・・・決してゲームに夢中になっていたわけではありませんよ(目そらし)
その代わりにお詫びということも含めて今回は一万文字以上のボリュームでお送り致します!(ほのぼのとは言ってない)
お楽しみいただければ幸いです!!
ドイツ 国連軍マクデブルク基地
爆音が轟き、銃声が悲鳴を上げるように鳴り響く。
迫撃砲やロケット砲による砲撃を受けて、体を吹き飛ばされる兵士。
「こちらマクデブルク基地!現在ドイツ軍による攻撃を受けている!出撃中の全部隊は至急基地に戻れ!繰り返す、ドイツ軍に攻撃され…ぐわッ…!」
任務やパトロールで出払っている部隊を呼び戻そうと通信をしていた管制塔が砲撃を受けて崩れる。
「管制塔が崩れるぞー!逃げろぉ!!」
崩れ落ちる管制塔から近くの兵士達が逃げるが二人ほど逃げ遅れてしまい、落下してくる管制塔に押し潰される。
「増援はまだなのか!?」
「このままじゃやられるぞ!━はっ、砲撃来るぞー!」
絶え間なく撃ち込まれる砲撃によってマクデブルク基地は半壊し、死傷者が続出していた。
ドイツ軍は突如としてマクデブルクから西隣にあるニーデルンドデレーベンに機甲師団や砲兵師団を中心に展開し、国連軍のマクデブルク基地を奇襲している。
この奇襲に国連軍は対応出来ず、またドイツ軍の機甲師団や砲兵師団に対抗出来る兵器も最初の砲撃で大半が大破させられていた。
そしてドイツ軍が集結しているニーデルンドデレーベンにはドイツ軍の簡易な前哨基地が設置されている。そしてこのドイツ軍の指揮を取る者は…
《閣下、奇襲は成功しました》
「ああ、ご苦労。…さて、次は機甲師団を前に出せ。奴らが狼狽えている今がチャンスだ」
《ヤー!》
流れるような金の髪に、まるで宝石のように透き通った深紅の瞳、そして女に見間違えるかのような整った顔…。
あの ツァールトハイト・ヴァム・クラウンが前哨基地で直接指揮を取っていた。
「全機甲部隊に次ぐ、マクデブルクに向けて進軍せよ」
ツァールトハイトから指示を受けた師団長によって機甲部隊に進軍の命令が下る。
命令を受けた、レオパルト2A7+を中心とした機甲部隊はゆっくりと前進し始めて、マクデブルクを目指している。
その機甲部隊を盾にするように後続として歩兵部隊も随伴する。
だが、当然そんな様子を国連軍も黙って見ているわけが無く、砲撃を免れた戦車『テュポーン』5輌がドイツ軍の機甲部隊を待ち構えている。
このテュポーンは元々新ソ連の兵器だが、第三次世界大戦の停戦後に、その性能の高さと無人で運用出来る事から新ソ連から輸入しており、カラーリングも通常のグリーンから国連軍カラーのブルーに変更されている。
《テュポーンの存在を確認!砲撃支援を求む!》
《HQ了解。60秒後に砲撃を開始する》
《聞いたな野郎共!全車散開!奴らに喰われるなよ!》
テュポーンを視認した戦車部隊はすぐさまにHQに砲兵師団による支援要請を出し、テュポーンに攻撃されても被害を最小限になるように戦車を散開させ、最大加速で前進する。
《攻撃来るぞ!回避しろぉ!!》
テュポーンのレールガンがドイツ軍の戦車目掛けて一斉発射され、先行していたレオパルト2Aの3輌がレールガンを直撃され撃破される。
《ギャアアアアァァァァァ!!!!熱いっ!!体が燃えッ━━ああああああああッ!!!!!》
撃破され、燃え盛るレオパルト2Aから身体が炎に包まれた戦車兵が飛び出す。
自身が焼かれる激痛に叫びながら地面に倒れ伏す。
《テュポーンを有効射程内に捉えたッ!攻撃開始!》
テュポーンを捉えたレオパルト2Aの砲口から火が吹く。その直撃に1輌のテュポーンに120mmの砲弾が直撃し大破する。
