ニワカは相手にならんよ(ガチ)   作:こーたろ

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この度、素敵な推薦文をChijanさんから頂きました!ありがとうございます!!
「メニュー」「推薦」から閲覧可能ですので是非皆さんも読んでください。





エピローグ ニワカは相手にならんよ(ガチ)

 

 

 

 

 

 

 

 

――第71回インターハイから、約3ヶ月。

 

 

 

 季節は秋。

 全国の麻雀ファンは、この日の夕方頃からテレビにかじりつくことを余儀なくされた。

 

 それは何故か。

 

 

 『さあ、ついにこの日がやってまいりました!今日の様子を伝えさせていただきますのは私針生と』

 

 『はいは~い。咏ちゃんがやったりますよ~?』

 

 『三尋木咏プロの2人でお送りしてまいります。本日はよろしくお願いしますね』

 

 『よろしくう~。インターハイぶりかあ、懐かしいねい』

 

 『私自身は三尋木プロの対局も実況しているので懐かしさはさほどありませんが……』

 

 『おいおいそんなこと言っちゃ悲しいだろ?視聴者に寄り添っていこうぜえ?』

 

 インターハイの実況解説で会場を沸かせた二人が、今日も現場の実況を務める。

 それはつまり、インターハイに関連が深い催しが、この後行われるということに他ならない。

 

 『いやあそれにしても楽しみですね……!今日という日を待ち望んだ麻雀ファンは多いはずです……!』

 

 『いやー知らんし。まあでも、こんだけ注目されてる選手が多けりゃそうなるわなあ!私も楽しみだよ本当に』

 

 興奮を隠しきれない針生アナの隣で、咏もまた楽しそうに笑う。

 全国の麻雀ファンとは別の視点から、咏はこの日を楽しみにしていた。

 

 

 

 『いったい誰が、私のチームメイトになって、誰が私の敵になるんだろうねい』

 

 

 『あのインターハイを沸かせた少女達がどんな未来に進んでいくのか!ドラフト会議、始まります……!』

 

 

 

 

 

 

 史上最高のインターハイを沸かせた、宮永世代のドラフト会議が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 奈良県 晩成高校 体育館。

 

 大勢の生徒と、マスコミがひしめく体育館は、もう夏は終わったというのに異様な熱気に包まれていた。

 壇上の目の前にはいくつものカメラが並び、フラッシュがこれでもかと焚かれている。

 

 そのカメラ達の少し後ろに位置していたマスコミ関係者が、壇上の中央に座る少女にマイクを向けた。

 

 「小走選手!!どこのチームに所属したい等の希望はありますか!」

 

 椅子に座っていたやえが軽く目配せをすれば、隣に控えていた由華がやえの元にマイクを持ってきた。

 一つ、咳払い。

 

 それだけで、がやがやとうるさかった体育館は静寂に包まれる。

 

 「私を指名してくれるなら、どこのチームでも問題ないわ。私にやれることを全力でやるだけよ」

 

 やえが話をしている間も、フラッシュが止むことはない。

 晩成高校の王者小走やえがどのプロチームに所属することになるのかに、全国の麻雀ファンは期待を膨らませていた。

 

 「では……あえて聞きます。姫松高校の倉橋選手とは、同じチームがいいですか?」

 

 ざわ、と一瞬会場の空気が変わる。

 確かに聞いてみたさはあった。インターハイを賑わせた幼馴染と、同じチームで戦いたいのか、ということは。

 

 「そうね……」

 

 由華が心配そうに、やえの表情を覗き見る。

 小さく、大丈夫よ、と由華に声をかけて。

 

 

 

 

 「本音を言えば、多恵とは戦いたい。最高の舞台で、あいつと勝負がしたい」

 

 

 

 

 おお!と会場が沸く。

 やはり因縁のライバルとは、矛を交えたいのかと。

 

 

 「でも、そうね。もし同じチームになったとしたら……それはそれで、いいものなのかもしれないわね」

 

  

 優しい表情でそう言って見せたやえ。

 その優雅な言動は余裕すら感じさせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「やえ先輩超かっこいいんですケド?!」

 

 「プロかあ……やっぱすごいな」

 

 壇上からは少し離れた位置で、憧と初瀬、そして紀子がやえの様子を見守っていた。

 

