ニワカは相手にならんよ(ガチ)   作:こーたろ

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咲日和 いつメンの巻①

 

 

 

「今日はこれで勝負よ!!!」

 

ぴょこんと飛び出した特徴的なサイドテール。

大きな音を立てて教室の扉を開けたのは、小走やえその人である。

 

 

「なんや、藪から蛇に」

 

「それはつついたら出てくるやつだ洋榎……」

 

中等部麻雀教室。

珍しく来るのが遅いやえを待ちながら、めくりに興じていた洋榎と多恵とセーラ。

やっと来たかと思えば、やえは片手になにか袋を抱えていた。

 

 

「あんたたちと麻雀でいくら戦ってもなかなか勝敗がつかないから、新しいゲームを提案するわ!」

 

基本的にこのメンバーで麻雀以外のことをやることは少ない。

そういう意味では面白い提案なのだが、その前の前提条件に異議がある者が1人。

 

 

「いや、最近オレ一番勝ってるんやけど」

 

「うるさいわね」

 

「ええ……」

 

どこかの国の総統もびっくりの独裁ぷり。セーラの言葉にまるで聞く耳を持っていない。

 

ゴソゴソと袋の中からやえが取り出したもの。

 

 

「これよ!」

 

「おお~Wi〇やんけ~」

 

コンシューマーゲーム機。数多のカセットが出ているこのゲーム機は、今や国内で一番売れているハードといっても過言ではないだろう。

ちなみにだが麻雀のゲームができるカセットも多数ある。

 

 

「麻雀では実力が拮抗していることはよくわかったわ」

 

「え、でもトータルでもやえの成績悪「多恵?」なんでもないですハイ」

 

まさに王者の貫禄。誰にも話を邪魔させないその風格は、王者という言葉に相応しい。

洋榎などはもう何も言わず諦めたように天を眺めている。

 

 

「麻雀で決着がつかないなら、ゲームで決着つければいいじゃない……!!!」

 

「なるほど……。……なるほど?」

 

多恵は首をかしげた。

 

超理論である。

実際の所の真意はと言うと、やえが最近の負け続きムードを払拭するために気晴らしをしようという提案なのだが。

 

 

「ええ~ゲームそんなに得意じゃないんよなあ~」

 

「なに?逃げるのセーラ?」

 

ガシガシと頭をかくセーラに対して、やえが挑発的な笑みを浮かべる。

 

 

「ほお……そこまでいうならやってやろーやないの!」

 

「そうこなくちゃ。まずはこの格闘ゲームで対戦よ!!!」

 

ワイワイと盛り上がり、やえがカセットを袋の中から取り出す。

多恵もその中に入っていったが、未だ麻雀卓についている洋榎が一言。

 

 

「いや、でもここテレビないやん」

 

「……」

 

「……私の家いこっか」

 

決戦会場は、多恵の家となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かくして、決戦の火蓋は切って落とされた。

 

 

 

 

 

「ウホー!!ウホウホウホ!!!」

 

「キィーーーー!!!ちょっと洋榎!!!その脳筋ゴリラ使い続けるのやめなさい!!腹立つわね!!」

 

格闘ゲームは洋榎の脳筋ゴリラが無双し。

 

 

 

 

 

 

「なんかぶっとびカード使ったらゴール着いたわ!ラッキー!」

 

「そんなんダブリー、一発ツモよりありえないわよなにしてくれてんの?!」

 

すごろくゲームではセーラが豪運を発揮し。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと多恵あんたどこにいんのよ!姿見せなさいよ卑怯者!!」

 

「ヒャッハー!芋スナ最高!!!」

 

「やえ0キル8デスだけど大丈夫?」

 

FPSではやえが多恵に狩られ続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……!はぁ……!」

 

時刻は夕方過ぎ。やえが持ってきたほとんどのゲームをやりつくした後には、やえはもうボロボロだった。

3人は思い思いに楽しんでいるが、やえはちっとも楽しくない。

なにせ勝てないのだから。

 

 

「なんで私は事前にゲームやってきたのに初見のはずのあんたらに勝てないのよ……!」

 

なんとしても勝ちたかったやえは実はこれらのゲームを一度プレイしていた。

 

 

「はー終わった終わった。たまにはええなーこういうのも」

 

「多恵~タイ焼きもうないんか~」

 

洋榎は満足そうに寝転がり、セーラも多恵の家にあったお菓子を貪り食ってまだ冷蔵庫の中を漁ろうとしていた。

 

コントローラーを手放し、やえが立ち上がる。

 

 

「ちょっと!こんなんで終わったと思わないでよ……!……明日はここで勝負よ!!」

 

「……フィールドワン……?」

 

やえが取り出したのはアミューズメント施設のチケット。

特にスポーツがたくさんできることで有名な施設だ。

 

 

「ゲームなんていうインドア遊びしてても仕方がないわ。運動よ運動!!運動神経ならあんたらにだって負けてないわ……!」

 