《いいぞ!命中だ!残った連中もスクラップにしてやれ!》
続けて2輌目のテュポーンにも砲弾が2発命中し、大きな爆発が起こり大破した。
残ったテュポーンも負けじとレールガンのチャージを終わらせ、砲塔を自身に迫り来るレオパルト2Aへと向けるが…。
《こちら砲兵隊 砲撃を開始する!》
テュポーンの頭上から砲兵隊の砲撃が降り注ぎ、残ったテュポーン3輌は木っ端微塵に破壊された。
《弾着確認!効果あり!》
《今だ!突き進めッ!!》
最大脅威を排除したドイツ機甲部隊は我先にと国連軍マクデブルク基地へと急ぐ。
ドイツ機甲部隊が向かってきてるのを見て、少しでも時間を稼ごうと国連軍は基地の入り口であるメインゲートを閉じるが…。
「ゲート閉じろ!急げ!」
「駄目です!間に合いません!」
ゲートを閉じようとするが、閉じきらずに後一歩というところでドイツ機甲部隊の戦車の砲撃によってゲートが破壊される。
メインゲートを破壊し、もはや戦車部隊を阻む物が無くなった彼らは勢い良くマクデブルク基地に雪崩れ込む。
マクデブルク基地に侵入した戦車部隊は突破した入り口の少し先で停止し、国連軍兵士達と激しい交戦をしながら後続の歩兵部隊の到着を待つ。
「閣下、機甲部隊は順調に基地に侵入したそうですわよ」
そうツァールトハイトに告げるのは、旧ナチスの軍服をイメージした服を身に纏った、足元まで美しく長い銀色の髪をした女性だった。
ツァールトハイトが指揮を取る部屋には彼と銀髪の女性の二人しか居ない。
「よろしい。このまま内部へと侵入し、基地を制圧せよ。…現時点を持って作戦は第3フェイズへと移行すると全部隊に告げたまえ、kar98k」
「はい、閣下」
kar98kと呼ばれた彼女はパッド型タブレットを取り出し、作戦中の全部隊に第3フェイズ移行の合図を送った。
「閣下ッ!大変です!敵の増援がバルレーベンにて出現!このままでは機甲部隊が挟み撃ちにされますッ!」
1人の兵士が血相を変えて作戦室に駆け込んだ。
その内容は味方の危機を知らせる内容だった。
「ふむ…それに関しては作戦前に全部隊指揮官に通達しているはずなのだがね。安心したまえ。敵の増援は別動隊が対処している」
だが、ツァールトハイトは顔色を変えずに告げる。
「それに━━ 私は私に付き従う兵士一人一人の顔を覚えているが……残念ながら君の顔を見たことがない。君は一体どこの者なのかね?」
「なッ…」
そう言いながらツァールトハイトは、自身にとって見覚えの無い兵士に向かって顔をニコリと微笑む。
「君のような手の者が来る事くらい予想してないとでも?━━なぜ私がわざわざ誰に任せても良いような、この作戦の指揮を取っていると思う?」
「な、何を言ってッ…」
兵士の顔が徐々に青ざめ恐怖に怯える。
「私が取るに足らないような作戦でも、いちいち前線に立てば君のようなスパイや暗殺者を、まるで猫をマタタビで釣りだすかのように炙り出せるからだよ」
「きょ、狂人めッ!自分が殺されるとは思っていないのかッ!」
そう叫びながら兵士が懐から拳銃を取り出し、銃をツァールトハイトに向ける。
「無駄ですわ」
バンッ!と大きな音がなると同時に兵士の右肩に銃弾が着弾し、血渋きが舞い散る。
「ぐッ…!」
撃たれた兵士は手にしていた拳銃を落とす。
ツァールトハイトの右横を見れば、先ほどのkar98kと呼ばれた女性が自身と同じ名前を持つ銃を手にし、銃口からは硝煙が立ち上がり、空薬莢が地面にキンッと響くような音が響いた。
「ちくしょッ…!━━があぁッ!!」
兵士はすぐさまに身を翻し逃げようとするが、左足をkar98kに撃たれる。