 「そりゃどこのチームも欲しいよね。あの魔境のインターハイをあそこまで上り詰めたんだもの。本当に……すごい先輩のもと戦えたよ。私達は」

 

 「はあもう無理かっこよすぎる。写真私も撮っていいかな?」

 

 「気持ちはわかるがやめとけ……」

 

 憧れの先輩の、将来が決まる。

 その瞬間を同じ場所で迎えられることを、3人は光栄に思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『さあ、準備が整ったようです!この放送は、各地の記者会見会場とも繋がっておりますので、指名が入った選手のいる高校にはカメラが行くこともあります!』

 

 『さっきまでの映像で、どれだけこの世代が豊作かは伝わったっしょ?どの選手がどのチームに指名されるか。目を離すんじゃねえぜい!』

 

 

 会場にはいくつもの円卓が置かれ、それぞれにスーツ姿の女性が集まっている。

 その円卓の中央にはチームのロゴとチーム名が表記されたプレートが立っており、テレビを見ている人でもどこがどこのチームなのかがわかりやすくなっていた。

 もちろん、そんなものがなくともコアなファンは監督が誰かだけでチームがわかるファンもいたが。

 

 

 『一巡目の選択希望選手の入力が、終わったようです……!さあ、緊張の瞬間ですよ!』

 

 『いや~ドキドキしてきたねい!きっと指名される側の選手たちも、ドッキドキだろうねい。知らんけど!』

 

  

 カメラの視点は、会場中央奥に固定された巨大スクリーンに固定された。

 ここからは全12チームの指名選手が、1つずつ発表されていく運びになる。

 

 会場にいる関係者はもちろん、プロチーム側も祈るように目を閉じている人が多くみられて。

 

 そんな緊張感が張り詰めるなか、会場で司会を務めるスーツ姿の女性が一歩前に出た。

 

 

 「それでは、全チームの一巡目選択希望選手が出そろいましたので、発表させていただきます」

 

 

 しん、と会場が静まり返った。

 次の言葉を、静かに待つ。

 

 

 『さあ、来ました……!まずは大阪ウルブズから発表です』

 

 『ワクワクだねい……』

 

 

 

 

 「第一巡選択希望選手。大阪ウルブズ」

 

 

 

 

 「愛宕洋榎。姫松高校」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「んあ?」

 

 

 

 「んあ?じゃない!指名だよ指名!!!」

 

 「こんな時くらいしゃきっとせい洋榎ええええええ」

 

 姫松高校記者会見会場。

 洋榎の名前が呼ばれた瞬間どよめきが起こったにも関わらず。

 全く緊張した様子の見られない洋榎の背中を恭子がぶっ叩いた。

 

 「お、おお?ウチか?どーせ1巡目はないやろと思ってボケっとしとったわ」

 

 「言わなくてもわかるわアホ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『大阪ウルブズは姫松高校の守りの化身、愛宕洋榎選手を指名ですか……!』

 

 『まあ地元ってのもあるだろうし、最近は結果出てはいないけど守りのチームだからねい。そんな気はしてたかなー!知らんけど!』

 

 『まずはインターハイ団体戦優勝校姫松高校からエース愛宕選手……!まだまだ注目選手はたくさん残っています!』

 

 

 

 

 

 

 「第一巡選択希望選手。横浜ベッセルズ」

 

 

 

 

 

 「倉橋多恵。姫松高校」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「やった……!多恵!!指名や!!」

 

 「お、おお。ありがと恭子。なんかこう、現実感ないね……」

 

 「おめっとさん」

 

 「対して洋榎は怖いくらいいつも通りだね……」

 

 

 3人に眩しいほどのフラッシュが降り注ぐ。

 いきなりの姫松高校からの2人指名で、会場は大盛り上がりだった。

 

 「そーいやベッセルズのスカウト熱心に来てたもんなあ……!ホンマよかった!」

 

 「そうだねえ……本当に、ありがたいよ」

 

 「……まあ、多恵は競合するやろ。普通に考えて」

 

 「そうかなあ……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『来ました!今回のドラフト目玉の1人、倉橋多恵選手をベッセルズが指名です!』

 

 『まあチームがデジタルを推してるわけだし、取らないわけにはいかないよねえ。ま、一本釣りなんてぜってえできねーだろうけどな!知らんけど!!』

 

