ニワカは相手にならんよ(ガチ)   作:こーたろ

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第127局 牌を愛する者

 

 

 

 これは、いつかの記憶。

 

 たくさんのカメラに囲まれた対局室で、自チームのユニフォームを着て戦っていた頃のこと。

 

 

 

 『さあ、勝負はオーラスに突入です……!現在総合得点首位はアベニューズ、2位のオーシャンズは倍満ツモか跳満の直撃でアベニューズをかわして優勝になります!倉橋この条件をクリアすることができるのか!最年少雀士に期待がかかります!』

 

 

 心臓の鼓動がうるさい。どれだけ落ち着け、落ち着けと言い聞かせても、鼓動が鳴り止んでくれることはない。

 残された局はあと一回だけ。

 

 条件は倍満のツモ。対面に座る完璧な打ち手が、跳満の直撃など許してくれないのはよくわかっていた。

 

 祈るように、配牌を開く。

 

 

 

 倉橋 配牌 ドラ{七}

 {239一一二三六七九東南西} 

 

 

 

 わかりやすくていい。勝機は萬子の染め手に絞ることができる。リーチをかけてツモって、その手が清一色であればその時点で条件クリア。

 ここから先は絶対に打牌ミスは許されない。自分の麻雀人生の全てをかけて、この手を仕上げることを決意した。

 

 

 しかし、そう簡単に手が育ってくれるほど、麻雀は甘い競技ではない。

 出和了りは目指さない。一直線に萬子の染め手に向かう。

 

 そう決めて一直線に進んでも、なかなか手牌は進まない。

 

 一枚一枚を祈るように手を伸ばし、手牌の上に重ねる。

 

 

 

 「ポン」

 

 

 

 対面に、役牌の{中}を鳴かれる。

 

 冷や汗が流れた。

 自分は清一色がほぼ条件。混一を目指さないのであれば、字牌を残すのは良い選択とは言えなかったか?

 対面が苦しい形から鳴くはずはない。防御面も、速度も、申し分ない形から鳴いているのだろう。

 

 焦りが、身体中を支配する。

 早く来てくれと、聴牌してくれと、必死で叫ぶ。

 リーチという発声さえできれば、もしかしたら対面はオリてくれるかもしれないから。

 

 

 

 

 

 

 現実は残酷だった。

 いや、むしろ当然の決着を迎えたと言うべきか。

 

 

 奇跡は、起きなかった。

 

 

 

 対面が、ゆっくりと、手牌を開く。

 

 

 

 

 

 

 『ツモったああ!これでオーシャンズの夢は断たれました!今シーズンも優勝はアベニューズです!』

 

 

 

 

 

 悔しさで、脳がはち切れそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 南四局(オーラス) 親 照

 

 

  点数状況

 

 1位 白糸台  宮永照 119600

 2位  晩成 小走やえ 105000

 3位  姫松 倉橋多恵 100400

 4位 千里山 園城寺怜  75000

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 会場の熱気は、まさに最高潮。

 

 全員がこの世紀の一戦の決着を目に焼き付けようと、大きな歓声を上げている。

 

 

 南四局(オーラス)が、始まろうとしていた。

 

 

 

 

 『長かった、本当に長かった先鋒戦はついに後半戦オーラスを迎えます!!』

 

 『千里山のコはちょっとトップまで離れちゃったケド……姫松と晩成はそれぞれトップまでの条件がありそうだねい。知らんけど』

 

 『はい。晩成の小走選手はトップまでの点差が14600……つまり跳満のツモか満貫の直撃で順位は入れ替わります。次に姫松の倉橋選手ですが、トップまでの点差は19200……倍満のツモか跳満の直撃で入れ替わりますね!』

 

 『んで千里山のコは3着のクラリンまで25400。倍満ツモでも届かないし、素直に素点回復に行くかもしれないねい』

 

 『そうなりますね……倉橋選手と小走選手もこれは先鋒戦ですし、後ろに託すと言った意味でトップに届かない点数でも和了する可能性はありますよね?』

 

 『……本当にあの二人を見て、そう思うかい?』

 

 『……!ここまできたら、二人ともトップを狙いに行きますか……!』

 

 

 咏の挑発的な物言いに、会場も盛り上がりを見せる。

 咏も何も冗談でこんなことを言っているわけではない。普通に考えれば針生アナの言う通り、トップに無理やりこだわらなくても良い点差だ。なにせさっき和了ったのがチャンピオンで、その和了が倍満ともなれば、次の和了は役満クラスの可能性がある。低い打点でも照の和了さえ防げば、次鋒戦につながる和了になるだろう。