kar98kは次の射撃に備え、即座に銃のボルトレバーを引き、役目を終えた空薬莢を排出する。
「無駄だと言ったはずですわ」
「さすが戦術人形━━射撃能力は惚れ惚れするほど高いな」
「お褒めに預り光栄ですわ。…ですが閣下は人形嫌いなのでは?」
「ふっ…私は個人的に人形を嫌ってはいるが、評価すべきところは評価しているさ」
「あら…意外ですわね。それでこの者をどう致しますか?」
右肩に続き左足を撃たれた兵士は大量の血を流しながらも這いずって部屋から出ようとしていた。
「ああ、あまり痛め付けているのも可哀想だろう?…楽にしてやれ」
「ヤボール」
「や、止めてくれッ…!」
射殺許可が出たkar98kは兵士にゆっくりと近づき、必死に命乞いをする兵士の頭に狙いを定めて引き金を引く。
すると何かが爆発するような激しい音が鳴り響き、撃ち抜かれた兵士の頭からトマトが破裂するかのように鮮血が飛び散り、kar98kの頬に返り血が付く。
「ご苦労。ふふっ━━さぁ作戦を続けよう。これからが見物なのだから…」
「ええ、とても楽しみですわね」
頬に返り血が付いたままkar98kは恐ろしい程に天使のような微笑みでツァールトハイトに返答した。
一方国連軍マクデブルク基地では後続のドイツ歩兵部隊も到着し、激しい攻防戦が繰り広げられていた。
レオパルト2Aの主砲によって吹き飛ばされる国連兵、国連兵の銃撃によって蜂の巣にされるドイツ歩兵…ドイツと国連双方の兵士達が死力を尽くして戦っている。
「何でいきなりドイツ軍が襲ってくるんだよッ!クソッ!」
「知るかッ!これ以上ドイツのクソッタレ共の侵入を許すな!撃ちまくれッ!」
「おい…あの戦車…こ、こっちを向いてないか?」
仲間が指差した方向を見ると砲塔を自分たちに向け、自分たちが隠れている障害物ごと撃ち抜こうとするレオパルト2Aの姿があった。
「ヤバいッ!逃げろぉぉ!!」
戦車に狙われる遮蔽物に隠れていた五人の兵士は咄嗟に離れるものの、レオパルト2Aの砲口が火を放ち、3人の国連兵が吹き飛ばされる。
残る2人は一番速く駆け出した甲斐もあってレオパルトの55口径120mm滑空砲を喰らわずに済んだが、敵に背を向けて逃げ惑う姿を戦車に随伴しているドイツ歩兵が見逃す筈も無く、せっかく直撃を避け生き延びた国連兵の2人は後ろからドイツ機関銃兵が手にするMG5によって撃たれ、血を撒き散らしながらズタズタにされていく。
「こちらブラボー2、第二演習場前はほぼ壊滅!第一滑走路からの戦力抽出を求む!」
《現在そちらに回せる部隊がいない 現状戦力で持ちこたえろ》
「チクショウッ!!」
ドイツ軍の苛烈な攻撃に徐々に数を減らす国連兵。増援を呼ぼうにも、どこも手一杯だった。
「いいぞ!このまま国連のクソ共を殲滅せよ!」
「ジークハイル!!」
そんな劣勢の国連軍に追い打ちを掛けるようにドイツ軍の猛攻が続く。
ドイツ軍による迫撃によって大地が揺れ響き、その揺れはマクデブルク基地の地下深くにある作戦指令室にまで激しく伝わり、機材や資料が撒き散らされ、室内にいる国連の人間は必死に揺れに耐える。
「クッ━━『アルファ作戦』に出動中の部隊は、まだ呼び戻せないのか!!」
「駄目です!各部隊との通信繋がりません!」
「まさかELID掃討作戦中を狙われるとはな!」
作戦指令室では基地指令官が冷や汗をかきながらオペレーターの報告を整理し、状況の対処に追われていた。
「第二演習場前が制圧されました!第一滑走路は未だ健在ですが、時間の問題です!」
「防衛ラインを基地内部まで後退!遅滞戦術に切り替え、非戦闘員の脱出の時間を稼げ!」
