ワールドフロントライン   作:K-Rex-V

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第一話「混沌の内戦」

「とっても素敵な海だと思わない?ちょっと海水浴でもしてみる?」

「ええ、そうね…空に戦闘機がいなければね…」

 

そう言って空を見上げる彼女たちの視線の先には、哨戒任務を終えて島の滑走路に着陸しようとする戦闘機の姿があった。

現在反逆小隊の4人はロシアのカラ海にて青い海で囲まれ、人工的に造られ緑が美しい諸島に来ていた。その海域は崩壊液によって汚染されていないエリアのため、現政権の新ソ連(本編現在の正規軍及び政府等)によって壊滅的被害を受けた旧ロシア政権派が、この島々を軍事基地として改造・利用しており、ロシア各地に散らばった友軍を集結させ反撃の機会を伺っていた。

しかし正規軍も様々な方法(スパイや拷問等)で、この情報を取得しており、旧ロシア政権派の戦力が整う前に島を攻めて、その後の島に集結しようとしていたロシア各地の残党軍を各個撃破するという作戦が立案され、今日作戦が開始されようとしていた。

そして今回、反逆小隊がアンジェリアから受けた命令は、この戦闘に乗じて後の作戦に邪魔な存在となる正規軍のある高級将校を暗殺せよ、というものだった。

 

「それにしても、何故わざわざ将軍が前線に出る必要があるのでしょうか?」

「馬鹿ね94、あの島には将軍である自分でしか分からない物があって、それは自分の身を危険に晒してまで欲しいナニカがあるのよ」

「ナニカとは…?」

「さぁ?でもナニカがあるのは間違いないわ…M4もそう思わない?」

AK12がそう言いながら後ろに振り返ると、黒髪と桃色の髪をした2人の女性がいた。

「私はただ命令された任務を遂行するだけです」

M4と呼ばれた黒髪の女性が素っ気なく答える。

「お喋りはそこまでにして…そろそろ時間よ」

桃色の髪の女性がそう忠告するが、AK12からニヤけた顔をされて機嫌を悪くしてしまった。

「あら残念、でもどうせ来るのは大半が無人機よ?もうちょっと気楽に行きましょAR15」

「私はアンタのそういうところが嫌いだ」

AR15はそう言ってAK12を睨みつけるが、彼女は薄く微笑むだけだった。

「皆さん、備えて下さい…来ます」

AN94が見上げる方向から正規軍の戦闘機型ドローンが大量に飛来してきた。それに迎撃し始める島の対空兵器達。

島の滑走路からは次々と旧ロシア政権派の有人戦闘機が青い空に飛び立つ準備をしていた。

 

≪こちら管制塔 ザヴォディーラ隊からタキシングを許可する≫

≪了解 我が祖国に勝利を!≫

 

Su-30の編隊が青い空に上がり、眼前に無人機の大軍を視認する。

 

≪ドローンばかりだと?舐められたものだな≫

≪隊長!我らの力を椅子に引きこもっている連中に見せつけてやりましょう!≫

≪当然だ 同志諸君!祖国に恥じぬ戦いを見せてやれ!≫

≪≪≪ナシュ ウラーー!!!!≫≫≫

 

旧ロシア政権派の元軍人達の士気は高く、皆祖国を取り戻すためならば、己の命を捨てる覚悟もあった。

 

≪ザヴォディーラ1 エンゲージ!≫

≪ザヴォディーラ5 エンゲージ!≫

≪ザヴォディーラ14 エンゲージ!≫

 

ついに戦闘が始まった。旧ロシア政権派のパイロット達は精鋭揃いのようで、その練度の高さを生かし、無人ドローン相手にAIにとっては若干だが苦手分野である格闘戦を持ち込んでいた。さらに地上の対空砲火も味方機に当てないように弾幕を張り、数機を撃墜している。

 

「あら?これは少々不味いわね」

「同感ね、このまま彼らが優勢だとヴラジミール准将が上陸できないわ」

 

旧ロシア政権派残党軍は予想外にも正規軍相手に勇戦していた。それに肝を冷やし始めた正規軍はドローンの追加投入しようとしていた。

 

「やはり一筋縄ではいかぬか…」

「准将、この艦から制御するドローンが増えてしまうと、この艦に搭載されている光学迷彩が機能しなくなります」

「構わんよ…私もすっかり歳でな…そういうったハイテク機能がイマイチ信用ならんのだ」

そう若い士官に話す熟年の男は反逆小隊の暗殺対象であるヴラジミール准将であった。今回の作戦にあたりヴラジミール准将は旧友であるカーター将軍から譲り受けた最新式で光学迷彩付きのステルス駆逐艦に乗り、そこからドローンを制御していた。本土より直接前線に出てドローンを制御しているので、タイムラグが少なく相互通信が行えるためにドローンの動きが活発だった。

