先の戦闘の報告を受けたアンジェリアは信じられないとばかりに、帰還したばかりの反逆小隊に目を向けた。
「敗残兵?…バカな、連中相当な練度を積んでるわよ」
「AR15の言う通りです。彼らの動きはベテランレベルのものでした」
「私も同感です」
「ふふっ…私から見れば、彼らは死に急いでるように思えたけどね…」
それぞれ思い思いの感想をアンジェリアに述べる。
「まっ、彼らも腐っても元軍人達だし…練度は積んでいるか…それに死に急いでるか…」
そう言って顔を暗くさせるアンジェリアにAK12が普段は閉じている目を見開いて分析し始めた。
「あら?何か心当たりがあるのかしら?…大体想像はつくけどね」
アンジェリアはため息を吐く。
「まぁね…旧ロシア派がカーター将軍達新ソ連派に敗北したとき、彼らの家族や友人を表向けにはスパイ容疑で拘束されられたわ」
「でも実際は拷問の末に処刑したか、過酷な地域で使い捨て要員として労働させられたか…そうでしょ?」
「正解だ…それを知った彼らは怒り狂い、そして必ず新ソ連政権に復讐すると誓ったそうよ…」
「それは…」
本来ならば守るべきはずの民間人が、虐殺も同然の扱いを受けていることに、言葉が詰まるAN94。
「だけど勘違いしないで!同情出来る部分もあるけど、彼らもロシア国内各所でゲリラ的活動を行い、それに巻き込まれた民間人もいる限り、彼らも例外無くテロリストだということを忘れるな!」
「「「「了解」」」」
力強く断言するアンジェリアに頷く反逆小隊。
だが突然、アンジェリアの端末にメールが届いた。差出人は書かれておらず、不信に思いながらもメールを開く。
「……」
「どうしましたか?」
「…すぐに出発の準備よ…今度は私も同行する」
「やれやれ…人形使いが荒いわね」
メールを見てすぐにどこかに出発を決めるアンジェリア。休憩の間も無く、出撃させられることが決まった人形たちは、また面倒な任務が始まったと思いながらも出発の準備に取り掛かった。
一方旧ロシア残党軍の軍島近くでは、各地に散らばっていた旧ロシア派の海軍が徐々に集結しており、一つの艦隊が出来つつあった。だが、それを阻止したい新ソ連政権は数時間置きに正規軍のドローンをあの島に送らせて、その度に迎撃の為に残党軍の戦闘機が発進し、戦闘を行っていた。
≪アリオール5 FOX2!≫
≪奴ら動きにラグがあるぞ!右から攻める!アリオール3、4は俺に続け!≫
≪了解 集結中の味方艦は俺達が守るぞ!≫
Su-57が敵ドローンから島に合流中の味方艦隊を守るために交戦している。ドローン達はロシア本土から遠距離で制御されているせいか、ヴラジミール准将のドローンよりも動きが悪かった。
≪くそっ!…ドローン相手じゃ妹の仇にすらならん!≫
≪そう焦るなよアリオール4 いつか復讐するチャンスがやって来るさ≫
連日やってくるドローンの襲撃で、復讐したい相手はロシア本土にいる新ソ連政権の人間であって機械が相手では無いという旧ロシア派残党兵達にとっては、不満が溜まる一方であった。
≪分かってるさ3≫
≪なら良いんだが…ん?待て…2時の方向から何か2つやって来る!UAVじゃないぞ!≫
アリオール3の言葉を確かめるべく、アリオール4もレーダーを確認すると確かに航空機の反応が2つあった。しかも、ロシア式のIFFでは味方か識別出来なかった。
≪IFFに反応しない?…まさか他国の…≫
≪機体が見えて来た!なっこれは…タイフーンか!?≫
段々とはっきり見えてくる所属不明機…それは欧州連合が主に所有している機体だった。
≪なぁ…これで良かったと思うか?≫
≪閣下は我らに使い捨ての駒になれと仰られた…ならばその使命を果たすのみ≫
≪そうだな…せめて祖国の民が健やかに生きられることを祈る≫
≪俺もそう願うよ……オプファー隊 エンゲージ!≫
黒のタイフーン2機が一気に加速し、前方にいるアリオール隊にミサイルの狙いを定める。
≪ちくしょう!ロックオンされた!回避する!≫
≪くっ俺が相手をする!≫
≪アリオール4!?…無茶だ!止めろ!≫
仲間からターゲットを外させるために、アリオール4がタイフーン2機相手にドッグファイトを挑む。
≪このタイフーン…動きが良い!このSu-57の機動について来れるとは!だが!≫