「りょ、了解ッ!」
基地指令官はもはや味方増援が来るまでの防衛は不可能と判断し、非戦闘員が脱出できるまで基地が制圧されないように戦闘中の部隊に時間を稼ぐように命令する。
だが、その行動はツァールトハイトに見抜かれていた。
「もうそろそろか…もうすぐ国連兵共が基地を放棄して逃げ出すだろう。奴らが脱出する際に、必ず脱出する国連兵に紛れてティミッド基地指令官が脱出する筈だ。━それも自分だけ悠々と車かヘリ…あるいはその両方でな」
「あら…どうしてそれが分かるのですか?」
「なに…哀れな愚者の妄想さ」
「本当の事は言ってくれませんのね。…いけずですわ」
何故そうもはっきりと基地指令官が脱出できると断言出来るのか不思議に思ったkar98kがツァールトハイトに聞くが、冗談を混ぜた返答しか帰ってこなかった。
それはツァールトハイトが人形に対して信用はしないという意思の現れだと悟ったkar98kは、わざとらしく悲しそうに妖しく目を伏せる。
「それにしても両方とはどういうことですの?」
「ああ…それは、どちらかは囮ということだよ。それに同時に脱出する国連兵さえも彼にとっては囮だ」
「なるほど…自身の為ならば部下をも使い捨てると」
ツァールトハイトは静かに頷き、Kar98kの言葉に肯定する。
「あの基地には地下から地上に続く車道用の隠し通路がある。それを悟らせないように多くの国連軍兵士あるいはスタッフを脱出させ、ダミーとする狙いなのだろう」
それはティミッドが車で逃げることを確信している言葉だった。
「でも閣下は何故か、その隠し通路を知っていた…当ててみましょうか?」
そう言いながら無邪気な小娘のように微笑むkar98kに対してツァールトハイトもニコリと笑いながら彼女の言葉を待つ。
「普通なら基地にスパイを送り込んだと考えるのが妥当なのでしょうけれども…閣下は違う」
「ほう…」
「実は閣下でも基地の内部構造までの詳細な情報を入手していない。…ただ基地とその周辺の地形、さらにティミッド指令官の性格と経歴を事細かくにプロファイリングし、それらの情報を統合させ、脳内で隠し通路の存在を立体的に割り出した…━━違いますか?」
「ふむ…面白い推理だね。短絡的なクーデターを起こし、独裁者の悦に浸っている私がそこまで有能な人間に見えるのかい?」
くつくつと笑うツァールトハイトにkar98kは、さも当然かのように彼が有能な人間であると肯定する。
「ええ!だってそんなものは貴方がわざとそう見せてるだけの、虚像の姿に過ぎないではありませんか」
そう言いながらkar98kは椅子に座るツァールトハイトに机越しに顔を肌と肌が触れ合うギリギリの距離までグッと近付け、彼の両頬に両手を添えるように触れる。
「ツァールトハイト・ヴァム・クラウン様…貴方様はその名の通り、自ら『おどけ役』を演じて人々を惑わし、観客を意のままに操る道化師そのもの…」
「仮にも組織の統率者を道化師呼ばわりか…ふふっ、面白い」
kar98kは彼の両頬に添えた手に少し力を込め、頬から目元までゆっくりと、しかし官能的に指先を這わせる。
「貴方様を理解したくば、欺瞞で固められた表面を見ては駄目…貴方様から発せられる言葉一つ一つも鵜呑みにしてはいけませんわ。
閣下はこの反逆を持ってして一体何を望むのかしら…独裁者となって贅の限りを尽くす?違いますわ…では、文字通り祖国ドイツ救済のため?それも違いますわ…それとも━━個人的な復讐のため?いいえ、それすらも貴方様の本質では無い…ならば一体どれが本当の貴方様なのでしょう…ね?」
