を意味する場合でも私は命じなくてはならないのか!」
知らぬ間に涙が頬を伝っていた。
「皆、争いを好まぬ心優しい娘たちばかりだというのに。」
「何故、艦娘というだけであの娘達を戦場に送り出さないといけないのだ!」
私の叫びは風にかき消されてしまい、誰も答えてはくれない。
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「グリシーヌ。」
突然、後ろから花火の声がした。
「は、花火?! どうしてここが…。」
コマンダンテストに聞いたのか?
だが彼女には頭を冷やしてくるとしか伝えていない。
「アルカディアさんが呼びに来てくれたの。」
花火が目を向けた先には壁に背中を付け腕組みをしたまま前を見つめるアルカディア殿が!
「ア、アルカディア殿?! そんな…。いや、貴公も私を気遣ってくれての事であろうな。だが、すまない。忘れてくれ。」
何故、屋上に来るのか?
何故、わざわざ隠れているのに見つけるのか?
何故、みっともなく泣いている時なのか?
アルカディア殿に理不尽な怒りを抱いてしまう自分がますます嫌になる。
「それは構わんが、花火にも話せないような事なのか? そう思ってきてもらったのだが。」
いや、彼は私を心配してくれただけではないか。
だからこそ自ら声を掛ける事はせず花火を呼んでくれたのであろう。
アルカディア殿のような方が面白半分に他人を連れてくるはずが無い。
「グリシーヌ、貴女が泣くなんて…。アルカディアさんには外してもらうから…。」
「いや、アルカディア殿は横須賀の恩人だ。その方に外せなどとは…。」
アルカディア殿であればこのような私に何と答えるだろうか?
聞いてみたいと思った私は彼にとどまってもらう事を選択した。
「私はもう…、指揮官でいることが出来ない。」
「配下の艦娘達が沈んでしまったらと思うと哨戒部隊にさえ出撃を命じることが出来なかったのだ。」
二人に先程の一件を話す。
「それなのに、さらにマゾーンなどという得体のしれない連中まで現れて…。」
「ふむ…、少将閣下ほどのお方が。いや、貴女ほどであるが故か…。」
「なに?」
「少将閣下が真に艦娘達の事を想い考え、彼女達と良好な関係を築けている証拠であろう。」
違う、そんな良いものではない。
「今日の事で思い知ったのだ。それにアレほど取り乱すようでは私に指揮官の資格など無いのだと。まして部下を戦場に送り出したくないなどという指揮官がどこにいる?」
手に力を込めるとフェンスがギィと鳴いた。
「だからこそ皆、貴女に付いて行くのだと思うが?」
アルカディア殿も笑わせてくれる。
「いい、下手な慰めなど止してくれ。」
私は幼い頃から望むものすべてを与えられてきた。
だが、与えられたモノには価値など無い。
今の階級もそうだ。
この国と海軍軍令部が祖国フランスとブルーメール家に忖度したに過ぎない。
そんな娘に誰が好き好んで付いてくるというのか。
「まず撤退命令は絶対だという事を徹底させる必要がある。守れない時は後を追うと脅してでもな。」
「だが、やはりあの子達が沈んでしまったら私は正気でいられん。それにもう決めたのだ。」
「グリシーヌ、あなた…。」
花火の視線に堪え切れず目を逸らす。
「あれだけ貴女を慕ってくれている大勢の艦娘達を残してここを去るなんて無責任が過ぎるわ。」
花火、お前まで私を買いかぶり過ぎだ。
「どうしてもという状況になったら柱島第七泊地に緊急連絡を頂戴。またアルカディアさんが駆けつけてくれます、ね?」
花火がそっと私の肩に手を置いた。
「だが、それでは…。」
結局、自分で何もできない事に変わりがない上に私だけアルカディア殿に甘える事になってしまうではないか。
「気にする事は無い。俺も男として少将閣下のような美しい人に正気を無くしてもらっては困るのでな(笑)。」
「ふっ、私にそんな事を言って良いのか? 花火の怒りを買っても知らんぞ。」
そういえば一鎮のブンカーでも同じような事を言ってくれていたな。
「大丈夫だ、花火はそんな事で機嫌を損ねたりしない。」
ほう、貴公は花火の事をまだ良く分かっていないとみえる。
ああ見えて意外と嫉妬深いところもあるのだぞ。
「花火、少し少将閣下を借りるぞ。」
アルカディア殿に突然マントを掛けられそのまま抱き上げられる。
「ちょっと、アルカディアさん! グリシーヌをどうするつもりですか?!」
花火と花火を捜しに来たであろう翔鶴が慌てて止めようとする。
「しばしの遊覧飛行だ。少し待っていてくれ。」
アルカディア殿が艤装を展開し、ゆっくりと離陸する。