「しかしステルス機能も弱まり、敵にレーダーで発見される恐れが…」

「だからといって戦力の随次投入は愚策だよ君…」

「はぁ…」

「それに軍人になった以上…後世に語り継がれるほどの戦果を残し死ぬか、何もできぬまま幾多の歴史の一つとして埋もれ死ぬかのどちらかしか無いのだ…今更逃げも隠れもせんよ…残りのドローンを全て出せ!」

「はっ!」

艦の射出ポッドから吐き出されるドローン達…無人機達はすぐさま交戦エリアに向かい始めた。

 

≪2時の方向から多数の反応が…ドローンの増援だ!≫

≪敵の増援は俺達ザヴォディーラ隊とマリーナフカ隊でやるぞ≫

≪ウィルコ!スクラップに変えてやる≫

≪ここのドローンは我々2隊で抑える 気にせずに行け≫

≪了解!…死ぬなよ≫

 

戦力を分け、増援の迎撃にあたる残党軍達。

 

≪マリーナフカ4と5は右から回れ!挟み撃ちにするぞ!≫

≪こちらザヴォディーラ6!後ろに付かれた!≫

≪FOX2!…命中を確認≫

≪助かった…礼を言うよザヴォディーラ7≫

≪……なら後で美味いボルシチを作ってくれ 久々に食べたくなった≫

≪Да 熱々のボルシチをご馳走してやるよ≫

 

互いに連携し合いながらも奮戦していたが、徐々にドローンの数に押されていく。

 

≪数が…多すぎる!≫

≪待ってろ!今助け…ザーッ≫

≪マリーナフカ2!≫

≪ちくしょう!被弾した!…ザーッ≫

≪ザヴォディーラ7がロスト!くそったれ!≫

≪俺が囮になる!AIには出来ない飛び方を見せてやる!≫

≪エンジンに食らった!制御不能!イジェ…ザーッ≫

 

数的不利な状況でもなんとか奮戦していた旧ロシア派の戦闘機達だったが、ドローンによる圧倒的な数の暴力によって徐々にその数を減らす。だが…。

 

≪こちら第207飛行中隊所属のスラーヴァ隊だ 我々は独自の判断でここまで来た そちらの指揮下に入る≫

≪第150飛行大隊のヴァローナだ 我が隊も同じだ≫

 

有人戦闘機の編隊が多数現れ、次々と援軍の無線が入る。実は数時間前にドローンの大群を観測したロシア本土にいる残党軍が、元々集結予定であったこの島をやらせるわけにはいかないと、各地の基地から足の速い戦闘機を先に援軍として送り出していたのだ。敵ドローンを視界に捉えた友軍達は、そのまま交戦中のエリアに次々と突っ込み、格闘戦を繰り広げる。

 

≪援軍か!助かる!≫

≪なに気にするな…共に勝利を!≫

 

旧ロシア派の援軍によって形勢は逆転、ドローン側の連携が崩れた。

「准将…このままでは…」

「うむ…敵戦力が集中してしまったか…できれば例の物を奪取し、直接カーターに渡したかったがな…」

「なにっ!?ドローンの反応が急激に減っているだと!?いくら敵に増援が来たからといって…」

「青いデジタル迷彩のSu-37だ!特に機体に9と書かれているヤツだ!なんてスピードだ!」

青いデジタル迷彩のSu-37の編隊…それは先程援軍として駆け付けたスラーヴァ隊だった。

そして、その9番機が巧みな機動でドローンを撃墜していく。

 

≪スラーヴァ9 フォックス3≫

≪こちらスラーヴァ4 敵機の撃墜を確認した お見事だユーリ≫

≪スラーヴァ9だ 名前で呼ぶな ディミトリ≫

≪お前だって名前で呼んでるじゃねぇか≫

≪うるさい それにほら 喋ってる暇は無さそうだよ≫

≪何言って…ヒュー♪あんな所に駆逐クラスの艦があるじゃねぇか≫

 

彼らが偶然発見した艦はヴラジミール准将が乗っている艦だ。

 

≪もしかしたらアレがドローンを制御しているかもしれない≫

≪了解 いっちょやるか!全機続け!≫

 