 

 しかし、咏は見た。

 やえと、多恵の瞳を。

 

 

 だから咏は直感する。

 

 

 この二人は、トップを見ている、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 多恵が、呼吸を整える。

 大丈夫、焦りはない。無駄な感情は、全て排除している。

 

 この一局に全力を注ぐ覚悟を決めて、多恵は配牌を開いた。

 

 ゆっくりと、理牌する。

 

 一つ一つをかみしめるように整えて……ピタリ、と多恵の手が止まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 多恵 配牌

 {239一一二三六七九東南西}

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (え……?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 強烈な既視感。

 見間違えるはずもない。

 

 多恵の全身から鳥肌が立つ。

 

 

 

 

 

 これは、あの時、()()()()()()配牌だ。

 

 

 

 

 

 

 

 (はは……本当に……麻雀って面白いなぁ……)

 

 

 

 麻雀において、配牌のパターンは何百億通りとあると言われている。

 一生を麻雀に捧げた人間であっても、全く同じ配牌が来ることなどほぼ、ありえない。

 

 しかし今、実際に多恵の目の前にある配牌は、あの時と……全く同じ。

 

 控室に戻って何度も見直し、なにかできることはなかったのかと探し続けた、あの配牌だ。

 

 大きく息を吸って、吐く。

 

  

 

 ならばやることは一つ。

 

 

 

 

 

 

 (やってやる……見ててね皆。私の……麻雀人生をかけるよ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 さあ、最後の大勝負だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 照 配牌

 {②④79一五東白白発発中中} ツモ{六}

 

 照の予想通り、手の速度自体はそこまで早くない。

 しかし打点の種は……大きすぎる打点の種は手の内に存在する。

 

 これが成就すれば、間違いなく決め手になるだろう。しかしそれは、手なりで打っても上手くいくとは限らない。

 もうこの段階で6ブロック……ターツオーバーなのだ。この局の間に必ず、照に選択が求められる。

 

 そんな手牌を前にして、照の身体に変化が出てきていた。

 今まで一度も意識したことのなかった感覚。

 

 

 

 心臓の鼓動が、聞こえている。

 

  

 

 

 (あれ……なんだろう、この感覚……)

 

 

 ふわふわと落ち着かない気分の中、照が{東}を打ち出した。

 

 

 不思議と、嫌な感覚ではない。

 ルールも知らずに無邪気に牌と向き合っていたあの頃のような……。

 

 

 

 (そっか……私は今……麻雀を打っているんだ)

 

 

 

 

 宮永照は、今確かに麻雀を打っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 五巡目 多恵 手牌

 {23一一二三六七七八九九西} ツモ{③}

 

 

 

 

 手牌は順調に伸びている。

 字牌の処理も無事終わり、後は、清一色に持っていくか、チャンタ系に未練を残すかだが……多恵は迷わない。

 

 迷いなく持ってきた{③}を打ち出していく。

 

 後悔しない、打牌選択を。

 

 それを積み重ねてきたから、今の多恵がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな打牌を続けていた多恵の手に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 六巡目 多恵 手牌

 {23一一二三六七七八九九西} ツモ{九}

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 火が燈った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『……おいおいおいおいマジかよ!やれんのかクラリン!なあ!!!』

 

 『そんなことが……!準決勝を見ていた方なら記憶に新しいかもしれません!倉橋選手の、奇跡の和了を……!私達はもう一度、見ることができるのでしょうか!今まさに、その手に奇跡が宿ろうとしています……!』

 

 

 

 熱狂は加速する。

 

 一度奇跡を見たからこそ、再び起こるのではないかと期待する。

 

 あれだけ厳しい現実を見た。

 苦しい配牌を与えられ、ひたすら和了られ続けるだけの時間があった。

 

 だからこそいいじゃないか。ここで奇跡を信じても。今だけはそんなドラマチックな奇跡を見せてくれと誰もが願う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 多恵の行く道を照らすように、燈火が灯った。

 

 

 

 

 

 

 八巡目 多恵 手牌

 {3一一二三六七七八九九九西} ツモ{四}

 

 

 

 

 

 

 (これ……は……)

 

 

 多恵も、気付かないはずはない。

 準決勝でのあの奇跡の和了り。それをもう一度再現するかのように、多恵の足元を、まばゆい光が照らしてくれる。

 

 心臓が暴れ出す。

 

 手が震えるのを必死に抑えようと、多恵は自身の太ももの上で拳を強く握りしめた。

 

 

 

 

 多恵が切り出した{3}にまた一つ、燈火が灯る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (……)