やえは体力にもそこそこ自信があった。学校が同じなわけではないので他の3人がどうかは知らないが、学校でも女子の中でやえはかなり運動ができる方。

そこにかければ勝機があると踏んだのだ。

 

 

「ほう……運動で勝負を挑んでくるなんて怖いもの知らずやなあ……やえ?」

 

「ぐっ……なによ!やってみなきゃわからないでしょ!」

 

確かに学校が一緒ではないのでわからないとは言ったが、セーラや洋榎などはいかにも運動ができそうである。

なにより足が速いのは、昔帰り道にかけっこした段階で確認済みだ。

 

しかしやえは引きさがるわけにはいかない。一番勝算のあったゲームで負けたのだ。今更背に腹はかえられない。

 

 

「いい?これで最後!このスポーツ大会を制した者が、私たちの中のナンバーワンだからね!」

 

やえは高らかに宣言する。それが自身の首を絞めているとも知らずに。

 

 

 

 

 

「どうでもいいけど誰も片付け手伝ってくれないの……?」

 

多恵の呟きは悲しいかな誰の耳にも届いていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

空は一面の青。気温もちょうどよく、まさに運動日和だ。

 

 

「さあ、やるわよ!今日で引導を渡してやるわ!」

 

昨日の敗戦はもう無かったことになっているかのような表情で、3人を指さすやえ。

 

運動しやすい軽装に身を包んだ4人が再び集まる。

 

 

 

 

 

 

今度は外での戦いが幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

「左手は……添えるだけ……」

 

「あんた女子でしょ?!両手で撃ちなさいよ!!!」

 

バスケは文字通りセーラにボコボコにされ。

 

 

 

 

 

 

「……秘打!白鳥の湖……!」

 

「なんでそんなスイングでボールが打てるのよ!!」

 

バッティング対決は、到底理解不能な打ち方で軽やかに打ち返す洋榎に軍配が上がり。

 

 

 

 

「ディバイン……アロー!!」

 

「あんたのシュートどーなってんのよお?!」

 

サッカーは多恵のシュートによってゴールがひん曲がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一通りの競技を終え、休憩室に来たメンバー。

 

 

「思い出した……私、サッカー選手になりたかったんだよね」

 

「ぜえ……ぜえ……何言ってんのあんた……」

 

キラキラとした目で語る多恵に、やえが息を切らしながらツッコミを入れる。

 

 

「運動で勝負を挑んだのは間違いやったなあ?やえ?」

 

やえが多恵から差し出されたスポーツドリンクを飲みつつベンチに腰掛けていると、ニヤニヤとセーラが話しかけてきた。

 

セーラはともかく、洋榎と多恵もこんなに運動神経がいいとは思わなかったやえ。

 

 

(どんだけハイスペックなのよこいつら……!)

 

 

 

「いやーええ汗かいたわあー。ビール持ってこんかーい!」

 

「私達未成年だから……」

 

洋榎もまだまだ元気。元気がありあまりすぎたのか、何故か多恵を肩車している。

 

そんな様子を見て、やえはまた一つため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

楽しい時間というのはあっという間で、気付けば夕方。

 

 

 

 

 

「おつかれさんさんさんころり~」

 

「いやーおもろかったなあ~!」

 

「たまにはこういうのもいいかもね」

 

夕暮れに見送られながら、4人の少女が帰路につく。

 

 

 

その中で、1番後ろを歩いていた少女が立ち止まった。

 

 

「……やえ?」

 

「……する」

 

やえの様子がおかしいことに気付いた多恵が後ろを振り返る。

続いて洋榎とセーラも振り返った。

 

 

「なんかゆーたかあー?やえー?」

 

俯きながらやえが言った言葉を聞き取れず、セーラと洋榎もやえの近くまで戻ってくる。

 

そうして揃った3人を前にして、やえは勢いよく顔を上げた。

 

 

 

 

「やっぱり!!!!麻雀やるって言ったの!!!!」

 

 

 

 

その言葉に、3人も顔を見合わせる。

 

1度2度まばたきをし……そして3人は同時に笑った。

 

セーラがやえと肩を組む。

 

 

「やっぱ麻雀やなー!1日1回も牌持たないなんて考えられんわ!」

 

「それは流石に病気だよセーラ……まだ教室あいてるかな?」

 

「とかいって多恵さっき皆を待ってる時ネット麻やってたやろ」

 

「ギクゥ……ネット麻は……その……呼吸だから?」

 

「生きることに必要なレベル?!」

 

 

ワイワイと少女たちはいつもの麻雀教室へと戻っていく。

 

 

かけがえのない仲間と出会えたのも、今の自分があるのも、そしてきっとこれからの自分を作っていくのも麻雀で。

 

やっぱり彼女たちにとって麻雀はそれだけ特別なもの。

 

 

 

 

笑顔で少女たちは歩んでいく。

 

その先は、果てしなく。途中で道は分かれるかもしれない。

 

それでも、目指すところは必ず同じだと信じて。

 

 

 




次回から本編です。お待たせしました。
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