「実に簡単なことだよ…私はただ戦争がしたいだけの狂人さ」
尚もおどけるように彼女に対し、川を流れる水のような清らかな声で言葉を掛ける。
「本当に嘘つきな御方ですわ…」
そうして彼女はとても残念そうに彼の頬から手を放して後ろに下がるように距離を取る。
「そういえばティミッドが地下の隠し通路から逃げるという話でしたけれど、何か手は打ってるのでしょうか?」
「勿論だとも…既に奴らが通るルートは割り出している。それに合わせて襲撃用の部隊を配置済みだ」
「流石ですわ」
「万が一に奴がヘリで逃げることを選択した場合にも備えて、基地に突入させた機甲師団がヘリを撃墜する算段だ」
「まぁ…わざわざ囮の方も排除致しますの?」
kar98kが口元に手を当てて意外そうに驚く。
「囮を撃墜するのに割く時間も惜しいといえば惜しいが、わざわざ生かしておく意味もないからな」
「うふふ…貴方様は敵にとって悪夢のような御方ですわね」
「あまり誉めてくれるな…私が調子に乗ったらどうしてくれる?」
「そう仰っておられる間は大丈夫ですわ」
そんなジョークを言い合ったツァールトハイトは目の前にあるモニターを見ながら無線を取り出す。
「さて、そろそろ頃合いだろう。作戦中の各員へ伝達、作戦を最終フェイズへ移行…諸君らの力を持ってして我等ゲルマン民族の力と祖国への忠誠心を知らしめてやれ」
基地施設内部に侵入を果たしたドイツ軍兵士達は建物内のフロアを制圧しようと、国連兵と戦闘を繰り広げながらもツァールトハイトからの指示を受け取る。
「総統閣下のために!我等が愛するドイツのために!ジークハイルッ!!」
構えているG36で射撃しながら一人のドイツ兵がそう叫ぶ。
それに呼応するように「オオォーー!!」と回りのドイツ兵達が雄叫びを上げ、室内に響き渡る。
「このイカれ狂信者共がッ!…ぎゃッ」
応戦しようと壁から顔を出した国連兵の頭部に風穴が空き、身体が崩れ落ちる。
だが、撃たれた国連兵がいた場所から全身を強固な装甲で覆われ、左手に半身をカバーできる盾を装備した機械兵『イージス』が3体現れた。このイージスもテュポーン同様に新ソ連からの輸入品であり、カラーもブルーへと変更され、身体の一部と手にしている盾に『UN』と書かれている。
「ブリキ人形のお出ましだ!」
「ん?あれは…」
一人のドイツ兵がイージスがいつもの電撃武器ではなく銃を手にしていることに気付き、イージスの右手に持っている銃を注視した。
「なッ…あのイージス…マシンガンを持ってるぞッ!」
「チッ…!隠れろぉ!!」
イージスがマシンガンを装備していると気付いたドイツ兵達は咄嗟にそれぞれ自身の近くにある遮蔽物に隠れるが、4人のドイツ兵が仲間が隠れる時間を稼ぐために遮蔽物から身体を出し、射撃を続けていた。
そしてイージス達は身体に被弾しながらも、隠れなかったドイツ兵達目掛けてマシンガンを連射する。
結果ドイツ兵4人はマシンガンの銃弾を何十発もその身体で受け止めることになる。
ドイツ兵達は自身の身を鉄の雨に貫かれていくのを感じながら意識をシャットダウンし、地面へと倒れていく。
イージスが現れてから、わずか30秒ほどの出来事であった。
「ラケーテン準備よし!フォイアー!」
しかし仲間の犠牲を無駄にすることなくドイツ兵がパンツァーファウスト3とよばれるロケットランチャーを構え、発射の掛け声と共にランチャーをイージスを狙って撃つ。
ロケット弾を喰らったイージスは盛大な爆音と周りのイージスを巻き込んだ爆風と共に粉々に砕け散った。
「ここのフロアは制圧した!急ぎ、次のフロアに向かうぞ!」