 

 

 

 その様子に気付いた照が、目を細めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 九巡目。

 

 

 

 

 

 

 「ポン……!」

 

 

 動き出したのは、怜だった。

 怜も大人しくトップ争いを見ているつもりはない。

 

 

 怜 手牌

 {①①②②④赤⑤赤⑤⑧⑧西} ポン{⑨⑨横⑨}

 

 

 

 (未来が視えないんは、怖いなあ……けど、こんだけ勝てへんくなって、ようやく思い出したわ)

 

 怜の瞳に、もう未来は視えていない。

 思い出すのは、千里山の皆に囲まれて行っていた特訓の日々。

 

 怜を突き動かす原動力は、弱い自分を見捨てなかった、仲間に報いたいという想い。

 

 

 「それもポンや……!」

 

 

 やえから出てきた{⑧}もポンすることで、一歩前進。

 順位は変わらなくても、怜には次に繋ぐという使命がある。

 

 

 

 前に進もう。

 

 

 

 そう思った、その瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 「リーチ」

 

 

 

 

 暴風が行く手を阻む。

 

 怜の手を……全員の手を強引に止めるために、チャンピオンからのリーチがかかる。

 

 

 

 

 『チャンピオン宮永照!!リーチに行きました!!!何故リーチに踏み切ったのでしょうか……?』

 

 『いやー知らんし。まあ……これは完全に手を止めるためのリーチだろうねい……全員が、チャンピオンのリーチは打点が恐ろしく高いことを知っている。だから、千里山のコもどれだけ通りそうであっても安牌でなければ切らない。切れない。……そしておそらく、チャンピオンはこの手をリーチをかけても和了れる自信がある』

 

 

 場面は最終局面へと向かおうとしていた。

 

 吹きすさぶ嵐の中、多恵が小さな灯りを頼りに広い海の中を必死に前に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 十一巡目 多恵 手牌

{一一二三四六七七八九九九西} ツモ{七}

 

 

 聴牌。待ちは{一七}のシャンポン待ちだ。

 

 

 しかし多恵の足元を照らす光が教えてくれる。

 これは最終形ではないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 十二巡目 やえ 手牌

 {②③④233445赤57二三} ツモ{四}

 

 

 

 照の宣言牌は{一}。

 やえは照の聴牌に間に合わなかったことを察している。

 

 この手が和了れる可能性がかなり薄いことも感じている。

 チャンピオンが……恐ろしく高い打点で待ち受けているであろうことも理解している。

 

 それでも、条件ができた。

 チャンピオンはリーチを打っている。直撃の可能性だってあるのだ。

 

 そしてもう一つ、強烈な存在感を放つのは……。

 

 

 (多恵……あんたはやっぱり……)

 

 下家に座る多恵の手に、炎が宿っている。

 

 準決勝でも見た、あの光景。

 

 おそらく、手は染まっているだろう。

 同じ役満の可能性だってある。

 

 

 

 それでも。

 

 

 (ここで引いたら……晩成の王者として、あの子たちに示しがつかない)

 

 勝ちの可能性があるのなら、進むのをやめない。

 自分の打ち方をここまで貫いてきたから、後輩たちはついてきてくれた。

 

 

 

 やえが手牌から引き抜いた{7}を、天高く振り上げる。

 

 

 晩成の旗の下集まってくれた後輩達のために。

 

 

 

 倒れるなら、前のめりに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 十二巡目 多恵 手牌

 {一一二三四六七七七八九九九} ツモ{五}

 

 

 

 

 

 

 

 最後の炎が、燈った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『聴牌!!!!倉橋選手、役満九蓮宝燈の聴牌!!!私は待ちはわかりませんがとりあえず{七}を切って{一}で和了することができたなら!!!準決勝奇跡の再現!山に一枚、{一}はあります!もうすぐそこに奇跡があります!!!』

 

 『おいおいおいおいマジか!!行けよ!!!クラリン!!!私達に見せてくれよ!麻雀の面白さを!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 牌を愛する。

 

 麻雀という競技に一生を費やし、何万、何十万という対局を重ね、幾度も麻雀の理不尽や、不平等に振り回され。

 それでも、和了できた時の嬉しさや、読みがハマった時の嬉しさ、そして何より、皆で楽しく麻雀を打つことの喜びに魅せられた彼女は、麻雀が大好きだった。

 

 

 それは、昔も今も、きっと同じ。

 

 

 

 

 

 (……ここまで連れてきてくれて、ありがとう)

 

 

 

 多恵が、目を閉じる。

 