アリオール4が減速しながらクルビットを行い、自分を追っている機体の後方へと移動…
そして素早くターゲットにロックオンし、ミサイルを撃った。
≪ジークハイ…ザーッ≫
タイフーンの片割れにミサイルが命中し、爆散していくが…アリオール4の目には、燃え堕ちるタイフーンの尾翼に鉄十字のエンブレムが映った。
≪馬鹿なコイツら!ドイツ軍だと!?≫
そう動揺したアリオール4にもう一機のタイフーンからミサイルが4本も放たれる。
≪ブレイク!ブレイク!≫
アリオール4はすぐにチャフを展開しながら回避するが、機体に1つ命中してしまった。
≪ぐっ まだこんなところで死ぬわけには…ザーッ≫
≪アリオール4がやられた!救助を!≫
アリオール3が仲間に救助を求めるが、彼の機体は無残にも爆発…誰がどう見ても即死だった。
≪即死だ!諦めろアリオール3!≫
≪クソがッ!仇は取る!!≫
他のアリオール達もドローンとの戦闘を終わらせ、徐々にタイフーンの周りを囲み、攻撃を仕掛けている。
≪良い腕だが…これで終わりだ!≫
攻撃を回避仕切れなくなったタイフーンは呆気なくミサイルを受け撃墜された。
≪ドイツ軍め…何を考えている≫
≪早くアリスタルフ中将に知らせないとマズイ≫
≪この情勢下で仕掛けて来るか…嫌な予感がするな≫
突然のドイツ軍の介入によって一気に緊張状態になる旧ロシア兵達…そして遠くからドローンで、この戦いを見ていた者達がいた。
「閣下、いかがでしょうか?」
「ああ…彼らは良く忠誠を示してくれた」
閣下と呼ばれた男は金髪赤目で細身の男性だった。さらに彼が着ている軍服はナチス時代のデザインにそっくりだ。
「新ソ連政府軍に向かった隊も撃墜されたようです」
「そうか…彼らは見事役目を果たし終えた…そうは思わないか?」
「はっ、我らも彼らに恥じぬ戦いをせねばなりませんな」
「よろしい…ではこの基地の全兵士を集めよ」
「そう仰ると思い、すでに集合させております」
「ほぉ…素晴らしいな!お前はいつも私を満足させてくれる」
「恐悦至極にございます」
男がそう満足そうな笑みを浮かべながら、席を立ち、兵士達がいる場所へと向かった。そうしてたどり着けば、屈強な戦士達が後ろに腕を組み、整列している。閣下と呼ばれている男は演壇に登り兵士達を見渡し、兵士達に向かって演説を行う。
「諸君!先刻、我がドイツ軍は4人の戦友を失った!
何故か?それは私が死ねと命じたからだ!私はこれから諸君にも同じことを命ずる!死んでくれと!
今、我らが愛するドイツは崩壊液によって国土の大半が汚染されている!もはや人が住める場所ではない!
食料も満足に得られないこのドイツでは、もはや民は苦しみながら死ぬしかないだろう!
…だが!そうはさせない!
例え、この先何世紀にも渡って非難されようが、どんな手を用いてでもドイツを救う!
…その為には諸君の死が必要だ…想像せよ!愛する家族が!恋人が!友が!苦しみ喘ぎながら冷たくなっていく姿を!
私に付き従う精鋭達よ!諸君は強い!他人の命を奪う資格がある!
故に…私は約束しよう!諸君の魂を以て民を必ず救済すると!
牙を研がれし者達よ!今こそ立ち上がり戦え!
我がドイツが誇る精鋭達よ!その身と魂を国に捧げよ!
…さぁ、私と共に我がドイツを救おうではないか!」
男の演説が終わると1人の兵士が一歩前に出る。すると他の兵士達も続々と続き一歩前に出る。そして兵士達は片腕を上げ…
「「「ハイル!ドイチュラント!」」」
このドイツ全土に響き渡らせんと、己の魂を震わせて力強く何度も連呼した。
「そうだ…それでいい」
男はそう冷たく笑うと、兵士達の叫びを背にしながら、広場を後にした。
パイロットレコード
エフィーム・ヴォルコフ大尉 KIA
コールサイン:アリオール4
AEG:35
所属:ロシア空軍第218航空団第12戦闘飛行隊
AIRCRAFT:Su-57
クラスノヤルスクでの戦いで旧ロシア派の友軍を攻撃中だった正規軍に対して補給物資の運搬をしていたG&Kの人形部隊に爆撃を行い、多大な損害を与えた。なお彼の両親はすでに他界しており、唯一の肉親であった妹は新ソ連政府に連行され拷問の末に死亡。彼が妹への誕生日プレゼントを買いに少し離れにある街へ出掛けている最中の出来事であった。
まだ何も進展してないのにドイツ軍が登場したよ!これからどうなるのかな!?(愉悦)