ドイツ兵の隊長が部下達を連れて次のフロアへと移動しようとした時、フロアの窓の外から風を切るようなプロペラの音がして、窓の外を見る。
すると国連のヘリが基地から飛び立ち、脱出をしていた。
「目標のヘリを発見!現在逃走している!」
《了解!TOWによる攻撃を開始する!》
ヘリが逃走しているのを発見したドイツ兵の隊長は自分達がいる施設の外で待機している味方戦車部隊に報告した。
報告を受けた戦車部隊は未だ遠く離れていないヘリを狙い、砲塔側面に左右2本ずつ装着しているBGM-71 TOW(ミサイル)を発射する。
発射されたミサイルは2本の有線で接続され、砲手が手動で目標まで誘導する。
ミサイルは真っ直ぐに目標のヘリまで飛んでいき、国連のヘリはチャフを展開するもミサイルは有線式のため効果がなく、そのまま無慈悲にもヘリに着弾し、大きな音と共に爆散する。
破壊されたヘリは燃え盛りながら地上へと墜ちていく。
《こちらアイゼン1 目標のヘリを撃墜した。確認してくれ》
《こちらHQ こっちでも確認できた。アイゼン隊はそのまま待機して施設内に突入した味方部隊を防衛しろ》
《アイゼン1 了解》
一方もう一つの目標…ティミッドが乗るSUVが基地から離れ、マクデブルクから東隣にあるケーニヒスボルン経由で逃走していた。
「くそッ…奴らめ!この屈辱は絶対に忘れはせんぞ!」
「しかしティミッド指令…ドイツ軍は一体どうやって我々のレーダーを掻い潜ったのでしょうか?」
逃走するSUVの中で何故ドイツ軍が奇襲できたのか気になった護衛の兵士がティミッド指令官に聞いた。
「恐らく、奴らはコーラップス汚染によってレーダーでは探知出来ないルートを通って来たのだろう…」
「まさかイエローエリアを?イエローエリアといってもELIDがウジャウジャいるのに」
「そのまさかだ…あのドイツ軍はイエローエリアの中をELIDを排除しながら進んだんだ…丁度その頃我々の主力部隊はコルビッツ=レッツリンガー・ハイデでELIDの掃討作戦中だった。我が軍の攻撃によって激しい戦闘音がしていたはずだ…奴らにとっては自分達の音をかき消せる、いいチャンスだったろうなッ!」
マクデブルクの北にあるコルビッツ=レッツリンガー・ハイデは、かつては緑豊かな自然が美しい国立保護区だったが、今ではコーラップス汚染の影響で見る影もないほど荒廃しており、ELIDが支配するレッドエリアとなっている。
ツァールトハイト率いるドイツクーデター軍はレッドエリアに国連軍が出撃している間に国連軍とELIDによる戦闘音で自軍の音をかき消し、イエローエリアを突破した。
そしてマクデブルク基地に奇襲を仕掛け、自分達の帰る場所が襲われたことに気付いた、レッドエリアに出撃中の国連部隊は急いで基地に戻ろうとしたが、ツァールトハイトの命令によって待ち伏せしていたドイツ軍の戦闘ヘリ部隊によって国連部隊は壊滅した。
このお陰でドイツ軍は背中を刺されることなくマクデブルク基地攻略に集中することが出来たというわけだ。
「なッ…あれは!?」
突然ドライバーがサイドミラーで後方を見て驚く。
つられて車内の者も全員が後ろを見ると、ドイツ軍が保有する中型ヘリ『NH90』がティミッドが乗るSUVへと迫っていた。
「なッ、何故この道がバレたッ!?」
「全速力で走ります!しっかりとお捕まり下さい!」
ドライバーが追っ手のヘリから逃げる為にアクセルを全開で走らせる。だが、ドイツ軍のヘリは車の左方向へと並走させ、それに合わせてNH90の右サイドのハッチが開く。
すると中から黒い制服の上にコートを身に纏い、頭に軍帽を被った女性の姿が現れ、自身の身長とほぼ同じ長さのある対物ライフルを持ち、逃走するSUVを狙っている。
