アルカディア号になって艦これの世界にお邪魔してみた 作:Archangel
「はっ?!」
北大路提督の意識が戻ったわ。
良かったとそう思ったのも束の間、北大路提督が自分の姿を見て悲鳴を上げたわ。
まあ当然といえるのだけれど。
「私、私…。」
北大路提督の顔が蒼白になってしまったけれど私にはどうする事も出来ないわ。
「ヒヒッ、好きな男にベッドへ誘われたシーンを見せてやっただけで脱いでしまうとはねぇ。言っておくけど全て自分の欲望通りに進んだはずだからね(笑)。」
「あ、あ…。」
北大路提督がへたり込んでしまったわ。
あなた、何て酷い事をしたの!
「何が北大路家の子爵令嬢だよ、一皮剥けば所詮こんなものかい、ヒヒッ。」
「アナタがやったんじゃない!」
「おやおや、そちらの足柄さんはおかしな事を言うじゃないか。アタシは手伝ってやっただけに過ぎないんだがね?」
言ってくれるわね、この外道が。
「ううっ、お父様、お母様、ごめんなさい…。私…。」
北大路家の名に傷を付けてしまったと、北大路提督が泣き出してしまったわ。
アルカディア号さん、まだなの?
早く来て!
「さて、この女はこれで終わりだよ。後はウチの青葉の撮影データをバラ撒けば良いだけさね。」
何ですって?!
そんな事をされたら本当に北大路提督は!
「北大路提督は陸奥や翔鶴達の恩人だぞ、そんな事はさせん!」
「フンッ、生意気いうんじゃないよ!」
なんていう凄まじいムチ捌きなの?
まるでムチ自体が意思を持ったかのようだわ。
そう使い手同様、冷酷な意思を持った蛇のように…。
さらに倒れた武蔵をカルチェラ少佐が踏みつけます。
「あなた、いい加減になさい!」
私も流石にこれ以上は指を咥えて見ていられません。
「くうっ!」
しかし、私にもそのムチが牙を剥いてきます。
恐らく切れたのでしょう、左頬を生温い物が伝っているわ。
拭うと手が赤く…、やっぱりね。
「加賀!」
駆け寄ろうとした長門を制します。
カルチェラ少佐に癇癪を起されて北大路提督までムチの餌食になってしまったら…。
ましてや、お顔に傷が付いてしまったらそれこそ取返しがつかないもの。
「燃料さえあれば…。」
武蔵が唇を噛んでいるわ。
「ヒッヒッヒッ、燃料かい? いいだろう、鳳翔、燃料を一本よこしな(笑)。」
そう言うとカルチェラ少佐、いえこの外道は燃料の小瓶を窓の外へ放り投げました。
「ほら、取って来たらどうなんだい?(笑)」
…。
……。
………。
もう許せません、さすがの私も堪忍袋の緒が切れました。
矢筒に手を伸ばそうとしたその時、私達にとっての待ち人であり切り札である彼の姿が食堂入口に現れました。
静まり返った食堂に彼がゆっくりと歩みを進める音だけが響きます。
さすがにタウイタウイ第二泊地の皆も驚きの目でこちらを見ているわね。
たった一人、武蔵を踏み付けるために下を向いているカルチェラ少佐を除いては…。
「今日という今日はその体に分からせてあげるよ! 提督と艦娘の主従関係ってヤツをね!」
「ぐふっ!」
激しい蹴りで武蔵の肺から音が鳴ります。
「そうだ。皆、そんなに資材が欲しければコイツを解体してやろうじゃないか。大型艦だけあって少しは足しになるだろうさね。」
「提督、あなた正気なの?!」
陸奥の悲鳴に近い叫び。
「正気も正気、大真面目だよ。お前達もあれほど資源資源と…、アガッ?!」
アルカディア号さんがカルチェラ少佐の首元を掴んで持ち上げました。
さらにムチを持った右手首を躊躇なくへし折ったわ。
「ぎゃああ! 手が、手が?!」
「あ、貴方は?! アルカディア号!」
悲鳴を上げるカルチェラ提督を余所に武蔵が彼を見て驚きました。
彼を知っているという事は…、カルチェラ提督は護衛艦娘としてこの間の横須賀へ貴女を連れて行ったのね。
「ヒッ、お、お前は?!」
さあカルチェラ少佐、覚悟なさい。
貴女も提督であるなら横須賀での彼の活躍は知っているわよね?
「
アルカディア号さんがカウンターにいる鳳翔さんに燃料を要求したわ。
武蔵に渡してあげるのね。
「どうぞ…。」
燃料ボトルの大きさはヤクルト大より少し大き目。
本来武蔵のような大型艦なら20~30本必要なのだけれど。
「一杯やれよ(笑)。」
そう言って彼はボトルの蓋を指で割ったわ。
ちょっと待ちなさい、武蔵に渡すのではないの?!
いくら何でも人間が重油なんて飲める訳が無いわ!
止めなくていいのと長門&足柄に目で合図を送ります。
でも二人ともニヤニヤするばかり。
ちょっと、貴女達まで一体どうしたのかしら?
「な?! アンタ一体、何考えてんだい?! 人間がそんなモノ飲める訳ないじゃないか。勘弁して…、グボッ?!」
アルカディア号さんはカルチェラ少佐の懇願を無視して彼女の口に燃料ボトルを突き立てました。
もがくカルチェラ少佐ですが男の力をどうこう出来るはずもないわね。
この腐れ外道はそんな事も分からないのかしら?
あら、重油って粘性が高い割に意外とすんなり喉へ落ちていくのね。
いやいや、そうじゃないわ!
私は何を感心しているのかしら…。
ボトルが空になるとようやくアルカディア号さんは手を離しました。
カルチェラ少佐は吐き戻そうとするけれど今度は逆に重油は重たく粘性が高いため、なかなか出せず苦しんでいるみたいね。
私もマヒしてしまったのかしら。
その様子を長門や足柄と同じようにニヤニヤしながら眺めるようになっていたわ。
私達の提督をあんな目に合わせたのよ、まだまだ足りないわ。
カルチェラ少佐、アナタは
「加賀、花火を頼む。落ち着かせてやってくれ。」
アルカディア号さんは泣きじゃくる北大路提督にそっとマントを掛けました。
まったく…、こういう心遣いができるところもニクイものね。
ただ強いだけじゃない、改めてこのような方に空母枠の『側室筆頭艦』として選んで頂けた事に感謝しないと。
ちょっと、そこのおばさん、隣でゲーゲー煩いわ。
感動に浸ってるんだから静かにして頂戴。
※アルカディア号が食堂に入ってくるシーンですが、星野鉄郎が戦士の銃を取り返しに行った酒場にハーロックが入ってくるシーンそのままの感じです(もちろんあのBGM付きで)。
※加賀さん、とうとう最後にはカルチェラ少佐を『そこのおばさん』呼びしてしまいました。
※怪人といえども重油なんか飲んで健康被害とか大丈夫なんでしょうか?
ちゃんと病院に行って胃洗浄してもらうんですよ!