 『そうですね……!まだ10チーム残っています!』

 

 

 

 「第一巡選択希望選手。仙台ライナーズ」

 

 「宮永、照。白糸台高校」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白糸台高校記者会見会場。

 

 そこにはカメラに囲まれた照が、笑みを浮かべて頭を下げていた。

 

 その様子を若干引いた目で見ていた菫が、小声で呟く。

 

 「……お前これからずっとキャラ作っていくつもりか?」

 

 「……うん」

 

 「いやキツくなるだけだろ……」

 

 「そうかな、でも……」

 

 カメラからは見えないように、こっそりと菫の方を見た照が答える。

 

 

 「こういうところも、倉橋さんに勝たなきゃ」

 

 「いや有名配信者に人気で勝つのは無理だろう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『言わずと知れたインターハイチャンピオンがここで指名です……!仙台ライナーズは白糸台高校宮永照選手!』

 

 『やっとか、ってくらいだねい。普通なら12チーム全部が宮永ちゃんになったっておかしくなかったのに……ほんと、面白いよねい……』

 

 『さあまだ競合こそありませんが、二大目玉選手が呼ばれました!ここからは競合必至でしょう……!』

 

 

 

 「第一巡選択希望選手。福岡スパローズ……宮永照、白糸台高校」

 

 

 『やはり来ました競合になります!福岡スパローズも宮永照!』

 

 

 「第一巡選択希望選手。大宮ロケッツ……宮永照、白糸台高校」

 

 

 『ロケッツも宮永照……!早くも3チームの競合になりました!!会場がどよめいています!』

 

 『いやいや、まだ足りないんじゃねえの?知らんけど!』

 

 

 

 

 「第一巡選択希望選手。川崎ロードスターズ」

 

 『来ました、次はロードスターズですね!』

 

 『お~、さて誰が私のチームメイトになるのかな?』

 

 

 

 「江口セーラ、千里山女子高校」

 

 

 『江口セーラ選手!インターハイでもその強さを存分に示した千里山の江口選手をロードスターズが指名です!』

 

 『っは~マジっすか!本当に火力バカ大好きだねいウチの上は……ま、いいんじゃねえの?知らんけど!』

 

 

 「第一巡選択希望選手。京都スパーズ……」

 

 

 

 

 

 

 

 その後も滞りなくドラフト一巡目に獲得したい選手が読み上げられる。

 予想通り一番多く一位指名を得たのが照。

 これは彼女が1年生の頃から動き出していたチームもあっただけに当然の結果ともいえるが、その照より1つ少ないながら4チームからの指名を受けた選手がいた。

 

 

 

 『さあ全チームの1巡目指名が終了しました!ドラフト二大注目選手があわせて9チームからの指名を獲得……!やはりこうなりますか!』

 

 『いやあ~知らんし!まあさっきも言ったけど12チーム全部が宮永ちゃんでもおかしくなかったんだ。こんだけ割れたのは、やっぱり最後のインターハイが大きいんじゃねえの?知らんけど!』

 

 『そうですね……!おさらいしましょう。白糸台高校宮永照選手が昨年優勝のグリフォンズを始めとする5チームからの指名!そして一方姫松高校倉橋多恵選手が逆に去年最下位のベッセルズをはじめとする4チームからの指名で競合!ベッセルズとしては是が非でも獲得したいところでしょうか!見事獲得を決めたのは単独指名だった3チームということになりました!』

 

 『実業団選手が1人だけ、か……そんだけ今年は高校生が豊作だったってことだろうねい』

 

 『そうですね、あ、それとなんですが、それに加えておそらく1位指名確実だろうと言われていた選手が何人か呼ばれていません。なのでこれは外れ1位指名もかなり競合するような……』

 

 『あ~……?あ、ほんとじゃねえか!おいおいおいこりゃ外れ1位指名も面白くなるんじゃねえの?!知らんけど!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドラフト1位が読み上げられていくにつれて、場の空気が段々と重くなっていった会場がある。

 

 居合わせたマスコミは最初の頃こそそろそろ呼ばれるだろうと楽観的に見ていたものの、最後のチームが1位指名を読み上げるころには祈るように呼んでくれと懇願する始末で。

 中央に座る少女の横に控えた少女は、冷や汗をかきながらおろおろし始め。

 少し離れた場所に控えていた後輩達も、あ、これまずいかもと空気を察し。

 