「貴公も…、大胆だな。私にこんなことをするなんて…。///」
「ここを去る前に少将閣下には是非とも見てもらいたいモノがある。」
アルカディア殿が私の耳にインナーヘッドホンを填める。
初めて聞く旋律だが非常にキレイな曲。
そのまま、私は彼に抱えられ海上へと連れ出された。
かなりの高度だがアルカディア殿に抱えられているという安心感から恐怖は不思議と無い。
「少将閣下、あれを見てみるがいい。」
水平線の向こうへ今まさに太陽が沈むのが見える。
「トワイライトか。キレイなものだ…。」
朱色と紺色が美しく溶け合うこの瞬間。
日が落ちるのが早いこの時期は貴重な眺め。
もっと見ていたかったが直ぐに朱色は消えてしまった。
アルカディア殿が内陸側を向く。
「街の明かりがあんなに…。」
「そうだ、横須賀一鎮と二鎮、ひいては神崎閣下とブルーメール閣下が守り抜いた場所だ。」
「何を言う、守ったのは貴公であろう…。」
それ以上は、と私の唇にアルカディア殿の人差し指が当てられた。
「いや、間違いなくお二人とお二人の艦娘が守ったのだ。」
「あの子達が…。フフッ、そうか。そうだな、そういう事にしておこう。」
自らを犠牲にしてここを守り抜く覚悟だった18名。
私は部下にも恵まれていたのだな。
「少将閣下、1回だけで良いのか?」
「この景色をこれからも見なくて良いのか?」
「これからも?」
「そうだ。」
アルカディア殿の力強い目。
「私は…。」
貴公は卑怯だ。
そう言われては私もブルーメール家の一人として答えは決まっている。
「見たい…、何度でも! この海もこの街も横須賀の全てを!」
「なら、もう心配は要らんか。神崎閣下にも少将閣下もいえる事だが、誰かを頼るのは別に悪い事でも恥ずべき事でもない。一人で出来るのならそれに越したことは無いが、意地を張って取り返しのつかない結果を招いてしまう方がよほど恥ずかしい事だと俺は思う。」
「そうだな。心配をかけてすまなかった。さ、花火が般若になる前に戻ろう。」
「それは怖いな(笑)。」
「これは意外だな。貴公でも怖いものがあるとは。」
花火よ、もう尻に敷いているのか。
お前がそんなに手が早いとは知らなかったぞ(笑)。
「そうだな。怒らせるのは別に構わんが嫌われるのは困る。」
「ほう、聞かせてくれるではないか。どうやら私が花火と貴公の間に割って入る余地は無しか。」
「すまないな、閣下。何しろこのアルカディア号、『花火』と『翔鶴』に一目惚れでな。」
ん?
今、花火と翔鶴がコロンビアのポーズを?
聞こえているのか?
いや、まさかな…。
「では花火に嫌われたら横須賀第二鎮守府に来ると良い。部屋は用意しておこう。それに私の所にも翔鶴はいる。」
「それはありがたい、だがそうならないように祈ろう。」
「それからあと一つ、貴公に私の我儘を聞いてもらいたいのだ。このまま私の部屋まで頼む。」
悪いが私もこれだけ殿方の匂いに包まれて続けていては流石に…。
「分かった。ではそうさせてもらおう。」
「グリシーヌ、大丈夫? 立て…、ないわね。アルカディアさん、急いでグリシーヌを部屋へ運んであげて下さい。」
一鎮の屋上へ戻ると花火と翔鶴が駆け寄ってきた。
「ああ、少将閣下からもそのように依頼を受けている。」
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「すまなかった、もう大丈夫だ。後は一人にして欲しい。」
部屋に運ばれた私は一人になるのを待ってドアに鍵を掛けた。
更に用心を重ねチェーンを降ろしカーテンを閉める。
限界を超えてしまったせいだろうか、逆に落ち着いてこなすことが出来た。
が、それもここまで。
次の瞬間、大きく息を吸い込むと一気にスカートをたくし上げる。
パンストに手を掛け、そのままショーツごと乱暴に破くような勢いで一気に膝まで引きずり降ろした。
後は話すような、いや話せる内容ではない。
花火よ、これだけの殿方を決して手放すな。
もし、油断する事があれば直ぐにでも私が貰い受けよう。
※私は幼い頃から望むものすべてを与えられてきた。だが、与えられたモノには価値など無い:サクラ大戦4のグリシーヌエンドでの彼女自身のセリフです。
※実際のグリシーヌはもっとしっかりした女性なので、こんな気弱になる事は考えにくいのですが、お話の都合上なので彼女のファンは許して下さい。
※直ぐにでも私が貰い受けよう:これもサクラ大戦4のグリシーヌエンドで、私はまだ貴公を婿にする事を諦めた訳ではないと宣言する一幕がありました。ここの彼女はどうするのでしょうか?!