スラーヴァ隊がドローンの群れを突破しながら、ヴラジミール准将の乗る駆逐艦に迫っていた。

「准将!奴らに我が艦が見つかりました!こちらに向かって来ます!」

「ぬぅ…やはり艦のステルス機能などあてにはならんな…ミサイル駆逐艦も持ってくるべきだったか」

「主砲一番二番…撃て!」

駆逐艦から戦闘機群に向けて主砲が放たれる。この駆逐艦は光学迷彩とステルス機能を獲得する代わりにミサイルを犠牲にしてしまったために防空能力が極端に低いのだ。

 

≪くそっ ラダーに当たった!離脱する≫

≪了解!スラーヴァ2!離脱した8のポジションに就け!≫

≪分かった!≫

≪ターゲットロック!…撃てます!≫

≪……全機攻撃開始!飽和攻撃だ!≫

 

駆逐艦からの砲撃を掻い潜るスラーヴァ隊からミサイルが発射される。

「ミサイル多数接近!」

「近接防御急げ!」

「駄目です!間に合いません!」

駆逐艦の近接防御火器によってミサイルがいくつか落とされるが…3本が駆逐艦に命中し、艦がゆっくりと沈みだす。

「機関室にて浸水発生!」

「艦が傾斜しています!」

「ここまでか…そこの君たちは脱出しなさい」

「そんな…自分もここで!」

「若い者はこんな場所で死ぬべきではないのだよ…退艦したまえ」

「くっ…今までお世話になりました!」

ヴラジミール准将が若者達を優先的に脱出させると艦内で爆発が起き始める。

「すまんなカーター…後は任せたぞ」

そして駆逐艦はとうとう弾薬庫に誘爆し、真ん中から真っ二つに折れた。

 

≪敵駆逐艦の撃沈を確認!≫

≪ドローンも墜ちていくぞ!ざまぁ見やがれ!≫

≪我らの勝利だ!ウラー!≫

≪≪≪≪ウラーー!!≫≫≫≫

 

制御を失い青い海へと墜ちていくドローン達を見て勝利の雄叫びを上げる旧ロシア派の残党兵士達。そして…

「ねぇ12…これって私たちの出番は無い感じかしら?」

「そうみたいね…私としても、これは予想外だわ」

「まぁ…ヴラジミール准将が死んだだけでも良しとしましょうか」

予想外の結果に思わず戦闘機達が飛び続ける空を見上げる反逆小隊。

正規軍に物量で負けるはずの残党がまさかの番狂わせ。旧ロシア派に各地から大勢の援軍がやって来て、尚且つ自分たちが暗殺する予定であったヴラジミール准将まで彼らが殺したのだ。

「ハァ…皆帰りましょう…もうここにいる意味は無いと思えます」

「そうねM4」

「私も同意します」

「それもいいけど…折角だし日光浴でもしていかない?きっと楽しいわよ?」

「するなら一人でして頂戴」

今回彼女達は出番がほぼ無く、弾の一発すら撃っていないが旧ロシア政権派によって准将は見事死亡したため、アンジェに伝えるべきと判断し帰還を決める反逆小隊。

「あの青い機体…特に9番機…危険ね」

「何か言いましたか?12」

「いいえ…何でもないわよ」

「そうですか…では帰還しましょう」

しかし、これは始まりに過ぎなかった。

後に旧ロシア派のこの小さな勝利と大きな復讐心から計画されたある物が、世界をも巻き込む戦争へと発展するのであった。

 

 

 

パイロットレコード

マトヴェイ・ダニーロヴィチ中尉 KIA

コールサイン:ザヴォディーラ7

AEG:45

所属:ロシア空軍第314航空団第8攻撃飛行隊

AIRCRAFT:Su-30M2

旧ロシア政権崩壊前にカーター将軍率いる新ソ連政権派との大規模な戦闘に参加し敵地上部隊多数とイージス艦1隻に深刻な損害を与えた。この戦いで彼はジューコフ勲章を授けられた。なお旧ロシア政権崩壊後に治安維持を担当していたG&Kの人形によって犯罪者(罪状は不明)として捕まった当時11歳の息子が処刑されており、最期まで息子が大事にしていたSu-30のデフォルメ化されたストラップを常に身に着けていた。息子の好物はボルシチだったため、息子に美味しいボルシチを振る舞おうと、基地の食堂内でボルシチの研究をしている彼の姿がよく見掛けられ基地では一つの名物となっていた。

 




ロシア語調べるの結構大変でした...
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