 そして話題の中心にいる少女は頬杖をつきながら頬をヒクつかせていた。

 

 

 

 「へ、へえ~……なるほどなるほど……」

 

 「あ、え~っと……やえ、先輩?」

 

 

 晩成が王者、小走やえである。

 

 

 1位指名はほぼ確実と言われていたやえが、その名を呼ばれることは無かった。

 それだけならまだしも、彼女が親しくしている友人達3人は、全員その名を呼ばれた。

 

 その事実が、彼女のプライドを完全におちょくっており。

 

 張りつけたような笑顔を浮かべるやえの額に青筋が浮かんでいることをわからない後輩ズではなく。

 

 「お、おかしいわよ!ほんっっと見る目がないんだから!!」

 

 「そ、そうだよなあ!!!やえ先輩が1位指名されないなんてありえないだろ!!!」

 

 「ちょっと憧、初瀬……!」

 

 やえを慕う後輩達が異議を唱えるものの、その行為自体が更に会場の空気をいたたまれないものにしてしまっていることに気付くはずもなく。

 結果としてやえの隣に控えていた由華が頭を抱えた。

 

 

 「よく、よ~~~~~~くわかったわ……」

 

 

 小さく呟いて、やえがゆっくりと席を立つ。

 

 

 中央の巨大なスクリーンには、無事くじを終えて競合抽選を勝ち取れなかったチームが外れ一位指名を決めている。

 ここからは、抽選に敗れたチームが改めて1巡目指名の選手を発表する運びだ。

 

 

 

 『小走、やえ』

 

 

 やえがハズレ1位指名を受けて、会場に歓声が上がる。

 マスコミはカメラをやえに向け、フラッシュが眩しすぎるほど光り輝く。

 

 『小走、やえ』

 

 そこからは堰を切ったようにやえの名前が呼ばれた。

 外れ1位で6チームから競合。

 まさか残っていると思ってなかったやえが残っていたため、可能性があるなら、と多くのチームがやえを指名した格好。

 

 しかしそれでも、やえの溜飲が下がることはない。

 

 

 『決まりました!!王者小走やえは大宮ロケッツです!』

 

 会場は拍手が起こる。

 改めてマイクを向けられたやえが、一度大きく深呼吸をしてからそのマイクを受け取った。

 

 

 「……まずは、そうね、指名してくださったチームにありがとうございます、と感謝を伝えたいわ」

 

 やえが内心怒り狂っているんじゃないかと心配していた後輩ズは、やえが落ち着いた様子で話していることに一旦安堵。

 

 

 「あと、ここまで私を連れてきてくれた仲間にも感謝を。ずっと応援してきてくれた方々にも。私は一人ではここまで来ることは……絶対にできなかったわ」

 

 「やえ先輩~……」

 

 「やべえ、なんか涙出てきた」

 

 憧れの先輩の晴れ舞台を見ることができて、感極まる後輩ズ。

 

 

 「私ができる恩返しは、結果を残すことだと思うので。プロになってからも、結果で示していこうと思う。それは今までもやってきたことだから」

 

 

 背中で示す。

 それはこの晩成高校の3年間でやってきたことだから。

 

 やえが、深く息を吐いた。

 

 一つ、間があって。

 

 

 

 「……なんだけど」

 

 

 空気が、変わった。

 

 

 

 「私が……外れ1位、ね」

 

 

 

 あ、まずいかも、と、隣に控えた由華は思った。

 

 

 

 

 「ぜっっっっっったいに後悔させてあげるわ……!あいつらよりも結果を残して、私を最初から指名するべきだったって全国に示してやる……!いい?私はね、あいつらに負けてるなんて思ったことは一度もない!関西四天王(カルテット)の中でも最弱とか言われてるらしいけどねえ……!あいつらなんて私から言わせてもらえば全員ひよっこ。ニワカも同然よ!!」

 

 

 

 ヒートアップしたやえが一歩前に出る。

 

 その瞬間、晩成の生徒は全員、次にやえが口走るであろうことがなんとなくわかった。

 

 

 だからそう、一度全員で顔を見合わせて、思わず苦笑して。

 

