大井「嫌いよ、提督なんて。……嫌い……だったのに……!」 作:阿斗 らん太
前編、中編、後編の三部作で投稿します。
某日 母校 ──────
「帰投しました…」ボロッ
提督「……………こりゃまー派手にやったなぁ。中破したのは初めてだったか?」
「……作戦が悪いのよ」ボソッ
提督「ん?」
「いえっ、なんでもありませんよ。ちょっと、肩に糸くずがー♪」
提督「…………………………………………」
「……?」
提督「……………………………恥ずっ!!」
「なっ!?」
提督「わざわざ聞こえるように悪態をついといて、聞き返されたら糸くずとかバレバレで流石に恥ずかしい!!」
「ちょ、ちょっと!皮肉!皮肉ですから!そんなことも分からないんですか!?」
北上「ちょっと大井っち落ち着きなよー。ほら、駆逐艦達も見てるしさー」
提督「そうだぞ大井、あと顔真っ赤だけど大丈夫か?」
「~~~~~~~~っ!!!」
「もう入渠してきます!やっぱり提督なんて大嫌いです!!」
私は提督が嫌いだ。すぐ癪に障ることばかり言う。
つい先日も駆逐艦の子に「しれーかんから聞いたんだけどー、大井さんてー、くれいじぃさいこれず?ってやつなんですかー?」などと、とんでもないことを言われたのだ。
提督はきっと、私の事なんてストレスをぶつけてもいい兵器のうちの一つとしか思ってないんだろう。デリカシーってものがない。だから、着任初日からあいつに平手打ちをかましてしまったのも、私は悪くないんだ──────
「こんにちは。大井です。……北上さんはいますか?」
提督「…………おう、よろしく。しかし、一言目から北上の話か。お前、もしかしてだが……」
「はい?」
提督「…………………レズなのか?」
「っ!!違いますから!あなたこそ初対面なのにとても失礼です!!」バシーン!
提督「ヘブァッッ!!!」
──────嫌なことを思い出した。着任する鎮守府を間違ったかもしれない。
そもそもここは入渠ドックも一つしかないような弱小鎮守府だ。軽巡の私ですら着任早々で主力扱いなのはどうかと思う。まあ北上さんがいたことは唯一の良いところだけれ。
こんなことを考えているうちに入渠ドックにたどり着いている。私は苛立ちながら、一つしかないそれに入ったのだった。
それから数日たったある日。北上さんを探して執務室の前を通ったところ、扉の奥がやけに騒がしかったもで気になってちらと隙間から覗いてみた。
北上「ふっふーん♪提督もまだまだだねぇー」カチャカチャ
提督「もう一回!次は絶対に勝つ!」
北上「どうかなー前から全然上達してないから、このスーパー北上様に勝つのは百年早いと思うよー」
提督「いいや、次は負けん!今にみてろぉー!」
ワイワイ ワイワイ
………とんでもない現場を見てしまった。提督と北上さんがゲームで盛り上がっている。
ま、まさか北上さんはあの性悪と仲が良いのだろうか。あんなに親しげな提督は見たことがないのだが。そしてなにより、私の北上さんに易々と近付かないで欲しい。
私は我慢できなくなって扉を勢いよく押し開けた。
「ちょっと!」バァン!
北上「あれー。大井っちどうしたん?なんか慌ててるけど」
「どうしたん?じゃないですよ北上さん!提督と仲良かったんですか!?」
北上「そだよー? 言ってなかったっけ」
……なんてことだ。
私はちらりと視線を北上さんから提督に移す。あっ、こいつ視線を逸らしやがった。
とにかく、北上さんは提督に騙されているんだ。よりにもよって北上さんがこの性悪に目を付けられるなんて!
私がわなわな震えていると、北上さんが口を開く。
北上「大井っちは勘違いしてるかもしれないけど、提督はいい人だよー」
あっもう大分深刻だわ、これ。
私がどうにかしなければ! そうだ、提督の本性を暴いて北上さんに伝えれば、きっと北上さんの洗脳は解けるはずだ。
よし、そうと決まったら徹底的に追い込んでやる! まずは現場証拠だ。提督が艦娘をただの道具としか思っていない決定的証拠をとらえてやる。
今に見てなさい、私がその化けの皮を剥いでやるんだから!
提督「どうしたんだ、大井。そんなに怒ったり、悲しんだり、何か決心したような雰囲気出したり」
提督「情緒不安定か?……………あ、まさか今日も生理か……………?」
ああ、ほんと嫌い!! 今日『も』ってなによ、『も』って! だいたい艦娘に生理なんてこないから!