「外すなよ、PzB39」
「分かってるわ」
同じくNH90に搭乗しているドイツ兵からPzB39と呼ばれた女性は戦術人形であり、自身の名と同じ対物ライフルを構え、ティミッドが乗る車を狙っている。
同時にSUVのドア窓から護衛が半身を出してNH90に向かって銃を撃つ。
放たれた弾丸はNH90に数発着弾するが、PzB39の排除までには至らず、PzB39はSUVのフロントエンジンを狙い撃つ。
エンジンを撃ち抜かれコントロールを失ったSUVはフラフラと右左と激しく揺れ、やがて車体が横転し始めて、ドア窓から半身を出していた護衛を振り落としながら転げ回る。
やがてSUVは逆さまの状態で停止して、大破したSUVの前にUH60が降りる。
逆さまになったSUVから護衛の国連兵士2名が這いつくばりながら出てくる。
護衛の兵士達はすぐに立ち上がって接近するドイツ軍のヘリに応戦するも、すでに降り立っていたドイツ兵士達によって射殺される。
自分達を妨害する者がなくなったドイツ兵士達はそのままSUVへと近付く。
SUVの中ではティミッドが逆さまになった車から脱出しようともがいていた。
ドイツ兵達は少々乱暴気味にティミッドを車の中から引っ張り出す。
外に出されたティミッドは左右の兵士に両肩を押さえつけられ、コンクリートで固められた地面へと座らされる。
「私にこんなことをしてタダで済むと思うなよ!」
「侵略者風情が黙れ!俺達ドイツ人が苦しむ姿を見ながら何も助けもしなかったくせに!!」
ティミッドに積年の怒りをぶつけたドイツ兵はティミッドの目の前に手のひらサイズの円盤状の機械を置いた。
するとその機械から人の形をしたホログラムが現れる。
よく見るとそのホログラムの人物は現在前哨基地で指揮を取っているツァールトハイトだった。
「ごきげんよう、ティミッド司令殿。調子はいかがですかな?」
「貴様…!テロリスト風情がよくも国連基地を!我が基地の戦略的重要性を知っての所業か!」
「戦略的重要性?ふっ、そんなものマクデブルク基地にあるものか」
「な、なに!?ならば何故基地を襲った!?」
読みが外れたティミッドは驚いた。
ティミッドは当初マクデブルクの広さに目をつけ、後にドイツ軍の大規模な駐屯地とするため…あるいはそれ以外の戦略的観点からマクデブルク基地を襲ってきたのだと思いっていた。
「確かにマクデブルク基地は素晴らしい広さだ…軍の施設とするにはうってつけだろう。━━しかしだ。見晴らしのいい場所というのは今日のように弱点ともなるのだ。おかげで支援砲撃だけで十二分に基地の防衛力を削ぐことが出来た」
「くっ…」
ツァールトハイトは偵察ドローンで基地の全体を観察し、国連兵が防衛ラインを築く位置、強力な戦車等が格納されている格納庫、国連無人機の精度を向上させるレーダーアンテナを稼働させるための電力元…それら全てを割り出して支援砲撃を担当する砲兵師団に伝達していた。
「さて、ちょっとした奇襲を行えばテロリスト風情でも制圧出来るような基地のどこに戦略的重要性があるのだろうか?」
「ひッ…」
ティミッドに薄く笑いながら問いかける姿は、ホログラム越しとはいえティミッドには彼が悪魔のような存在に思い、反射的に小さく悲鳴を出す。
「…我々がマクデブルク基地を襲撃した理由はただ一つ。━━マクデブルク基地で研究されている物を『破壊』するためだ」
「何故部外者の貴様がそれを!?それを知っているのはレベル5以上のアクセス権限を持つ者だけだなのだぞ!」