 激しい嵐の中、この世界で築き上げてきた努力と仲間たちの燈火のおかげで、ここまで到達することができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとは、自分の腕で、身体で、たどり着けるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一枚の牌を、ゆっくりと持ち上げる。

 

 

 

 さあ、行こう。

 

 

 

 倉橋多恵の麻雀人生が、嘘ではなかったと証明するために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「リーチ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 絞り出すかのように出した声と共に、多恵が河に牌を置く。

 

 

 

 

 

 横に曲げた牌から、ゆっくりと多恵が手を放した。

 

 

 

 

 その牌は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 {一} だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『……え?』

 

 『……はは……ははははははははは!!!!そうだよな!私が間違ってたよクラリン!!そうだ!クラリンは必ずそう打つさ!!』

 

 

 

 

 打{一}。つまり。

 

 

 

 

 

 

 多恵は、役満九蓮宝燈の聴牌を拒否したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

 

 

 

 

 

 

 「打{一}の場合、待ちは{三六七八九}の五種十一牌。打{七}の場合は{一六九}の三種六牌……比べるまでもない……か。……なあ倉橋、麻雀というこのゲームは……本当に面白いな……」

 

 

 

 

 「先生……!!先生ならきっと、その選択をしてくださると信じていました……!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 打ち出された{一}に一番目を見開いたのは……照だ。

 

 信じられないものを見るような瞳で、呆然と多恵の捨て牌を見つめる。

 

 いつもはツモ和了に頼る照も、今回ばかりは必ず多恵から出てくる牌で仕留められると思っていたからこそ、出てきた{一}に衝撃を受けた。

 

 

 

 

 そしてそのまま、視線は自分の手牌に落ちる。

 

 

 

 

 

 

 照 手牌

 {四四五六白白白発発発中中中} 

 

 

 

 

 

 

『チャンピオンは、クラリンが九蓮宝燈に向かっていることを分かってた。だからこそ、打{一}として、余るはずの{七}に狙いを定めた……この{一}は、二度と河には出ないと思ったから』

 

 

『けどクラリンは……牌を愛する者は迷わなかった……確固たる意志を持つ打ち手に、牌は応える。チャンピオンも……見ている私達ですら見抜けなかったのは、クラリンの奥底に眠る、自分の麻雀を信じる意思』

 

 

 

『最後に勝負を分けたのは、自分の愛する麻雀を信じた……クラリンの強い意志……いいねぇ、最高に浪漫じゃねぇの!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 照が、静かに目を閉じる。

 

 

 

 

 (……倉橋さん……あなたの意志は……強いんだね)

 

 

 

 照は知っていた。

 この世界にある、必然とも言える力。

 当たり前のように振るわれる力。

 

 人は誰しもその味を知った時、その力に頼ってしまう。

 

 それだけあまりにも甘美で、強烈な誘惑。

 

 照は準決勝の多恵の和了りを見ていた。

 九蓮宝燈というあまりにも大きすぎる誘惑があると思った。

 

 

 だからこそ……多恵の手から余るのは{七}だと疑わなかった。

 

 

 

 

 しかしどうだ。

 

 

 目の前の……《牌を愛する》少女は、最後まで自分の打ち方を貫いた。

 

 

 その光は、照にはあまりにも眩しくて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 照が持ってきた牌を、手牌の上に乗せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (ああそっか……麻雀ってこんなにも奥が深くて)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 楽しいんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ロン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 多恵 手牌

 {一二三四五六七七七八九九九} ロン{九}

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

 

 

 

 「リーチ」

 

 

 穏やかな笑みをたたえて、洋榎が静かに言った。

 

 

 

 

 

 

 「一発なのよ~!」

 

 

 花が咲くような笑顔で、由子が手を大きく振り上げる。

 

 

 

 

 

 

 「清一色……!」

 

 

 漫も目に涙を溢れさせながら、確認するようにその役の名前を言葉にする。

 

 

 

 

 「一気……通貫……!」

 

 涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、恭子が声を絞り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 姫松のメンバー全員が、顔を見合わせて笑う。

 

 

 

 

 

 「「「「ドラ……3!」」」」

 

 

 

 

 

 

――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……32000です」

 

 

 

 

 溢れていた涙を、そっと拭った。

 

 

 その表情は、晴れやかな笑顔で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 牌を愛する。

 

 

 

 

 

 

 文字通り、倉橋多恵の一生分の愛は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 必然の奇跡に届いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最終結果

 

 1位  姫松 倉橋多恵 132400

 2位  晩成 小走やえ 105000

 3位 白糸台  宮永照  87600

 4位 千里山 園城寺怜  75000

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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