ハイスクールD×D~辺境より出ずる~<実況風>   作:かめのて

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はじまりの三話

 

 

 悠々と空を駆ける様は天空の王のようであった。事実、何人の介入を許さないその在り方は最強の名を欲しいままにしていたのだろう。

 

 曰く、その速さは目に追えず。鱗は玉鋼よりも硬く、火炎は隕石の如くあったという。

 

 ブレイズ・ミーティア・ドラゴン。またの名を魔聖龍。六代龍王の一角として数えられていた王である。

 

 かの龍王を語るに、一言で言えば仁であろうか。仁とは思いやる心である。

 

 かの龍は同胞がためにその地位を棄て悪魔へと変生を遂げたのである。

 

 正しく龍の王であった。

 

 

 かくしてその魔聖龍は、翼をはためかせ、湖畔の地に降り立った。湖畔一面はドラゴンアップルの木立が至る所で背を伸ばしているではないか。

 

「なんと。これは凄い……」

 群生するドラゴンアップルの大群に目を輝かせ、思わず鋭利な牙の隙間から感嘆の吐息が漏れ出る。

 

 求めてやまないドラゴンアップルの群生地が、まだ冥界にも存在していたのだ。

 

 しかもドラゴンアップルことセカイイチは、記憶にある姿形よりも二回りほど大きいようだ。

 

 ひとつ手に取ってみる。丸みを帯びる蠱惑的な赤みは瑞々しく、ずっしりとした重みがある。そして近づかなくとも感じ取れる強く芳しい香りを放っていた。

 

「……カタチと言いサイズと言い、香りも強いか。一体どのようにすればこのようになるのだ」

 

 思うに、関係しているのは水か土壌だろうか。ドラゴンアップルを研究している身としては常識、というよりは植物全般にいえることである。

 

 湖に視線を向ける。一見して何の変哲も普通の湖だ。

 

 水面に鼻を近づける。

「普通の水か」

 自分の知らぬ特別な何かがあるかも知れない。サンプルとして水を持ち帰ることにした。次いでにもぎ取ったドラゴンアップルや付近の土壌の一部も持ち帰ることにする。

 

 

 そのとき背後から射抜くような視線を感じ取り、動きを止め、「誰だ。見ているな」と圧を飛ばす。その視線は射抜くようである一方、ある程度の実力者であるならば容易に気付けるような稚拙なものだった。

 

「出て来るがいい」

 やがて近くの木陰から姿を現したのは蜂蜜色の髪をひとつ結びにした悪魔。紫水晶のような瞳を険しくさせている。悪魔からこのような目を向けられるのは何百年ぶりのことか。

 

 思わず、ある予感がして尋ねた。

「もしやこの群生地の管理者の方であらせられるか?」

 

「一応な。……だが驚いな。まさか、かつて六代龍王として数えられていた一角が盗人の真似事とはねぇ」

 六代龍王。魔聖龍である己がかつてそう呼ばれていた一角であったことを知る者は少ない。どうやら古い悪魔のようだ。

 

「それは誤解だ、申し訳ないっ。私有地だとは知らず、あまりにも素晴らしいドラゴンアップルだったのでもぎ取ってしまったのだ……本当に悪いことをした」

 

「勘違いか。なるほど謝罪を受け取ろう。しかしそうか、このドラゴンアップルはそれほどまでに素晴らしいか」

 

「うむ。大きさといい香りと言いこれ以上のモノは見たことがない。生育方法を教えて欲しいくらいだ」

 

「ああ構わない。私の知っている範囲でだが教えよう」

 

「おお! ありがたい」

魔聖龍はどこからかメモ帳を取り出した。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 フランダーです。

 

 大変未曾有な緊急事態に見舞われています。

 

 とぼとぼ拠点に戻ろうとした訳なんですが拠点の前に巨大なドラゴンがいました。

 

 エ◯ニキやべ〇ニキならば貴重なタンパク質ですと言いそうですね(現実逃避)。

 

 その筋骨隆々なドラゴンはセカイイチを手に取って何やら観察しているようです。湖面に顔を近づけたりと奇怪な行動を繰り返しています。

 

 もしや、この土地はあのドラゴンのものだった?

 いえ、そんなことはない筈です。ですが念のためMAPから確認しておきます。

 

 

 ほっ。どうやらここは私の土地のようですね。フールフール家と書いてありますもん。視聴者の方も見えますよね?

 

 おのれ、不法侵入者め! 

 

 ……今すぐあのトカゲをとっちめたい所ですが、戦力差を理解している私ではどうしようもないです。負けると分かっている戦いに挑むほど愚かではありません。黙ってヤツが立ち去るのを見ているしかないですね。

 

 一応鑑定してみます。万が一、いえ億が一でもあり得ないと思いますが、もしかしたらレベルが私より低いかもしれません。

 

 

 そのときはけちょんけちょんのぎたんぎたんにしてやりますよ。

 

 ちなみに今の私はLv7です。

 

 

 鑑定!

