「あー……それ出ちゃうなら出力系以外にも問題があるパターンだ、流石に修理に出さないとダメだね」
「そうですか……じゃあ、その……お借りさせて頂きます」
俺が普段使ってるベッドよりも柔らかそうな布団の上でぺこりとお辞儀をする斎賀さん、構わないと手を振りつつ立ち上がり……セルフ
「ぬおぁっ」
「大丈……きゃっ」
「おぉぉお!?!?」
足の痺れの体勢を崩し体勢を崩し、次の瞬間には天地が逆転していた。
すごい。天井が高い。
ではなく、どうやらあの一瞬で斎賀さんが俺をつかみ投げてベッドに下ろしてくれたらしい。
そういえば確か斎賀さんって柔道?やってるんだったか。畳って転ぶと意外と痛いんだよな。
「いやぁ、ありがとう。斎賀さ…っ!?」
起き上がりかけた俺の肩を斎賀さんが掴んで押し倒す。
「……」
「……」
え?俺何かやらかした?布団に乗っちゃダメだったとか?いやでも布団に乗せたのは(推定)斎賀さんだし…
「ご、ごめんなさい…?」
「……」
思わず謝ってしまったが、応答はない。
無言で俺に馬乗りになる斎賀さんの顔がいつも以上に赤く染まっているのが分かる。息も荒いし、目の焦点も定まっていないように思える。
いやしかし綺麗だな斎賀さん。こう近距離でまじまじと見ると改めてそう思う。
いや、近すぎるだろこれ。これはまずい。非常にまずい。主に絵面がまずい。
「…あの…斎賀さん…?」
なんとか布団から出ようにも斎賀さんが肩を抑えていて動けない。こちらから下手に触るわけにもいかないし、振り払うのも何か失礼な気が…
「……キュウ」
ポスン。
聞きなれない音とともに肩の拘束が解け、斎賀さんが倒れ込んだのが分かった。
さて、ここで問題です。
俺に馬乗りになった斎賀さんがそのまま倒れるとどうなるでしょうか?
答えは…
「お嬢様、少々本日のご予定について……」
問題を変更しよう。
|布団と斎賀さん(うつ伏せ)にサンドイッチされた《布団の上で抱き合っているようにも見える》様子を目撃された俺はどうするべきか?
「……失礼致しました」
「いや、これは、ちが…………!!」
弁明する間もなく、何を察したのか使用人は襖を閉じて立ち去り、静寂が訪れた。
「……いやこれどうすんだよ」
改めて見れば、斎賀さんの反応はなく。どうやら気を失っているようだった。
……とにもかくにも、まずは斎賀さんを下ろすしかないか。
斎賀さんの普段着がフォーマルな和服で本当に良かった。
着物は寸胴の方が見映えが良いから、タオルとか仕込むんだって親戚の叔母さん言ってたもんなぁ。そう、あれはタオル。この柔らかい感触はタオル。
「……」
なんとか丁重に布団に下ろすことには成功したが、先ほどの
可能なら今すぐにでもこの部屋から出たい。そして帰りたい。ラブクロックならここで本当に帰ったり、叩き起こして叱る、なんて選択肢もあるし正解だったりするが、それだけはやってはいけないと脳が警鐘を鳴らしている。
……
「……1325,1326,132…」
「……んぅ……」
「あ、起きた?」
「……ふぁい……?」
斎賀さんが起き上がる。
「りゃ、楽郎くん?!」
斎賀さんが驚きの声を上げる。
パニクる斎賀さんとは対照的に、俺の心は澄みきっていた。
そりゃぁ天井の木目を1300も数えてたら落ち着きくってもんですよ。
まだ素数を数える方が有益だったんじゃないかなどと瞑想する思考を引き摺り戻し、斎賀さんに事の顛末と謝罪の意を述べる。
斎賀さんも気絶していた件が余程申し訳なかったのか、謝罪合戦の末にお互い土下座姿勢で硬直。
なぜかそのままシャンフロの予定の話になり、結局、帰る直前までお互いに顔を上げることはなかった……
一週間ぐらいお互いに顔を直視できなくなってほしい。