 全員で口をそろえて言う。

 

 やえ以外は、それはそれは、とてもいい笑顔で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ニワカは相手にならんよ!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ー『ニワカは相手にならんよ(ガチ)』エピローグ 麻雀を愛する少女ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はい、どうもみなさんこんばんは。1日1回、配牌理牌ろくにせずに切った牌が実は対子だったことに切った瞬間気付く、クラリンです。今日も麻雀配信やっていくよ!』

 

 

 

 その風景は変わりなく。

 

 インターハイが終わって4ヶ月ほどが経った。

 この2ヶ月はコクマやら国際試合やらドラフトやらで忙しかった多恵はなかなか麻雀配信ができずにいたが、ようやく落ち着いてきたこともあり久しぶりにパソコンを開いている。

 気付かない内に更に急増していたチャンネル登録者に戦々恐々としながら、それでもテンションはいつもと変わらずに配信を始めた。

 

 動画サイト内で告知をしたこともあってか、配信開始直後からリスナーの数は多い。

 コメント欄が一斉に動き出していた。

 

 ・それはアカン(あかん)

 ・絶対やらないやろwww

 ・インターハイ優勝してますよねえ?!

 ・クラリンインターハイ団体戦優勝おめでとう!!

 ・プロ入りおめでとう!!

 

 おそらくインターハイを見てから登録した人もいるようで、多恵のインターハイ団体戦優勝とプロ入りを祝うコメントが飛び交っていた。

 

 

 『あはは……とにかく、お祝いメッセージありがとう。おかげさまで私達は、インターハイ優勝することができました!!やったね!!!そしてプロにもなれそうです!やったね!!!』

 

 

 ・私達って言うのがクラリンらしいな

 ・おめでとう!!感動した!!

 ・俺たちのクラリンは最強なんや!

 ・おてては……?

 

 『ま、それでもやることはいつも変わらないっす。はいレート戦ポチー。さあ行くぞ~ドコドコドコドコ』

 

 ・いやwww速すぎるやろwww

 ・もうちょいなんかこう、あるやろwww

 ・いつものクラリンだあ(白目)

 ・麻雀狂(褒め言葉

 

 対局開始画面が現れ、東1局の配牌が現れる。

 なにも変わらない、いつものネット麻雀。

 

 けど今の多恵は、こんな誰でもできるネット麻雀をたくさんの人が見てくれていることが嬉しくて。たくさんの人が打ってくれていることが嬉しくて。

 自分がそんな人たちのためにできることは、麻雀を打つことだと思うから。

 

 今日もたくさん、大好きな麻雀を打とう。

 

 

 

 

 

 

 『あ~はいはい出た出た起家引いたら絶対跳満ツモられから始まる説ね。クラリン知ってるよ』

 

 ・い つ も の

 ・絶望のウラウラ

 ・まず1バイーンね

 ・この程度の絶望で、俺たちのクラリンが止まると思うなよ……!

 ・まあ、これくらいはね?多少はね?

 

 

 

 

 

 『は?ちょ、え?一段目に三面張のリーチしたら必ず和了れるって辞書に書いてあるんだけど。なんで追っかけられてるん?おかしいよ?なんで無スジ掴むん?一発はダメ!!ダメ!!!ダメって言ってるだるぉおおおおお!!!!』

 

 ・い つ も の(2回目)

 ・ラスは決まったな(他家目線)

 ・畳みかける2バイーン

 ・今北産業。なんでもうこの人麻雀打ってるんですかねえ……

 ・慈悲はないんですか……?

 

 

 

 

 『勝った!!このリーチは流石に勝ったでしょ!やった!今夜はドン勝だ!さってゆっくり白糸台のコからもらったお茶でも飲もうかな』

 

 ・フラグ建てすぎでは?

 ・他家に和了られる未来がみえるみえる

 ・な~んで和了れると思ったんですか?(麻雀猫)

 ・おてて……

 ・さっきの3面張和了れなかった時点で察するべき

 ・チャンピオンかな?

 

 

 

 『あっ、あーー!!いーけないんだいけないんだ。裏3は犯罪って小学生の時先生に習わなかったのかな?カナカナ?』

 

 ・あれ、残り点数3000点ですけど……

 ・決まったな(諦め)

 ・クラリン壊れちゃうよ……

 ・This is Mahjong

 

 

 『っしゃあああ魂のラス回避リーチ!!!これくらいは!これくらいは勝たせてくださいお願いしますなんでもしますから!!!』

 

 ・ん?