「ティミッド司令…あれはこの世にあってはならない物だと思わないかね。ソレを求めて人類同士で争い、自滅する。ELIDという人類共通の敵を倒さねばならないこの時に」
「貴様に何が分かる!あれは…人類の未来のための研究だ!」
「そのためなら罪も無き民をモルモットにしても良いと?」
「……致し方ない犠牲だ。彼らは我等人類の糧になり、彼らの献身は未来永劫子孫達に語り続けられるだろう」
「ならば我等の軍事的行動によって出る犠牲者も致し方ない犠牲ですな…当然ティミッド司令…貴方の犠牲も」
ツァールトハイトの言葉と共にヘリで待機していたPzB39がティミッド司令に向けて銃を構える。
「人は大義のためなら如何なる行動も正当化される…人々のため、正義のため…だが残念な事に自分にとっての正義は誰かにとっての悪ともなる。大義のため正義を行使するということは他人から悪だと非難される覚悟が必要だ」
「覚悟だと!?いくら口から立派な持論を語ろうが貴様達がやっていることはただのテロ行為だ!!」
「ははははっ!ならば国連が秘密裏に行っている非人道的な実験はテロ行為ではないと?この私がお前達のやり方を知らないとでも?」
「くっ…アレを軍事利用するでもなく破壊するなど愚かな選択だ」
「愚かどうかは後の歴史が証明するさ」
そう言いながらツァールトハイトはティミッドに背を向ける。
「ではさようなら、ティミッド司令。━━PzB39、後始末は任せたぞ」
「ヤー♪」
ツァールトハイトのホログラムが消え、その先をティミッドはゆっくりと目線をやれば、そこには『死』が待っていた。
《ティミッドのバイタルが消えた》
《なに?…まぁ奴も計画に噛んでいるとはいえ所詮はただの駒だ…そう困ることもあるまい》
《だが我々の計画の存在が何者かにバレていると考えていいだろう》
《では少し早いが実験を再開させよう》
《同意する》
《同じく》
《異論はない》
《それではオペレーションD(デルタ)を発動する…この実験によって出る犠牲者は推定1000万人といったところか》
《それで済むなら安いものだ》
《我等の計画のために我等はそれ以上の犠牲を払っているのだ…今さら誰にも止められんよ》
《そうだな…全ては新世界の輝きとなるべく》
《新世界の輝きとなるべく》
《新世界の輝きとなるべく》
《新世界の輝きとなるべく》
タンクソルジャーレコード
エッボ・アウラー曹長 KIA
コールサイン:アイゼン14
AEG:38
所属:ドイツ陸軍第1装甲師団第25戦車大隊
Battle tank:レオパルト2A7+
第三次世界大戦中にバルト三国一帯を掛けた戦いにて新ソ連軍相手に奮戦。
しかし、停戦後にやっとの思いで故郷であるドイツ・ザクセン州ローバウに帰郷するも、既にそこは新ソ連軍によって更地にされてELIDが徘徊しており、かつての美しい街並みは見る影もなかった。
肝心の政府は敗戦に近い不利な状況もあってか他国の言いなりになっており、国内の復興すらしない有り様で、その状況に絶望している中ツァールトハイト・ヴァム・クラウンの演説を聞き、故郷を取り戻したいという気持ちから彼のクーデターに参加した。
だが、国連軍マクデブルク基地襲撃作戦の際に敵無人戦車のテュポーンの砲撃によって自身が乗る戦車が大破炎上し、アウラー曹長の体も炎で焼かれ始め、戦車の外に逃げるも戦死した。
なお同車に搭乗した他2名も砲撃が直撃した際に戦死している。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
宜しければ感想や評価など頂けると作者の励みになります!
次回もお楽しみに!