アルカディア号になって艦これの世界にお邪魔してみた 作:Archangel
尻もちをついたまま微動だにしないアルカディア号さん。
悲鳴が消えた後は皆、無言です。
口に手を当てたままの陸奥さん、立ち尽くす長門さんと足柄さん。
加賀さんがペタンと座り込んでしまいました。
あまりの出来事に誰も動けず声すら上げられません。
そう、よね…。
あれは艦娘が暴動を起こした際の最終手段。
何処に当たっても一撃で息の根を止める事が出来る威力を持つそれを至近距離から5~6発も叩き込まれたのですから。
でも私は何一つご恩を返せていません。
格納庫や燃料庫が悲鳴を上げる程の補給、食べた事も無い豪華なお食事、修復材では治り切らなかった怪我の手当てにお風呂まで。
そう思うと私の両目から一気に涙が溢れてきました。
「そんな…。私、イヤよ。ね、アルカディア号さん起きて。起きて頂戴。」
加賀さんが掠れ声で呼びかけますが彼からの反応はありません。
「…。」
加賀さんが立ち上がりました。
ギリッと歯を鳴らしながらカルチェラ提督に向き直る加賀さんの手にはしっかりと矢がつがえられています。
「ひっ!」
鬼気迫る加賀さんにカルチェラ提督が後ずさりました。
「提督、何処へ行くというのですか?」
気付けば私も提督に向けて矢をつがえていました。
「何だい、お前も撃たれたいのかい!」
そう言ってカルチェラ提督は私に対艦娘専用銃を向けてきます。
あの銃の装弾数は8発のはず。そう考えると少なくとも後2発は残っているとみて間違いありません。
もちろん、あんなもので撃たれたら私なんかは即死でしょう。
ですがそんなの関係ありません。
アルカディア号さん、待ってて下さい。
この外道は刺し違えてでも地獄へ送ってやりますから。
それにカルチェラ提督に狙いを定めているのは私と加賀さんだけではありません。
長門さん、足柄さん、陸奥さん、おまけにあの大人しい羽黒さんや名取さんまでもが提督に砲を向けています。
だれがいつ指を動かしてもおかしくはない、そんな状況の中パンパンとほこりを払う音と『よせ、お前達』という声が聞こえました。
振り返るとそこにはアルカディア号さんが立っていたのです!
「良かった、無事だったのね!」
加賀さんが駆け寄ってアルカディア号さんの手を取りました。
って、加賀さん何してるんですか!
私だってしたいのにズルイです!
「お前達が手を汚す必要は無い。これこそ海賊の仕事だ。」
そう言うとアルカディア号さんは加賀さんの弓をそっと抑えました。
「そんなバカな! 対艦娘専用銃が効かないっていうのかい?!」
立ち上がったアルカディア号さんをみたカルチェラ提督が驚愕しています。
「…。」
アルカディア号さんはそのまま無言でカルチェラ提督の左腕を銃で打ち抜きました。
「うぎゃああああ! う、腕が、腕があっ!」
アルカディア号さんの構えた銃から不思議な音と共に一筋の光線が発射されたと思うとカルチェラ提督の対艦娘専用銃を持った左腕の肘から先が吹き飛びました。
何でしょう、あれは?
一切の炸薬音がありませんでしたが…。
「カルチェラ少佐、貴様は艦娘達に虐待はしていないといったな。」
アルカディア号さんが口を開きました。
「勿論だよ! な、皆、そうだろう?! ほら、誰も虐待を受けていたなんて言わないじゃないか!」
何が言わないですか。
誰も返事なんてしたくないだけですっ!
「陸奥、タウイタウイ第二泊地戦艦組のリーダーは誰だ?」
「長門だったけど、その長門が地下懲罰房に入ってからは武蔵ね。」
「では武蔵、戦艦組で一番ひどい目に遭わされていたのは誰だ?」
「陸奥だ。駆逐艦達に被害が及ばないように率先して被害担当艦をやっていたからな。」
「翔鶴、空母組のリーダーは?」
今度は私に?!
「赤城さんです。」
「一番ひどい目に遭わされた艦は?」
「加賀さんですね。お二人とも一航戦だというだけで空母組に不始末がある度に呼び出されていましたから。」
「羽黒、重巡組はどうなんだ?」
「はい、まとめ役は妙高姉さん、最もひどい目に遭ったのは那智姉さんです。」
「さっきから何なんだい、人聞きの悪い事を言うんじゃないよ! アタシは艦娘達を大事に扱っているって、アガッ!」
アルカディア号さんは先が銃になった剣をカルチェラ提督の口に突き入れました。
「黙れ。二度は言わん。」
この小煩い女を一発で黙らせてしまうなんてアルカディア号さん、流石です。
何なら永遠に黙らせてしまっても誰も文句は言いません、いえ是非そうして下さい!
「軽巡は?」
「は、はい、リーダーは大淀さん、最も痛い目に遭ったのは天龍さんです。」
名取さんも即答しカルチェラ提督に口を挟ませません。
「電に潮、駆逐艦組は?」
「駆逐艦のリーダーは朝潮さんなのです。」
「最もひどい目に遭ったのは不知火さんですね。」
補給とは名ばかりですがそれでも時間的にほとんどの艦娘が食堂に集まっていたのが幸いしました。
アルカディア号さんは名前の挙がった10人に小さな何かを配ったのです。
それに対してほとんどの艦娘が死んだような目を向けただけです。
「これは…、何ですか?」
唯一、赤城さんだけが配られたモノについて聞いてきました。
それでも抑揚のない声で顔も目も上げようとはしません。
「解除スイッチだ。」
「解除スイッチ…。何のかしら?」
赤城さんと向かい合って座っているコチラ(タウイタウイ第二泊地)の加賀さんがそれを掌に載せました。
「直ぐに分かる。」
アルカディア号さんはそう言うとニヤリとしました。
※アルカディア号が渡したスイッチは一体何のスイッチでしょうか?
少なくとも某社のゲーム機のように楽しい物で無いのは間違いありません(笑)。