 ・ん?今なんでもって

 ・よくないなあよくないなあ

 ・じゃあおててを……

 

 

 

 『バイーーーーーーーーーーン!!!』

 

 ・おっ、バイーン助かるちょうど切らしてた。

 ・対戦ありがとうございました

 ・【速報】ドラフト1位選手(インターハイ優勝メンバー)トビラス

 ・悪夢をかき集めたみたいな対局でしたね。ええ。

 ・魂のバイーン頂きました。本当にありがとうございます。

 

 

 

 

 

 

 

 やんややんやと。

 

 やけにコメント欄が盛り上がった対局は多恵のラスで幕を閉じ。

 ぜえぜえと息を吐きながら、それでも多恵は心底楽しそうに笑っていた。

 

 そんな動画配信中の画面を見て、ふと多恵は思う。

 

 

 ここまで一緒に歩んできた仲間にも恵まれ。

 切磋琢磨するライバルにも恵まれ。

 こうして応援してくれる人達がこんなにもいる。

 

 

 そう思ったからだろうか。 

 多恵は少しだけ昂った感情を、ちょっとだけ抑えられずに。

 

 

 

 

 『ねえ、みんな』

 

 ・おっ、どうした?

 ・次、いきますよね?

 ・もちろん倍プッシュですよね?

 ・手は来てんだァ……!

 ・いやそれ死亡フラグ

 

 

 いつもと何も変わらないコメント欄に、苦笑しつつ。

 

 こう、聞いてみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『麻雀って、楽しいよね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 心の底から、出た言葉だった。

 

 ちょっと前なら、言うことすら躊躇ったかもしれない。

 けど、今なら言える。

 

 そして皆の反応を楽しみにしている自分がいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・当たり前だるぉおおおん!!

 ・楽しい

 ・クラリンのおかげで、楽しくなった

 ・最近は楽しいかな

 ・クラリンの見てるのは楽しいよ 

 ・超楽しい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ああ、そうか、と多恵は笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (私はこの光景を見るために、きっとこの世界に来たんだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分が笑っている。仲間が笑っている。

 

 

 そして何より。

 

 皆が笑っている。楽しんでる。

 

 

 

 

 『……ふふふ、よーっし!!じゃあ次行こうか!!次は負けないぞ今の下ブレだから次は上ブレ来るってクラリン知ってるんだ!』

 

 ・信頼度0で草

 ・どうしてあんなデジタル打ちなのにこんな信憑性のない言葉が出てくるのか

 ・おてて!

 ・楽しんでるクラリンが見れて俺は嬉しいよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 倉橋多恵は今日も麻雀を打つ。

 心の底から麻雀を楽しむ彼女が、今日も笑っている。

 

 

 

 

 

 

 その笑顔がある限り。

 

 彼女が麻雀を愛し続ける限り。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 物語はきっと、まだまだ続いていくんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ニワカは相手にならんよ(ガチ)』 完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本作は、このお話で一度完結とさせていただきます。
それにあわせて、ここまで本当に、本当に最高な挿絵を提供してくれていた神絵師友人のpixivのURLを貼らせていただきます!!見て!ホンマに神やから見て!!

https://www.pixiv.net/users/20218974

はい。本当にここまでたくさんの最高な挿絵をありがとう、とこの場を借りて感謝をさせていただきます。

最後までお付き合いいただいた皆様にも感謝を!!
なんか団体戦完結で評価めちゃくちゃ頂いて、なんと咲総合評価あと少しで1位のところまで来てしまいました!!
累計300にも入れました!夢か?
本当に、本当にありがとうございました。

気が向いたらやってない個人戦の話や、プロになった後の話でも投稿しにくるかもですが、頻度は多くないと思います。

新作きっと書くと思いますので、作者ページからたまに確認しにきてくれたら嬉しいな!


ではまた会いましょう!

ニワカは相手にならんよ!!!


2022/1/25 追記

皆さまのおかげで咲作品内での総合評価トップ&総合評価pt2万超えを達成いたしました……!!
本当にありがとうございました!!!!


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