 

 

・魔聖龍タンニーン Lv906

かつて龍王の一角であったドラゴン。その火炎は隕石の如き威力を秘め、紫の鱗は玉鋼のように硬い。力だけならば魔王と同等の力を持つと言われている。

 

 

 ……ファ!? レベルヤバすぎな件。それとネームドモンスターのようです。これじゃあ逆立ちしても勝てませんよ。パワーインフレ全開ですな。

 

 

 おや、奇怪な動きを繰り返していたヤツの動きが止まったようですぞ。何をするつもりなのでしょうか。

 

『……誰だ。見ているな』

 

 しゃ、しゃべったあぁああああ!!??

 み、みなさん! 聞きましたか!? あのトカゲ今喋りましたよ!

 

 という事は、NPCでしょうか。ふむ、ならばヤツを追い出すことも可能かもしれません。

 

『出て来るがいい』

 

 どう見ても私のことを言っているようです。ここまで言われてしまったらやぶさかではありませんね。

 

 木陰から出ますとドラゴンの前まで来ます。

 

『もしやこの群生地の管理者の方であらせられるか?』

 あながち間違っていませんな。私は頷いておきます。いくらドラゴンとはいえ嘗められてはいけないので鋼の克己心をもって臨みます。

 

「一応な。だが驚いたぞ。まさか、かつて六代龍王として数えられていた一角が盗人の真似事とはね」

 不法侵入した挙句に盗人紛いのことをするとは見下げた根性です。このクソトカゲめ。

 

『! それは誤解だ、申し訳ないっ。私有地だとは知らずあまりにも素晴らしいドラゴンアップルだったのでもぎ取ってしまったのだ……本当に悪いことをした』

 

「勘違いか。なるほど謝罪を受け取ろう。しかしそうか、このドラゴンアップルはそれほどまでに素晴らしいか」

 私としては、ただの大きなリンゴにしか見えませんが、ドラゴンから見ると異なるようです。

 

『うむ。大きさといい香りと言い、俺の知る限りではこれ以上のモノは見たことがない。生育方法を教えて欲しいくらいだ』

それは暗に教えてくださいと言っているようなものですぞ。仕方ありません、ここはひとつ、教えて進ぜよう。{なお鑑定知識)

 

「ああ構わないぞ。私の知っている範囲でだが教えよう」

 

「おお! まことか、ありがたい」

 一時間ほどあれこれ話し、鑑定で知った知識を伝えました。だいぶ打ち解けたと思います。タンニーンはどうやらこのドラゴンアップルを生育している農家の方のようです。

 

 話に耳を傾けていますと、何と言うか情熱が伝わってきます。しかも農家をやる理由が他のドラゴン、それもドラゴンアップルを主食とする同族のためなのですから素晴らしいドラゴンですよ。

 

 トカゲなんて言って申し訳なかったです。これからはドラゴンと呼びますね。

 

「なるほど。水と魔力の均衡をとることが重要になる。どちらも与え過ぎてはならない、か。普遍的な事で見落としていたようだ……」

 

「だが中々に難しいことだ。下手すると枯れてしまうこともある。気をつけてくれ」

これも鑑定で知ったことです。

 

「分かった。今日は非常に有意義な事を聞けたよ。どうか貴君の名を教えて欲しい」

 

「……フランダー=フールフール。ここら一帯を治めている者だよ」

 フルネームを伝えるか迷いましたが伝えることにします。一応、領主なので正統性を示さねばなりません。

 

「フランダーか。俺の名は分かっているとは思うがタンニーンだ。気軽に呼んでくれて構わまんぞ」

どうやら彼はフールフール家の事を知らないようですね。私のことを言いふらしたりはしないでしょう。

 

「了解だ、タンニーン。所でひとつ頼み事があるんだが、良いかな?」

ドラゴンアップルの事を教えたんですから、私の頼み位聞いても良いはずです。

 

「聞こう」

 

「木を切断出来るような刃物が欲しくてね。そうだな、鉈や鋸、安物で構わないから私の元へ持ってきてくれないだろうか」

それさえあれば網や魚籠が作れます。良いことをするとかえって来るものですね。

 

「刃物だと、まさかとは思うが」

 

「違うよ、ドラゴンアップルの木じゃない」

 

「そうか。明日にでも持ってくるとしよう」

 

「頼んだよ」

 タンニーンは東の空へと飛翔していった。ちなみにもぎ取られたドラゴンアップルはお土産に差し上げました。

 

 

 

 

 


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